Microsoftは9月22日に、Bing Chat専用に設計された「Compare & Decide Ads(比較・決定広告)」と呼ばれる、今までにない新しい広告フォーマットの発表を行いました。
Bing Chatは生成AIの力を活用して、能動的な情報収集の王道であった検索からチャットでのAIとの対話に拡張していき、すでに今年2月以来、チャット内でテキスト広告、ショッピング広告、マルチメディア広告、ホテル広告、不動産広告等の広告フォーマットのテストを開始しています。
今回、新しくリリースが発表された「Compare & Decide Ads」の新しい特徴は、あらゆる情報をAIにまとめさせるだけでなく、それらをユーザーが重要だと思う観点から比較できるよう表にまとめ評価できる点にあります。
検索では得られない「比較して決定する」体験の中に組み込まれる広告になりますので、今後の展開が期待されます。この記事では、現在わかっている事をまとめてご紹介させていただきます。
Compare & Decide Ads(比較・決定広告)リリースの背景
MicrosoftはChatGPTの開発元であるOpenAIに巨額の投資を行ってきており、その技術をMicrosoft 365やWindowsをはじめとした、自社製品に組み込んでいく方針をとるなど、対話型AIに大変力を入れてきました。
このような方針の中で、Microsoftは2023年5月、Bingに検索エンジン初の試みである会話型AI機能Bing Chatを一般公開しました。
Bingに対話型AIのBing Chatが搭載されると、Googleも自社開発した対話型AIの「Bard」をリリース、その後すぐにBingと同様にGoogleに搭載するといったように、世界的なIT企業が生成AIに力を入れ始めたのもあり、世界的な生成AIブームが起きました。
対話型AIは若年層を中心に評価を得ており、タスクをより迅速に処理することができているといいます。
検索の一問一答形式ではなく、対話する中で情報を取り入れ決断することができるなど、今後のユーザー体験のひとつとして必要不可欠な存在であるといえるでしょう。
今年5月のa2iのオンラインセミナーにて、Vice President Japan, Microsoft Advertisingの有園氏は、実際にBing AI チャットで広告枠が増加していると述べています。
出典:a2i 【活動報告】オンラインセミナー「注目 Microsoft 広告とAI~デジタルマーケティングはどう変わるのか?」
会話型AIのBing Chatが便利な点
検索ではできない会話型AIならではの情報の聞き方として、複数の類似した商品(サービス)について、自分が重要視している項目の対比表を作成してほしいと依頼すると即座に作成してくれます。
たとえば、ハイブリッド車の購入を検討しており、いくつかのメーカーやモデルを「価格、燃費、バッテリー保証期間」で比較したい場合、比較表を作成してほしいとBing Chat に指示するだけで以下のような比較表が即座に作成されます。
購入したい商品やサービスが複数のメーカーやモデルがあるような自動車は便利ですし、旅行やクレジットカード、スマートフォンなども自分の気になる点を入れた比較表をBing Chatに作成してもらうと、比較検討するための情報収集がより楽になるのではないでしょうか。
Compare & Decide Ads(比較・決定広告)とは
Compare & Decide Adsとは、まさに先ほどご説明した比較表のようなユーザーが比較検討したい対象の商品やサービスを簡潔な表にまとめた表型の広告です。
この広告は、小売・旅行・自動車などフィードデータがあるすべての商品・サービスで実施することが予定されています。
なお、Compare & Decide Adsは2024年初頭に一部の利用者を対象にベータ版を開始するとのことです。
画像はMicrosoft 広告ブログより引用
自分が気になっている事をBing Chatに聞いているときに、表として出てくるのであれば、いつもは“出てくるとうるさい単なる広告”ではなく、自分に”必要な情報”としてユーザーは認識するのではないでしょうか。
広告が出るタイミングも出し方もユーザーにとって適切な形で配信できるため、今後に期待できます。
まとめ
今回ご紹介したCompare & Decide Adsは、他の製品(サービス)との比較検討がされやすい旅行・小売・クレジットカード・自動車などは特に取り入れたい広告の一つになるのではないでしょうか。
MicrosoftはCompare & Decide Adsに対し、ユーザーがChatで独自の検索をする際に適した広告フォーマットにするための取り組みの 1 つに過ぎないと言っているため、今後も対話型AIの中の広告フォーマットに注力していくでしょう。
近いうちにさらにChatで検索するユーザー体験に適した広告が展開される事に期待しつつ、今後の動向に注視していきたいと思います。