7月24日に正式にローンチされる「Googleマーケティングプラットフォーム」。Google アナリティクスを中心としたプロダクトにはどのような変化があるのか?Google アナリティクス中心の目線で解説する。
2014年から始まった進化の流れをおさらい
当然のことながら、今回の進化は突然単発的に起こったわけではない。常に進化しつづけるGoogle アナリティクス(と、その関連プロダクト)の過去からの変遷をたどる事で今回の進化の意味とGoogleの意思を読み解くことができる。
2014年:“ユニバーサルアナリティクス”へのバージョンアップから始まったプラットフォーム化への道
Google アナリティクスは2014年に大きなバージョンアップを果たしたことは、Google アナリティクス誕生から13年間の歴史の中ではまだ記憶に新しい出来事だろう。
計測タグが「ga.js」から「analytics.js」へ移行されると同時に新しい機能として、
- ユーザーID機能
- データインポート
- Measurement Protocol
- カスタムディメンション、カスタム指標
などが追加された。
これは、“アクセス解析ツール”から”デジタルマーケティングプラットフォーム“への脱却(進化)を強烈に印象付けた出来事で、
- アクセス解析→ウェブサイト改善
という、いわゆる“ウェブマーケティング”目線から
- プラットフォーム化(広告、ウェブ、CRMデータとの統合と連携)→広告をメインとしたデジタルマーケティング全体の最適化
という、マーケティングのデジタル化全体を支える基盤へと進化させるというGoogleの強い意思の表れと理解できるバージョンアップであった。
これは、Google アナリティクスの機能強化だけでなく、データ活用と施策の範囲を大きく拡張し、結果として利用者も“ウェブ担当者”のみならず“広告担当者”やデジタルマーケティングに携わる部署・組織すべての担当者が“利用すべき”ものになったということも意味することになる。
また、これより少し前の2013年に「有料版」であるGoogle アナリティクスプレミアム(現:Google アナリティクス 360)がローンチし、エンタープライズ企業(大規模企業)ユーザーのニーズに対応できる強固なデータ基盤とSLAに基づくサービスが提供され、データ活用範囲の拡張と共に利用企業のターゲットの広がりも想定したビジネス面の基盤づくりも同時期に行われたことも付け加えておく。
2016年:「プレミアム」から「360」へ。そして、スイート化へ
そして、2016年に新たな大きな進化が訪れる。
「Google アナリティクスプレミアム」は「Google アナリティクス 360」へリブランド。さらに、オプティマイズやデータスタジオなどのGoogle アナリティクスデータの活用面を拡張するプロダクトを立ち上げ「Google アナリティクス 360 スイート」とすることで、Google アナリティクス単体から複数製品群によるスイート化を実現する。
そもそもGoogle アナリティクスの機能をシンプルに言えば、
- データ計測/収集
- 集計レポートの提供
の2つである。トラッキングコードのみならずMeasurement Protocol やデータインポートによる外部データの収集やAdWords(今後はGoogle広告)との連携による広告配信データのインポートなど、分析や改善に必要なデータを“揃える”という役割。そして、100種以上あるレポート画面で“1次集計レポート”を提供する、ということである。分析は利用者が行い改善アクションへ繋げていくことになる(分析をするための機能は提供されているが、分析そのものを行うのは利用者である)。
そして、そのようにして収集されたデータの活用面、特に
- ダッシュボード/データビジュアライズを「データスタジオ」
- A/Bテスト機能を「オプティマイズ」
へ拡張し、Google アナリティクス単体では満たしきれなかった活用ニーズをスイートプロダクト化によって拡充した形が「Google アナリティクス 360 スイート」だ。日本国内でのローンチは行われていないが「アトリビューション」「オーディエンスセンター」も、それぞれGoogle アナリティクスで収集したデータの分析面での拡張とターゲティング面での拡張という位置づけになる。
さらに、有料版であるGoogle アナリティクス360を利用することによって、
- ローデータのBigQueryへのエクスポートによる外部分析基盤へのノンサンプリングデータの提供
- (AdWordsだけでなく)DoubleClickとの連携によるレポーティングデータのインポートとユーザーリスト提供先の拡張
が実現し、ここにGoogleのデジタルマーケティングプラットフォームは一応の完成を見たかのように思えた。“一応の”と言っているのは、機能的な部分では今後の拡張が期待される部分があり、例えば今回も話題になっている
- Googleシグナルによるクロスデバイス集計
- AIの更なる活用
などがあるが、これは「Google アナリティクス 360 スイート」の中で粛々と拡張されて行くものと(少なくとも私には)思われたからだ。
※参考記事:
2018年:「Google マーケティングプラットフォーム」に込められた新たなGoogleの意思とは?
そして、今年7月にGoogle アナリティクス360スイートはDoubleClick製品群と統合された新しいブランド「Googleマーケティングプラットフォーム」内のプロダクトとして新しい進化を遂げて行く事になった。
今回の”進化“はこれまでのものとは大きく異なっている。これまでの進化はGoogle アナリティクスそのものの機能拡張やスイートプロダクト化によるデータ活用拡張といった”目に見える進化“に伴って製品名やブランド名を変えてきたもので、いわば”名実ともに“行われた進化であったと言える。しかし、今回のDoubleClickとの統合による”リブランド“においては(これまでのような)ブランド名を変えるほどの大きな機能的な変化やローンチは、無い。特に、Google アナリティクスにおいては(もちろん、常に進化しているツールなので多少の新機能はあるが)。
DoubleClick製品は、その名前を変え(ブランド統一のために“DoubleClick”ブランドとの別れを選択した?)しかし、Google アナリティクススイートは、各製品名はそのままに「Google マーケティングプラットフォーム」の傘下に収まった形だ。唯一、それぞれのプロダクトとの連携と管理を容易に行える「インテグレーションセンター」の出現は今回のリブランドに合わせて新たに登場した“機能”で、「広告」「クリエイティブ」「計測」という分断されている体制の統合と運用の効率化を促す狙いがあると思われる。
Google アナリティクス360スイートが、今回のリブランドによる統合によってどのように変わったのかをおさらいすると以下のようになる。
- オーディエンスセンターは今回の統合でディスプレイ&ビデオ360(旧DBMほか)の中の機能として組み込まれた。(オーディエンスセンターは、主にGoogleの持つオーディエンスリストに対してのターゲティングを実現するパブリックDMP的プロダクトであった。)
- アトリビューションについては、今回の発表の中では言及が無かった。
それ以外は、基本的には従来と変わりはない。
アトリビューションは本来Googleのプロダクトとしては中心的な“推し”プロダクトであるはずだが今回の一連のアナウンスの中では影が薄い。「Google マーケティングプラットフォーム」の中にも姿は見えない。このプラットフォームには組み込まれないということでは無いと思うが、今後のアナウンスに注目したいところだ。
まとめ
DoubleClickとGoogle アナリティクス360スイートとの統合によって新しく誕生した「Google マーケティング プラットフォーム」の狙いは基本的にはこれまでの路線上にあるという理解で良い。しかし、今回のリブランドに伴い統合されたプラットフォームの恩恵を実感として感じ取るにはまだ少し時間がかかるのではないだろうか。特に、DoubleClickの普及において米国とは状況が異なる日本市場においては。
リブランドそのものが先行した感がある今回の発表ではあるが、Google Marketing Live 2018において感じた“熱気”は今後増々このプラットフォームがマーケティング活動の基盤として強化されていく事を感じさせてくれた。そして、そのデータ基盤についてはGoogle アナリティクスが、より一層その中心的役割を担って行くことは間違いないであろう。