この投稿は、以前公開した英語の記事をもとにしています。
LinkedInで広告を運用する企業にとって、複数のLinkedIn広告アカウントやLinkedInページを管理し、さらに複数のユーザーがこれらの資産にアクセスするとなると、マーケティング全体の運用は非常に煩雑になり、効果的に管理するのが難しくなります。
一般的に、LinkedInの広告エコシステムでは、有料広告(LinkedIn広告)とオーガニック投稿(LinkedInページ)の2つの手法を活用できます。細かい違いはあるものの、この2つの仕組みを正しく理解することが、LinkedInマーケティングの基盤となります。
そこで登場したのがLinkedInビジネスマネージャーです。LinkedInは2022年に、複数のアセットをより統合的に管理し、コントロールと可視性を高めるためのプラットフォームとしてBusiness Managerを導入しました。
本記事の内容
LinkedInビジネスマネージャーとは?
ビジネスマネージャーを導入すべきタイミング
ユーザー管理、役割、権限設定
アカウント間のオーディエンス共有
CRM連携による高度なアトリビューション
請求管理の簡素化
ビジネスマネージャーとキャンペーンマネージャーの違い
まとめ
LinkedInビジネスマネージャーとは?
LinkedInビジネスマネージャーは、複数のLinkedIn広告アカウントやページ、ユーザーアクセスを一元管理できるプラットフォームです。
ビジネスマネージャーの主なメリットとして、以下のような機能が挙げられます:
- アカウント間のオーディエンス共有
- CRMとの連携による高度なアトリビューション
- より強力なユーザー管理と権限設定(特に影響が大きい)
LinkedInビジネスマネージャーは、広告運用の効率を高める強力な機能を提供し、多くのケースで価値をもたらします。しかし、必須というわけではなく、企業ごとに導入タイミングを見極めながら、必要に応じて活用することができます。
ビジネスマネージャーを導入すべきタイミング
導入すべき明確な基準はありませんが、LinkedInは以下のような場合にビジネスマネージャーの利用を推奨しています。
- 複数のLinkedIn広告アカウントやページを管理している場合
- 複数のユーザーのアクセスを管理している場合
- 複数の広告アカウントで同じターゲット層(購買層)にリーチする必要がある場合
- CRMを連携し、LinkedInマーケティングのアトリビューションを分析したい場合
アユダンテでは、特に「ユーザー管理・プライバシー・セキュリティ」の面で、ほとんどのチームにとってビジネスマネージャーは価値があると考えています。
一方で、ビジネスマネージャーなしでも問題ないケースもあります。例えば、広告アカウントが1つだけで、管理者が1人しかいない場合、ビジネスマネージャーを導入しても大きなメリットは得られないかもしれません。
ビジネスマネージャーが自社に適しているかどうかを判断するために、主要な機能を詳しく見ていきましょう。
ユーザー管理、役割、権限設定
LinkedInビジネスマネージャーの最も優れた機能の一つは、広告アカウントやページ全体のユーザーを一元的に把握できることです。
多くの企業は、ビジネスマネージャーを活用することで、企業のメールアドレスを個人のLinkedInプロフィールに紐づけ、広告アセットへのアクセスを管理できる ことを知らないかもしれません。
個人のメールアドレスで広告アカウントやページを管理することには、重大なリスクがあります。
具体的には、以下のような問題が発生する可能性があります:
プライバシーの侵害 – 組織が管理できないため、元従業員のアクセス制限が難しくなる
セキュリティの脆弱性 – 個人メールアドレスはフィッシング攻撃の標的になりやすい
責任の所在が不明確 – 企業の正式な管理下にないため、万が一問題が発生した際の対応が複雑になる
さらに、企業のプロフェッショナルなイメージを損なう可能性もあります。例えば、管理者権限を 「tamago_sensei@yoyokomail.com」 のような個人メールアドレスに付与するのは、セキュリティ面でもブランドの信頼性の観点からも適切ではありません。
ビジネスマネージャーでは、管理者がユーザーの役割を割り当てたり調整したりできるため、各メンバーの職務に応じた適切なアクセス権限を付与できます。
この機能により、セキュリティが強化されるだけでなく、新規メンバーのオンボーディングや、退職時のオフボーディングもスムーズに管理できるようになります。
なお、各アセット(広告アカウント・ページ)ごとに個別にアクセス管理を行うことも可能です(下図参照)。
しかし、たとえ広告アカウントが1つだけでも、複数のユーザーを管理するのは手間がかかるものです。
アセットが2つ以上(広告アカウント+ページ)になると、ユーザー管理の負担がさらに増し、見落としが発生しやすくなります。
