皆様はGoogleが注力している機能の1つ、サーバーサイドGTMをキャッチアップできているでしょうか?
このコラムでは「サーバーサイドGTMってなに?」「自社に関係あるのかわからない」という方向けに、基本的な知識の解説を目的としています。
技術的・専門的な情報ばかりでとっつきにくいな、と思っている方のヒントに少しでもなれれば嬉しいなという気持ちで書きますので、ぜひお付き合いください。
このコラムは技術的な話をなるべくかみ砕いて説明することに重きを置いています。
エンジニアの方、サーバーやインフラ等の技術が分かる方にとっては本コラムは不十分だったり不正確に感じるかもしれません。
技術的な詳細情報については弊社エンジニアがさまざまな情報発信をしていますので、ぜひそちらをご利用ください。
コラム:GTMにサーバーサイドで動作するサーバー用コンテナが登場
コラム:【AYUDANTE NEWS 2025年3月号】教えて春山さん!サーバーサイドGTMって何?
GA4とGTMの超基本的なしくみ
GA4は計測タグによって定義された「何をどのように計測する」という内容に従って、Googleのサーバーにデータを保管し、それをレポートとして集計する役割を担っています。
GA4でデータを計測するには「Googleタグ」と「GA4イベントタグ」の2種類をサイトのソースコード上に設定する必要があります。
ですが、サイトのソースコードを編集するには開発リソースが必要になり、計測内容の追加や変更に手間がかかります。そこで役立つのがGTM(Googleタグマネージャー)です。
GTMは、ウェブサイトにタグを実装する作業を簡単にしてくれる「タグ管理」のためのサービスです。GTMを経由してGA4のタグを読み込むことで、サイト担当者はページのソースコードに直接タグを埋め込んだり編集したりしなくても、計測内容をいつでも自由に変更できます。

GTMは「どこで処理をするか」によって2種類に分かれる
GTMは「コンテナ」という大きな箱の中にいろんなタグ(GA4タグ、広告タグ、マーケティングツールのタグなどなど)を設定して使います。
通常のウェブサイトの計測を行う場合、以下画像の赤枠の2種類のどちらかを利用することになります。(他はアプリ用、AMPページ用の特殊なコンテナです)

ではこの2種類は何が違うのでしょうか。
簡単に言うと、「GA4や各種ツールへデータを送信するのがどこか」の違いです。
■「ウェブ」コンテナ(クライアントサイド)
通常のGTMはブラウザがタグを処理する仕組みになっています。
ユーザーがサイトに訪問してページを表示しようとすると、ブラウザはサイトのソースコードを読み込み、その中に書いてあるいろんなJavaScriptのタグを実行します。
そこに埋めてあるGTMスニペットタグが実行されるとGTMが動き出し、その中に入っているGA4の計測タグが実行され、Googleのサーバーにデータが送信される、という仕組みです。

ちなみにブラウザのことを「クライアント」と呼ぶことがあります。サービスや情報を要求する側なのでクライアント(依頼人)、ブラウザ上で実行される処理を「クライアントサイド」と表現する場合があるので、覚えておくといいかもしれません。
つまりサイトに埋め込まれた計測タグをブラウザが処理して、ブラウザが各ツールにデータを送信するのが、ウェブコンテナです。
■「Server」コンテナ(サーバーサイド)
もう一種類の「Server」コンテナはサーバーサイドGTM(sGTM)と呼ばれます。
サーバーサイドGTMを使った計測を簡単に言うと、ウェブコンテナを利用した処理の中の「③ツールへデータを送信する」という流れの間に、自社のサーバーを挟む形になります。

サイト上にはウェブコンテナを設置しておきますが、ウェブコンテナから送信されたデータはツールのサーバーではなくサーバーサイドGTMが受け取ります。
サーバーサイドGTM(Serverコンテナ)の中に設定されたデータ処理が反映された後のデータが、サーバーサイドGTMからツールのサーバーへ送信されデータが計測される、という流れです。
つまり、GA4へデータを送信する仲介役をしてくれるのがサーバーサイドGTMです。
ここまでの説明をすごくざっくりまとめると、
・クライアント(ブラウザ)が各種ツールにデータを送信するのがクライアントサイド
・サイトからウェブコンテナを使って取得されたデータを仲介役の自社サーバーから各種ツールに送信するのがサーバーサイド
となります(Serverコンテナを使うからウェブコンテナは不要、ではなくウェブコンテナとセットで使うのがServerコンテナというのが少しややこしいですね)。
サーバーサイドGTMってなんで必要なの?メリットは?
