【Ayudante News 2026年10月号】広告予算を増やしたのに成果が伸びない。その原因、計測の「見えない欠損」かもしれません
2026年11月5日
ライター:小林 奈穂

本コラムはAYUDANTE NEWS 2026年10月号を全編公開でお送りしております。

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皆さん、こんにちは!「Ayudante News」10月号をお届けします。

「昨年より広告予算を増やしたのに、コンバージョン(CV)が思ったほど伸びない」
「昨年対比でCPAがじわじわ上がり、ROASが下がっている」

広告運用の現場で、こうした声をよく耳にします。

景気のせいか、需要が落ちているのか、AIによるゼロクリック検索で検索流入が減っているのか、競合が増えたのか?

思い当たる理由はいくつもあります。ただ、どれも確かめる手段がないので、原因を詰めないまま「しばらく様子を見よう」となっているケースも多いのではないでしょうか。

実はその一部は、市場ではなく「計測」の側で起きているかもしれません。成果が出ていないのではなく、出た成果が数えられていない。そんな「見えない欠損」です。

広告管理画面もGA4のレポート画面も、自社の欠損は教えてくれない

CVが数えられない大きな理由のひとつが、iPhoneなどに備わったプライバシー保護の機能です。広告をクリックしてサイトに来た人が、数日後に申し込んだとします。そのとき『この人は広告から来た』という記録がブラウザから消えていると、そのCVを広告の成果として結びつけることが難しくなります。

やっかいなのは、この欠損がどれだけあるのかが、広告の管理画面にもGoogleアナリティクス4(GA4)にも示されないことです。広告管理画面やGA4には、プライバシー保護による計測の欠損を補う仕組みもあります。しかし、自社で実際にどの程度の情報が失われているのかを、レポート画面だけで正確に把握することは困難です。

「プライバシー保護で、CVが○割欠けている」という一般的な調査を目にすることはあります。ただ、それが自社の広告にも当てはまるのかは、既存のレポートだけでは判断できません。自社の欠損を知るには、欠損の少ない別の「ものさし」を用意して、並べて比べるのが最も確実です。

欠損の少ない「ものさし」があれば、ずれが見える

そのものさしになるのが、アユダンテが2026年6月に発表した「Data Ownership Engine MATSUBA(マツバ)」です。

広告媒体のタグがブラウザに残す記録は、iPhoneでは短い期間で消されることがあります。MATSUBAは、自社サイトのドメインを利用した計測基盤によって、ブラウザによるトラッキング制限の影響を抑える設計です。従来の広告計測では失われやすかったクリック情報を、より長く保持できる場合があります。

同じ人が広告をクリックしてからCVに至るまでを、長い期間でつなげて追えます。そのうえで、CVに至った時点で広告媒体の記録がまだ残っていたかどうかを、ユーザーごとに確かめられます。

つまり、どこで、どれだけ数え漏れているのかを、一般論ではなく自社のデータで確かめられます。

一般的な計測では、iPhoneで記録が消えると、後日のCVが広告とつながりません。MATSUBAは記録が残りやすいため、後日のCVも広告の成果としてつながります。

図1 : 一般的な計測の欠損が生じる仕組みとMATSUBAの計測の仕組み

iPhoneでは、広告経由でサイトに来て24時間を過ぎると記録が消え始める

まずは、欠損がどこで起きているのかを見てみましょう。

原因の一つは、Appleが2017年にSafariへ導入した「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」という機能です。広告が掲載されたサイトから自社サイトへ、というように複数のサイトをまたいで同じ人の行動を追いかける仕組みを制限するために作られました。Appleはプライバシー保護を製品の大きな柱にしています。

iPhoneを使う人のデータには、本人が何も設定しなくても、自動的にこの制限がかかっています。しかも、対策は今も進んでいます。

下のグラフは、MATSUBAを導入しているあるお客様の2026年7〜9月のデータです。広告からサイトに来てからCVに至るまでの時間ごとに、CVに至った時点でGoogle広告の記録が消えていた割合を示しています。

