
本コラムはAYUDANTE NEWS 2025年8月号から一部抜粋してお送りしております。全文に関しては毎月月末に配信しているニュースレターのバックナンバーからご覧ください。
今月は、SMX Advanced 2025(ボストン)に参加した現地レポートをお届け。デジタル広告コンサルタントのザンノーニ・ダリオ(Dario Zannoni)に、PPCの最新トレンドと“明日から実務で使える”ポイントを聞きました。
- はじめに
- SMX Advancedとは
- Google P-MAXキャンペーン
- ウェブ広告でのAI活用
- 人間ファーストのコンテンツがKPIで勝つ
- クリエイティブなら生成AIは「コパイロット」
- 反復は自動化、判断は人間
- 小さな内製ツールで診断の生産性向上
- AIベース検索体験
- AI OverviewやAI Modeのステータスは?
- AI Overviewに広告が出る条件は?
- 広告の選択方法
- その他の重要な学び
- あらためて…今すぐ実践できるTo-Do(ニュースレター限定)
- まとめ(ニュースレター限定)
はじめに

2025年6月11日~13日、ボストンで開催された検索エンジンマーケティングの大規模コンファレンス「SMX Advanced」に参加しました。
今回は会場で得た知見を、皆様の日々の広告運用に落とし込める形でまとめてみました。
SMX Advancedとは
SMX Advancedは、Third Door Media(Search Engine Land/MarTechの発行元)が主催する検索エンジンマーケティングの上級者向け国際カンファレンスです。
最新機能の紹介に留まらず、事例や経験をもとに、「なぜその設計なのか」「うまくいった、いかなかった理由は何か」といった点に踏み込んだ実践的なセッションが特徴的です。
世界各国の実務者と直接議論できるため、現場の意思決定に直結する“生の学び”を持ち帰ることができます。
ウェブ広告(PPC)領域では、以下の3つのポイントが特に印象的でした。
- Google P-MAXキャンペーンの最適な役割と設計
- AI Overviewなど生成AIベースのSERPsの登場が広告配信と計測に与える影響
- 生成AIを有効かつ安全に広告運用に活かす具体的な方法
Google P-MAXキャンペーン:そのポジショニング、構造、最適化
著名スピーカーのMike Ryan、Navah Hopkins、Frederick Vallaeys、GoogleのGinny Marvinから、実務に有効な実践的な知見が多数共有されました。
- P-MAXキャンペーンの役割と予算配分
P-MAXキャンペーンは、それ単独で機能する「万能のキャンペーン」 ではありません。
既存の検索広告やショッピング広告を補完する役割として、活用しはじめるのがおすすめです。はじめはまず「アカウント総予算の20~30%」からスタートするのがよいでしょう。取りこぼしがちなターゲットの回収や、新規獲得を目的として活用するとよいでしょう。
- 学習用データのボリューム
アカウント全体のデータを活用する一方で、キャンペーンとしては「月50~60件以上のコンバージョン」が目安です。
ボリュームが少ない場合は、アセットグループやキャンペーンの細分化は行わず、十分なコンバージョン数をまとめて確保するようにします。
- コンバージョンは「件数」ではなく「価値」で最適化
まずは「コンバージョン価値の最大化」で、売上など価値のシグナルを十分に学習させ、安定後にtROASへ移行していきます。
件数と一見同じに見えても、価値に基づく最適化は、純粋な件数最適化を上回るケースが多いという見解が共有されました。
BtoBなら適格リード(MQL/SQL)に重み付けをし、ECではマージンや返品率を価値に反映させるのがよいでしょう。
- リードジェネのコンバージョンポイント
成約など最終成果に近い指標で学習させるのが理想です。
ただし、データが十分でない場合は、重要度に応じて複数のコンバージョン価値を、別々のコンバージョンに振り分けて設定し、学習データを十分与えることを優先します。
- アカウント構造(実務 vs 公式)
P-MAXキャンペーンは分割すべきか、というのは大事な検討ポイントです。
実務者の多くは「目的/季節性/商品ライン」などで、複数のP-MAXキャンペーンに分割し、好結果を導き出しています。
