富士フイルムヘルスケアラボラトリー 株式会社様
GTM有料版「ゾーン」機能による広告タグ管理基盤構築支援 〜複数部署のGTMタグ運用の統一~

株式会社富士フイルムヘルスケアラボラトリー様(以下、FFHC様)は、写真フィルムなどで培ってきた先進・独自技術や知見を応用・活用し、「アスタリフト」シリーズなど、サイエンスに裏付けられた新発想のヘルスケア製品の開発から販売まで取り組まれています。さらに、化粧品やサプリメントをはじめとする多彩な商品を幅広くEコマースで展開され、これらの商品をより多くのお客様にご利用いただくため、複数のオンライン広告キャンペーンを同時に実施しています。

本記事では弊社が、FFHC様の複数のキャンペーンを効率的かつ安全に管理するため、Google タグマネージャー(以下、GTM)の有料版機能である「ゾーン」を活用して広告タグ管理基盤の構築を支援した事例を紹介させていただきます。

ご依頼された経緯とお客様の要望

前述の様に、FFHC様の広告キャンペーンタグの設定は非常に多岐にわたっており、商品や担当部署によって複数の異なる広告代理店(各代理店はFFHC様管理のヤフータグマネージャーをそれぞれ使用)が関わっているため、これらタグの配信管理はかなり複雑な状態になっていました。
その結果、下記のような問題が発生していました。
  1. 広告代理店間のタグ干渉によるトラブルが発生する
  2. 問題発生時に原因の切り分け、調査に時間がかかる
  3. 誰もが設定を見ることができ、広告タグに関係のない設定を変更される可能性がある
そのため、FFHC様では多様なキャンペーンタグの運用管理をGTMに統一する方針を決定されました。
運用管理をGTMに統一するにあたり、当社に以下のシステム設定と運用整備の支援をご依頼いただきました。
  • 広告代理店の個別運用と全体管理を両立できるシステム設定および運用構築
  • 運用のルール作りとガバナンス強化
これらの課題解決に向けた取り組みを以下3つのポイントに分けて解説いたします。
  1. 広告代理店ごとにGTMをわけ、ゾーンを使って全体管理を行う
  2. 利用できるタグの制限と適用範囲の最適化
  3. 配信までのプロセスをワークフローとして確立

課題解決のポイントと内容

ポイント1
広告代理店ごとにGTMをわけ、ゾーンを使って全体管理を行う

「ゾーン」とはGTM有料版の機能です。
複数のGTMを連結させて、1つのGTMから別のGTMを呼び出し実行する機能です。
すでにGA4の計測などで活用しているメインGTMがあり、そのGTMに広告代理店ごとのGTMを連結させることで、メインGTMから各広告代理店のGTMを管理することができ各GTMの管理を一元化できるようになります。この機能を使うことでタグ設定の干渉や他代理店の設定を変更するといった問題を解決することができました。

さらにウェブサイトに実装するGTMタグは1つになります。
また、広告代理店が新たに加わった場合など、メインGTMから追加作業が行えるようになるため、ウェブサイトの運用負荷軽減にもなります。

ポイント2
利用できるタグの制限と適用範囲の最適化

広告代理店用のGTMでは利用できるタグや変数に制限を設けました。
もし、広告代理店用のGTMでGA4の設定がされてしまうと、FFHC様が設定しているGA4に影響が出てしまう恐れがあるからです。
それを防ぐために、広告代理店のGTMではGA4の設定をしないようゾーンの機能である「種類の制限」を利用しました。
「種類の制限」とは利用できるタグや変数に制限を設けて使えないようにする機能です。
この機能を使い広告代理店用のGTMではGA4に関するタグや変数を使用できないようにしています。

また、広告運用に必要なタグや変数だけを使用できるように設定することで、広告運用に最適なGTMを提供することができます。
次に広告代理店のGTMではタグの適用範囲にも制限を設けました。
キャンペーンに含まれないページにもGTMタグが設定おり、広告タグを全ページ配信した場合、関係のないページまで計測されてしまいます。
こういったことを防ぐためにゾーンの機能にある「境界」を利用しました。
「境界」とは広告代理店のGTMの配信範囲を一部のページだけに限定する機能です。


