2014年にユニバーサルアナリティクスがローンチしてからGoogle アナリティクス の進化は目を見張るものがあります。
ユニバーサルアナリティクスがローンチし、そしてGoogle アナリティクス プレミアム(現:Google アナリティクス 360)サービスが開始されてからGoogle社は「Google アナリティクス は“アクセス解析ツール“ではありません。」とメッセージしています。
では何なのか? 曰く
「Google アナリティクス は“デジタルマーケティングプラットフォーム”である」と。
「そんなこと急に言われても、日々使っているGoogle アナリティクス に新しい機能やメニューが増えていくのはわかるけど、見ているデータはいつもと変わりないし、レポート画面もあまり変わらないんですけど。サイトのアクセス解析だってこれまでと変わらずできますけど」
という方も多いかもしれません。
今回は「デジタルマーケティングプラットフォーム」としてのGoogle アナリティクス とは何なのか? アクセス解析ツールとしてのGoogle アナリティクス とは何が変わったのか? それによって起こるデータ活用の広がりについて具体的にお話ししてみたいと思います。
- Google アナリティクス は“統合”と“連携“によってプラットフォーム化する。
- 「ユーザーデータの統合」と「施策との連携」
- アクションに活かすための「ユーザーデータと施策の連携」
- 最後に必要な「最も重要な統合と連携」とは。
- 今回の処方箋
Google アナリティクス は“統合”と“連携“によってプラットフォーム化する。
Google アナリティクス の近年の進化の節目として先に述べた通りユニバーサルアナリティクスへのバージョンアップとGoogle アナリティクス プレミアム(以後、Google アナリティクス 360)のサービス開始があります。
かと言ってGoogle アナリティクス が従来の姿形を一気に変えてしまったり、全く違う機能のツールになってしまったわけでは無いということはご存知の通りです。
むしろ、「UIやデザインは多少変わったけど基本的に見れるデータはあまり変わっていない」というのが実感ではないでしょうか。
実はその通りで、ユニバーサルアナリティクスになってもGoogle アナリティクス 360を契約して使い始めても“Google アナリティクス 自体”は何も姿形を変えてくれませんし、もちろん急に新しい何かをしてくれる?わけでもありません。
「だって、Google アナリティクス はもはやアクセス解析ツールじゃなくてデジタルマーケティングプラットフォームだって言ったじゃないですか!」確かにそうなんですが、それはツールを使う“あなた次第”ということなんです。これまでと同じ目的で同じように使っているだけでは、たとえGoogle アナリティクス 360にしたところでいつまでもたっても“アクセス解析ツール”のままなんです。
では、どうすれば“デジタルマーケティングプラットフォーム”としてGoogle アナリティクス を使うことができるのか? ということになるのですが、そのキーワードになるのが“統合”と“連携”です。
Google アナリティクス はそもそも“アクセス解析ツール”ですが、“統合”と“連携”をすることで初めて“デジタルマーケティングプラットフォームとして”使いこなす基盤ができると言えます。ではそもそも、デジタルマーケティングプラットフォームって何? という疑問もあるかと思いますが私の理解としては「企業の(主にデジタル)マーケティング活動に、消費者であるユーザーのデータや関連する様々なデータを活用するための基盤(ツールやシステムなどのしくみ)」という風に考えています。
少し難しい言い方になってしまったかもしれませんが、わかりやすく言えば
- アクセス解析ツールはサイト改善目的:
- ツールで計測した訪問ユーザーのデータを解析してサイトをよりよくするための改善に使う。
- デジタルマーケティングプラットフォームはマーケティング活動全体の最適化目的:
- サイトに訪問したユーザーデータだけではなく、広告をみたりクリックしたりした人のデータや、既にサービスや商品を利用したことのある顧客のデータをすべて利用して、企業のマーケティング活動全体を最適化していくために使う。
と言うことができます。