アカウント間のオーディエンス共有
ビジネスマネージャーを活用すると、LinkedInのマッチドオーディエンスを複数の広告アカウント間で共有できます。
この機能は、異なるブランド、地域、製品ラインでキャンペーンを運用する企業にとって特に価値があります。
同じターゲット層にリーチする必要がある場合、オーディエンス共有を活用すれば、各アカウントごとにオーディエンスを再作成・管理する手間を省き、時間を節約しながら、キャンペーンの一貫性を維持できます。
さらに、アカウントをまたいだオーディエンス共有により、リターゲティング施策や類似オーディエンス(Lookalike Audience)を活用しやすくなり、より精度の高いターゲティングとROIの向上につながります。
CRM連携による高度なアトリビューション
ビジネスマネージャーは、Customer Relationship Management(CRM)システムとシームレスに統合でき、広告の収益貢献度をより正確に把握することが可能になります。
この機能を活用することで、LinkedInのキャンペーンデータと営業パイプラインを直接結びつけることができ、広告がどのようにコンバージョンや売上に影響を与えているかを可視化できます。
また、CRMデータと広告データを組み合わせることで、カスタム分析やLTV(顧客生涯価値)の算出が可能になり、B2Bマーケティングの長い購買サイクルをより深く理解できるようになります。
ただし、ユーザーの個人情報を扱う際は、企業として明確なプライバシーポリシーを策定することが重要です。
地域によっては、GDPR(EU/EEA)、CCPA / CPRA(カリフォルニア州)、APPI(日本の個人情報保護法) などの法律に準拠する必要があるため、適切な対応が求められます。
請求管理の簡素化
ビジネスマネージャーには、複数の広告アカウントを管理する企業向けに、Ads Billing Centreを通じた請求の一元管理機能が備わっています。
管理者は、支払い方法や請求書、広告費を一つの画面で確認・管理できるため、予算の追跡が簡単になります。
ただし、LinkedInビジネスマネージャーの請求管理機能は、GoogleのCampaign ManagerやMetaのBusiness Managerと比べると、まだ発展途上の部分もあります。
例えば、LinkedInでは広告アカウントごとに個別の請求設定が必要ですが、GoogleやMetaでは複数のアカウントを1つの請求アカウントに統合できます。
そのため、中央請求(centralized invoicing)やアカウント間の柔軟な支払い設定ができる点では、GoogleやMetaのほうが優れています。
とはいえ、LinkedInの請求管理機能も、広告運用の効率化に役立つため、活用する価値は十分にあります。
今後、より高度な請求機能が追加される可能性もあるため、今のうちに基本機能を押さえておくのがおすすめです。
ビジネスマネージャーとキャンペーンマネージャーの違い
この質問は一見するとあまり意味がないように思えますが、実際によく聞かれるため、ここで少し説明しておきます。
ビジネスマネージャーに広告アカウントをリンクしても、キャンペーンマネージャーは引き続き使用されます。
つまり、この2つは対立するものではなく、連携して機能する仕組みになっています。
他の広告プラットフォームと同様に、ビジネスマネージャーは「ハブ」のような役割を果たし、そこから各キャンペーンマネージャーのアカウントへ移動する形になります。
以下のスクリーンショットのように、「広告アカウント」メニュー内にリンク済みのアカウントが表示されます。
各アカウントの「キャンペーンマネージャー」 のアイコンをクリックすると、該当の広告アカウントのキャンペーン管理画面に移動できます。(ちなみに、アカウント名をクリックすると、その広告アカウントにアクセスできるユーザーの一覧が表示されます。)
最初はどのアイコンをクリックすればいいのか迷うかもしれませんが、何度か操作すればすぐに慣れるでしょう。
まとめ
LinkedInビジネスマネージャーには、広告アカウントやページの管理をより効率的かつ安全にするための多くの機能が備わっています。
ユーザー管理の一元化、アカウント間のオーディエンス共有、CRM連携など、特に中規模から大規模の企業向けのツールですが、小規模なチームでも活用できる機能もあります。
各機能にはそれぞれ独自のメリットがあり、今後の投稿では、これらを最大限に活用する方法について詳しく解説していきます。
まずは、LinkedInの運用をよりスムーズにし、マーケティング効果を高めたいと考えているなら、ビジネスマネージャーの導入を検討する価値があるでしょう。
LinkedInを活用してビジネスを成長させる方法について質問があれば、お気軽にお問い合わせください。
(グローバル)