2026年7月に発売された『ネット広告運用”打ち手”大全 第2版』。発売から約2ヶ月のタイミングで、著者の寳・釜・ダリオの3人が集まり、それぞれの担当パートに込めた考えと、AI時代の広告運用のこれからを語り合いました。
- 「2年後も書店にある本」を目指して
- 「プラットフォームに乗る」から「自社を起点にする」へ
- AI時代に、あらためて問われる「インプットの質」
- キーワードからシグナルへ、変わる広告設計と変わらない原則
- 広告の成果を、LP・商品・事業へ戻していく
- AIに渡すべき「価値あるデータ・正しい目的・ガードレール」
- プラットフォームの課題と、広告のプロとしての姿勢
「2年後も書店にある本」を目指して

本が発売されてから、書店に行きました?

愛媛ではけっこう大きい書店に行ったんですけど、なかったんですよね。前に書店さんに聞いたら「入荷しない予定です」ってw

え、そうなんですか。デフォルトでみんな仕入れしているのかなと思っていました。名古屋では、大きな書店だけでなく、小さめの書店でも見かけましたよ。豊田市にも。うちの近くのイオンの小さい書店にもあったよ。

広告の本だから、地方の書店には普通には並ばないということかもしれないですね。発売から2ヶ月が経とうとしていますけど、反響を見ながら感じている手応えはありますか?

知り合いの方に「良かった」とコメントいただけるのはとても嬉しいですね。追加で購入いただいた、という話もあって。

好意的な、温かいコメントをいただけることが多くて嬉しいですね。自分は都内の書店をいくつか回っているんですけど、大きく取り上げてくださっていたり、「打ち手大全シリーズ」として展開してくださっている書店さんもあって、ありがたいですし、感慨深いものがあります。ダリオさんは?

自分が書いた本を書店で見るのはかなりかっこいい。嬉しいですよね。ただ、2年後も書店にまだあるともっと嬉しい。

うん、確かに。

今だけのコンテンツじゃなくて、少し長期で使えるコンテンツのつもりで書いたので。数年後の運用者にも役に立つ本であってくれたら嬉しいなと思います。

ダリオさんはLinkedInで海外の方とやり取りされていますけど、そちらでは反応ありました?

「おめでとう」ぐらいですけど、「読みたい」と言ってくれた人は少しいますね。コンテンツとしては日本だけのものではないと思うので、海外でも通用すると思います。

LINEヤフーのことも触れていますけど、考え方も含めて書いているので、LINEヤフーに限らず利用できますよ。

今度のボローニャのイベントには持っていくんですか?
ADworld Experience 2026
2026年10月15日・16日、イタリア ボローニャ/オンライン配信で開催されるヨーロッパ最大級のPPC専門カンファレンス。
adworldexperience.it

持っていきますよ。ただ、みんな読めない。僕の名前さえカタカナなので読めない。「ここ、私の名前ですよ」と言わなきゃいけない。10月のイベントでは本のコンテンツに基づいて話をする機会もあるので、そこでも話そうかなと思います。
「プラットフォームに乗る」から「自社を起点にする」へ

皆さんに聞いてみたいんですけど、それぞれ本を書くときに、主にこれに気をつけて書いたというテーマはありますか? 特に寳さん。広告以外にも色々話しているじゃないですか。

いちばん大きいのは、2018年の前著で「GoogleとFacebookにフォーカスせよ」と伝えていたことです。この2社がインターネット広告を伸ばしていて、データが溜まり、機械学習で精度が上がるから効果も高くなる。だからこの2社にフォーカスしよう、プラットフォームを生かしていこうというメッセージを伝えていたんですよね。
でも8年経った現在の地点で新しく本を書くと考えたときに、プラットフォームありきじゃなくて、広告の設計以前に、自分たちの内部リソースにどんなものがあるのかを棚卸しして、組み合わせて活用する。それ抜きには広告の活用はありえないんじゃないかと考えたんです。特にこの本は入門書ではなく、実際に広告を何年か運用している人が読む本なので、その前提は必ず入れなきゃいけないと。それが1章になっています。
先に7章の話もしてしまうと、プラットフォームの最適な設計・設定は重要だけれども、あくまでも広告主である事業会社が、広告の結果を自分たちの成長に生かしていくことが大事で。その視点がないと、広告の成果は上がったけれど、本当に事業の成長につながるのか、つなげるためにはどうしたらいいか、と自分たちに戻していくベクトルが曖昧になる。広告のコンバージョンは伸びているのに事業成長にはつながっていない、という悩みもよく聞きます。
だから7章では「広告のデータを自分たちの資産に変える」という視点の打ち手を書かせていただきました。

