
株式会社アンドエスティ(以下、アンドエスティ)が運営する公式WEBストア「and ST(アンドエスティ)」は、「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」をはじめとするバラエティ豊かなブランドが集結し、ファッション、コスメ、フードなど多岐にわたるジャンルを展開するファッションプラットフォームとして成長を続けています。「Play fashion!」というミッションのもと、2,170万人を超える会員基盤を活かし、実店舗とECを融合させたOMO(Online Merges with Offline)施策を通じて、一人ひとりの多様なライフスタイルに寄り添い、ワクワクするような顧客体験の提供に注力しています。
本記事では、プライバシー規制の強化やCookie制限の影響により、従来の広告計測やGoogle アナリティクスでの適切なデータ収集が困難になっている課題に対し、サーバーサイドGTM(以下sGTM)とStape Inc.のサーバーサイドトラッキング(以下Stape)を活用した計測基盤の見直し支援の取り組みをご紹介します。多角的なブランド展開を行う同社において、プライバシー保護とマーケティング計測を両立させるための具体的な導入アプローチと、データの欠落を最小限に抑えることで実現した広告運用最適化の成果について詳述します。
ご依頼された経緯とお客様の要望
アンドエスティ様では、プライバシー保護規制の強化により、マーケティング活動において以下の課題に直面していました。
直面していた課題とご要望:データ欠損とサイトパフォーマンス
● 計測データの乖離と広告最適化への影響: 従来のブラウザを利用した計測手法では、広告経由で流入したユーザーのCookie有効期限が最短1日に制限されるケースがあり、数日後に購入(コンバージョン)に至った場合、正しく広告の成果として計測されないデータ欠損が発生していました。これにより、広告管理画面と実際の売上データに乖離が生じ、最適な投資判断やAIによる自動学習の効率を低下させる懸念がありました。
● Webサイトの表示速度低下の懸念: 従来のブラウザ側GTMでは、多数の広告タグや計測タグをユーザーのブラウザ上で読み込む必要があり、その処理負荷がWebサイトの表示速度やユーザー体験(UX)に悪影響を及ぼす可能性がありました。
施策のポイントと内容
これらの課題を解決するため、アユダンテはsGTMを活用した計測基盤構築を支援しました。単なるツールの導入にとどまらず、本番環境へ影響を与えないよう入念なABテストを実施し、効果を定量的に確認しながら慎重に段階的な移行を進めました。
■ポイント1
Google Cloud(Cloud Run)での初期構築と「同一オリジンアプローチ」の検証
【解決策】
まずは基本構成としてGoogle Cloud(Cloud Run)を用いてsGTMを構築し、ブラウザ側で行っていた計測処理を自社サーバー側へと移譲しました。さらに「同一オリジンアプローチ(自社サイトのドメイン内に計測用の専用経路を設ける手法)」を採用し、ITPによる制限をクリアし、本来の意図通りにCookieの有効期限を適切に延長(7日以上)できる環境を構築しました。これにより、セッションを跨いだユーザー行動やより適切なLTV(顧客生涯価値)の計測が可能になりました。
【検証結果】
30日間のABテストを実施した結果、従来のブラウザサイドGTMと比較して以下の改善が見られました。 ※Cookieの寿命が延長されることで、再来訪ユーザーが誤って「新規ユーザー」としてカウントされなくなり、より実態に近しいユーザー数が計測されるようになります
アプローチ方法の詳細は以下のコラムを参照してください。
https://ayudante.jp/column/2026-02-26/13-00/

※オリジン アプローチ(CDN転送)による、Cookieの有効期限を7日以上に延長
検証結果①:sGTM導入によるGoogleアナリティクスのユーザー重複カウントの排除

※対象はITP対応ブラウザ Safari、Safari(in-app)、検証期間は30日間
再来訪者が正しく識別され、過剰な計上が約15%適正化された
検証結果②:sGTM導入による広告経由のコンバージョン数計測の効果
※対象はITP対応ブラウザ Safari、Safari(in-app)、検証期間は30日間
計測欠損が防がれ広告経由のコンバージョン数が回復しました。以下の効果が期待できます。
● 広告の最適化: 自動入札やリマーケティング精度の向上
● 分析の高度化: より適切なLTV算出と、セッションを跨ぐユーザー行動の可視化
■ポイント2
全社展開に向けた課題発覚と「Stape」への環境切り替え
【課題の発生】
ステップ1の「同一オリジンアプローチ」による効果は絶大でしたが、本番導入を前にサイト環境を精査したところ、CDNを利用していない一部のサブドメインがCookieの有効期限延長の対象から漏れてしまうことが判明しました。CDNを用いた同一オリジンアプローチが取れないこの環境では、全社的な網羅性が担保できません。
【解決策(Stapeへの移行)】
このサブドメインの課題を解決するため、アユダンテはGoogle Cloudの構成から、サーバーサイド計測に特化したフルホスティングマネージメントプラットフォームである「Stape」への環境切り替えの提案・実行をしました。Stapeが提供する拡張機能「Cookie Keeper」を導入することで、CDN環境の有無に依存することなく、サブドメインを含むWebサイト全体で網羅的にCookieの有効期限を延長できるトラッキング環境を実現しました
※Stape Cookie Keeperの詳細はこちら
https://ayudante.jp/column/2026-02-26/13-00/
■ポイント3
計測タグの「断捨離」によるサイトパフォーマンス改善
sGTMへの移行を機に、長年運用されてきたブラウザサイドのGTMコンテナ設定を徹底的に棚卸ししました。不要なタグの削除や重複の排除、汎用的でシンプルな設定への見直しにより、ブラウザサイドGTMのコンテナ容量を約30%削減。これにより、ブラウザの処理負荷が軽減され、Webサイトの表示速度向上(UX改善)と、ミスの起こりにくいスマートな運用体制が整いました

