「アユダンテ × Sparkline社共催セミナー」 プライバシーに配慮したマーケティングとデジタル分析
2024年09月20日

(こちらのSparkline社の公式サイトをクリックすると英語版をご覧いただけます。)

2024年9月10日、アユダンテとSparkline社による共催セミナー「プライバシーに配慮したマーケティングとデジタル分析」(Marketing & Digital Analytics in a Privacy-Centric World)がシンガポールで開催されました。弊社の杓谷と、Googleのメジャーメントリードを務めるジョシュア・ン氏(Joshua Ng)が登壇し、プライバシーを重視する時代において、企業が顧客エンゲージメント戦略をどのように適用すべきか、特にデジタル分析の観点から深い知見を共有しました。

セミナーは、プライバシー保護の重要性が高まる中で、データの収集や活用における、新たな課題とその解決策を探る場となりました。

杓谷匠 アユダンテ株式会社 デジタルストラテジーディレクター

ジョシュア・ン(Joshua Ng) Google社 メジャーメントリード

セミナーは、シンガポールの活気あふれるボートキー(Boat Quay)で開催され、中央ビジネス地区にも近く、マーライオンから徒歩10分という好立地でした。会場へのアクセスの良さに加え、デジタル業界の最新トピックに焦点を当てた内容ということもあり、当日は多くの方々にご参加いただきました。

2時間にわたるセミナーには、金融、FMCG(消費財)、旅行など、幅広い業界からの参加者が集まりました

オープニング:ジェイソン・プア氏(Jason Pua)が語るセミナーの背景とプライバシーの重要性

セミナーの最初に、Sparkline社のソリューションコンサルタントであるジェイソン・プア氏(Jason Pua)が、今回のテーマについて説明しました。ジェイソン氏は、昨今のデジタル業界ではプライバシーがますます重要な課題となっていることを指摘し、GDPRやDMA(EU)、CPRA(米国)、LGPD(ブラジル)といった規制や、技術の進化による大きな変化について触れました。

これらの規制により、企業は顧客の信頼を最優先にし、データの透明性やパーソナライズを重視した製品を開発していく必要があります。企業が取り組むべきポイントとしては、次のようなことが挙げられました。

  • ユーザーに透明性を持って、分かりやすい選択肢を提供すること
  • コミュニティやコンテンツ、インセンティブを通して、ユーザーとのつながりを強化すること
  • プライバシー強化技術(PETs)を活用し、個人データを守りながらも、データドリブンな(Data Driven)意思決定を得ること

プライバシーを中心に据えた戦略へシフトするためには、このような要素が必要です。

  • ファーストパーティデータの活用
  • コンテクスチュアル広告
  • 匿名化されたデータを活用したパーソナライズ

こうしたアプローチを取ることで、企業は顧客との信頼関係を長期的に築き、ロイヤルティの向上や、ライフタイムバリューを高めることができると示しました。

ジェイソン・プア(Jason Pua) Sparkline社 ソリューションコンサルタント

杓谷によるサードパーティクッキーとプライバシー中心のソリューション

ジェイソン氏のスピーチに続き、弊社の杓谷が、デジタルマーケティング業界において重要なテーマである、Google Chromeのサードパーティクッキー廃止延期について話しました。「Googleがサードパーティクッキーの廃止を延期するのは今回で3度目でした」と杓谷は説明し、「ただ、今回はサードパーティクッキーを完全に廃止するのではなく、ユーザーの同意を得るための新しい方法を模索しているところです」と続けました。

また、ファーストパーティクッキーとサードパーティクッキーの違いを分かりやすく解説し、サードパーティクッキーの廃止がオーディエンスターゲティング、自動入札のシグナル、そしてビュースルーコンバージョンに与える影響についても詳しく触れました。

長年サードパーティクッキーに依存してきたマーケティング活動は大きな変革を迎えることになり、企業は今からその対応を考え始める必要があります。

“Marketing activities that have long relied on third-party cookies will face significant disruption, and businesses need to start thinking now about how to adapt.”

杓谷匠 アユダンテ株式会社 デジタルストラテジーディレクター

杓谷はその後、プライバシー強化技術(PETs)の重要性について話題を転換し、特に拡張コンバージョンやサーバーサイドGTM(Server-side Google Tag Manager)の活用を主張しました。「これらの技術は、ユーザーのプライバシーを守りながらも、マーケターが必要とするインサイトを得るための手段です。回避策を探すのではなく、データの収集や計測方法そのものを再考することが求められています」と述べました。

また、GDPRやCPRA、日本の個人情報保護法(APPI)など、国際的な規制に対応することが、今のマーケティング戦略において不可欠であることにも言及しました。「これらの規制は単なる障害ではなく、データとの向き合い方を大きく変えるものであり、企業はその変化を理解し、対応することが求められます」と説明しました。