広告の結果も踏まえて、商品・サービスをもっと良くしていこうよ、という感じですね。

そうです。機械学習は、設計・設定されたデータに基づいて改善していきます。その学習は、あくまで自分たちが管理画面やランディングページへの入力や設計に対して改善し続けます。でもその手前には商品やサービスがあり、変わっていくユーザーがいる。それを広告以外のことにも活かすことができて、初めて広告を使えたことになると考えたので。自分のパートでは、広告以前の前提の部分と、広告の結果をフィードバックとして組織に戻していく視点を持って書いています。

確かに、重要ですね。広告の部分しか見ない、になりがちなので。広告は全体の一部でしかない。サービス全体から広告を考えることですね。

自分自身は立場上、広告運用をゴリゴリやる現場からは一歩引いています。実務上の具体の話は釜さんとダリオさんがフォーカスして担当してくださっているからこそ、1章の前提の部分と、7章の事業成長につなぐ役割を担当できたと考えています。
AI時代に、あらためて問われる「インプットの質」

これはAIの話にも関係すると思っていて。入力したものに対して広告のシステムが動いていくので、その入力の質を上げるという視点が、この広告システムに参加していくための最初のポイントになるわけです。
今はAIでLPやクリエイティブアセットを作れたり、修正・編集もできるようになっていると思うんですけど、管理画面で設定したものをちょっと直すぐらいだと、大した差がつかない。みんな条件は一緒だから、同じようなものしかできない。もう一歩遡って、そもそも自分たちが入力するものが際立ったものになっているのかを確かめる意味で、内部リソースを見直すことが重要だと思っています。
これを具体的な広告実務につなげる話は、釜さんが検索広告のクリエイティブアセットのところで書かれています。「アセットの充実を目的化するのはNG」という。

そうですね。

単に情報を埋めればいいのではなくて、価格や実績、メリット、他社との違いといった情報の軸を増やすことで、初めて意味のある組み合わせが生まれる、と書かれていたかと。まさに、価値あるインプットの質を意識している。

検索広告は、やれること・やる内容は変わったんですけど、全体の考え方とやるべきことは、実は一番変わっていないのかもしれないと思っていて。アセットの充実を目的にするのがNGと書きましたけど、結局は、言うべきことをきちんと伝えることが重要で、それができる設計・設定を行うべきなんです。推奨としては「アセットをたくさん入れましょう」という話もありますけど、そういうものに振り回されず、自社の商品・サービスを実直に伝えていくことが大事だと思っています。

「とにかく入れましょう」という圧が、システムとして動いていますからね。

推奨はあくまで推奨ですし、やったからといって必ずしも効果が上がるわけではないので。それをやることの意味をきちんと理解して、適切にメッセージを届けるにはどうすればいいのか、どういうユーザーに広告を見てもらい、クリックしてもらいたいのかを考えて設計・設定していかないと、おかしなことになっていくと思います。
今回、サブタイトルに「AIに意思を宿す」とありますけど、特に検索広告に関しては、ケースによってはAIを使わなくてもいいと僕は思っていて。適切なユーザーに適切にアプローチする設計をちゃんと作っておくことができれば、AIを使ったほうがワークするケースもあれば、使わないほうがワークするケースもあるとは思っています。

やみくもにバリエーションをたくさん出して試していくやり方よりは、アセットの1つ1つを独自性のある、際立ったものにするところに注力する。そういう意味では、人間が磨くところで差がついていくのだと思います。
キーワードからシグナルへ、変わる広告設計と変わらない原則

