Facebook・Instagram広告、こんなふうに作ってます ~私のFacebook&Instagram広告運用part2
2020年12月9日
ライター:粂野 三佳
SEM

前回のコラムでは「クリエイティブ」を運用して広告成果の改善を図る私流のFacebook・Instagramの広告運用方法についてお伝えしました。今回は具体的な広告作成の手順をご紹介します。前回同様、アユダンテ広告チームの朝ミーティング内勉強会でお話した内容の一部を抜粋しています。

1.広告作成の手順

クリエイティブの運用方法の図(前回コラム参照)でいうと、赤枠の部分が広告作成にあたります。

クリエイティブの運用方法概要図

広告作成は下記のような手順で行います。

1. リサーチ
2. ベネフィットの抽出
3. 訴求軸の選定
4. 画像・テキストの選定
5. プレビュー確認

広告作成において何でも自由であることは稀で、何かしらの制限があることが多い現実があります。例えば、クライアント提供の画像しか使用できない、テキスト表現に制限があるなどブランドガイドラインの遵守が必要な場合です。私たちは制限がある中で最善の表現を模索していきますがそこで忘れてはならないのは、提案する前に「○○だから」と様々なアプローチをあきらめてしまうことだと思っています。よくなるための提案であれば、できるできないを自分で判断せず、まずは伝えることが大切です。

では、さっそく次から架空商材で具体的に作成していきましょう。

2.架空商材で疑似作成

前回のコラムでも使用したワイヤレスイヤホン「ミミ」の広告を出稿する前提で、手順に沿った広告作成を行っていきます。

ワイヤレスイヤホン「ミミ」の紹介
ワイヤレスイヤホン「ミミ」の特徴

(1)リサーチ方法

広告作成に着手する前にまずリサーチをします。リサーチといっても私は二つの視点での調査を行っています。

① ビジネス・商材理解のためのリサーチ

ビジネス理解、商材理解ははじめての広告配信の際に特に必要になります。その後はトレンドの把握や、競合や市場の動きなどの情報収集を行っています。実店舗へ陳列などを見に行くこともあります。今回、ビジネス商材理解のためのリサーチには下記を活用しました。

商材・ビジネス理解のためのリサーチ

② 広告表現のためのリサーチ

広告表現のためのリサーチは、広告の見せ方のヒントを得るために必要です。デザインイメージの参考資料や使用する文言の選定、競合の広告調査などを行います。広告表現のためのリサーチには下記を活用しました。特に、PinterestやFacebookの広告ライブラリは非常に簡単に調査ができ、参考にすることが多いです。

広告リサーチ

ワイヤレスイヤホン「ミミ」のリサーチ(Pinterest)
Pnterestの検索イメージ図

Pinterestでは複数のキーワードで検索します。今回は「ワイヤレスイヤホン」「広告デザイン」「広告バナーデザイン」を検索しました。検索結果の中から気になった画像やおもしろいデザインなどをピックアップしておきます。「広告デザイン」と「広告バナーデザイン」では異なる結果が返ってきました。「広告デザイン」はポスターやフライヤーなどが多く表示され、「広告バナーデザイン」はWebサイトやバナーなどが多く表示されました。複数のキーワードで検索してみると違った角度での発見があります。
自分のPCやスマートフォンに日頃表示される広告のキャプチャを集めておき、その中からデザインイメージをピックアップすることも有効ですが、Pinteresでは自分にターゲティングされていない幅広い商品やサービスのイメージを効率よく得られるメリットがあります。

ワイヤレスイヤホン「ミミ」のリサーチ(Facebook広告ライブラリ)
Facebbok広告ライブラリ

ミミのリサーチでは「Apple」「Galaxy」「Google」などを検索しました。その他、NikeやStarbucks、ユニクロなど「ミミ」とは異なるカテゴリの広告も確認しました。広告出稿のないところもありました。 広告ライブラリでは自分が知っているブランドやメーカーしか検索できませんが、そのアカウントから配信されている広告がすべて確認できます。広告のバリエーションを知ることは、比較検証軸を選定する際の参考になります。

(2)ベネフィットの抽出

ベネフィットの抽出も二つの視点から行います。「モノ視点(WHAT)」と「人視点(WHO)」です。この二つの視点を照らし合わせ「誰に何をどう見せるか」を考えます。

① モノ視点(WHAT)

