AIが牽引するマーケティング計測の未来―アユダンテ APAC、DMAシンガポール2025に登壇
2025年10月22日

(英語版はこちら)

アユダンテ株式会社 取締役 山浦直弘

2025年9月にシンガポールで開催されたDigital Marketing Asia(DMA)は、アジア各国のマーケティングリーダーとテクノロジー企業が集う大規模イベントです。アユダンテは今回、登壇者として、また出展企業としての初参加となりました。

弊社の山浦直弘は、『The Future of AI-Powered Marketing Measurement(AIが牽引するマーケティング計測の未来)』をテーマに、AIを活かすうえでの“計測”の重要性を提起しました。

また、会場では初の試みとして、GA4設定を診断できる自社ツール「Google Analytics 4 Auditor」を紹介するブースを出展。多くの来場者にお立ち寄りいただき、GA4の健全な計測環境づくりへの関心の高さがうかがえました。

(DMAシンガポール2025の会場レポート、ブースの出展、およびGA4 Auditorの詳細は、弊社のライハンナによるこちらの英語記事をご覧ください。)

多くのセッションがAIそのものの可能性に焦点を当てる中、山浦の講演は「正確な計測なくして、AIの成果は語れない」という本質的なテーマに光を当てました

日常に溶け込むAI、しかし本当に支えているのはデータ

山浦は冒頭で、「AIはもはや私たちの生活のあらゆる場面に組み込まれている」と語りかけました。レコメンド機能、レポートの自動化、広告最適化──AIはすでにマーケティング活動のあらゆる領域に浸透しています。

しかし、彼はこう指摘します。

“AI’s power lies not in its algorithms but in the data it consumes”
「AIの力はアルゴリズムそのものではなく、“どのようなデータを取り込み、いかに活用するか”にあります。」

つまり、AIが成果を生み出すためには、質の高いデータを継続的に取り込み活用できる仕組みが必要なのです。

“AI’s role in marketing is prediction.But accurate prediction depends on two things, how well we measure user behaviour and how reliably we capture conversion data.”
「AIの役割は『予測』です。そして、正確な予測を行うには2つのデータが不可欠です。1つはユーザー行動データ、もう1つはコンバージョンデータです。」

山浦は、マーケティングファネル(認知→検討→コンバージョン)を用いて説明しました。

AIは、ユーザーの行動や反応といった「検討」段階のデータ、そして実際の成果を示す「コンバージョン」データという“計測可能な要素”を解析し、それらをもとに次の行動を予測します。

“No measurement, no prediction.AI is only as good as the quality of data you put into it.”
「正確な計測なくして、予測は成り立たない。AIの精度は、投入されるデータの質に比例します。」

「計測の危機」──テクノロジーと法規制の二重課題

講演の後半では、現在のマーケティング計測が直面する2つの大きな課題を示しました。

1. テクノロジーによる変化

AppleのIntelligent Tracking Prevention(ITP)によって、クッキーベースの計測が大きく制限され、「データ砂漠」とも呼ばれる状況が生まれています。

さらに、Googleがサードパーティクッキー廃止を一時停止した一方で、Privacy Sandbox(プライバシー サンドボックス)など新しい技術が登場し、計測の仕組みは大きく変わりつつあります。

日本ではSafariのシェアが50%を超え、影響はすでに深刻です。東南アジアでも緩やかにSafari利用率が上昇しており、今後同様の変化が広がることが予想されます。

2. 法規制の強化

もう一つの要因は、EU一般データ保護規則(GDPR)カリフォルニア州プライバシー権法(CPRA)に代表されるプライバシー法規制の厳格化です。国ごとに内容は異なるものの、多くの東南アジア諸国ではクッキーを「個人データ」または「個人を識別し得るデータ」と位置づけています。

これにより、AIが学習に必要とするデータが減少し、「シグナルロス(signal loss)」が発生。データが欠けることで、予測精度や広告最適化の効果が低下します。

ピンチをチャンスに:AIが支える新しい計測基盤

山浦はこうした変化を「課題」ではなく「機会」として捉えるべきだと語ります。プライバシーを尊重しながらも、AIを活かせる計測基盤を再構築するチャンスです。

その実現に向けて、Googleが提供する3つのソリューションを紹介しました。

  • Google Analytics 4 (GA4) – 購入確率や収益予測など、AIによる予測指標を標準搭載
  • コンセントモード(Consent Mode)v2 – クッキー非同意ユーザーのデータをAIで補完し、平均で65%のコンバージョンを回復
  • 拡張コンバージョン(Enhanced Conversions) – ファーストパーティデータと機械学習によるマッチングで、計測精度を高める仕組み

“Measurement is the foundation of everything.Get that right, and AI will work for you.”
「計測こそが、すべての基盤です。正確な計測こそが、AIを最大限に活かす鍵です。」

Q&Aセッション:予測とプライバシーは両立できる

写真左:アユダンテ ジャスパー、右:アユダンテ 山浦

講演後のQ&Aセッションでは、多くの質問が寄せられました。

中でも「厳しいプライバシー規制下にある業界(医療など)で、どのようにAIやGA4を活用すべきか」という質問が印象的でした。

私からは、「AIの本質は予測であり、その精度を支えるのは“健全なデータ計測とプライバシー配慮”の両立です」とお答えしました。

もちろん、マーケターとして多くのデータを収集したい気持ちは理解できますが、同時に私たち自身も消費者の一人です。自分のデータが同意なく使われることを望む人はいないでしょう。

“Implementing a clear cookie consent banner isn’t just a legal formality. It’s how we build a sustainable relationship between businesses and customers, founded on mutual trust.
It applies not only to healthcare but to every industry”
「Cookie同意バナーの導入は、単なる法令遵守ではありません。それは、企業と顧客の間に“信頼”という基盤を築く重要な第一歩です。医療業界だけでなく、すべての業界で考えていただきたい取り組みです。」

最後に

DMA シンガポール 2025に参加したアユダンテ シンガポール支社のメンバー

最後に、山浦が講演の中で繰り返し強調したメッセージをもう一度。

Prediction or protection, it all begins with measurement.
予測であれ保護であれ、すべては計測から始まる。

今回のセッションやブースでの交流を通じて、多くの方々と「信頼を軸にしたデータ計測のあり方」を共有できたことに、心より感謝申し上げます。マーケティングの未来は、責任ある計測と透明性の上に築かれるものです。

最後に、DMAシンガポール2025にご参加くださった皆さま、そして最後までお読みいただいた皆さま、本当にありがとうございました。

アユダンテでは月1でニュースレターの配信を始めました

この記事を書いた人
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プン ジャスパー(Jasper Poon)
ソリューションコンサルタント
兼 事業推進担当
香港出身で、デジタルプロジェクト管理、データ収集(GA経由)、可視化(Power BI/GLS経由)における確かな専門知識を持っています。デジタルの世界では、一つのプラットフォームだけでは全ての課題に対処できないという考えを強く持っています。GMP製品に加えて、Google Cloudや他のUX分析ツールにも情熱を注いでいます。趣味は猫、水泳、サッカーです。
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