少し俯瞰してみると、検索連動型広告は、ユーザーが能動的に検索した瞬間に企業が広告を出せて、その意図に応えられるページに訪れていただくことができる。お互いにとって価値のある「橋がかかる」という意味で、マーケティングとしてある種の理想的な状態を作れる広告だったのではないかと思っています。ベテランのプレイヤーから、この仕組みに惚れ込んでやってきたという熱を感じることも多いです。このベースがあるから、さっき釜さんがおっしゃった「やるべきことはそこまで変わらない」、つまり適切な人を見極めて、適切に届ける、という重要性が残っているということなのかなと。
ただ一方でインテントマッチが広まったり、AI Max for Searchが出てきたりと、「ターゲティング」というよりも「シグナル」という新しい方向に変わっていくとき、どうなっていくんだろう。最近コラムも書かれていましたけど、釜さんはどう見ていますか?

検索キーワードがターゲティングとして機能するのはもちろん残るものの、よりシグナル化していくようにはなっていくんじゃないかと思っています。P-MAXの検索テーマが近いものだと思うんですけど、ユーザーの方向性を示してあげる。ペルソナ像をカチッと決めて「山田さんに向けて広告を出したい」というものから、「山田さんのような人物が、この商品・サービスに適切ですよ」というデータを送ってあげる。より自由度が上がった形で、シグナル化していくと思います。
今、ChatGPTの広告なども出てきて、推定した会話の文章にマッチしています。あれもシグナルだと思いますけど、同じように今後は検索広告も、AIによる検索、AIによる会話が進んでいくので、検索キーワードで必ずしもかっちり当てる必要性は薄くなっていくだろうと思います。ただ、ユーザーがどういう検索語句を使うかを考えていた部分は残るし、それに加えて、どういう会話、どういう思考の流れで広告に触れるべきなのかは、今後考えていかないといけないポイントだろうなと。ターゲティングからシグナルになっていくので、ユーザーがどういう行動を取ったときに広告に触れてほしいか。そこは考えないといけないと思います。
僕が書いたディスプレイ、P-MAXも、考え方は全体的に近くて。ディスプレイ広告のところでは、今回あまりクリエイティブの話は書かなかったんですけど(クリエイティブは『クリエイティブ打ち手大全』を見てもらったほうがいいと思ったので)、クリエイティブというよりは、プラットフォームの特徴を捉える、プレースメント、広告の枠をきちんと理解した上で配信しよう、ということを書かせてもらっています。
最近はMetaやデマンドジェネレーションが主流になってきて、プレースメントがある程度決まっている状態なので、あまり考えなくてもよくなった部分はあるものの、どのタイミングでユーザーに広告を見てもらうかは、やっぱり重要だと思っていて。プレースメントを選ぶというのは、いつ広告に触れるか、ということなので。どういうタイミングでユーザーが広告に触れれば、次のステップ、クリックしてコンバージョンにつながるのかは、考えないといけない。
GDN自体は質の悪い面があって、敬遠されていった背景もあると思うんですけど、いい面ももちろんたくさんあった。ただ、面を捉えていくのは非常に大変で、そこに力を入れられる広告運用者が少なかったところも、GDNが廃れていった背景にはあるのかなと思っています。Metaもデマンドジェネレーションも、Facebook、Instagram、Google、YouTubeという強いプラットフォームに広告が出せるからうまくいきやすいのであって、今後、拡大にあたって他のところに出す選択になったとき、プレースメントの特徴を理解せずに進めてしまうと、次の拡大にはつなげづらくなってしまうため苦しくなってしまいますね。
シグナルを、僕は「方向性を示すもの」として捉えています。プレースメントは、ユーザーが「いつ」広告に触れるのかを示すために考えないといけない重要な要素だと思います。
広告の成果を、LP・商品・事業へ戻していく

ディスプレイのところでは、ランディングページについても触れていますよね。自分も7章の終わりのほう、「広告のデータを事業の改善につなげよう」と書いている章で、広告管理画面の外に出る改善の最初のステップはランディングページだと書いています。ランディングページは広告の観点からでも作りやすい受け皿ですよね。その後、例えばプロダクトそのものや、ページ内のプランやオファーの変更にも反映していければ、広告を活用した改善がより深まっていく。釜さんの話でも、LPの改善は広告だけの改善にとどめないもの、というふうに読めるなと感じていました。