そして、前者は主にサイト制作や運営をしている“ウェブ担当者”が行いますが、後者はウェブ担当者を始め、広告担当者やCRM施策担当者、そしてシステム部門の担当者も含め、マーケティングに関係する人達と組織すべてが関係してくる領域で活用されます。
さらに、企業のマーケティング活動は多くの企業の経営にとっても重要課題であるため今や“経営層やマネジメント層”もこのデータ活用のプラットフォームを利用するようになってきています。
このように、現場の担当者から経営層にいたるまで、日々の皆さんの課題を解決するための基盤、もしくはこれまで課題としては見えていなかった新しい取り組み課題にチャレンジできるようになる、そんな仕組みなんです。
「ユーザーデータの統合」と「施策との連携」
統合と連携。実はデジタルマーケティング界隈ではよくつかわれるワードかと思いますが、今回の文脈ではどのような意味なのかもう少し具体的に見ていきましょう。
まず、統合とは“ユーザーデータ”の統合です。Google アナリティクス のユーザーデータと言えば「1st Party cookie」を“ユーザー数”の集計単位として計測/集計していることはご存知の通りですが、ということは当然ブラウザ単位の集計になっていることになります。本来のユーザー数ではなくブラウザ単位をユーザー数として集計していることは、少なくともアクセス解析に携わっている方やツールを見ている方にとっては必要最低限の基礎知識なのであまり疑問は持たず(仕組みとして仕方ない……と理解している)に日々利用しているかと思います。
私がアクセス解析ツールを初めて利用した2003年頃はデジタルデバイスとしてはPCが中心で、ユーザー数集計が“PCのブラウザ単位”だったとしてもせいぜい“会社のPCと自宅のPC(しかも自宅PCは家族と共用)”で一人2台くらいかな? と思っておけば十分でした。
現在はスマホの普及も進み、今までPCで行っていた様々な事(メディア閲覧やコミュニケーション、消費行動など)が、スマホやタブレットなどのデバイスでも行われるようになり“一人で複数デバイス”を使いこなす(使い分ける?)のが当たり前の時代になりました。
アメリカでは「一人当たりの平均保有デバイス数は4台」(※ニールセン「デジタル消費者の今」JP the-digital-consumer-report-feb-2014より)と言われており、今後はさらにウェアラブルデバイスなどの普及も考えると、マーケティング施策とその分析対象として捉えておくべきデバイス数は、さらに増えていくことが予想されます。
そうした状況の中で、ブラウザ単位のユーザー集計によるデータでは、マーケティング施策とその分析に使うには、少々都合が悪い場合も多くなってきているのではないか? という課題が出てきています(と、少なくとも私は思っています)。
そこで、1つ目の統合すべきユーザーデータはデバイス別に集計されたユーザーデータです。Google アナリティクス には「UserID機能」があり、サイトのログインID(に相当するものでも良い)をGoogle アナリティクス に渡すことでクロスデバイス集計(つまりデバイス別のCookieをログインIDに名寄せ集計してくれる)したデータをレポートしてくれるメニュー(参照:GoogleアナリティクスにおけるUser IDビューの作成方法と注意点)が用意されています。
ただし、機能の仕様上すべての訪問データを対象にしているわけではありませんので、分析の目的に沿って利用されることをお勧めします。
※UserID機能については前回の記事「もっともっとモバイルデータを見よう!」も参照ください。
統合のために考えられるもう一つの方法としては、サイトのログインID(に相当するもので良い)をGoogle アナリティクス のカスタムディメンションに渡すことによってログインIDをユーザー集計の単位(キーディメンション)とするという方法です。
この場合は、集計レポートはカスタムで作成する必要がありますがUserID機能のような集計対象やレポートデータの活用目的に制約を受けないので使い勝手が良い方法と言えます。
さて、「1つ目……」ということは2つ目もあります。
先にユーザーの利用デバイスが増えているという話をし、デバイス単位のユーザーデータを統合すべきという話をしましたが、実は増えているのはユーザーのデバイスだけではありません。
