Googleアナリティクスで行うデータ活用の処方箋 vol.2 「もっともっとモバイルデータを見よう!」
2016年11月16日
ライター:山浦 直宏
  1. モバイルデータを見る=クロスデバイス行動を知る、ということ。
  2. 「モバイルユーザー」というユーザーはいない?
  3. ターゲティングは「人」か?「デバイス」か?
  4. 今回の処方箋

皆さんはGoogle アナリティクス の「モバイル」レポートを見たことはありますか?
レポートメニューの「ユーザー>モバイル」の中のサマリーレポートで“デバイスカテゴリ”ごとの各主要指標のレポートを見ることができます。

(図:ユーザー>モバイル>サマリー)
(図:ユーザー>モバイル>サマリー)

ここでは、ご覧の通り「desktop」「mobile」「tablet」ごとにセッション数からコンバージョン指標までの流れを確認することができます。

スマートフォンの普及によって消費ユーザーのオンライン行動はモバイルデバイスに移行しつつあるというのは皆さんもご認識の通りかと思いますが、実際に皆さんのサイトの中ではどのようになっているのか?を、改めて確認してみる必要なないでしょうか?

私が今までにコンサルティングさせていただいている企業の数多くのプロパティを拝見していると、主にB to C ビジネスのプロパティの内の80%くらいは「moblile」カテゴリのセッション数が全体の半数近く、もしくは半数以上を占めるような状況になっています。このような状況においても、分析やターゲティングの話の中でデバイス軸の視点が盛り込まれた議論になることはあまり多くないと感じています。モバイルの普及は、単に「モバイルによるセッションが増えている」というレポート上に見える現象だけでなく、消費者の購買行動に大きな変化をもたらしているという視点を持って見なければならない状況を作り出していると言えます。

Googleの調査によれば、オンライン上の消費者の購買行動は「モバイルに始まり他のデバイス(もしくはオフラインチャネル)でコンバージョンしている」というユーザー像を明らかにしています。

出典: The Mobile Purchase Journey:How is research related to purchase
出典: The Mobile Purchase Journey:How is research related to purchase

先に紹介したGoogle アナリティクス のレポート画面でも、このオンライン購買行動での「起点」と「終点」でのクロスデバイスの様子を垣間見ることができます。

モバイルデータを見る=クロスデバイス行動を知る、ということ。

以下のレポートの例(ECサイト)を見るとmobile のセッション比率は約85%と非常に高い値になっていますが、トランザクション数を見ると約54%と、比率はかなり下がっているのがわかります。
mobile でのトランザクション数が半分以上あるというのは少なくない値であると思いますが、セッション数の比率からするとかなり少ない状況であることがわかります。結果としてコンバージョン率は0.58%となっています。

一方でdesktopのセッション比率は約11%と非常に少ない値になっていますが、トランザクション数の割合は約35%、コンバージョン率は2.67%と高い数値になっています。

ユーザー>モバイル

このデータから直接言えることは、
「モバイルユーザーは訪問数比率は高いがコンバージョン率は低い。一方で、デスクトップユーザーは訪問数比率は低いがコンバージョン率は(非常に)高い。」
ということであるかと思います。

しかし、前述のGoogleの調査レポートにもあるように「ひとりのユーザーが複数デバイスでこのECサイトを利用しているかもしれない。」という仮説で考えてみると、「モバイルで情報収集や検討をしているけれど購入はデスクトップで行う。」というユーザー像が、このECサイトにおいても少なからず当てはまっているのではないか?という事が浮かび上がってきます。

さらに、それが裏付けられるようなデータを見てみましょう。

このECサイトではGoogle アナリティクス の「UserID View」でクロスデバイス集計も行っていますので、見てみます。

下の画面はGoogle アナリティクス の「ユーザー>クロスデバイス>ユーザー獲得デバイス」というレポートです。起点となったデバイス、つまり最初の訪問でのデバイスとその後のデバイスごとの収益との関係を、集計し見せてくれるという非常に興味深いデータを見ることができるレポートです。

ユーザー>クロスデバイス>ユーザー獲得デバイス

このECサイトでは、起点がモバイルであるセッションが約70%あります。
そして、結果として起点でのデバイスとは異なるデバイスでコンバージョン(つまり、クロスデバイスコンバージョン)した収益の中の約55%がモバイル起点のユーザーが占めているということがわかります。
(※集計対象期間/対象ユーザーの収益の内、クロスデバイスでの収益の割合は約20%でした。)
UserID Viewによる集計仕様上、既存ユーザーがほとんどであるわけですが、それでもモバイルによる訪問においてクロスデバイスコンバージョン比率が一番高い、ということがこのデータからわかります。

※Google アナリティクス のUserID機能はすべてのサイトに有効かつ実装が可能な機能ではありません。詳細はGoogle アナリティクス ヘルプ:User ID とクロスデバイス レポートをご確認ください。

※UserID機能については、弊社村山の記事も是非参照ください。
GoogleアナリティクスにおけるUser IDビューの作成方法と注意点

「モバイルユーザー」というユーザーはいない?