広告の改善をするにあたって、ランディングページは非常に重要で。広告運用業務の一環では、ランディングページに触れられないケースもちょこちょこありますけど。今、ユーザーにうまくアプローチすることは、AIを使ったり、ターゲティング機能が優秀なので、ある程度できるようになってきていて、クリエイティブに注力しているケースもあると思うんですけど、ユーザー体験を上げるにはクリエイティブだけだと不十分で、ランディングページもちゃんと改善していく必要がやっぱりありまして。ランディングページが変わればユーザー体験も変わるので、効果に反映されるのは非常に多いですし、今後重要になってくるポイントだと思います。
それから今後は、よりランディングページの情報が広告に反映されてくるようにもなります。ターゲティングやユーザーとのマッチングにもランディングページの情報が使われていますし、クリエイティブを生成するにも、ランディングページの情報を踏まえたものが生成されていく。シグナル的な意味でも、ランディングページは今後さらに重要なものに変わってくると思っています。
ランディングページでコンバージョン率が1.2倍になりました、となると、これまでCPAが高くてできなかったことにチャレンジしていこうとか、新しいキーワードにも広げていきましょう、違うユーザーに出していこう、という選択肢もできたりする。どういうユーザーに当てるかという観点からも、ランディングページは非常に大事になっていくかなと思います。
AIに渡すべき「価値あるデータ・正しい目的・ガードレール」

P-MAXのところも、まさに今話してきたようなことを書かせてもらっています。P-MAXもやっぱりシグナルが重要になってくるので、検索テーマやオーディエンスといった管理画面上で設定するものだけではなくて、ランディングページの情報も含めて。どういうユーザーに届けていくかと考えたときには、広告やランディングページがどういう表現であるべきか、どういう文章・画像・動画であるべきかにも紐づいてくる。適切なユーザーに適切にアプローチするために、きちんとした道筋をたどっていきましょう、という話かもしれないですね。
そこから、ダリオさんが書いてくださったステップにつながっていくと思うんですけど、ダリオさんが書かれるなかで考慮していたテーマはありますか?

私たちがターゲティングなどで設定できるものが、いつまで自動・AIのものより強いかは分からない。レコメンドは私たちよりユーザーのことをたくさん知っているし、ユーザーと商品の紐付けはどんどん強くなっていると思う。キーワードも、今はインテントマッチになって、ある意味まだ少しだけ意味があるけれど、P-MAXを見ると「もうキーワードはいらないんじゃないか」というところも、少しずつ出るかもしれません。場合によっては媒体側から「キーワードは設定してくれなくてもいい」という動きも出てくるかもしれない。
ただ、そのなかで、媒体はいくらAIが強くても、中途半端なデータをもらったら、中途半端な結果になるんですね。だから、AIや自動化がメインの広告運用になっても、どうやってそのAIに、正しい、メリットのあるデータを共有するのか。これが1つ目の大きなテーマです。重要なデータを渡す、汚いデータを渡さない、データを漏らさず正しく渡す。
2つ目のテーマは逆の方向です。AIに任せましょう、自動化の力を使いましょうとなっても、自動化は私たちの本当の目的を理解してくれないと、間違ったことを最適化する。よくあるんですね、価値のないコンバージョンだけ増やしたりとか。少し難しい、考えなきゃいけないのは、どうやって心のないAIの自動システムに、ビジネスにとって重要な結果を教えて、どうやってその結果に向けて動かすのか。これは割に新しい要素です。今までは運用者がキーワード選定などで、正しい方法にプラットフォームを導いていた。これからはもう少し明確に、シグナル――コンバージョンポイントや価値を使って、どのような結果がこのビジネスに本当に重要なのかを教えておかなきゃいけない。じゃないと、AIは相変わらず、いちばんたどり着きやすい目的を最適化して増やしていく。普通、いちばんたどり着きやすいものは安いけれど、代わりに価値が少ないので。
3つ目の要素は、ガードレールです。AIは色々使ってもいいけれど、危険なところもたくさんあります。AIは勝手に勘違いもするし、妥当なものも出てくるけど、意味のないものも出てくる。P-MAXも、そのまま配信させたら指名キーワードばかり取りに行くとか、アプリ面などで発生する、低単価のスパム的なコンバージョンを取りに行ってしまうとか。Metaも素晴らしい、頭のいいシステムだけど、変更が早くて、事故る可能性も本当にたくさんある。自動生成で望ましくないものになってしまったクリエイティブ、質の低いプレースメント、望ましくないユーザーへの表示。任せれば任せるほど、予想外のリスクがどんどん増えている。
だから、「AIに任せましょう、結果が良くなるから」だけではなくて、AIがうまく動くための環境を理解させるデータ・情報と、AIを正しい方向に導くための目的、つまり広告だとコンバージョンポイント、企業に意外なダメージが起きないためのガードレール。この3つを考えながら、P-MAX広告もMeta広告も作っていかなきゃいけない。テーマとしては、だいたいこれですね。

