AppleのSafari11.0から搭載されるIntelligent Tracking Prevention。
これにより、サードパーティのCookieを使った広告の配信や計測に影響が出る見込みです。
Intelligent Tracking Preventionの影響範囲は?
影響回避策は?
Intelligent Tracking Prevention の登場で、今後ますます重要性が高まる、AdWordsとGAの連携について解説します。
- AppleのIntelligent Tracking Preventionとは?
- デスクトップだけの話ではない
- リターゲティングだけの話ではない
- 海外ではIABはじめ主要な広告業界団体から抗議が出たが、Appleは当初の方針を貫く返答
- Googleは対応策にGoogleアナリティクスを活用
- 結論:AdWordsとGoogleアナリティクス連携はより重要に
AppleのIntelligent Tracking Preventionとは?
Intelligent Tracking Prevention は、プライバシー保護の観点から、新しいSafariは機械学習を用いてサイトをまたがって追いかけるトラッカーを特定、そのトラッキングデータを分離(削除)するというもの。
2017年6月5日、Appleの開発者向けカンファレンスWWDC17のキーノートで発表されました。
これによりWebは通常どおり動作するが、ユーザーのプライバシーは保護されるといいます。
プレゼンテーションを見れば明らかですが、いわゆるリターゲティング広告で追い回されるユーザーのプライバシーを守るための解決策として説明されています。
同じ日にIntelligent Tracking Preventionについて詳しく述べた記事がWebKitのブログで公開されています。
機械学習によりWebサイトをまたがってトラッキングできると分類されたドメインのCookieは、そのドメインでクリックやタップなどのインタラクションが起きてから24時間以内にユーザーがまたそのドメインにアクセスしなければ、その後はサイトをまたがったCookieとしては使えなくなります。
※2017/10/05 読者からのご指摘を受け、上記1文の表現を初出時点から変更しました。
デスクトップだけの話ではない
WWDCキーノート内、MAC OSの文脈で語られたこともあるためか、デスクトップに限ったことと受け止める向きもあるようです。
しかし、Apple の開発者向けのSafari 11.0のページには、iOS 11.0つまりモバイルにも適用されることが明記されています。
追記:新しくなったSafari 11.0の設定には、以下の「サイト越えトラッキングを防ぐ」がデフォルトでオンになっています。
これによる自社サイトの影響度をはかるには、Googleアナリティクスが使えます。
Googleアナリティクスのユーザー>テクノロジー>ブラウザとOSから、自社サイトにSafari経由で訪問するユーザーがどれくらいいるのかを確認できます。
またSafariのリンクをクリックすれば、Safariのバージョンも確認できます。
リターゲティングだけの話ではない
WWDCキーノートでリターゲティング広告が例にとられたため、どうしてもリターゲティング広告に目が向きがちですが、Intelligent Tracking Preventionの対象がWebサイトをまたがってトラッキングが可能なサードパーティのCookieであることを鑑みると、広告媒体のコンバージョンにも影響があると考えるべきです。
ほとんどのWeb広告媒体は、ユーザーが閲覧しているページのドメインとは異なるドメインのCookieを使用してコンバージョンをトラッキングしているからです。
※2017/9/25 上記1文の表現を初出時点から変更しました。
実際後述するように、Googleは今回のIntelligent Tracking Preventionに伴い、コンバージョンの測定方法を更新しています。
参考)
海外ではIABはじめ主要な広告業界団体から抗議が出たが、Appleは当初の方針を貫く返答
このIntelligent Tracking Prevention導入を受け、海外では広告業界団体がAppleに対して抗議しました。
2017年9月14日、Appleに対して、IAB(Interactive Advertising Bureau)はじめ、主要な広告業界団体から「現代のインターネットのインフラに影響を与える変更であり」「インターネット経済のモデルを妨害するものである」と意見が出されています。
この抗議に対してAppleは「Intelligent Tracking Preventionは広告をブロックするのではないし、実際にクリックして訪問したサイトのトラッキングにも干渉しない」「ユーザーのプライバシーを保護するための最も進化した方法である」と当初の方針を貫く返答をしています。
参考)
Googleは対応策にGoogleアナリティクスを活用
2017年9月9日頃、一部の広告主に向けてGoogleから「重要:AdWordsでのコンバージョンの測定方法が更新されます」とのメールが届いています。当記事の論旨にとって必須と考えられるため、引用します。
“お客様の AdWords アカウント(お客様 ID: XXX-XXX-XXXX)は、これから AdWords に加えられる変更の影響を受ける可能性があるため、このメールをお送りしております。
今月 Apple が導入予定の「Intelligent Tracking Prevention」機能は、Safari ブラウザでの AdWords のウェブサイト コンバージョン トラッキングの精度に影響を及ぼす可能性がございます。つきましては、お客様のアカウントで正確なコンバージョン データをレポートできるようにするため、広告のアトリビューションに関する Apple の推奨事項に即し、次の 3 つの変更を実施いたします。
1.自動タグ設定が有効になっており、Google アナリティクス タグが実装されているサイトでは、今後、ドメインに Google アナリティクスの新しい Cookie が設定されるようになります。この Cookie には、お客様のサイトにユーザーを誘導した広告クリックに関する情報が保存されます。AdWords と Google アナリティクスのアカウントがリンクされている場合、AdWords のコンバージョン トラッキング タグでその情報が使用可能になります。
2.AdWords では引き続き、Google のサービスやドメインを最近利用したユーザーのコンバージョンをレポートいたします。</p
3.また、統計モデルを使用して、Safari で測定できなかったウェブサイト コンバージョンを推定し、その推定値もお客様のレポートに含めてまいります。
(強調表示は筆者)
つまり、以下の二つになると考えられます。
- ・AdWordsとGoogleアナリティクスが連携されている場合
- Googleアナリティクス側のCookieでAdWordsのクリック情報を保存し、AdWordsのCVの計測の際に使えるようになる。つまり、これまでどおり。
- ・AdWordsとGoogleアナリティクスが連携されていない場合
- Safari経由でアクセスしてから24時間後に発生するCVは、統計モデルによる推定値がレポートに反映されるようになる。
2017年9月より新たに用意されたGoogleアナリティクスの「_gac Cookie」が、AdWordsのキャンペーン情報を保存するようになります。
AdWordsとGoogleアナリティクスを連携して自動タグ設定を有効にしていると、広告のURLにGCLID(Google click identifier)が自動で付加されますが、このgclid値を含む情報を_gac Cookieに書き込むことで、広告のクリックの情報を「ファーストパーティCookieとして」保存します。これによりIntelligent Tracking Preventionを回避します。
メール内で、「今後数か月間はコンバージョンデータを定期的に確認し、入札単価の変更が必要かどうか検討」することも推奨されています。
参考)
結論:AdWordsとGoogleアナリティクス連携はより重要に
ここまで見てきたように、今回のAppleのIntelligent Tracking Prevention導入により今後Web広告の表示や計測に影響があることが予想されます。
GACP(Google Analytics Certified Partner)およびPREMIER Google Partnerとして現時点ではっきり言えることは、AdWordsとGoogleアナリティクス連携の重要度がより高まったということです。
AdWordsのコンバージョンの精度を上げるために、Googleアナリティクスでの連携および自動タグ設定の有効化(この設定はデフォルトでは有効になっていません)は必須です。
GoogleアナリティクスとAdWordsの連携がまだの場合、今すぐにでも連携することを強くお勧めします。