Facebook広告におけるITP対策(ITP2.1→ITP2.2)のポイント
2019年06月24日

WEB広告業の従事者にとって注目度の高いITP2.2(Intelligent Tracking Prevention)。この登場によりSafariを利用しているユーザー(主にiphoneユーザー)へのリターゲティング広告やコンバージョン計測に大きな影響が出ることが想定されています。

当記事では、Facebook広告を利用する上でITP2.1→ITP2.2による影響と対策についてご紹介します。結論から言うと、ITP2.2対策を完璧に行うことは現時点では不可能です。できないことを知り、その上で何ができるのか理解する事を目的とします。また、当記事で記述する内容はFacebook社のベストプラクティスというわけではなく、筆者の見解としてご理解ください。

ITP(Intelligent Tracking Prevention)2.1、2.2とは?

ITPとはApple社のWebブラウザ「Safari」に搭載されたサイトトラッキングを抑止するための機能です。具体的にはリターゲティングやコンバージョントラッキングに使用されるcookieの保持期間を短くすることで広告の追跡を抑止するといったものです。ITPの後ろに付いている2.1や2.2などはバージョンを表しており、バージョン毎の仕様があります。ITP2.1についての細かな仕様については、解説記事などもネット上に多数公開されていますので詳細な説明については割愛します。

Facebook広告への影響という観点でまとめると、ITP2.1ではsafariユーザー(主にiphoneユーザー)に対してFacebook広告でリターゲティングできるのがWebサイトに最後に訪問してから7日間まで、コンバージョン計測も同様に7日間までとなります。ITP2.2ではその縛りがさらに厳しくなり、リターゲティングできるのは24時間まで、コンバージョン計測ができるのも24時間までとなります。2019年6月現在ではITP2.1の状態と思われますが、ITP2.2の実装は発表されていますので随時、切り替わっていくと想定されます。

ITPによるFacebook広告への影響まとめ

ITP2.1:リターゲティング広告(7日間)、コンバージョン計測(7日間)

ITP2.2:リターゲティング広告(1日間)、コンバージョン計測(1日間)

※safari利用ユーザー(主にiphone利用ユーザー)のみ

ITP2.2によって想定されるFacebook広告のリターゲティングへの影響
cookie保持期間(7日→1日)の短縮によるリターゲティング広告の配信量減少とフリークエンシーの上昇

cookieの保持期間が短くなること(オーディエンスリスト件数の減少)は、リターゲティングによる広告配信量の減少を意味しています。また、Facebook広告におけるリターゲティングは成果が上がりやすいがゆえに、多くはないオーディエンスリスト件数にも関わらず広告予算を強めることが多く、フリークエンシー(※)が高まる傾向にあります。その状態にITP2.2が重なるとフリークエンシーがさらに高まり、ユーザーにネガティブな印象を与え、ブランド毀損につながることは想像に難くありません。

※フリークエンシーとは
1人のユーザーに対して広告が何回表示されたかを表す指標。

対策方法

a) 保持期間2日でカスタムオーディエンスリストを生成して状況把握
まずはサイト訪問ユーザーのカスタムオーディエンスリストを保持期間2日で作成しておきましょう。作成理由としては、ITP2.2ではcookieを24時間しか保持できないため、その範囲で取得できるおおまかなcookie数を把握するためです。媒体側の方針にもよると思いますが、保持期間180日などで生成したカスタムオーディエンスリストの件数が正しい数値を表示しているとは限りません。ITP2.2によって使用できなくなったcookie数が除外されない仕様だった場合に備えて、実際に配信できる件数を把握する目的で作成しておきましょう。
b) リターゲティングのみの広告セットはフリークエンシーを定期的にチェック
リターゲティングのみ設定している広告セットの場合、ITP2.2の実装によりオーディエンスリストの件数が一気に減少することでフリークエンシーが高騰する可能性があります。例えば、10万件のオーディエンスリストに対して日予算5万円で配信してフリークエンシーが1.5となっていたものが、ITP2.2によりオーディエンスリストが2万件に減少したことでフリークエンシーが4~5程度に跳ね上がるケースが想定されます。

商材や広告の種類にもよりますが、筆者の感覚ではフリークエンシーは2を超えると黄色信号で、3~4になるとターゲティングもしくは広告を変えることを検討します。また、広告に対して「ネガティブなコメント」や「ひどいね」などがついていないか定期的にチェックしましょう。
c) リターゲティングのみの広告セットはなるべく使わず、リターゲティング+類似オーディエンスなどの組み合わせで使用することを検討する
リターゲティングのみの広告セットでフリークエンシーが高まってきたら、有望な類似オーディエンスなどを追加することでフリークエンシーの抑制につながります。Google広告に慣れている方はオーディエンスリスト毎の成果が見えないという点がネックと思われるかもしれませんが、機械学習の観点から見ても広告セットを分けて配信するリスクの方が高いと筆者は考えています。どうしても検証したければABテスト機能などで短期間の検証を行うと良いでしょう。

ITP2.2によって想定されるFacebook広告のコンバージョン計測への影響
Facebook広告に接触(クリック or ビュー)してから24時間以上経過するとコンバージョン計測ができない

Facebook広告のコンバージョン計測はITP2.1では7日間でしたが、ITP2.2では24時間に短縮されます。これにより例えば、毎月50件コンバージョンが取れていたのに、今では30件に減ってしまったということが起こる可能性があります。特に、検討期間が長い商材(BtoBで稟議などが必要なコンバージョンポイントなど)ではFacebook広告に接触してからコンバージョンに至るまでの時間が24時間を超えることも多く、顕著に影響がでると想定されます。

対策方法

a) 自動詳細マッチングによってコンバージョン計測出来る件数を増やす
Facebook広告ではFacebookピクセルに対して、自動詳細マッチングという設定を行うことで本来はトラッキングできないコンバージョンの一部を計測することができるようになります。設定方法のリンクと確認方法を後述しますので、基本的に必ず設定しておくと良いでしょう。
【参考】自動詳細マッチングの概要と設定方法
※「自動詳細マッチング」によって増加したコンバージョン数の確認方法
イベントマネージャーの「ピクセル」タブをクリック
上記の例では、自動詳細マッチングによりCompleteRegistrationが過去24時間で50%ほどCV数が増加したことがわかります
b) コンバージョン数によっては検討期間の短いマイクロコンバージョンに切り替える
ITP2.2実装後は24時間以上経過するとコンバージョンが計測できなくなります。影響としては、全体のコンバージョン数が減り、機械学習による最適化が適切に働かなくなる可能性があります。その場合は、検討期間が短いと思われるマイクロコンバージョン(例:購入→カート追加)を設定して機械学習を大きく乱さないアプローチが必要と考えられます。