
2025年11月14日に発表いたしました通り、アユダンテはサーバーサイド タグマネージャー(以下、sGTM)のグローバルリーダーである Stape Inc.(以下「Stape」)とパートナーシップを締結いたしました。
本コラムでは、Stape のご紹介とともに、パートナーシップ締結に至った経緯と背景についてお話しします。
- Stapeとはどんな会社か?
- なぜsGTMに専用のホスティングプラットフォームが必要なのか?
- セットアップにかかる工数と手間の削減
- 料金体系の明瞭さとコストメリット
- サポート体制の違い
- 豊富な追加機能と連携対応
Stapeとはどんな会社か?
Stape は、サーバーサイド計測(sGTM や Gateway など)の環境を提供するオールインワンのプラットフォームです。
2021年の設立以来、世界で 200,000 以上のクライアントに採用され、65,000 以上のコンテナを運用している、サーバーサイド計測分野のグローバルリーダーです。
また、Google や Meta、TikTok など多くのプラットフォームとパートナーシップを築いており、グローバルでも高い評価を得ています。

Stapeは海外企業ですが、公式サイトには日本語ページも用意されています。ぜひご一読ください。
公式ページ: https://stape.io/ja/about
※sGTMについては弊社のサービスページもご覧ください。現在のページでは改修前のため、Google Cloud の利用を前提としておりますが、sGTM の主要なメリット自体は Stape を利用する場合でも同様です。
サーバーサイドGTM導入支援
https://ayudante.jp/products/server-side-gtm/
sGTM はその名の通り「サーバー」で計測を行う仕組みであるため、サーバーをどのプラットフォームで利用(ホスティング)するかは、コスト・運用負荷・セキュリティの観点から非常に重要です。
従来は、sGTM と同じ Google のサービスである Google Cloud を利用するケースが一般的でした。AWS など他のクラウドサービスを利用されるお客様もいらっしゃいますが、親和性の高さやドキュメントの豊富さから、弊社としても基本的には Google Cloud を推奨してきました。
そこに新たな選択肢として登場したのが、今回パートナーシップを締結した Stape です。
なぜsGTMに専用のホスティングプラットフォームが必要なのか?
Stape の具体的なメリットに触れる前に、まず sGTM を導入・活用する際に多くの企業が直面している課題を整理します。
私見ではありますが、日本において sGTM は海外ほど普及していないと感じています。その大きな理由の一つが、導入と運用に求められる技術的ハードルの高さです。
sGTM を正しく活用するためには、クラウドインフラの設計・運用、Googleアナリティクスや GTMの深い理解、プライバシー・法規制への対応、広告計測の知見など、複数の専門領域にまたがるスキルが求められます。
これらを事業会社の中だけでキャッチアップするのは難易度が高く、支援会社であってもすべての領域を高いレベルでカバーできる企業は多くありません。
アユダンテには各領域の専門メンバーが在籍しており、こうした課題を横断的に支援できる体制が整っています。とはいえ、特にクラウド領域の構築・運用は決して容易ではありません。
弊社でもテンプレート化や自動化により導入プロセスの平準化に努めていますが、実際にはお客様のインフラ環境やセキュリティポリシー、運用体制に合わせた個別チューニングが不可欠です。その結果、導入時だけでなく運用フェーズでも、専門エンジニアによる対応工数が発生しやすいのが実情です。
さらに、外部データベースとの連携など、より高度な活用を行う場合には、追加開発や検証のための工数・費用も無視できません。
このように「クラウドインフラの構築・運用」と「計測の設計・実装」という二つの専門領域を、どちらも高いレベルで維持することは容易ではありません。
そこで重要になるのが、Stape のような sGTM に特化した専用ホスティングプラットフォームの存在です。インフラ部分を専門サービスに任せることで、より本質的な計測設計やデータ活用に集中できます。Stape には、Google Cloud などの汎用プラットフォームを自前で構築・運用する場合と比べ、多くのメリットがあります。
セットアップにかかる工数と手間の削減
最大のメリットの一つは、セットアップの容易さです。
Google Cloud の場合、下図のようにプロジェクトの立ち上げから行います。弊社が支援する場合でも、クラウドやネットワーク、モニタリングなどの各種設定が必要となります。

