Google アナリティクス360を導入企業様における活用事例。今回は地図情報サービスでおなじみの株式会社マピオン様に、分析環境改善についてのお話を伺いました。
マピオン様は、メディア・コンテンツ企業として地図情報サービス「マピオン」や様々なモバイルアプリを運用されています。
これらサイトやアプリの利用状況を計測し、分析・改善によってビジネスを成長させるためにGoogle アナリティクスのデータを活用されています。 さらに昨年から360版(有料版)へアップグレードされ、さらなる業務やビジネスの改善に取り組まれています。
今回お話を伺いましたのは、株式会社マピオン コンシューマーソリューション部 部長 團 琢海様、同、コンシューマーソリューション部 メディアグループ リーダー 村上 まり子様のお二人です。
Google アナリティクス360 導入の理由について
山浦:まず始めに、Google アナリティクス360の導入理由についてお聞かせいただけますか?
村上:弊社は地図情報を中心とした総合情報メディアサイトのMapion(マピオン)を運営し多くのユーザーにご利用いただいています。
以前よりGoogle アナリティクスのスタンダード版(無料版)を利用していましたが、ヒット数の増加に伴いスタンダード版のヒット数上限を超えた状態が続いていました。
山浦:Google アナリティクスの管理画面に警告表示が出ていましたか?
村上:はい、その通りですね。しばらくはそのままの状態で使っていましたがそのままの状態で使い続けるのは、企業の姿勢としてあまり良くないのではと・・。
それが360版の利用について検討してみようというきっかけになりました。
山浦:確かにその状態で利用を継続することは企業の姿勢としてもあまり好ましい状態ではないですし、データを継続的に業務に活かそうとする現場にとってもリスクがありますね。
ヒット数上限の他に、実際のデータ利用面では何かスタンダート版による不都合などはあったのでしょうか?
村上:スタンダード版の時はそれがツールの仕様だから“仕方ない”と思っていたことが、360版の検討を始め、その機能や仕様面の違いを知って、もっと使い勝手が良くなるということがわかりました。
山浦:仕様だから“仕方ない”と思われた点とは、具体的に教えていただけますか?
村上:まずは、集計データにサンプリングがかかることです。
弊社はメディア企業として運営しているサイトやアプリの利用状況(ページビュー数やアクティブユーザー数など)を可能な限り正確に知る必要があります。
サプリングされた統計値でも状況把握や傾向値を知るには十分なデータであると思いますが、ページ単位やコンテンツ単位への細かな分析に入っていくには、やはり全数に基づく集計データが必要になります。
山浦:メディア企業としてはとても重要なポイントですね。でも、これも仕様だから“仕方ない”と。
村上:はい、そうでしたね。
山浦:他にはいかがですか?
村上:(other)問題でしょうか。
山浦:標準レポートの「行動>サイトコンテンツすべてのページ」のレポートでは、サイトのページ毎のページビュー数などの集計データを見ることができますが、その“表示行数の上限”のことですね?
村上:はい。私たちが欲しいデータは、サイトのすべてのページについてのPV数データなのですが、このデータを見るには最終的には360版へのアップグレードとBigQueryへのエクスポートデータによる集計が必要ということがわかりました。これにより360版の必要性がより明確になりました。
山浦:おっしゃる通りですね。
レポート上での表示行数の制限は360版にアップグレードしたとしても無制限になるわけではありませんから(無料版は5万行、360版でも7万5000行まで。非サンプリングレポートを使っても300万行まで。)、レポートに表示される(other)に集計されるすべてのデータが必要な場合は、360版とBigQieryの連携をすれば取得が可能になりますね。
しかし、無料版から360版にするとそれなりに大きな費用負担があるわけですが、そこまで詳細なデータが必要である理由は具体的に何かあったのでしょうか?