図2 : MATSUBAでわかるCookie欠損の時間別推移

iOSでは、サイトに来てから24時間を過ぎたあたりから、Google広告の記録が急に消え始めています。ITPには、トラッキング目的のURLパラメータを伴うアクセスなど、一定の条件に該当した場合に、JavaScriptで設定されたCookieの保存期間を24時間に制限する仕組みがあります。グラフの変化は、この制限と整合しています。一方、iOS以外の欠損は低い水準にとどまっています。

このため、サイトに来てから時間が経つほど、CVしたときに「広告から来た」という情報が残っていない割合が高くなります。その日のうちに申し込む人に比べて、数日かけて比較・検討する人ほど、広告の成果として数えられにくくなります。

なお、この制限はSafariだけの話ではありません。iPhoneでは、Chromeでも、LINEやInstagram、Googleアプリなどのアプリ内ブラウザでも、同じように影響を受けます。

そして日本は、このiPhoneの比率が特に高い国です。StatCounterの集計では、2026年9月のスマートフォンからのアクセスのうち、iOSの割合は日本で約6割(60.5%)、世界全体では約3割(30.8%)でした。日本は世界と比べて、この影響を受けるiPhoneユーザーの比率が約2倍高いことになります。

拡張コンバージョンを入れていても、差は残る

では、Google広告の管理画面では、実際にどれくらいのCVが数え漏れているのでしょうか。

Google広告にも、欠損を補う仕組みがあります。代表的なのが「拡張コンバージョン」です。CVに至った人のメールアドレスなどをハッシュ化(不可逆の変換)して送り、Googleアカウントと照合することで、記録が消えていても広告の成果として数えられるようにします。さらに、照合できなかった分を推計で補う「モデリング」もあります。拡張コンバージョンについては、すでに導入している広告主も多いでしょう。

それでも、差は残ります。MATSUBAを導入しているお客様のデータを見ると、Google広告の管理画面のCV数に比べて、MATSUBAを導入しているあるお客様データでは、Google広告の管理画面のCV数に比べて、MATSUBAのCV数は約10〜30%多くなっていました。この差には集計方法の違いも含まれますが、補正のあとにも差が残る傾向が確認できます。

(※特定のお客様の事例であり、効果を保証するものではありません)

図3:拡張コンバージョン導入済みキャンペーン Google広告とMATSUBAのCV計測比較

ここで大事なのは、この差が「補ったあとに残った分」だということです。管理画面のCV数には、拡張コンバージョンやモデリングで補った分がすでに含まれています。

Google広告の管理画面に計上されるCVには概ね以下の要素が影響しています。

  1. 本来のCV(実際に広告から生まれた成果)
  2. iPhoneの制限などで、記録が消えて数えられなくなったものがある
  3. 拡張コンバージョンやモデリングで、その一部が戻されている


Google広告の管理画面には、拡張コンバージョンやモデリングによる補完も含まれています。それでも今回の比較では、MATSUBAのCV数のほうが多い結果となりました。この差には、Google広告側で補完しきれなかった計測情報が含まれる可能性があります。

先ほど見たとおり、サイトに来てから時間が経つほど記録は消えやすくなります。住宅、教育、B2Bサービスなど、検討期間の長い商材ほど、この差は大きくなると考えられます。

GA4を併用していても、同じずれは起きる

「管理画面の数字は推計も混ざっているから、GA4でも確かめている」という方も少なくありません。ただし、管理画面とGA4は、そもそもCV(キーイベント)の数え方が違います。(Googleヘルプ「Google広告とアナリティクスのデータの違い)。

さらに、GA4もブラウザに残る記録でユーザーを見分けているため、iPhoneの制限の影響を同じように受けます。

iPhoneでは、GA4の記録も一定期間で消えてしまいます。その後に再訪問すると、同じ人が「新しいユーザー」として数え直されます。その結果、次の2つが同時に起こります。

  • ユーザー数が、実際より多く見えます。
  • 以前の広告クリックとのつながりが切れ、再訪問してCVしても「google / cpc」ではなく、別の流入元のCVとして数えられやすくなります。