それは「企業側のサイト(オウンドメディア)」です。
現在はほとんどの企業がウェブサイトを持っています。目的や機能は様々で、企業HP、製品サイト、サポートサイト、採用サイト、キャンペーンサイト、ECサイト、(blogなどの)コミュニケーションサイト、etc……。企業規模によっては複数の事業を展開しそれぞれの事業に個別に各目的にそったサイトを運営している企業も多いかと思います。
Google アナリティクス は無料版の普及によってこれら多くの企業のウェブサイトに導入され活用されていますが、導入されるのはほとんどの場合「ウェブサイトごと」となります。つまり、例えば5つのサイトを運営していたとすれば5つのGoogle アナリティクス のプロパティを持っている、ということになります。
私がコンサルティングさせていただいている多くの企業様の中には、優に100を超える数のサイトを持ち、すべてにGoogle アナリティクス を導入されて日々データの活用をされている企業様も少なくありません。いわゆる“オウンドメディア”が企業のマーケティング活動上重要な機能を果たしていくことがより重要視されていくことを考えると、このような企業はますます増えていくのではないかと思います。
このような状況の中で、個々のサイトで計測されている“ユーザー”は、企業全体からみるとどのように存在しているでしょうか。
例えば、複数の事業(ここでは5つのオンラインビジネスとします)を展開している企業(もしくは企業グループ)があるとします。5つの事業サイトではGoogle アナリティクス でユーザーデータを計測しています。
消費者Aさんはこの企業のすべての事業サービスの利用者であり5つのサイトすべてに訪問をしています。
シンプルな例ですが、このような場合に、企業全体からみればGoogle アナリティクス の中ではAさん別々のユーザーとして集計されていることになります(もちろんデータ上Aさんという名前はついていませんし、ここではログインIDも事業によってバラバラとします)。5つの事業のサービスをすべてご利用いただいている”Aさんという一人の方”、という認識はできないわけです。
これまでは個々の事業にとってその事業の中で有益なデータ活用が行われていればそれで良かったかもしれません。しかし、“デジタルマーケティングプラットフォーム”として企業全体のマーケティング活用や経営の意思決定にまで活用していくという視点で言えば「非常にモッタイナイ……」状態であると言わざるを得ません。
というわけで、2つ目の統合すべきユーザーデータはサイト(プロパティ)間のユーザーデータです。
これにはいくつかの方法とステップが必要ではありますが(導入や設定の手間を度外視して言えば)、ユーザーデータを統合すべき複数のプロパティに、新たに共通のGoogle アナリティクス の計測タグを貼り、「統合計測プロパティ」を作るという方法があります。
ただ、Google アナリティクス は1st Party Cookie(Cookieは各サイトのドメインごとに発行される)による計測を行っているためこれだけでは「Aさんを1人のユーザーとして集計する」ことにはまだ至らないわけですが、「クロスドメイン計測」を活用したり、前述の「ログインID」の仕組みを利用した方法を検討するなど、状況に合わせた方法を検討する必要があります。
もう一つの方法はGoogle アナリティクス の「統合型レポート(Roll-upReporting)」を利用する方法です。(この機能はGoogle アナリティクス 360ご契約企業様にのみ提供されている機能ですが、本記事の本題であるデジタルマーケティングプラットフォームとして活用するためには非常に有効な機能です) この機能の大きな特徴の1つは、前述のように新たに計測タグを導入しなくても複数プロパティの統合を(Google アナリティクス の設定画面上で)行えるという点にあります。
ただし、この方法によっても前述の方法と同様に、ユーザーデータを統合集計するためにはクロスドメイン計測やログインIDの利用などを検討する必要があります。
これによる最大のメリットは、事業間や企業(もしくは企業グループ)全体でのユーザーデータ分析の環境が整うという事と、(個別事業の範囲だけでなく)企業やグループ全体でのマーケティング施策へのユーザーデータの横断活用が可能になるという事です。