村上:メディアサイトである以上事業の収益は広告収入になります。
弊社では広告配信のソリューションとしてDFP(DoubleClick for Publishers)を利用しており、Google アナリティクス360との連携によって広告事業への貢献も可能ではないか、と。
山浦:なるほど。ノンサプリングデータの活用や(other)問題解消は、どちらかと言えば分析業務環境の改善のお話ですが、DFPとの連携は広告収益への貢献ということでよりアクティブな目的にデータが活用できるという事ですね。
村上:360版の費用は決して小さな金額ではありませんが、より広範囲なビジネス貢献が可能になるということは大きなメリットと考えました。
山浦:Google アナリティクスデータによる分析データに基づいてDFPの広告配信に活かすためにも、ノンサンプリングの詳細なデータが必要であるわけですね。
分析環境改善のための具体的アクション
山浦:弊社はセールスパートナーとして、御社におけるGoogle アナリティクス360活用のご支援をさせていただいているわけですが、360版へのアップグレード後早々に、分析環境に関する課題解決アクションに取り掛かからせていただきました。
村上:はい、レポーティングにおける課題は現場の業務に直結しているため1日でも早く改善をしていただきたかったので早々に提案をいただきましたね。
山浦:弊社としてご提案できるプランはいくつかの方向性がありましたが、まず重要なポイントの1つとして、最終的にご利用になるレポートフォーマットがありました。
これまでは、無料版データのエクスポート機能を使ってご担当者が手作業でエクセルでのレポートを作成されていましたが、新しいフォーマットとして、Googleの新しいプロダクトであるデータスタジオと、弊社でも実績とノウハウがあるTableauでのレポーティングの2種類をご提案させていただきました。
あともう1つ重要なポイントだったのが、作業工数の削減です。
ご担当者様とお話をさせていただく中で、御社のレポーティングは日次・週次・月次ごとにメディアサイト「マピオン」のアクセスデータだけでなく10数種あるモバイルアプリについてのレポートも作成されていて、すべてのレポート作成におよそ月間で36時間かかっていることがわかりました。
これは、大変な工数なわけです。(笑)
村上:それまでは、業務としては必要な作業であると思っていましたが改めて工数として見てみると改善の必要性を感じましたね。
山浦:作業工数自体も見直せる部分が多くありましたが、レポートデータを見るタイミングも遅くなるわけですからスピーディな判断にも影響してしまいますね。
ノンサンプリングデータによるレポーティングの自動化を実現
山浦:これらの課題をすべて解決する方法として、Google アナリティクス360からBigQueryへデータエクスポートし、そのデータに基づいた日次・週次・月次レポート作成を自動化するという事になりました。
フォーマットは使い慣れた従来通りの形態がよいということでエクセルを選択されました。
実際の設計と自動化の仕組み構築には弊社のデータマーケティングエンジニア 井上が担当させていただくこととなりました。
井上さん、設計や自動化構築の面で難しかった点や苦労した点などあれば聞かせてください。
井上:マピオン様はとにかくデータ量が多いので、データ取得や集計の負荷を考えて設計するところに一番苦労しました。
大量のデータを、いかにエラーを出さずスムーズに処理できるようするか、という部分です。
山浦:データ集計とレポートの自動化というと、仕組みを作って回せばいい、と簡単に考えがちですが、実際にはそう簡単には行かないのですね。
井上:今回はエクセルで自動化レポートを作成するという課題でしたので、Googleのブログでも紹介されている「Supermetrics」(https://analytics-ja.googleblog.com/2016/10/facebookbingtwitter-google.html)を採用しました。
BiqQueryに蓄積したデータを、Supermetricsを使ってエクセルでレポートフォーマット化し、定期的に配信する流れを構築しました。
日次集計のレポートなどは、Google アナリティクスデータのBigQueryへのエクスポートタイミングやSupermetrics側の自動化の仕様などの兼ね合い、それと大量のデータをスムーズに取得し集計する部分などは特に工夫が必要でしたね。
山浦:データ活用の基本的なステップをシンプルに言うと「取る(計測・取得)」「見る(集計・分析)」「使う(施策・アクション)」ですが、Google アナリティクス360によって計測・取得したノンサンプリングデータを今回の仕組みによって集計・分析の部分をスピーディに自動化できたことで、より「使う」部分にフォーカスできるようになったわけですね。
改善によって得られたこと。
山浦:團さん、まずはノンサンプリングデータのレポート自動化は実現したわけですが、実際の業務については改善しましたか?
團 :はい、これまでの集計に掛けていた時間と担当者の負担が大幅に軽減されました。
その分の時間を分析や他の施策へ使う事ができるようになったのは大きな進歩だと思います。
ただ、早速なんですが、必要なデータが見たい形になってスピーディに届くという状況になった事で、追加の要件が担当者から上がってくるようにもなりました。(笑) 見たいデータの項目が増えてしまったんですね・・。
山浦:なるほど。それは非常に前向きな変化と捉えていいかと思います。それだけデータに対するニーズが広がっていることかと思いますので。
・・ということは、早々にレポートフォーマットの改定が必要ということかと思いますが、嬉しい悲鳴ですね。(笑)
團 :Google アナリティクス360のセールスパートナーを選定させていただく際に、アユダンテさんは課題に対する具体的な解決方法のご提案があり、そこへの期待が大きかったので、今回の改善はとても良かったと思っています。
この取り組みはこれからも改善を進めていかなければならない部分ですので、今後にも期待したいですね。
山浦:ありがとうございます。
今回の取り組みでは分析環境の改善を行い、レポーティングの仕組みは今後もバージョンアップしてく領域です。
今後はデータの活用面での支援も引き続きサポートさせていただければと思っております。
今回は貴重なお話をありがとうございました!