「モノ視点(WHAT)」では商品やサービスの特徴や機能ベースにベネフィットを考えます。特徴の長所、利点を書き出し、その利点によって利用者が得られる価値は何かを考えていきます。どこがメリットでベネフィットなのか、わかりにくくなったときは「だから何?」と問いかけてみると掘り下げていくことができます。前回のコラムで記載した方法です。

ワイヤレスイヤホン「ミミ」のベネフィット探し(WHAT視点)
特徴からベネフィットを考える

② 人視点(WHO)

「人視点(WHO)」ではペルソナや年齢・性別や興味関心ごとで共通するイメージ(好きなもの、ブランド、色、価値観、抱えている問題など)から、商品やサービスを使うことで得られる結果を考えます。その他の方法としてクレイトン・クリステンセンの「ジョブ理論」をもとに、どんなジョブを解決できるのかを考えることもあります。ジョブ理論を活用する場合、ユーザーの置かれている状況、どんなときにどんな感情なのか、ユーザーの持っている思い込みは何かを具体的に想像していくので考えるほど細分化されていきます。細分化された状況を想像しておくことは、画像イメージを選択する際の役に立ちます。

ワイヤレスイヤホン「ミミ」のベネフィット探し(WHO視点・ジョブ理論)
マインドマップを使ったターゲット像の抽出例

人が抱えている問題や願望、思い込みを書き出します。さらに詳細な状況を想像して派生させます。マインドマップを使うとグルーピングしやすいのでよく使っています。

(3)訴求軸の選定

訴求軸を選定する際には、モノ視点で考えたベネフィットと、人視点で考えた問題や理想の状態を照らし合わせます。「誰に何を見せるか」の組み合わせを考えるイメージです。いくつかパターンができたら、そのパターンの訴求していることを端的に表す名前をつけます。

ワイヤレスイヤホン「ミミ」の訴求軸選定
訴求軸の「誰」と「何」の掛け合わせ例

1つ目の組み合わせには「おしゃれ訴求」、2つ目の組み合わせには「WEB会議訴求」と名前をつけました。他にもパターンができましたが、「おしゃれ訴求」は競合にはない強みがある(仮説)=差別化の観点、「WEB会議訴求」は今の時勢にマッチしており、より多くの人に該当する(仮説)=時勢の観点で選定しました。多くのパターンができた場合は、先出のように訴求軸の仮説と選択した理由を明確にし、言語化しておくことが必要です。この仮説は結果を検証する際に役立ちます。選択しなかった訴求は、今後のテストのためにストックしておくとよいでしょう。

(4)画像、テキストの選定

訴求軸が決まったら、商品やサービスに合い、かつ、ベネフィットの際立つ画像を検討します。リサーチの際に集めた参考資料からイメージに合う画像を選びます。この際、広告のリンク先として使用するページのイメージと一貫性が維持できる、親和性が高くなる画像イメージを選択することも重要です。逆に、リンク先ページ内の画像やテキスト表現を広告に合わせて変更することもあります。テキストに関してはクライアントのサイトのイメージや広告のリンク先として使用するページでの表現(堅い表現が多い、フレンドリーな表現が多いなど)に近くなるように意識しています。これも広告とページの一貫性を維持するためです。また、リサーチで集めた商品レビューや口コミなどでよく使用されていた言葉やフレーズがあればテキストの中に含めるとよいでしょう。

ワイヤレスイヤホン「ミミ」の画像選定
画像選定例

画像選定時も何を比較するかを明確にします。いくつかのパターンを検討し、クライアントと議論します。ミミの場合は、まず商材のみの画像でスタートし、カラー(シックで高級感のあるカラーと明るくてポップなカラー)要素で成果に違いが出るかを検証することにしました。内製のクリエイティブチームがある場合はフリー素材などの活用はせず、新しく撮影を行う場合もあります。クリエイティブチームとの連携ではリサーチで収集した画像イメージや意図などを共有し、共通認識を持つことが大切です。