最後に、杓谷は企業に向けて、ファーストパーティデータの活用やコンテキスト広告に重点を置いたプライバシー重視の戦略を採用することの重要性を訴えました。そして、絶え間なく進化するデジタル世界で、柔軟に対応する戦略を導入し、業界の先頭に立つ必要があると示しました。

サードパーティクッキーの廃止は、単なる技術的な問題ではなく、考え方を変える必要があります。マーケティングの中心にユーザーの信頼を置き、透明性を持ってユーザーが自分のデータをコントロールできるようにすることが、長期的な関係を築くカギになります。

“Moving away from third-party cookies is not just a technical shift, but a mindset shift. We have to place user trust at the core of our marketing efforts. Transparency and giving users control over their data are key to building long-term relationships.” ‍

杓谷匠 アユダンテ株式会社 デジタルストラテジーディレクター

杓谷はデジタルマーケティング業界で15年以上の経験を持ち、これまでGoogle JapanやJellyfishで活躍してきました。現在は、企業がデータプライバシーを守りながらも、効果的なマーケティングを実現できるよう、プライバシー重視のソリューションに注力しています。

杓谷(左)と、Sparkline社の最高執行責任者(COO) ジョイ・グプタ(Joy Gupta)(右)

インタラクティブQ&Aセッション:プライバシー、パーソナライズ、コンテンツマーケティングについてのジョシュア氏、ジョイ氏、杓谷による対談

杓谷のスピーチ後、ジョシュア氏、ジョイ氏を交えた3名によるインタラクティブなQ&Aセッションが行われ、参加者と意見を交わしながら、プライバシー、パーソナライズ、そしてコンテンツマーケティングについての議論が展開されました。

銀行に自分の情報を預けること、それはセキュリティとプライバシーです。でも、ホテルに泊まって、ホテルが誕生日のサプライズを用意してくれること、それはパーソナライズです。

“If you store your personal information with a bank, it’s called security and privacy. If you stay at a hotel and the hotel arranges a birthday surprise for you, that’s personalisation.”‍

ジョシュア氏は、参加者との対話の中で、プライバシーとパーソナライズの違いについて自身の見解を共有しました。

ジョシュア・ン(Joshua Ng) Google社 メジャーメントリード

消費者に本当に響く広告は、心のこもったコンテンツを提供するものです。短い動画でも問題ありませんが、無理に売り込むようなものではない方が良いでしょう。

“The type of advertising that truly resonates with consumers is the one that offers genuine content. It can be as simple as a short video, but it shouldn’t be a hard-sell.”

ジョシュア氏は、効果的なマーケティングを行うには、消費者のプライバシーを尊重しながらも、押しつけがましくなく、価値のあるパーソナライズされたコンテンツを提供することが大切であると呼びかけました。

ジョシュア氏の鋭いコメントが印象的だったインタラクティブQ&Aセッションは大成功でした。プライバシーとパーソナライズのバランスについて、活発な議論が繰り広げられ、ジョシュア氏の「消費者のプライバシーを尊重しながら、価値あるパーソナライズされたコンテンツを提供する重要性」に対する考え方は、参加者の共感を大いに得ました。彼が強調した、誠実で押しつけがましくないマーケティング戦略の重要性が、対話をさらに引き立て、参加者にとって有意義なセッションとなりました。

最後に:ネットワーキングパーティーの様子と、今後のSparkline社とのコラボレーション

セミナー後のネットワーキングパーティは、参加者がリラックスした雰囲気の中で、スピーカーと直接意見交換できる貴重な時間となりました。活発な議論が続き、多くの参加者がセミナーで得たインサイトをさらに深く掘り下げようと、積極的な姿勢を見せていました。このポジティブなエネルギーと交流の広がりは、セミナーの成功を象徴するもので、予定時間を超えてもなお、有意義な対話が続いていました。

今回のセミナーは、アユダンテとSparkline社にとって初めてのコラボレーションであり、今後の共同プロジェクトへの期待が高まるものとなりました。今回の好評を受けて、今後もデジタル業界での革新や認知を促進するマーケティングイベントを企画していく予定です。私たちとともに、プライバシーに配慮したデータ活用を軸とした業界の未来を、共に切り開いていきましょう。

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この記事を書いた人
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プン ジャスパー(Jasper Poon)
ソリューションコンサルタント
兼 事業推進担当
香港出身で、デジタルプロジェクト管理、データ収集(GA経由)、可視化(Power BI/GLS経由)における確かな専門知識を持っています。デジタルの世界では、一つのプラットフォームだけでは全ての課題に対処できないという考えを強く持っています。GMP製品に加えて、Google Cloudや他のUX分析ツールにも情熱を注いでいます。趣味は猫、水泳、サッカーです。
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