特定のディレクトリ配下など条件を指定することで配信範囲を限定できる(画像はイメージです)
これにより、キャンペーン施策に関係のないページが計測されてしまうなどのミスを軽減することが可能になります。
このように利用可能なタグや配信範囲といった運用ルールを設定することで、より安全な運用ができるようになりました。

ポイント3
配信までのプロセスをワークフローとして確立

GTMの統一化を機に配信フローの整備にも取り組みました。
広告代理店が設定した内容はFFHC様がチェックし配信を行っています。
これまでチェックするフローが広告代理店ごとに異なっていたため、見落としや抜け漏れなどが発生する可能性がありました。
GTM統一化によってすべての広告代理店で配信フローを標準化するためにGTMの有料版にある「承認」機能を使いました。
「承認」を使った配信プロセスは以下の流れで行われます。

  1. 広告代理店が設定し、承認者に配信リクエストを送信
  2. 承認者が設定内容を確認
  3. 問題がなければ承認して配信

また、承認依頼や差し戻しする際にはコメントを残せるため、GTM上でコミュニケーションが完結でき連絡手段のばらつきによる混乱を防ぐことができます。
これにより、円滑で効率的な運用を実現しています。
さらに、タスクはGTMの管理画面上に表示されるため、見落としによる配信漏れなどのリスクを軽減できます。

施策後の成果

GTM有償版の「ゾーン」「承認」機能を活用することで以下のような成果を得ることができました。

  • ゾーン機能の活用: 広告代理店ごとの個別運用と全体管理の最適化
  • 利用タグ/配信範囲の制限: 運用ルールを機械化したことによるガバナンスの強化
  • 承認機能の活用: ワークフローを整備したことによる運用の安定、効率化

これにより、FFHC様が主体となり、安心、安全に全てのタグの一元運用管理ができるようになり、その結果、「タグトラブルの激減」と「トラブル時の調査、対策時間の短縮化」を実現いたしました。

お客様の声

藤田様は常に弊社の課題や問題点を丁寧にヒアリングしてくださり、高い技術力に裏づけされた「当社向けの最適解」をご提案してくださいます。
今回も、弊社の「複数代理店の運用問題」「タグトラブルの問題」をご相談させていただいたところ、非常にコントロールしやすくスマートな設計を提案いただきました。また、設定ひとつひとつの仕様についても詳細なシステム動作を丁寧に説明してくださったので、当社も自信をもって設定・運用変更を行うことができました。おかげさまで現在とても運用しやすい仕組みになりました。
どんな小さなことでも親身に対応していただけますので、いつも非常に助かっております。今後とも末永くご助力いただけますと嬉しいです。

ご依頼いただいたサイトURL
FUJIFILM ビューティー&ヘルスケア Online:https://h-jp.fujifilm.com/

富士フイルムヘルスケアラボラトリー様を支える担当スタッフ

担当スタッフからのコメント

ご担当のFFHCの三輪様から、これまでに起きた事象や現状の課題について詳細にお話しいただいたことで、私も具体的な打ち手を考え、ご提案することができました。
また、機能に制限を設けることでできないことが発生するリスクや、逆に制限を緩和することで生じるリスクも考慮しなければなりませんでした。そのような中、三輪様がその機能の意義や適切な使用方法を十分に理解された上で、社内の仕組み作りを進めていただけたおかげで、これまで大きな問題もなく運用が進んでいると感じております。
GTMの有用性をうまく引き出し、自社の運用にうまくフィットさせている良い事例であると思っております。

ご利用いただいたサービスとプラン

「富士フイルムヘルスケアラボラトリー」様でご利用いただいたサービスおよびプランは以下の通りです。

Google アナリティクス 導入・設定支援/データ活用支援

ご利用いただいたプラン名

  1. Google アナリティクス 導入・設定支援/データ活用支援

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