昨今、Googleの検索結果画面(SERPs)の変化は目覚ましいものがあります。SEOはもちろんのこと、広告に携わっている人間としてもSERPsは切っても切り離せない、ある種、戦いの場所でもあります。その場において、キーワードがどのような状態で成果をもたらしてくれているのか、1つの事例を知ることができたので、共有したいと思います。
目次
検索結果画面(SERPs)に表示されるキーワードの分析
今回は、GoogleのSERPsに表示されているキーワードを分析しました。Googleでは、Search Consoleという分析ツールが用意されています。昔は「WEBマスターツール」などと呼ばれておりました。検索画面からどのようなキーワードでどのようなページに流入したかがわかるツールで、キーワードの表示順位もわかる、SEOに携わる方には必須のツールといえるのではないでしょうか。そのSearch Consoleと、Google広告の検索語句レポートをマージし、SERPsに表示されたキーワードを、SEOと広告、それぞれに分析しています。
今回分析したのは、旅行系予約サイトで、分析したキーワードは約210万ワード。過去6か月分のキーワードデータを併せ、SERPsMAXという統合診断サービスのツールを用いて分析しています。210万のキーワードを手動で分析するのはちょっと難儀ですが、ツールを使うことで無理なくSERPsの現状を把握することができました。
また、今回の分析データには、いわゆるブランドワードは含まれておらず、一般的なキーワードのみの分析結果となります。それらのキーワードを4つのグループに分類して、結果を出しています。
SERPsにおけるキーワードの分析結果
まず、以下の図をご覧ください。

4つのグループの分類軸は、『上位表示』されているキーワードとなり、それを、オーガニック(SEO)と広告とでそれぞれに分析しています。
このコラムのテーマは、SERPsにおけるCTRについて。では、まずCTRの状態はどうでしょうか。
実数は出さず、数値を丸めているため、少しわかり辛いかもしれませんが、結果として、どのグループにおいても、検索広告のCTRがSEOより高い結果が表れています。
10年以上前の話ではありますが、今のようにSERPsはリッチなものではなく、とてもシンプルに広告→オーガニックの順番に表示されていました。その頃は、広告より下に表示されるにもかかわらず、SEOのCTRが高かったと記憶しています。広告のCTRをどんなに改善していっても、SEOのCTRには勝てない……、そんな時代を経て、今は、広告のCTRが高いという例がでてきたことに、ささやかな驚きを感じています。
もう一つ、この4つのグループごとのCTRの違いに着目したいと思います。

グループAは、SEOも広告も上位表示されているキーワード群ですが、CTRも一番高いことがわかりました。キーワードの数は少なく、ブランドワード以外で構成された、上位表示されているキーワード群なので、このサイトのテーマに親密に関連していると推察します。そのようなキーワードは、やはり、SEOでも広告でも、CTRは高いのでしょう。
グループBは、SEOは上位表示されていて、広告は上位表示されていないキーワード群ですが、SEOのCTRは高く、広告のCTRは低いことがわかりました。SEOの中では2番目にCTRが高く、広告では3番目にCTRが高い状況です。キーワードの数はそこそこ多いですが、上位表示されているSEOは、SEOの中ではCTRが高めであり、広告の方は、低めでした。
グループCは、広告は上位表示されていて、SEOは上位表示されていないキーワード群ですが、グループBと真逆で、SEOのCTRは低く、広告のCTRは高いことがわかりました。キーワードの数が少ないのは、広告出稿をメインと考えているキーワード群なのかもしれませんが、このグループでも、上位表示されている方のCTRが高いことがわかりました。
最後のグループDは、SEOも広告も、どちらも上位表示がされていないキーワード群。キーワードの数は全体の約77%とほとんどを占めておりますが、CTRはSEOも広告も低い状態。170万近くのキーワードとなるため、一つ一つのワードは確認できませんが、まずSEOの視点をもって改善する、伸びしろの大きいグループだと感じています。
ここまでは、CTRについての考察ですが、総じて言えることは、表示順位が高い方が、CTRは高い、ということ。
「それって、当り前じゃない」と思われるかたも多いのではないかと思いますが、データとして確認できたことで、再認識できたのではないでしょうか。
もう一つ、この分析データには、検索広告の広告費用・コンバージョン数、(計測していれば)コンバージョン値まで含まれています。それにより、検索広告のグループ別の成果についても確認できるのです。

ROASは、SEOと同時に上位表示されているグループAが高く、費用データは広告のみが上位表示されているグループCが高い。このような、今まで考えたこともない、あるいは、考えてはいたけれども分析したことがない切り口で、データがさまざまなことを教えてくれています。ただ、データはデータでしかなく、このデータに至る背景や経緯を含めて、考察・仮説建て・プランニングを行う必要があると考えます。
分析の結果データを見る時の注意点
今回の分析データから、CTRはSEOより広告の方が高い、という結果がでました。しかしながら、どうでしょう。これは一例にすぎません。他のサイト・業種・広告の出稿状況などで、容易に違う結果がでるのではないでしょうか。同じサイトであっても、期間を変えることで、結果が変わる可能性もあります。また、SEOは検索されれば表示され、広告は入札戦略や予算によって、必ず表示されるものではありません。そこにもCTRの違いが表れる要因があるのかもしれません。
いずれにせよ、とても面白く有用な分析データであることに間違いはないのですが、反面、これは一過性のものなのかもしれないということを、肝に銘じる必要があると考えます。
SEOと広告 双方を把握して次の一手を企てる
今回、私がこの分析データを見て、一番はじめに興味深く感じたのはCTRについてなのですが、それ以外にも、いろいろな気づきがありました。今まで、広告サイドから上位表示やインプレッションシェアなどを気にかけ、それらのCTR・CVRの動向はどうなのか、という分析は行ったことがありました。しかしながら、SERPsという視点で分析を行ったことがなかったので、SEOでの状況、広告の状況を、双方分析した結果を把握することで、次の一手が複数検討できるのではないかと考えています。
例えば、SEO×広告を同時進行で語る場合、広告費削減のためのキーワードのカニバリ(重複)に焦点を当てることが多いと思います。でも、分析結果を把握することで、カニバリを気にするべきか、売上げ最大化のために広告出稿するキーワードを再編成するべきか、など、改めて検討材料が発掘できるようになります。
同一のSERPs上に表示されるSEOと広告。どちらもサイトへの入り口であり、その入り口から入っていただくことでビジネスは始まります。しかし、そのSERPsは猛烈なスピードで変化し、SEOの仕様や広告の配信システムも容赦なく変化している今、どちらか一方に偏ったデータだけでは、有益な次の一手につながらなくなってきているのかもしれません。自社の情報がSERPsにどのように表示されていて、どのような役割を果たしているのか。SEOと広告と、その役割を併せ考えることではじめて、SERPs上での戦略をより強固なものにできるのだと私は考えます。