一方でGoogleのGinnyは、データシグナルの量と柔軟性を最大化するため「できるだけひとつのキャンペーンに統合すること」を推奨しています。
分割するかまとめるかは、「データ量 × 目的の明確さ」で判断していきましょう。少量ならひとつに統合しますし、十分なコンバージョンがあれば分割して、検証していくのが現実的な解です。
- 現場で実践できるTips
- アセットグループはペルソナとユースケースで切り、検索テーマとブランド除外を明示的に設定します。
- 「最終ページURLの拡張」機能は、開始時はOFFにしておきます。ある程度、学習が進み、成果が落ち着いたら、段階的にONにして検証していきましょう。
- 季節セールや短期施策は、独立したP-MAXキャンペーンとして設定します。できるだけそのセールに予算とシグナルを集中させるのが有効です。
ウェブ広告でのAI活用:コンテンツ、クリエイティブ、自動化すべきもの
昨年から今年は、生成AIが使えるツールとして定着した年でした。
ウェブ広告では「人が決定し、AIが自動化する」という役割の分担がよいと言われています。
人間ファーストのコンテンツがKPIで勝つ(Wil Reynolds)
大量に生成したコンテンツやクリエイティブで、セッションやインプレッションを増やせたとしても、売上・サインアップ・LTVといった「ビジネスKPI」では、問題解決型の人間ファーストのコンテンツの方がよい結果に結びつきます。量より質が大事です。アクセス数よりも、問題解決の貢献度で評価する視点が重要です。
クリエイティブなら生成AIは「コパイロット」(Amy Hebdon)
リサーチ、メッセージの仮説設計、初稿テキストの生成は、AIにお任せです。でも、正確性・声色・ニュアンスは、人間の手で創ります。
反復速度を上げつつ、手抜きにならず、ブランド価値の整合性を保つことが重要です。
反復は自動化、判断は人間(Brad Geddes)
効果測定レポートの作成、日常の分析、アラート、簡易なQAは、生成AIやスクリプトに委ねましょう。ただし、自動生成される「推奨事項」は指示ではありません。あくまで「意思決定のたたき台」として扱います。
小さな内製ツールで診断の生産性向上(Frederick Vallaeys)
生成AIを使って、Google広告スクリプトやユーティリティツールの下書きを生成していきます。これらのツールで、ポリシー違反や不承認、悪いプレースメント、価格の変動、不安定な日次CVなどを早期に検知することができます。
事前のすばやい診断や、運用上のリスク回避に有効です。
AIベース検索体験:AI Overview と AI Mode
GoogleのAI OverviewやAI Modeが登場し、サービス対象国を拡大中です。すでにAIコンテンツ上の広告もはじまっています。ただし仕様はどんどん変わっていきますので、その点は注意が必要です
(本稿は2025年6月時点の情報に基づいています)
AI OverviewやAI Modeのステータスは?
AI Overview / AI Modeの両機能は段階的に拡大しています。広告は導入されている一方、ポリシーや機能は進化の途上にあります。
AI Overviewに広告が出る条件は?
AI Overviewなどに広告が出る条件はあるのでしょうか?
現時点で共有された知見は以下の通りです。
- 検索広告(インテントマッチキーワードが設定されている場合)
- 検索広告(AI Max for Searchが有効の場合)
- P-MAXキャンペーン
- ショッピング広告
これ以外の広告では表示されない、とのことです。
広告の選択方法
AI Overviewが表示される検索クエリと、AIの回答内容をチェックします。
AI Modeでは、上記に加え、セッション内の一連の回答やチャット全体の文脈も確認する必要があります。
運用上は、既存の検索広告やショッピング広告をカニバリと考えずに、AI面での追加露出を“足し算”でポジティブに捉えましょう。両者のアトリビューションの違いを計測して、有効に考慮していくのがポイントです。
その他の重要な学び
- 測定のヒント
Googleタグ(gtag.js)、拡張コンバージョン(リード含む)、GA4イベントをベースラインにして設定します。可能であればインクリメンタリティテストを実施し、長期的にはMMM(マーケティングミックスモデリング)で全体の貢献度を見極めます。
重要な狙いは…

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