TSI様は50余のアパレルブランドを有している会社です。
Googleを中心としたデータプラットフォーム構築により、オンラインとオフラインのデータを活用した分析と施策活用や、機械学習を利用した広告配信やサイト改善により高い成果を得た事例をご紹介します。
ご依頼された経緯とお客様の要望
TSI様は全体戦略として、OMO戦略(Online Merges with Offline オンラインとオフラインを「相互に」補完し顧客体験の向上を図るマーケティング戦略)を掲げています。
ECはEC、店舗は店舗のみでブランドビジネスを展開するのは難しく、
「店舗とECを融合させお客様に良い体験をしてもらいたい」
「店舗とECを横断したお客様との様々な接点をデザインし直す」
というのがTSI様の定義されたOMO戦略となります。
それを実現するためには、EC=オンラインと店舗=オフラインのデータを一つに統合する必要がありました。
Googleアナリティクスを中心としたデータプラットフォームを構築することで、統合されたデータを分析や施策に活かすことが実現できました。
▼TSI様の掲げるOMO戦略
資料:マーケティングアジェンダ 2023@沖縄(読谷村)弊社発表資料より抜粋
施策のポイントと内容
実施した施策のポイントを紹介します。
ポイント1
データプラットフォームの構築
データプラットフォームの構築にあたりキーとなるのが以下2点です。
①計測にGoogle製品を利用していること
②ユーザーIDをキーとしていること
①計測にGoogle製品を利用していること
EC=オンラインのデータはGoogleアナリティクス360(有料版)(以下、GA360)にて計測していました。
店舗=オフラインのデータはPOSデータから弊社サービス(QuickDMP)を利用しデータを整形しGoogleクラウドにデータを格納していました。
また、広告ツール(Google広告、Display&Video360)からのデータも収集しています。
これらのデータをGoogleクラウドに集約することで、データを統合していきました。
特にGoogleアナリティクスはボタン一つでGoogleクラウドにBigQueryエクスポートが可能となっており、この機能を利用しました。
オフラインデータは弊社のサービスを利用していますが、Google製品を利用していることで、統合のハードルが大きく下がったことが大きなポイントと言えます。
▼計測にGoogle製品を利用することで、各データをGoogleクラウドに集約しやすく活用しやすい
資料:マーケティングアジェンダ 2023@沖縄(読谷村)弊社発表資料より抜粋
②ユーザーIDをキーとしていること
データを統合するためには、キーとなるIDが必要で、TSI様の場合は会員IDをキーとしました。
Googleアナリティクスではカスタムディメンションを使ってユーザーIDを別途追加計測することが可能です。
ECサイトでの購入にはログインが必須ですが、ログイン時に会員IDをユーザーIDに計測することで、オフラインデータとのデータ統合を可能としました。
これによりGoogleクラウド上で会員IDをキーとしてオンラインデータとオフラインデータを統合して分析することが可能になりました。
▼データの統合には「ユーザーID」をキーとして利用
資料:マーケティングアジェンダ 2023@沖縄(読谷村)弊社発表資料より抜粋
ポイント2
統合データ(BigQuery)の活用
広告配信をアウトプット先として統合データで分析をしたところ、オンラインのデータのみの分析より、成果が2倍以上となりました。
やったことはシンプルで、購入確率の高いユーザーをリスト化してそこに配信をかけるというものです。
オンラインオフライン両方で購入しているユーザーは購入確率も高く、そのユーザー群を抽出するだけでも成果に繋がりました。
▼統合したデータを手動で分析し広告活用
資料:マーケティングアジェンダ 2023@沖縄(読谷村)弊社発表資料より抜粋
ただし、課題も出てきました。
- 分析に時間がかかること
- 属人化してしまい分析を担当する人の思考にアウトプットが偏ったりすること
などです。
その課題をポイント3「機械学習の活用」で解消しました。
ポイント2
機械学習の活用
広告配信に利用するユーザーリストの分析を Google BigQuery MaschineLearning (Googleの提供する機械学習ツール、以下BQML)にて実行し広告活用しました。
また、広告を配信する際のクリエイティブの作成、組み合わせにも機械学習を利用しました。
▼統合したデータを機械学習(BQML)を用いて分析し広告ターゲットや広告クリエイティブに利用
資料:マーケティングアジェンダ 2023@沖縄(読谷村)弊社発表資料より抜粋
さらに広告への活用だけでなく、サイト改善として Google Recommendations AI (Googleの提供する機械学習ツール)を活用し、ユーザーの回遊率や購入率向上に繋がることで売上向上を実施しました。
これは、商品情報、ユーザーの過去の行動に加え、ユーザーの「リアルタイム」の情報を機械学習で分析し即時に最適なコンテンツを返す仕組みです。
▼Google Recommendations AI を用いてサイト内体験改善としてレコメンドのリアルタイム改善を実施
資料:マーケティングアジェンダ 2023@沖縄(読谷村)弊社発表資料より抜粋
施策後の成果
各ステップで高い成果が得られました。
お客様の声
Googleプロダクトによるプラットフォームを選んだ理由としては、分析、施策立案、実施のプロセスがスピード感を持って実施できることと、それがリーズナブルかつライトに実施できるという点です。
アユダンテ様にはプラットフォーム構築、とくにウェブサイトでの計測でサポートいただきました。
機械学習がもたらす進化としては大きく2点ありました。
1点目は効率化、2点目は改善スピードとなりますが、特に2点目の改善スピードが大きく感じました。
施策反映にあたって社内でハードルが高かった機械学習ですが、BQMLを活用することで大きく効率化と改善スピードに繋がったと思います。
アユダンテ様には、GA360 やBQの設定支援やトレーニングを実施いただきました。
TSIとしてはGoogleクラウドに複数サイトのデータを連携しています。
現在は、個別最適でデータ活用をしている状況ですが、今後は全体最適で活用していきたいと思っています。
今後もアユダンテ様にはさらなるサポートを期待しています。
担当スタッフからのコメント
データを取り巻く環境は日々進歩しており、ビッグデータの活用はかなり身近なものになりつつあります。
そのような情勢のなかで、自社の資産であるデータをどのように活用していくかは今後の大きなポイントとなってきます。
今回は、ユニバーサルアナリティクスを使った事例でしたが今後はGoogle アナリティクス4の活用を促進する必要があります。
新しいGoogleアナリティクス4は「ユーザー行動の計測」をコンセプトとしており、より現在のユーザーの行動変容を捉えやすくなりました。
Googleアナリティクス4においても計測したウェブサイトやアプリのデータ、また、リアル店舗、その他のデータを一つの大きな情報として活用していくためにはプラットフォームの構築が必要となってきます。
データの活用先としても BQML や Recommendations AI のように技術の進歩による自動化が進んでいます。 プラットフォームの構築には、データをどのように設計、計測、加工、分析、活用していくかを一気通貫で考えていく必要があります。
これらは現時点ではまだ、人の手が必要になっています。
TSI様の事例は先進的で成果も非常に高いものでしたが、今後これがスタンダードとなることが予想されます。
TSI様においてはまだ実装できていないサイトへ展開すると共に、先進的な活用をご提案できればと考えています。