Google Cloud NEXT Tokyo ’25 の参加レポート:AIが進化させる「今」
2025年08月20日

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2025年8月5日・6日の2日間、東京ビッグサイトで開催された「Google Cloud NEXT Tokyo ’25」に参加してきました。

東京湾の埋め立て地にそびえる巨大な展示場へは、レインボーブリッジを渡って向かいます。橋を渡り切ると、自由の女神のレプリカと実物大のユニコーンガンダムが並び立ち、過去と未来が交差するような不思議な光景が広がります。

今年の主役はもちろんAI。日本最大級の会場を舞台に、Googleは「現在」と「AIが切り開く未来」とを結ぶ明確なメッセージを発信しました。

このイベントはパートナー限定ではなく一般にも開放されており、エンジニア、アナリスト、経営層、クリエイターなど、AIに関心を持つ幅広い層の参加者で賑わっていました。

なぜこのイベントが重要なのか

Google Cloud NEXTは、単なる新機能の発表の場ではなく、業界がどこへ向かおうとしているのか、その「流れ」と「熱量」を肌で感じられる場所です。

会場は「データ」「セキュリティ」「アプリケーション&インフラ」「ショッピング」「クリエイション」「マップ」など、テーマごとに分かれていましたが、「AI」という専用エリアは設けられていませんでした。つまり、AIはすでにあらゆるGoogle製品に溶け込み、あらゆる分野に息づいていることを示しています。

ここからは、数多くの発表や展示の中から、特に印象に残ったポイントをいくつかピックアップしてご紹介します。

1. データ領域におけるAI活用 ― データ品質の進化

今回のセッションで何度も耳にしたのは、「Garbage in, garbage out(入力がゴミなら出力もゴミになる)」という言葉です。

私の仕事の中心は、クライアントが収集するデータの正確性・一貫性・活用性を確保することです。リターゲティングやUX改善など、戦略の成否はまさにデータの質にかかっています。そのため、今回参加したセッションもほとんどがデータ関連の内容でした。

特に印象に残ったのは、Google カスタマーエンジニアの山田雄氏によるセッションです。
「BigQuery 最新アップデート速報:Google Cloud Next(米国開催)発表内容からみるデータ分析の未来」と題し、アメリカ開催の Google Cloud Next で発表された BigQuery の最新アップデートが紹介され、今後のデータ分析の方向性について具体的に示されました。

Google社 カスタマーエンジニア 山田雄氏

1.1. データガバナンス エージェント(Data Governance Agent)

まず紹介されたのが、BigQueryの新機能「データガバナンス エージェント」です。
この機能はデータガバナンス業務を自動化し、次のような作業を効率化します。

  • データエンリッチメント:テーブルやカラムのメタデータを自動生成・拡張。日付フォーマットがバラバラな場合でも自動で標準化可能。
  • ナレッジグラフによるインサイト:関連データセットやメタデータ、ポリシーをAIがつなぎ合わせ、次のアクションを提案。複雑なデータでも意思決定までの時間を大幅短縮。

つまり、手作業に頼らず、よりクリーンでつながりのある、意思決定に適したデータ基盤を構築できる仕組みです。

1.2. 自動メタデータキュレーション(Automated Metadata Curation)

BigQueryに格納された製品データは、Geminiと「自動メタデータキュレーション」によってさらに扱いやすくなります。

テーブルやカラムの説明文を自動生成し、クエリ作成のヒントまで提示。将来的には、欠損情報の補完や形式の統一、説明文のスキーマドキュメントへの直接反映も可能になり、チーム間での理解や活用が格段にスムーズになります。

1.3. データ品質検出機能(Data Quality Detector)

もうひとつの実験的機能が「データ品質検出機能」。

機械学習アルゴリズムでテーブルやビューの異常を検知し、問題が深刻化する前に対応できます。まだ試験段階ながら、BigQueryがより能動的かつ知的、省力的にデータの信頼性を守る方向へ進化していることが伺えます。

2. Google マップ × GCP データ可視化

Google マップとGCPツールの連携が進化し、地理情報とビジネスメトリクスを組み合わせて可視化できるようになりました。

例えば、来店数の多い店舗を地図上に重ねて表示することで、好調な立地や改善が必要なエリアを一目で把握できます。位置情報インテリジェンスとAIインサイトの融合により、迅速かつ確信を持って意思決定ができるようになります。

