
2026年6月4日に「計測不全の時代にどう向き合うべきか? 〜AI推計の時代にこそ問われるデータ計測の質とガバナンス〜」と題したセミナーを開催いたしました。
データプライバシーへの意識が急速に高まり、従来のCookieに依存したマーケティング手法が大きな転換期を迎える中、多くのマーケターの皆様にご参加いただきました。本コラムでは、当日ご参加いただけなかった方や内容を振り返りたい方に向けて、本セミナーの重要なエッセンスを3つの章に分けて、解説・考察していきます。

- 顕在化する「計測不全」の要因と、マーケターに求められる意識改革
- 計測不全に対するソリューションと、専用ホスティングサービス「Stape」
- 機械学習推計と1stパーティデータを駆使する、これからのデータ計測
顕在化する「計測不全」の要因と、マーケターに求められる意識改革
昨今のデジタルマーケティングにおいて、避けて通れない課題となっているのが「シグナルロス(計測不全)」です。プライバシー法制に引っ張られるかたちで、ブラウザ技術が変化し、計測の前提が大きく変わってきています。本セミナーでは、この計測不全を引き起こす環境変化を大きく3つに分類しました。
1. ユーザーのCookie同意拒否による計測欠落(CONSENT GAP)
改正個人情報保護法と改正電気通信事業法を背景に、日本でもCookie同意バナー(CMP)の導入が進んでいます。しかし、日本における同意率は世界的に見ても低く、最大で約75%(出典※1)ものユーザーがトラッキング同意を拒否し、計測対象外になってしまう可能性があります。法的には重要な対応ですが、バナーを表示するたびに計測データの欠損が生じるリスクを孕んでいます。
出典※1:“Cookie Behaviour Study” / Advanced Metrics 2024
2. ブラウザ規制によるCookieの強制リセット
Appleが導入したITP(Intelligent Tracking Prevention)により、ユーザーがトラッキングに同意していてもCookieの寿命が強制的に短縮されます。日本のモバイルブラウザシェアにおいてSafariは41.6%(出典※2)という非常に高い割合を占めています。Safari環境下では、広告クリックから最長でも24時間が経過すると1st Party Cookieが削除されてしまい、その後の購入(コンバージョン)が広告成果として紐づかなくなるという「24時間の壁」が生じています。
出典※2: StatCounter(gs.statcounter.com, Apr 2026)
3. アドブロッカーによる計測の遮断
日本におけるインターネットユーザーの約15.8%(出典※3)(約6人に1人)が何かしらの広告ブロッカーの仕組みを利用しています。これにより、GTM(Googleタグマネージャー)のスニペット自体が読み込み前にブロックされる、もしくはスクリプトの挙動を見て計測自体をブロックするケースがあり、タグが一切動作せず、データ上でユーザーの行動が完全に消失してしまいます。
出典※3: inStreamly
これらの要因によるシグナルロス(計測がそもそもできないケースと、ユーザーを一意に識別するためのCookieがリセットされる)は、単なる「レポート上の数字の減少」ではありません。コンバージョンが正しく計測されないことでROAS(広告費用対効果)が低下し、リピーターが新規ユーザーとして誤認され、ターゲティング精度が大きく落ち込みます。最も恐ろしいのは、「歪んだ不完全な計測データが自動入札の仕組みに渡ることで学習不足に陥り、本来獲得できたはずの優良な顧客への配信が弱まり、売上の伸びを取りこぼす」という事実です。
この現状に対して、マーケティング担当者は「100%完璧なデータを取得するという幻想からの脱却」という考え方の転換が必要です。オプトアウトやブラウザ制限により、実在する顧客が少しずつデータ上から見えなくなっている現実を受け入れなければなりません。法令を遵守しながら取得できるシグナルを最大化し、「欠損を前提とした強い計測基盤を作る」という意識が、これからのマーケティングには不可欠なのです。
計測不全に対するソリューションと、専用ホスティングサービス「Stape」
こうした計測不全の課題に対する具体的な解決策として、本セミナーでは「Google タグ ゲートウェイ(GTG)」および「サーバーサイドGTM(sGTM)」の2つのアプローチを解説しました。
- Google タグ ゲートウェイ(GTG) 従来のブラウザ計測では、ユーザーのブラウザからGoogleなどの外部ドメインへ直接データが送信されていましたが、GTGを利用すると自社ドメイン経由での送信(ファーストパーティ配信)が可能になります。これにより、データ保護を強化しつつ、Google計測の安定性を向上させることができます(※Google製品のみ)。
- サーバーサイドGTM(sGTM) ユーザーのブラウザから送信されたデータを、自社サーバーを経由して各プラットフォームへ連携する計測手法です。自社サーバーからCookieを発行するため、ITP環境下であっても、Cookieの保存期間を最大7日間(実装構成次第では、Cookieの保持期間を最大400日)まで設定することが可能になります。
サーバーサイドGTMは非常に強力なソリューションですが、自前でGoogle Cloudなどの汎用クラウドを用いて構築・運用するには、専門的なインフラ知識と高い運用保守の負荷が伴います。導入する際は、ホスティングプラットフォームの選択がとても重要になります。アユダンテは、2025年11月にパートナーシップを締結した、sGTM専用ホスティングプラットフォームの「Stape」をラインナップとして準備しています。
参考コラム:アユダンテとStapeがパートナーシップに至った背景と想い

セミナーでは、実際の導入効果(ROI)にも触れており、
- Cookie期間の延命による、Google広告経由のコンバージョン数の改善
- サードパーティー通信制限などの回避による、Googleアナリティクスのユーザー数の回復
- ページ表示速度の改善
について紹介をいたしました。
機械学習推計と1stパーティデータを駆使する、これからのデータ計測
本セミナーを通じて最もお伝えしたかった点は、今後のデータ計測において持つべき大局的な視点です。
ブラウザの技術的制限やプライバシー保護の強化により、「計測できない領域」が存在することはもはや避けられない前提です。今後は「集計段階での機械学習のモデリングを活用した推計」が必要不可欠になります。欠損してしまったコンバージョンやユーザー行動のギャップをそのまま放置するのではなく、Googleアナリティクスの推計機能([GA4]推定キーイベント、[GA4]同意モードの行動モデリングなど)を活用して全体像を補完していく視点が求められます。
しかし、モデリングを使った推計と自動入札の最適化を行うためには、その土台となる「質の高いデータ」が欠かせません。そこで重要になるのが、ユーザーのプライバシーを最優先に考慮し、同意に基づいた適切な計測を行うガバナンス体制です。サードパーティのデータやCookieに依存できなくなった今、企業は自社で責任を持ってユーザーから明確な同意を取得し、価値ある「1st Partyデータ」を能動的に収集しビジネスを最適化していく必要があります。
計測不全の時代は、決してマーケティングの終焉ではありません。データ計測の「質とガバナンス」を見直し、自社で正しくデータを集め、AIを活用していくための基盤を築く絶好の機会と言えるでしょう。