企業の中で多くのサイトを運営してる場合でも、個々のサイトで計測している「ユーザーデータ」はマーケティング活動にとっては貴重な「資産」という事ができると思います。
サイト単位でしか活用されていない(もしくは活用もされずに眠っている?)ユーザーデータという資産を企業全体として有効活用できていないという「モッタイナイ……」状況はこれからのマーケティング活動上の大きな課題として取り組んでいくべきと考えています。
2つ目があるという事は……、まさかの「3つ目」もあります。
デジタルマーケティングプラットフォームとしてとして企業全体のマーケティング活動の最適化をしていくには絶対に欠かせない「ユーザーデータ」があります。
それは、各事業、企業が保有している「顧客データ」です。このデータは企業にとっては大事なお客様データですので当然すでに様々な分析やCRM施策などへの活用は行っているという事になるかと思いますし、前述のように「デバイス間やプロパティ間」での統合などの必要のない状態のデータであるはずです。
しかし、特にデジタルマーケティング領域の施策面で重要になるプロモーション施策やサイト内コンテンツ施策などの最適化に必要な分析データとしてもこの「顧客データ」の活用が非常に有効であるとして活用が進んでいる状況があります。
よって、3つ目の統合すべきユーザーデータはGoogle アナリティクス のユーザーデータと顧客データとの統合です。
これを行うには、Google アナリティクスの「データインポート機能」を利用します。 顧客データに限らず、外部のデータをGoogle アナリティクス 内にインポートし計測データと結びつける事で分析に活用することが可能になる機能です。
この機能を活用するためにはGoogle アナリティクス 内のユーザーデータと顧客データを統合するための「キー(キーディメンション)」が必要になります(両方に共通するデータ項目)。
今回の場合では、前述の統合の方法でたびたび登場している「ログインID」をキーディメンションとして利用するのが最も適していると思います。Google アナリティクス 側のデータに持たせることも可能ですし、顧客データ側には当然含まれているデータ項目と考えられるからです。
実際にインポートする顧客データの中身は当然データの活用目的によるわけですが、例としては購買履歴や会員ステータス情報、(Google アナリティクス では取得が難しく且つ分析や施策活用に有効と思われるような)顧客属性データなどが考えられます。
この統合による最大のメリットは、データの施策活用のための分析軸にGoogle アナリティクス では取得できない重要なデータを加えることができるという点にあります。
データが無ければ分析はできず、分析結果の活用によってマーケティング施策が最適化されていくとするならば、貴重なデータ資産である顧客データとの統合活用をしないというのはこれもまた「モッタイナイ……」状態であると言えるのではないでしょうか。
これまでご紹介してきたユーザーデータの3つの統合については、当然すべてを実施しなければいけない、という類の話ではありません。皆さまのマーケティング課題、実施施策、そのための分析課題などの必要性に合わせて実施の検討をしていくことが重要になります。
※データインポートにはポリシーを必ず確認の上ご利用ください。(アナリティクスヘルプ:アップロードしたデータの利用に関するポリシー)
アクションに活かすための「ユーザーデータと施策の連携」
ユーザーデータの統合の話は3つでおしまいです。
さて、統合したユーザーデータの活用目的は何であったでしょうか。
もちろんGoogle アナリティクス をデジタルマーケティングプラットフォームとして活用するためであるわけですが、もう少し具体的に言えばそれは「ユーザーデータの施策活用」のためという事になります。ここで言う“施策”とは広告のターゲティングとサイト内テスト(A/Bテストなど)のターゲティングです。
つまり、Google アナリティクス のユーザーデータを広告施策のターゲティングに使いましょう、という話になります(A/Bテスト利用の話は後述いたします)。