この話は、自分が書いたところにもつながっていて。前著で「ユニコーン」の話を書いていたんですよ。2018年当時は、広告文によって表示回数が大きく伸びて成果につながるものも出てくるから、「広告文に注力しましょう」という話を書いていた。でもこの8年で、ユニコーン的に突出して伸びるものは、むしろ危ないというか、実際の成果につながらないことがけっこう多くて、至るところに罠がある。本にも書きましたけど、「誤登録問題」――全く関係のない質の低い面で、意図のない間違ったコンバージョンが複数発生して、そこに大量の配信がなされて、お客様のインサイドセールスの方からお𠮟りを受けた。媒体のなかだけで考えていると必ず失敗する、危ないんだ、というのを身をもって知ったところがあります。
今ダリオさんがおっしゃったように、AIにも正しく伝えていくことをやらなきゃいけない、というのは本当にその通りだなと思います。自分からの視点でいうと、そもそも扱う人間――広告運用の担当者が、商品に対して、ビジネスに対する深い理解がないと、その設定・設計自体ができない、ということを書いています。

その通りですね。

今年のGoogle Marketing Liveで、GoogleのAIに自然言語で自社のブランドガイドラインなどを伝えられるようになると発表がありましたね(=AI Briefのこと)。この本には入らなかったですけど。

入っていないですね、まだ。少しずつ出てきているんです、アカウントによって。大きく変わるのは、生成AIが文章を理解するのが上手なので、P-MAXでも、実はMeta広告でも、テストとして少しずつできているんですね。ただのキーワードとして「除外」するんじゃなくて、文章を書いて、AIにガードレールを作ってあげる。

P-MAXは最初出てきたときは本当にブラックボックスでしたが、いろんなフィードバックを受けながら見えるようになっている。今回は自然言語でガイドラインを渡せるようになって、確かにこれは新しいアップデートだなと思いました。

そうですね。ただ、私はそこに少し怖いところがあって。結局、生成AIは決定論的(Deterministic)じゃなくて、確率論的(Stochastic)な要素があるからなんですね。普通は理解できるけど、いつの間にか間違っているところも出てしまう。導くほう(インプット)はオッケーだと思う。これからはキーワードじゃなくて、どんなユーザーをターゲットしたいかを文章で書くことになってくるかもしれない。Metaは実際にそういうテストもあるんですよ。オーディエンスセグメントを選ぶんじゃなくて、ユーザーの説明を書く。導くのは、少し間違っていてもいい。でも守るほう、ガードレールとしては少し怖い。AIはそこまで完璧じゃないので。ただ、これからガードレールのほうもきちんと進化していくはずで、リスクを避けるために、かなり厳しい設定をしていくと思います。今までのような機械的なオン・オフや細かい設定じゃなくて、これからはLLMベースの配信や自動化が強いので、文章を書いて機械にものを教えることが、少しずつ増えてくると思います。

シグナルや方向性を与えると言っても、実際の広告のご支援のなかで、ブランドとして許容できない、おかしなものが出てしまうリスクがあるわけじゃないですか。そのバランスのジャッジは、なかなか難しいですよね。だからと言って、全部をオフにするのはやめよう、という話をダリオさんは書かれていますよね。