データ送信の仲介がサーバーサイドGTMと説明しましたが、仲介役はなぜ必要なのでしょうか。ブラウザからそのままデータを送る方がシンプルでわかりやすいのでは?と思うかもしれません。
サーバーサイドGTMは、直近の時流の変化に対応するために生まれた機能ですので、その点を踏まえてメリットを簡単にご説明します。
データ収集が困難になってきている時流への対応
Cookie取得がさまざまな要因で難しくなっている、という話はすでにみなさま聞き慣れた内容かと思います。
Cookieの寿命が短くなり、Cookie自体の取得も難しくなっている状態は、GA4の計測精度はもちろんですが、広告のコンバージョン計測精度にも影響します。
GA4で言えば、Cookie精度の低下は「同じ人を同一人物として特定するのが難しくなる」ことを意味します。
ユーザー数は実際の「人数」より多くカウントされてしまいますし、本来リピーターだった人が新規ユーザーとしてカウントされることで、「新規とリピーターの違い」のような分析が難しくなります。
また、GA4は「ユーザー単位の分析」に重きをおいてアトリビューションやLTVなどの機能が新しく追加されていますが、これらの機能の精度にあたって「1人の人をなるべく長い期間同じ人物として特定する」というデータ精度は重要になります。
各種広告媒体もCookie精度が低下することによって、CPAの悪化や自動入札・機械学習の精度低下など、広告の効率・効果が下がってしまう懸念があります。
広告はもちろん費用を使って出稿していますので、ある意味GA4より直接的に金銭的な損失につながるといえるでしょう。
ちなみに、Cookieには「今見ているサイト以外のドメインが発行したCookie=サードパーティCookie」と、「今見ているサイトのドメインが発行したCookie=ファーストパーティCookie」の2種類があり、サードパーティCookieはChrome以外の主要ブラウザでほぼ利用できなくなっています。
GA4自体もファーストパーティCookieを利用するようにしてこのCookie規制の潮流に対応していますが、実は「完全に計測精度は安心です!」という形で対応できているわけではありません。
サーバーサイドGTMを利用すると、Cookieを自社ドメインの自社サーバー(にあるServerコンテナ)が発行する形にできるので、データ取得の精度向上やファーストパーティCookieの有効期限延長が期待できます。
サーバーサイドGTMを使うメリットやそのしくみについては、以下のURLで詳しくご紹介しています。
プライバシーや安全性への配慮が求められる時流への対応
サイトのURLにうっかりメールアドレスが入ってしまった、のようなわかりやすいミスはもちろんNGですが、「媒体ごとに送信するデータの使い分けや送信OK/NGの違いがある」「広告のためにPII(個人情報)を取り扱う必要がある」など、データやタグの取り扱いは複雑化しています。
さらに「悪質な攻撃でデータ漏洩してしまう可能性がある」などセキュリティ面のリスクもあり、企業としてはこれらの時流に即して責任を持って対応する必要があります。
ブラウザからデータを送信する通常のウェブコンテナではこうしたリスクへの対応に限界がありますが、自社サーバー上でデータを処理することで安全に管理・各ツールでの活用ができます。
ブラウザの負担の影響権限
マーケティングツールの多様化・多機能化に伴って、サイトに設定が必要な処理やタグは増加しています。
通常のウェブコンテナではそれらの処理をすべてブラウザ側で行いつつ、ウェブサイトを表示する役割もブラウザで並行して行う必要があるため、タグの種類が膨大になるとブラウザの負担が大きくなり、ページ表示速度にも影響します。
サーバーサイドGTMを利用すると、ブラウザ側の処理を減らせるので負担が軽減され、ページ表示速度の改善が期待出来るケースもあります(これはあくまでタグの種類や数が影響している場合にその原因を軽減できるということですので、ページ表示速度が必ず早くなるというものではありません)。
お金はかかるの?導入は簡単?