多くのタグの処理をブラウザ側からサーバー側に移行することで、ブラウザの負荷を軽減し、Webサイトの表示速度や表示の安定性の向上が期待されます。
施策後の成果
本番環境と同等の条件で実施した入念なABテストを経て、sGTM(Stape )の本番導入が完了しました。
【定量的な改善成果】
● Googleアナリティクスのユーザー計測: より適切なユーザー識別により、新規ユーザーの過剰計上を約15%適正化(回復)
● 広告のコンバージョン計測: Google広告で約5%回復、その他広告で約50%の大幅回復
● GTMコンテナ容量: GTMコンテナ容量の約30%削減に成功
【定性的な成果】
セッションを跨ぐユーザー行動やより適切なLTVが可視化されたことで、広告の自動入札やリマーケティング施策の精度が飛躍的に向上する土台が完成しました。
お客様の声
- プライバシー保護の規制が強まる中、当社のマーケティング活動において、広告経由のデータ欠損やサイト表示速度への影響は喫緊の課題でした。今回、アユダンテ様にsGTMの導入支援をお願いしたことで、これらの課題を解決へと大きく前進させることができました。特に助かったのは、単なるツールの導入ではなく、事前のABテストを通じて定量的な効果を可視化しながら、慎重かつ確実に移行を進めていただけた点です。途中、サブドメイン環境での網羅性という技術的な壁にぶつかった際も、すぐに「Stape」という最適な環境への切り替えをご提案いただき、その柔軟な対応力と深い専門知識に大変救われました。
結果として、プライバシーに配慮しながらもより適切なユーザーデータやコンバージョン計測が可能となり、マーケティング投資の透明性が飛躍的に高まりました。加えて、タグの断捨離によってサイトの表示速度や応答速度が大きく改善され、お客様のUX(顧客体験)向上にも繋がったことは嬉しい誤算でした。 関係各所との調整など、親身な伴走支援に心から感謝しております。今後とも、当社のデータ活用基盤の進化へ向けた心強いパートナーとして期待しています。
株式会社アンドエスティ デジタルコマース事業部
大髙 浩子様
株式会社アンドエスティ様を支える担当スタッフ
担当スタッフからのコメント
株式会社アンドエスティ様には、各タグの要否確認のための社内外の関係部署との調整、DNS設定のご対応や、移行後の広告効果の数値チェックをしていただくなど、多岐にわたるご尽力を賜りました。技術的な課題もありましたが、アンドエスティ様との密な連携により、プロジェクトを円滑に推進することができました。その結果、Google検索がランキング要因の1つとしているサイトの応答速度を示す指標「INP(Interaction to Next Paint)」が約4割改善するなど、計測環境の整備以上の成果を収めることができました。
デジタルマーケティングエンジニアリングチーム:西村
付録: アユダンテのsGTMソリューション
アユダンテでは、お客様の課題解決と目指すマーケティング基盤の実現に向け、sGTM(サーバーサイドGTM)の導入から導入後の自社運用(自走)までをワンストップで支援するソリューションを提供しています。
1. 確実な移行と自走化を叶える「4ステップの導入支援」
既存のブラウザ側GTMを用いた計測環境(Googleアナリティクスや各種広告タグなど)を丁寧に調査・棚卸しし、要件とゴールを明確にした上で、最適なsGTM移行設計を行います。以下の4つのステップで、スムーズな環境移行をサポートします。
2. リスクを最小化する本番前の「ABテスト(定量的効果検証)」
「単に新しい技術を導入すること」が目的化しないよう、アユダンテではご希望に応じて、本番導入前にABテストによる検証期間を設けています。 本番とは別に検証用のGoogleアナリティクスプロパティを用意し、「コントロールグループ(従来のブラウザサイド GTM)」と「トリートメントグループ(sGTM)」の計測結果を比較します。これにより、sGTM導入による改善効果を事前に定量的なデータとして客観評価できるため、関係者全員が安心して本番導入の判断を下すことができます。
3. グローバルリーダー「Stape」とのパートナーシップによる最適環境の提供
sGTMを運用するにあたり、どのプラットフォームのサーバー(ホスティング)を利用するかは、機能やコスト、運用面、セキュリティの観点から非常に重要です。 従来、推奨してきたGoogle Cloudとの親和性の高い構成に加え、アユダンテは2025年11月14日、サーバーサイド計測をオールインワンで提供するグローバルリーダー「Stape」と新たにパートナーシップを締結いたしました。
インフラ構築・ホスティングの専門家であるStape社にサーバー基盤を任せることで、アユダンテは本来の最大の強みである「高度な計測設計と実装」に一層注力することが可能になりました。これにより、お客様の細かなニーズに合わせた、より柔軟で精度の高いサーバーサイド計測環境を提供いたします。