一方、Stape を利用する場合、クライアントにご依頼するのは「サーバーコンテナの作成」と「DNSの設定」のみです。

そのため、Google Cloud 環境の構築や権限付与といった手順を省略でき、クライアントがクラウドインフラに触れる必要がなくなります。
弊社としても、Stape の管理画面で共有されたコンテナIDを使ってセットアップするだけで済むため、迅速に環境を構築できます。
料金体系の明瞭さとコストメリット
sGTM はインフラを利用するため、ランニングコストが発生します。クライアントから必ずいただく「毎月どれくらいの料金が発生するか?」というご質問は、予算確保のために非常に重要です。
しかし、Google Cloud で sGTM を構築する場合、この質問への明確な回答は困難です。
その理由は、Google Cloud のコスト構造にあります。主に以下の2点を考慮する必要があります。
- サーバーやネットワークを利用するインフラの費用
- ログを蓄積するコスト
サーバーやネットワークを利用するインフラの費用
まずインフラ費用です。Google Cloud では、Cloud Run とロードバランサーを利用した構成が推奨されます。
Cloud Run の費用は「サーバー稼働数(インスタンス数)」と「ネットワーク転送量」で決まります。なお、ネットワーク費用は受信データにはかからず、Google Cloud から送信したデータ量に対してのみ発生します。

インフラ費用の見積もりが難しい理由の一つは、Cloud Run の稼働リソースの予測が困難な点にあります。
Cloud Run にはオートスケーリング機能があり、負荷に応じてインスタンス数が自動増減するためです。
すなわち、アクセス集中時などに一時的にサーバー数が増加するため、コストが変動する可能性があります。
またネットワーク費用も、sGTM から送信するデータ量に比例します。移行するタグの数や送信データ量を事前に正確に把握することは難しく、見積もりの精度を下げてしまいます。
公式の料金シミュレーションもありますが、あくまで概算値の目安となります。(※現在は英語設定にしないと正しく動作しない場合があるためご注意ください)
一方 Stape は、sGTM への送信リクエスト数に応じた明瞭な月額プラン制です。
データサイズや同時接続数に関係なく、単純に「送信リクエスト数」のみがカウントされます。そのため、GA4 のイベント数などから、月額コストを事前に把握しやすくなっています。

「送信リクエスト数のみでカウントされ、データサイズを気にしなくて良い」点は、運用上の大きなメリットです。
例えば、Google の GTM コンテナ(gtm.js)を sGTM 経由で配信する設定を行う場合などが挙げられます。
Webコンテナはデータ量が多いため、Google Cloud の場合は送信データ量が増加し、料金に大きく影響する可能性があります。
しかし Stape であればデータ量はコストに影響しません。GA のイベント1回も、ファイルサイズの大きい GTM コンテナのリクエスト1回も、同じ1リクエストとしてカウントされます。
また、あくまで sGTM に「送った数」でカウントされるため、sGTM から各ベンダー(Google, Meta等)へのデータ送信量や送信数はコストに関係しない点も重要です。
プラン内であれば毎月定額請求となるため安心です。リクエスト量が上限を超えた場合に自動で上位プランへ移行する設定も可能です。
リクエスト数に応じたプラン表は以下の通りです。詳細は公式の料金表もご確認ください。

※5,000万以上の場合はCustomプランというものがありますので、お問い合わせください。
ログを蓄積するコスト
次にログのコストです。Google Cloud は毎月 50GiB までは無料ですが、超過分には決して安くないコストが発生します。
そのため、50GiB を超えることが想定される場合は、出力ログの調整などが必要になります。
Stapeの場合、ログの蓄積に追加費用は発生しません。Stape の管理画面からシンプルな UI でログを確認できるのも利点です。(プランに応じてログの保持期間は異なります)

このように Google Cloud での事前見積もりは困難であり、移行後 1〜2 ヶ月の実績を見て判断する運用になりがちですが、Stape の場合は事前に精度の高い金額感をシミュレーションすることが可能です。
サポート体制の違い
次に、サポート体制の違いについてです。
Google Cloud には無料のサポート窓口がなく、有償サポートを契約しても、基本的には「Cloud Run などのサービス自体」への問い合わせとなります。sGTM の仕様に踏み込んだサポートは期待できません。
一方 Stape では、プラットフォームに関する質問はもちろん、sGTM に関する質問も問い合わせ窓口で相談可能です。
また、sGTM に特化したドキュメントやヘルプデスクが充実しており、ユーザーコミュニティも存在します。