特にデータの安全性や精度を気にする企業ではぜひ導入を検討してほしいサーバーサイドGTMですが、導入もそれなりに大変というのは注意してほしい点です。
■費用が別途かかる
サーバーサイドGTM(Serverコンテナ)自体の利用には料金はかかりませんが、設置・稼働するクラウドの利用料金(サーバー利用料)がかかります。
先にも少し書きましたがサーバーサイドGTM(Serverコンテナ)は、自社サーバーをクラウド上に用意して、そこに設置する必要があります。
そもそもデータの送信先を自社サーバーにすることでデータを安全・高精度で管理しようね、という考え方のツールだからです。
このクラウド環境を用意して利用するのに、毎月お金がかかります。
GTMはGoogleの製品なので同じGoogleのサービスであるGoogleCloudを利用するのが簡単ではありますが、一応Amazonなどが提供するクラウドでも利用できないわけではありません(ですがGoogleCloudを利用する場合と比べると設定がかなり大変なので、何か特別な理由がない限りはGoogleCloudを利用するのを推奨します)。
■専門知識や開発リソースもある程度必要
通常のGTMは巷に情報があふれているので、極端に言えば通常のウェブコンテナでは「JavaScriptってなに?」「サーバーってなに?」というレベルの人でも計測設定ができます。
しかし、サーバーサイドGTMは利用するまでにクラウド環境の構築、サーバー側の設定などウェブコンテナを使っているときには出てこない技術的な話が出てきます。
公式な情報もウェブコンテナほどわかりやすく案内されておらず、どちらかといえば技術者向けの情報が主です。
さらにサーバーサイドGTM(Serverコンテナ)の設定画面は通常のGTMコンテナと似てはいますが、見かけない設定項目もいろいろあります。
なので通常のGTMを使っていれば大丈夫!というわけではなく、追加で勉強していく必要があります。
もちろんこうした内容を理解して自分でちゃんと整理したい!情報収集をがんばる!という気持ちは大事ですが、自信がない場合は周りの人(特に開発担当者)を巻き込んで進められるよう社内調整したり、場合によっては外部の知見を頼る・外部のサービスを利用するという選択肢を検討する必要があるでしょう。
まとめ
長くなってしまったので、とりあえずこれだけわかっていれば大丈夫かな、と思う点をまとめてみます。
- サーバーサイドGTMとは、通常のGTMコンテナ(ウェブコンテナ)のデータの送信先を自社サーバーに変えて、データを安全に管理・活用するための機能
- 利用することで計測精度向上・データの安全性の向上などのメリットが期待できる
- 導入にはサーバー費用が別途必要
- 技術的な知識がゼロだとちょっと厳しいかも…、導入には味方を作るのが安心!
なるべく簡単に伝わるように書いてみたつもりですが、いかがだったでしょうか…。
■最後に少しご紹介
アユダンテではサーバーサイドGTMの導入支援サービスを提供しています。
サーバー・インフラなどの技術に携わらないビジネスサイドの人にとっては、よくわからない単語も多く、費用見積もりも出しづらいのでサーバーサイドGTMは導入ハードルが高く感じるかもしれません。
アユダンテではサーバーサイドGTMの導入支援サービスを提供していますが、単にサーバーサイドGTMを使えるようにするだけではなく、その機能をさらに強化できる「Stape」というサービスを使った導入支援を行っています。
コラム:アユダンテとStapeがパートナーシップに至った背景と想い
特にファーストパーティCookieの有効期限延長・計測精度の向上に取り組みたい場合や、社内リソースをあまり使わずサーバーサイドGTMを安定運用していきたい場合に導入メリットが多いサービスですので、ぜひ一度ご検討いただければ幸いです。