「それって、わざわざGoogle アナリティクス をプラットフォーム化しなくてもできてますけど……」という方も多いかと思います。確かに、Google アナリティクス の「ユーザーリスト」を使ったAdWords広告でのリマーケティング施策はすでに活用している方も多いかと思います。しかし、それはせいぜい「1つのサイトプロパティ」での施策の話かと思います。
記事冒頭でも申し上げた通り、デジタルマーケティングプラットフォームの活用目的は「企業全体のマーケティング活用の最適化」となります。なので、ここでの施策活用とは単なる「Google アナリティクス ユーザーリストのリマーケティング」ではなく、複数事業やプロパティ間、そしてインポートした顧客データとの統合されたユーザーデータをベースに、各事業やプロパティの施策担当者が各々の施策のためのユーザーリスト作成しキャンペーンに活用していくというイメージになります。
これまでの、単一サイト内のデータだけによるユーザーリストではなく企業全体のサイト訪問者のユーザーデータを横断的に活用したユーザーリストによって広告施策の展開が可能になる、まさに「プラットフォーム」としての利用が可能になるわけです。
私はこれを
- Google アナリティクス のプラットオーム化による「インハウスオーディエンス拡張」
として、大規模企業への導入検討を勧めているところです。
このように「インハウスオーディエンス拡張」されたユーザーリストの施策連携先は、何もAdWords(のディスプレイ広告)だけではありません。現在では、より多くの施策プラットフォームとの連携が可能となり(一部Google アナリティクス 360のみ)企業全体で最適化すべきマーケティング施策の対象範囲も広がってきています。
現在のところ、ユーザーリストが連携できる施策は以下の通りとなっています。
- AdWords(ディスプレイ)
- AdWords(RLSA)
- DoubleClick Bid Manager(ディスプレイ)(360のみ)
- Google オプティマイズ(360のみ)※
統合されたユーザーデータによるリスト活用には様々なメリットがありますが、その1つには対象データの母数が拡大することによってリストがたまりやすくなる、という利点もあげられるかと思います。Google アナリティクス のユーザーリストを実際に活用する際には、リスト内のデータ量についての一定の条件が課せられています。リストの条件(セグメント)によっては対象のデータ数が少なくなり、施策への展開に時間がかかるケースもあるかと思います。
施策の目的やセグメントの条件にもよりますが、データの母数が大きいことでスピード感をもった施策展開が可能になると考えられます。
また、ユーザーデータの分析によってリスト化し施策へ連携していく活用の中で考慮すべき点があるとすれば、施策と連携するリストの中身はあくまでCookieリストである、という点です。
ログインID単位に統合し顧客データと統合できたデータは「(リアルなユーザーに近い)ユニークユーザー」が単位ですが、統合後の様々なデータ項目で分析をしてもGoogle アナリティクス で作成するユーザーリストになった段階で、またデバイス(ブラウザ)単位のデータに分解されてしまうと考えられます。
実際に施策に展開する際のプランニング(特にターゲティング設計)には、必ずこのデバイス軸の視点を盛り込んでいただく必要があると考えています。
※参考記事「もっともっとモバイルデータを見よう!」
※2016年10月にローンチしたGoogle オプティマイズは、これまでGoogle アナリティクス 内の1つの機能であった「ウェブテスト」の進化版と考えられ、独立したテストツールとして発表されました。テストは、A/Bテストだけでなく多変量テストやリダイレクトテストが行えるようになり有料版の「Google オプティマイズ360」ではGoogle アナリティクス で作成されたユーザーリストと連携したA/Bテストなどのターゲティング配信が行える機能が加わっていいます。
※2016年10月にローンチしたAdWordsのクロスデバイスリマーケティングについて
前回の記事の中でも少し触れましたが広告施策側のAdWordsでも「ユーザーデータの統合」による施策活用が進んでいます。クロスデバイスリマーケティングです。広告のターゲティングにはデバイス軸の視点が重要ですが、これはデバイス別CookieをGoogleIDによって名寄せすることでデバイスを跨いだユーザー単位(GoogleIDごと)のリマーケティング配信を可能にしているようです。活用によるベストプラクティスは今後に期待するとしても、リマーケティングのターゲティングシナリオ設計に大きな選択肢が1つ加わることは事実であると思います。
