2024年9月7日、Googleは『検索広告およびディスプレイ広告での拡張クリック単価の終了』を発表しました。このニュースに驚かれた方も多いのではないでしょうか。
最近では「コンバージョン数の最大化」や「目標コンバージョン単価」が入札戦略の主流となっていますが、依然として多くの広告主に利用されている「拡張クリック単価」の終了は、業界にとって衝撃的なニュースです。
LIFT合同会社からは「拡張クリック単価」の終了を惜しむ記事が公開されています。
拡張CPCがなくなってしまった
私自身も非常に残念に思っているのですが、今回は「拡張クリック単価」の終了に備えて、なにができるのか参考になればと思い執筆いたしました。よければ参考にしてください。
拡張クリック単価とは
まずは終了することとなった「拡張クリック単価」について改めて確認していきましょう。Google 広告では以下のように説明されています。
拡張クリック単価(eCPC)を使うと、個別単価設定からのコンバージョンを増やすことができます。拡張クリック単価は、広告主様のウェブサイトでユーザーが商品を購入したり、コンバージョンを達成したりする可能性が高い(または低い)と判断した場合、手動で設定した入札単価を自動的に調整します。目標コンバージョン単価および目標広告費用対効果のスマート自動入札の場合、コンバージョン単価と広告費用対効果の目標に基づいて入札単価が自動的に設定されますが、拡張クリック単価ではコンバージョンを最適化する際に、平均クリック単価が、設定した上限クリック単価(入札単価調整を含む)を超えないように調整します。
引用:https://support.google.com/google-ads/answer/2464964?hl=ja
「拡張クリック単価」は、キーワード単位で入札単価を調整できる機能です。さらに、ユーザーがコンバージョンに至る可能性を考慮し、入札単価を自動で調整するため、コンバージョン数の増加が期待されます。
拡張クリック単価の挙動イメージ
ただし、コンバージョンに至る可能性を考慮した入札戦略としては「コンバージョン数の最大化」や「目標コンバージョン単価」など、オークションごとにコンバージョン率を予測するコンバージョン獲得向けの入札戦略が提供されています。
それでも、あえて「拡張クリック単価」を選択しているということは、なにかしらの意図があるものと思います。私自身も「コンバージョン数の最大化」や「目標コンバージョン単価」のような入札戦略は優れていることは理解していますし、利用していますが、「拡張クリック単価」を選択することがあります。
拡張クリック単価を選択したと考えられる意図
「拡張クリック単価」を選択するケースはどのようなものでしょうか。主に以下の2つの理由が考えられます。
① キーワード単位での入札単価調整
1つはキーワード単位で入札単価を調整したいケースが考えられます。「コンバージョン数の最大化」や「目標コンバージョン単価」では入札単価を個別に調整することはできないため、拡張クリック単価にしているのではないでしょうか。特にコンバージョン数があまり発生しない商品・サービスでは、ユーザーの検索意図を考慮して運用者が配信の強弱をつけていたのではないでしょうか。
② クリック単価の高騰を防ぐ
2つ目は、クリック単価の高騰を防ぐことを目的とした場合です。あくまで私の所感ですが、このケースが最も多いように感じます。
「コンバージョン数の最大化」や「目標コンバージョン単価」のような入札戦略では、予測CVRが高くなるほど入札単価も高くなるため突然CPCが高騰し、平均CPCが500円程度にも関わらず、一部の検索語句ではCPC10,000円を超えるようなクリックが発生します。そういったケースを防ぐために、「拡張クリック単価」を設定していることもあるのではないでしょうか。
ただ入札単価が上昇するような動きは予算内、または目標値内でコンバージョン数を最大化するために起きます。与えられた条件下での最大化をめざすために起きている挙動であるため、このような動きが悪いわけではありません。広告予算をより有意義に執行していくために、クリック単価の上限を設ける方が良いか、予算、または目標値内での最大化をめざすのが良いかは、それぞれのアカウントに適した対応を選択することが良いと考えます。
拡張クリック単価の代わりに選択する入札戦略
それでは「拡張クリック単価」が終了した際に選択する入札戦略はなにが考えられるでしょうか。前述した2つの要素(「キーワード単位での入札単価調整」「クリック単価の高騰を防ぐ」)と、「コンバージョンに至る可能性に応じた入札単価調整」も含めて、それぞれの入札戦略を選択した時に拡張クリック単価に求めた要素を補完できるかどうかまとめてみました。
この表をもとに考えると、「個別クリック単価」または「ポートフォリオ入札戦略の目標コンバージョン単価(入札単価の上限あり)」が主な選択肢として挙げられるかと思います。
個別クリック単価の挙動イメージ
ポートフォリオ入札戦略の目標コンバージョン単価(入札戦略の上限あり)の挙動イメージ
当たり前のことではありますが「拡張クリック単価」とは必ずしも配信結果は一致しません。入札されやすさが異なるため検索語句の傾向が変動する可能性があります。「拡張クリック単価」から変更する際には、検索語句の傾向に変化がないかは注意しておいたほうがよいかもしれません。
さいごに
検索広告、ディスプレイ広告での「拡張クリック単価」の終了は残念ですが、広告運用の進化は止まりません。変化を受け入れ、次のステップに進むための新たな選択肢を探り続けることが重要です。
運用型広告に携わる者として模索していく日々ですが、今回のコラムが次のステップへの足がかりとなれば幸いです。