豊富な追加機能と連携対応
Stapeには開発不要で使える豊富な機能と連携先があります。
Power-ups
Stape には「Power-ups」と呼ばれる、sGTM の機能を拡張する独自のツール群が用意されています。これらはスイッチ一つで有効化でき、複雑な開発や設定なしに高度な計測環境を実現します。
代表的な機能として、以下のようなものがあります。
- Custom GTM and GA4 Loader:
GTM や GA4 のスクリプトを独自のサブドメインから配信することで、ITP(Intelligent Tracking Prevention)や広告ブロッカーの影響を軽減し、計測精度を向上させます。
- Cookie Keeper:
ブラウザの制限によって短縮される Cookie の有効期限を延ばし、ユーザーの再訪やコンバージョンをより正確に計測できるようにします。
これらの機能は、通常であればエンジニアによる開発や複雑な設定が必要となるものですが、Stape であれば管理画面から簡単に導入できるため、運用コストの削減と計測品質の向上を同時に実現できます。

他にも多くの機能がありますので、是非以下の公式ページをご覧ください。
Power-ups
https://stape.io/blog/understanding-stape-power-ups-key-features-uses
サービス連携
Stape は、様々な外部サービスとの連携機能も充実しています。
- CMS 連携:
WordPress (WooCommerce), Shopify, Magento などの主要な CMS 向けに専用のプラグインやアプリを提供しています。これらを利用することで、データレイヤーの実装や sGTM との連携をスムーズに行うことができます。
- CRM 連携:
Salesforce, HubSpot などの CRM と連携し、オフラインコンバージョンデータを広告プラットフォーム(Google 広告や Meta 広告など)に送信することができます。これにより、より正確な広告効果の測定と最適化が可能になります。 - Google サービス 連携
Stape のインフラ自体が Google Cloud 上で構築されているため、BigQuery や Firestore といった Google Cloud の各種サービスとの親和性が非常に高いです。Google Service Account を利用したセキュアな連携も簡単に設定できます。
このように、Stape は単にサーバーを借りるだけのサービスではなく、様々なツールと連携してデータを活用するための基盤となるプラットフォームです。
Stape Analytics
Stape Analytics は、サーバーサイド計測の効果を可視化するための機能です。sGTM を導入したことによって、どれだけのデータが「復元」できたのかを一目で確認することができます。
具体的には、以下のような指標を確認できます。
- リクエストの総数:
サーバーサイドで処理されたリクエストの全体像
- 復元されたリクエスト数:
ITP や広告ブロッカーの影響を受けずに計測できたリクエストの数
それ以外にも、ボットからのリクエスト数や、同意モードのステータス別リクエスト数なども確認可能です。
通常、サーバーサイド計測の効果を定量的に示すことは難しいですが、Stape Analytics を使えば「sGTM を導入したことで、これだけのデータ欠損を防ぐことができた」という導入効果を明確に可視化できます。そのため、マーケティング担当者が社内で sGTM 導入の成果を説明しやすくなります。

アユダンテが Stape とパートナーシップを締結した理由
ここまで Stape のメリットをご紹介してきましたが、最後に、なぜアユダンテが Stape とのパートナーシップ締結に至ったのか、その想いをお話しさせてください。
プライバシー規制の強化によりデータ計測の精度低下が懸念される昨今、アユダンテでは sGTM の重要性が今後ますます高まると考え、今年より本格的に取り組みを強化してきました。
しかし、日本国内には sGTM に関する情報がまだ少なく、海外の情報をキャッチアップしていく必要がありました。その過程で出会ったのが Stape です。私自身、Stape から sGTM に関する多くの知見を得ることができました。
当初は、Stape が提供しているような機能を自社開発することも検討しました。しかし、開発工数やセキュリティ担保など、乗り越えるべきハードルは高く、実現にはクライアント様にも多大なコストとリソースをご負担いただくことになります。
そこで改めてアユダンテの強みを考えたとき、それは「Google アナリティクスの導入・設定支援を通じて培ってきた知識と知見」にあると再認識しました。
インフラ部分を専門家である Stape に任せ、私たちは本来の強みである「設計と計測」に注力する。これこそが、クライアント様への提供価値を最大化する最善の道であると考え、今回のパートナーシップの締結に至ります。
Stape CEO の Denis 氏も、日本市場およびアユダンテの可能性に高い期待を寄せてくださっており、現在は両社専用のコミュニケーションチャンネルを通じて、日々情報共有や機能リクエストについての議論を重ねています。
海外に比べ、日本での sGTM 導入はまだこれからです。私たちは Stape とタッグを組み、日本における sGTM の普及を推進し、より多くのクライアント様に高度で精度の高い計測環境を提供してまいります。