Google アナリティクス のようなツールでの計測データは、その仕様上「ユーザー」はデバイス別に計測/集計されることが多く、モバイルユーザーとかPC(デスクトップ)ユーザーとか言われてしまうことがほとんどであると思いますが、リアルな実体としてはどうでしょうか?
もし、皆さんに「あなたはモバイルユーザーですか?デスクトップユーザーですか?」と質問したら何と答えますか?私なら(ちょっとひねくれた性格なので・・)「自分のことをデバイスなんかで区別するな!」と言いたくなります・・が、実際にはもちろんモバイルもデスクトップも使っているわけです。皆さんもおそらく複数デバイスを日々の生活の中で様々に使い分けている人が多いのではないでしょうか?

今回の記事の例ではECサイトのデータを使って話をしましたが、もちろんこのケースがすべてではありませんし業種・業態によってはクロスデバイス行動が起きにくい、もくしはB2BビジネスのようにほとんどPCでのセッションで完結する、というビジネスもあるかと思います。

重要なのは、ユーザーは複数デバイスを持ち様々に使い分けながら消費行動を行っているという事を知った上で、自らのビジネスがどのようなデバイスによる利用状況なのか?をしっかりと確認する必要があるということです。

ターゲティングは「人」か?「デバイス」か?

サイトへの集客を考えるときにまず重要なのは「ターゲティング」であるということはご理解されているかと思います。

Google アナリティクス をご活用の皆さんの中には、広告による集客手段としてGoogle アナリティクス の“リマーケティングリスト(ユーザーリスト)”を活用されている方も多いかと思います。ユーザーの行動データを分析し、仮説を立てGoogle アナリティクス のセグメント機能を使いターゲティングリストを作り、AdWordsのキャンペーンと連携し広告の配信に活用しているわけです。

例えば、「購入したユーザー」というセグメントでユーザーリストを作成するとします。
ユーザーリストはcookieリストであるので様々な(といっても3種類ですが)デバイスのcookieが含まれます。PCで購入したユーザーはPCでターゲティングされ、モバイルで購入したユーザーはモバイルでターゲティングされるということになります。

Google アナリティクス のユーザーリストはAdWordsのサーチアドとディスプレイアドに連携が可能で、Google アナリティクス 360ユーザー企業であれば、更にDoubleClickやA/BテストツールであるGoogleオプティマイズにも配信ターゲットリストとして連携が可能となり、様々なチャネルや施策と連動できるものになります。

近頃AdWordsではGoogle ID をベースとしたクロスデバイスのリマーケティングが利用可能になりました。本稿においてはGoogle アナリティクス のデバイスごとに計測されたユーザーデータを“UserID”で名寄せ集計をしたレポートによってサイト内のデバイスを跨いだ行動を分析することをご紹介しましたが、AdWordsにおいては“ Google ID “をキーにデバイスごとのデータを名寄せしたクロスデバイス配信を実現させています。Google アナリティクス 側もAdWords側もデバイスごとのCookieを”ログインID”によって名寄せ集計し分析やターゲティングに活用するという動きが活発に進んでいるようです。このあたりの「ユーザーデータの統合と活用」については次回の記事でより詳しく取り上げる予定です。

もし、皆さんのサイトがクロスデバイス利用の割合が多いという状況であるならば集客施策におけるターゲットセグメンテーションについて「クロスデバイスユーザー」を想定したユーザーセグメントとキャンペーンプランニングを考えてみる必要があるかもしれません。

これは、アトリビューション分析にも通じる考え方ですので、Google アナリティクス のアトリビューション分析関連のレポートを見る際にも必ずデバイス軸で見ていただくことをお勧めします。

いずれにしても、モバイルデバイスの普及がもっと進みモバイルサイトのUX(ユーザーエクスペリエンス)がより向上していくとした時に皆さんのビジネスやサービスがどのようなクロスデバイス行動(もしくはシングルデバイスに特化してく?)で利用されるようになるのか?は非常に重要な要素になるのは間違いないと思います。

先日Googleから発表された「モバイル ファースト インデックス」への流れも、サイトのセッション数の半分以上がモバイルデバイスからのアクセスで且つパーチェスファネル上の“起点”での役割が多い、という流れの中では当然の動きであると言えるのではないでしょうか。

Google アナリティクス によるユーザーデータ活用においても、「分析は人(本来的なユーザー)ベースで、ターゲティングはデバイス軸で」という意識がもっと必要であると考えます。

そのためにも、まずはもっともっとモバイルデータ(を含むクロスデバイスのデータ)を見る必要があるかと思います。

今回の処方箋

  1. まずは、Google アナリティクス のモバイルレポートをのぞいてみよう。
  2. セッション比率とコンバージョン率のクロス現象が起きているか?確認してみよう。
  3. UserID 機能(が利用可能はサイトであれば)を実装し、クロスデバイスコンバージョンの状況を確認してみよう。
  4. 集客施策のターゲティングにも“デバイス軸”の視点を持つようにしよう。

May the DATA be with you!

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この記事を書いた人
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山浦 直宏
COO
Google アナリティクス 360、Google マーケティングプラットフォーム活用を中心としたデジタルマーケティングコンサルタント。ネット広告の黎明期より一貫して、ネット広告、デジタルマーケティング畑を歩む。講師を務める「Google アナリティクスIQ講座」では資格取得者900名余を育成する一方で、立教大学(元非常勤講師)など複数の大学にて人材育成にも取り組む。講座・講演、業界誌やネットメディアなどでの執筆・寄稿多数。
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