3. 小売領域のAI活用 ― ショッピング体験の再定義

3.1 Google Shopper’s Concierge

最近ボクシングを始めた私は、ジムで共有されている使用感の強いグローブを避けたくて、初心者向けの手頃なグローブを探していました。ChatGPTに相談したところ、約7,000円でちょうど良い商品が見つかり、その場で購入しました。

この経験から、AIは単に質問に答えるだけでなく、購買を自然に促す存在だと実感しました。

Google Cloud NEXTで出会った「Google Shopper’s Concierge」は、この方向性を体現しています。複数のECサイトと接続し、ベクトル検索やマルチモーダル商品キュレーションを活用して、顧客ニーズにぴったりの商品をわずか数秒で提示する次世代の検索AIです。

3.2. バーチャル試着AI(Virtual Try-On AI)

ネットで服を買って「届いてみたら似合わなかった」という経験は、多くの人が一度はしているはずです。

バーチャル試着AIは、全身写真をアップロードするだけで、その服を着た自分の姿を瞬時に表示。オンラインはもちろん、店舗でも活用でき、混雑した試着室や照明の違いによる判断ミスを減らせます。

私も試してみましたが……ピンクのドレスで会場を歩く自分を想像すると、少し恥ずかしくなりました。それでも、購買判断に自信を与えてくれる機能であることは間違いありません。

3.3. GeminiによるAIプロダクトタグ付与

商品の写真を撮るだけで、Geminiが自動的にカテゴリタグを生成し、BigQueryに保存。

例えば、猫用爪とぎの写真からは「ペット用品」「キャットファニチャー」「室内遊具」などのタグを瞬時に付与します。これにより、情報不足の商品でも購買者の目に留まりやすくなり、出品者は手動タグ付けの手間を省きながら露出度向上を実現できます。

4. その他の展示と交流

会場には、セキュリティ、アプリケーション、インフラ、クリエイションなどのテーマゾーンに加え、Google認定クラウドパートナーのブースも数多く並んでいました。

各30分セッションの後には「Ask the Expert」コーナーが設けられ、登壇者と直接やり取りできる貴重な機会もありました。その場で専門的な質問や実務に関する相談ができ、多くの参加者が足を止めていました。

また、Google Cloudの公式認定資格保持者だけが入れる「認定資格者ラウンジ」もあり、同業者との交流や情報交換の場として絶好の場所でした。私も昨年「Associate Cloud Engineer」と「Data Engineer」を取得していたため、無事に入室できました。

静かな空間とドリンクで、イベントの締めくくりにふさわしいひとときを過ごせました。

まとめ ― AIは人間を置き換えるのか?

ここ数年、国内外のテックイベントで必ず耳にする質問です。

あるセッションで、印象に残った言葉があります。

AIは人間の潜在能力を最大化するためにある。単なる効率化やレポート作成だけが目的ではありません。

AIに作業を任せる前に、その領域を理解し、適切なプロンプトを与え、成果が基準に達しているかを見極められることが重要です。

2023年のChatGPT 3.5登場からわずか2年で、多くの人がAIの使い方を誤解し、生成物を鵜呑みにしています。理解せずにAI出力を採用すれば、AIだけでなく、AIを使いこなす他の人に取って代わられる可能性があります。

正しく使えば、AIは創造性と可能性を引き出してくれる強力な味方です。もはやAI活用スキルは、ExcelやPowerPoint同様、必須の基礎スキルになりつつあります。

これからの1年、そしてその先のAIの進化が、今から楽しみでなりません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人
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プン ジャスパー(Jasper Poon)
ソリューションコンサルタント
兼 事業推進担当
香港出身で、デジタルプロジェクト管理、データ収集(GA経由)、可視化(Power BI/GLS経由)における確かな専門知識を持っています。デジタルの世界では、一つのプラットフォームだけでは全ての課題に対処できないという考えを強く持っています。GMP製品に加えて、Google Cloudや他のUX分析ツールにも情熱を注いでいます。趣味は猫、水泳、サッカーです。
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