MATSUBAを実際に導入したケースを比べてみると、GA4のレポート画面の『google / cpc』のCV(キーイベント)数は約25%少なくなっていました。

この差のうち約6割は、CVをそのセッションの流入元に割り当てるGA4の集計ルールによるもので、残り約4割(全体の約10%)が、GA4が広告クリックとCVを結びつけられなかった計測の欠損です。

主な要因は、ITPによってCookieのIDが振り直されたことなどと考えられます。GA4の数値は集計ルールを踏まえて読み解く必要がある、ということが分かります。 

図4 : GA4とMATSUBAの計測差

欠けたCVで学ぶAIは、配信を絞ってしまう

ここまで見てきた欠損は、「レポートの数字が少し合わない」だけの問題ではありません。今の広告運用では、より長期的な成果に影響します。

現在の広告は、AIによる自動入札を活用する運用が主流です。AIは「どんな人が、どんな状況でCVに至ったか?」を学び、CVに至りやすい場面を予測して入札を強めるなどの処理をしていきます。ところが、iPhoneのユーザーや、じっくり検討してから申し込む人のCVが計測から漏れていると、AIは『これらの人たちはCVにつながりにくい』と学習してしまう可能性があります。

その結果、本来獲得できるはずの成果を逃してしまうことも考えられます。その層への配信が減り、CVも減ります。CVが減れば学習はさらに偏る、という悪循環です。冒頭の「予算を増やしたのに伸びない」の一因は、ここにあるかもしれません。

図5 : GoogleやMetaなどAI駆動広告の好循環を生むMATSUBA

MATSUBAは、計測したCVをAPIで広告媒体へ送り返せます。Google広告をはじめ、Meta広告、LINEヤフーの広告、Microsoft広告、X広告などに対応しています。数え漏れていたCVがAIに届けば、AIが学習に使える成果が増え、本来CVしやすい人たちへの取り戻しやすくなります。

つまり、MATSUBAは欠損を「見つける」だけでなく、「取り戻して、次の配信に活かす」ところまでつながっています。

「なぜ?」を、自分たちで確かめられる時代へ

これまで、欠損やずれの分析には手間も専門知識も必要でした。結局は、広告主も、運用を担う代理店も、媒体やプラットフォームが示す数字をそのまま受け入れざるを得ない場面も多かったのではないでしょうか。

MATSUBAでは、蓄積したデータをChatGPTやClaudeなどのAIツールとつなぐ機能(MCP:Model Context Protocol)の準備を進めています。たとえば「先月、iPhoneでの欠損はどう変わった?」「CPAが上がったキャンペーンで、計測のずれはどのくらい?」と、AIに話しかけるように自社のデータを分析できるようになる予定です。広告だけでなく、SNSの投稿やメールマガジン、アフィリエイトからの流入も、同じように確かめられます。

このAI分析機能については、準備が整い次第お知らせします。

図6 : 開発中のMATSUBA MCP接続ダッシュボードのサンプル

CPAが上がったとき、それが市場の変化なのか、計測のずれなのか。これまでは確かめる手段がなく、原因が見えないなかで試行錯誤するしかなかったかもしれません。

欠損の少ない計測を基準に置けば、どこでどれだけずれているのかが、自社のデータで見えてきます。そのデータを媒体に返せば、自動入札は、より漏れの少ないCVから学び直せます。そして近い将来には、その分析そのものを、AIに問いかけながら自分たちで進められるようになる見込みです。

広告運用にAIが欠かせない時代だからこそ、AIに渡すデータと、それを確かめる目は、自分たちの手元に置いておきたいものです。データの持ち主は、広告媒体でも計測ツールの提供元でもなく、自社です。MATSUBAが「Data Ownership Engine」を名乗るのは、そのためです。

出典:StatCounter(日本)、StatCounter(世界)、MMD研究所

編集後記

10月号は、メール配信サービス「ブラストメール」のサービス停止に伴い、配信を延期しておりました。そのため、今回は特別に全編公開版としてお届けいたしました。

編集後記などは、後日配信予定のニュースレター10月号でお楽しみください!

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