ワイヤレスイヤホン「ミミ」のテキスト選定
テキスト選定例

Facebook・Instagram広告の説明文を考えるときに最も重要視しているのは冒頭部分です。冒頭で興味を持ってもらえると、テキスト全体を読んでもらえる可能性が高くなります。意図を明確にしてさまざまな案を出します。キャッチコピーとも言える重要な部分です。テキストをいつも一人で考えると表現が似通ってきてしまうことがあるので社内のメンバーやクライアントなど、複数で意見を出し合うようにします。この方法はバリエーションの幅が広がり、自分自身の語彙や表現を増やすきっかけになるのでおすすめです。Facebook・Instagram広告の場合は絵文字や記号を使って目立たせる工夫をすることもできます。

(5)プレビューの確認

訴求軸が決まり、画像・テキストのイメージが固まったら、いよいよ広告配信も目前です。Facebook・Instagram広告の配信を開始する前に必ずプレビューを確認します。クライアントにテキスト表現のチェックを受ける場合も、エクセルやスプレッドシートを使い、プレビューに模した広告イメージ全体が見られるように準備をしてチェックを受けることをおすすめします。テキストだけを読んだときの印象と、画像などと一緒に広告として表示されたときの印象が大きくことなることがあるからです。また、フィードに表示されたときの改行の位置なども確認します。一文字だけが改行される場合などは表現を再考して、1行に収まるほうが、視覚的に捉えやすく理解してもらいやすくなります。使っているデバイスやスマートフォンの機種によって文字数に多少の違いはありますが、たいていのモバイルの場合、21~23文字で改行になることが多いので目安にしています。また、見出し部分はFacebookとInstagramで表示される形式が異なるため、プレビューで表示されたときの文字の並びやことばの重複などにも気をつけましょう。

ワイヤレスイヤホン「ミミ」のプレビュー確認(Excelテンプレート使用)
Facebook広告のExcelテンプレート例

テンプレートでは関数で疑似プレビュー部分にテキストが入るように設定します。

ExcelでのFacebook広告プレビュー

ExcelでのInstagram広告プレビュー

Excelを使用する場合、フィードに配信されたときの見え方にできるだけ近くなるよう、改行、CTAボタン、アイコンなども設定します。これは一枚の静止画のパターンですが、異なるフォーマットのテンプレートも作っておくと提案するときに便利です。

3.広告の配信がスタートしたら

広告の配信がスタートしたら、クリエイティブの運用方法の図でいう、「データ」と「学習」の段階に入ります。結果(データ)を見ながらパターンの分析と気づき(学習)をメモしておき、よい要素を踏襲した別パターンの広告の作成をはじめ、要素選定のサイクルに戻ります。どの広告の成果がよいのか判断が難しいこともあるので、Facebook広告のテスト機能を使うとスムーズに検証が可能です。
「ミミ」でのテストパターンは画像のカラーと冒頭テキストの2軸を選定しました。比較対象の軸を増やしすぎるとそれぞれの要素が複雑に入り組んでしまい判断がむずかしくなることがあります。わかりやすいのは2種類の要素です。3種類以上になると判断に迷うことも多くなるので慎重に進めましょう。
また、良かった要素を踏襲した広告展開は必須ですが、そればかりにこだわりすぎるとどこかで限界が必ずやってきます。そのため、良好要素を踏襲した広告は配信しつつ、新たな切り口の画像やテキストの追加、新しい訴求軸探しも並行して行っていくことが欠かせません。長く運用をしているアカウントの場合は特に、これまでの思い込み、先入観が自分自身の中に根強くあることを自覚しなくてはなりません。時々、第三者の意見を聞いたり再度リサーチを行ったり、自分の視点を変えるアクションをして新しい発想に結びつけていきましょう。

4.おわりに

ここまで私流のFacebook・Instagram広告の作成方法をお伝えしてきました。このように画像、テキストなど広告に含まれる要素を仮説から選定し、結果検証をもとに広告のパフォーマンスを上げていくことが「クリエイティブを運用する」ことだと考えています。今回はほとんど触れませんでしたが、私の考える「クリエイティブ」の定義にはランディングページも要素のひとつとして含まれています。(ランディングページについてはまた次の機会に。)クリエイティブの運用では広告を広範囲でひとつのまとまりと捉えることが重要だと思っています。
広告の作成方法は人それぞれで「正解」はひとつではありません。唯一言えることは、媒体の機能をうまく活用しながら人にしかできない部分への注力が広告パフォーマンス最大化のためには必要だということです。今、注力すべきことを見極めて、常に変化していける柔軟性を持っていたいものです。

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