ここまでお話しをしてきたユーザーデータの統合と連携ですが、このプラットフォームがよりマーケティング活動上効果を上げていくためには「各サイトが自社のブランドや事業にとってより質の高いユーザーデータを獲得する」ことが新たな課題になってくるかと思います。このようなデータの活用が、各サイト(オウンドメディア)上の本質的な“コンテンツマーケティング”の議論に発展していく可能性も含まれていると思います。
最後に必要な「最も重要な統合と連携」とは。
さて、Google アナリティクス をデジタルマーケティングプラットフォーム化しユーザーデータの統合と拡張利用をする方法は説明をしてきました。
ここまでお読みいただければ先にも述べた通りGoogle アナリティクス をプラットフォーム化して活用できるかどうかは「あなた次第」と申し上げた意味もおわかりいただけたかと思います。
ご紹介してきたいずれの機能も方法も、すでにお使いのGoogle アナリティクス (一部は360のみ)に十分に備わっているものばかりです。
つまり、やろうと思えば今すぐにでも取り掛かれる状態にあると言えます。
しかし最後にもう一つ、どうしても必要で、且つ最も重要な統合と連携が残されています。
「統合と連携」がまだあるの? とお思いかもしれませんが、最後にこれが無いとプラットフォームを実際に動かしていくことはできません。
それは、このプラットフォームをご利用になる皆さんや組織間の統合と連携になります。
1つのプロパティ内でのデバイス別のユーザーをUserIDへ統合するプロセスくらいであれば、現在のウェブ担当者レベルでも十分に可能かと思います。しかし、複数の事業やグループ企業間でのユーザーデータの統合、そして顧客データベースにあるデータからのインポート統合は、規模が大きければ大きいほど関係者も多く、調整事も多くなります。関係部署、担当者間での「連携」が必須になってくるでしょう。
そして、そのようにして出来上がったユーザーデータに基づいた“ユーザーリスト作成”は、個々の事業やサイトの担当者が勝手に行っても良いものでしょうか?
統合されたユーザーデータの管理・運用とその活用については、それを専門に行う“統合された組織(または担当者)”が行うのが理想的と言えます。複数の事業でのキャンペーン担当者が、異なるキャンペーン用のユーザーリストを勝手に作成していたら、事業間や企業無いでのユーザーの取り合い”や“ターゲット間の競合”なども起こるかもしれません。
ツールは日々進化し、対象のデータソースや活用先の施策連携対象もどんどん広がっていきます。増える一方のデータやマーケティング施策に加えて「AI(人工知能)」による分析機能の拡張が一層の拍車をかける構図となって行きます。
今現在お使いの無料のGoogle アナリティクス だけでも少なからずこれらの機能がすでに搭載されいるのは説明してきた通りです。ツール側の準備は整いつつあり実戦環境もしくはトライアルできる環境としては十分なレベルにあると思います。
本記事のテーマである「拡張するユーザーデータの活用」のための統合と連携の最後の“カギ”は皆さんがその手に握っているのです。
今回の処方箋
- 「アクセス解析ツール」と「デジタルマーケティングプラットフォーム」の目的の違いを確認しよう。
- バラバラな状態のユーザーデータを統合しよう。
- デバイス(ブラウザ)別からUserIDへ
- 個別プロパティから統合プロパティへ
- ウェブのユーザーデータと顧客データを統合
- アクションに活かすために施策連携をしよう(広告プラットフォームやテストツール)
- 最後は、人や組織の「統合と連携」がプラットフォームを動かす。
May the DATA be with you!
筆者 シニアコンサルタント 山浦直宏講演の、セミナーを開催いたします。
開催日:2016年12月7日(水)18時30分~
Google アナリティクス スイート 活用セミナー
「Google デジタルマーケティングプラットフォーム 2017年への活用法」
詳細・お申込みは、こちらから:http://ayu.ac/2fzEezl