Metaの広告設定は、今、この数年間で一番難しい状況になっています。管理画面で1つの広告を設定するのに、15分以上かかると思うんですね。いろんな展開をしようとしているから。プラットフォームには、もちろん自分たちの売上を上げたい要素もあるけれど、成果を良くするための要素も多いです。成果が出ないと広告主は離れますから。ただ、プラットフォームを信用できないからといってすべてオフにしてしまうと、本当に大きな機会損失が出てしまう。手間はかかるけど、設定オプション・配信オプションのどこにオン・オフがあるかを、クライアントのコンテンツとリスクを考えて、1個ずつ精読して判断すべきだと思います。全部オンにするのも良くないけれど、リスクが少しあるから念のため全部止めます、というガチガチの制限配信では、これからのやり方だと、満足できる成果は取りづらくなってくる。本当に、Meta広告の設定は大変ですね。
プラットフォームの課題と、広告のプロとしての姿勢

ちょっとネガティブな話をしてしまうかもしれないんだけど。インターネット広告が本当に広告の王道になって、人々や社会に対する影響も大きくなっているなかで、Meta広告は昨今、「詐欺広告」のことがあったり、リリースがあまり透明に行われなかったり、デフォルトでよろしくない箇所でチェックボックスが付いていたり。
だから、慎重になる視点もあるということは、考えておかなきゃいけないと思うんですよね。広告を扱う人間としては、お客様のパフォーマンスを上げる上で欠かせない存在としてプラットフォームがありつつも、広告主の広告が出るプラットフォームに不確かなところがあるというのは、常に認識しておかないといけない。

Metaはやっぱり、ゲーム性がより強い部分を感じるなと思っていて。コンバージョンの数を増やすという意味で言うと、めちゃくちゃ誠実なんですけど、それゆえに、他を置き去りにしているようには思ってしまいます。

私は、Metaは「成果を取るためなら何でもやる」みたいな。ただ、それは広告主の成果を上げるためではあると思う。僕はずっとMetaを使っているけど、事故が多い、不具合が多い。でも、プラットフォームの動きは、成果を上げるためにはあまりぶれない。自分たちの粗利を増やすためだけに何かを見過ごしているわけではないけれど、事故が起きる。
一方でGoogleについても、最近の動向を見ていると、広告主の成果だけではなく、プラットフォーム側の事業上の判断も当然あるんだろうなと感じることがあります。たとえば広告ラベルの変更です。広告を1つずつ明確に区別するというより、全体として広告と自然検索の境界が以前より分かりにくい見せ方になった。

自然検索に紛れ込ませるようなことをしていましたね。

あとは、目標CPAの仕組みの変更ですね。以前は、予算が限られていると成果は不安定になりやすい一方で、比較的安いコンバージョンが取れることもありました。最近は、予算が十分でない場合でも目標コンバージョン単価に近づける方向で調整されるため、ケースによっては以前よりCPAが高くなることもあると感じています。こうした変化については、英語圏でもさまざまな議論がありますね。

だから自分は、Metaが悪くてGoogleが良いというよりは、どちらのプラットフォームにもそうした側面があると思っています。これも2018年の反省につながる話です。広告を扱うプロフェッショナルとして、マイナスの部分もあるということを考えた上で、広告主の事業を伸ばしていくようにしないとダメだと思うんですよね。

各プラットフォームの特徴、いいところもそうだけど、プロフェッショナルだからこそ、悪いところ、罠、リスクを認識した上で、クライアントと一緒にやらなきゃいけない。案件によっては、成果がいいかもしれないけれど、使わないほうがいい媒体もある。

自分自身、経験が浅いときには、Googleの新しいアップデートに興奮して、自分の頭のなかまで一緒にアップデートされることを面白く感じていたことがありました。でも、プロとして仕事をするなかで、経験を重ねると、いい面も悪い面も知りつつ冷静に捉えながら、あくまでも広告を活用して、お客様の事業の成果を作っていく目線に立つことを大事にするようになった、というところが自分にはありました。

今回のサブコピーが「AIに意思を宿す」で、AIを推させてもらっていますけど、AIを使っていくなかで、AIを暴れさせない。ガードレールをきちんと設計しておかないと、どこかで大事故につながる可能性はありますよね。そういうところも踏まえて、AIを使って裏道を抜けるんじゃなくて、AIを使って「最速で本来の道を行く」というのが、良い道筋なんじゃないかと思いますね。裏道を通って一瞬売上が上がることもあるかもしれないですけど、絶対どこかでおかしなことになるので。









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