大規模な組織・企業でGA4を利用するほど、ユーザーの権限をどのように管理していくかはデータガバナンスの観点から重要なポイントになってきます。
本コラムではGA4の権限について、どのような種類があるかという基本的な話から、権限管理をする方が知っておきたい機能や知識を書きます。
機能自体は無料版でも利用できますが、主にGA360を利用されている担当者向けとなります。
特に普段GA4で数値を見る訳では無いがツールの管理者として権限管理が必要という立場の方などは、どの権限を誰につければよいのか判断しづらいケースもあるかと思います。このコラムが参考になれば幸いです。
GA4のツール構造
GA4は階層構造になっています。ここでは計測は少し無視して権限管理のみにフォーカスして説明します。
「組織」は基本的に会社で1つだけある、最上位の単位です。GA360を利用の場合は契約の単位になりますので必ず存在しますが、無償版のGA4のみを使っている場合は「組織」がない場合もあります。
「アカウント」「プロパティ」はGA4を使う上で必須なので、有償版・無償版関わらず存在します。「プロパティ」が一番小さい単位で、GA4のレポート画面はこの単位で作られます。「アカウント」は複数のプロパティをまとめる役割をします。
アカウントとプロパティの作り方について明確なルールはありません。プロパティがレポートの単位になるため、ある程度必然的に決まると思います。アカウントは「プロパティがどの単位でまとまっていれば権限管理しやすいか」の観点で決めることが多いでしょう。
たとえば以下のような構造が想定されます。
すでにGA4を利用している場合、GA4画面の左上にあるプロパティ選択の箇所から現状の構造を確認できます。
下画像の「組織」の位置に「すべてのアカウント」と表示されている場合は、アカウントに紐づく「組織」がないことを意味します。
GA4の権限の種類
GA4の権限には5種類の役割(ロール)があります。詳細な定義は以下の公式ヘルプでご確認ください。
公式ヘルプ:[GA4] アクセス権とデータ制限の管理
一番高い権限レベルが管理者、一番低い権限レベルが閲覧者、上位の権限はそれより下の権限の役割も含みます。たとえば編集者はマーケティング担当者が利用できる機能をすべて利用可能です。
主要な機能について、権限ごとに利用可否をまとめると以下のようになります。
ユーザーの権限管理が必要な場合は、必然的に管理者権限を付与することになります。
プロパティ単位の設定変更(たとえばレポート用識別子やデータ保持期間の変更など)をする場合は管理者か編集者の権限が必要になります。当たり前ですが設定変更するとレポート全体に影響が出ますので、なるべく限られた人だけに付与するのが良いでしょう。レポートを見るだけで良い人はマーケティング担当者以下の権限を付けましょう。
すべての権限で標準レポートの閲覧・探索レポートの作成はできますので、簡単なレポーティング業務だけならマーケティング担当者以下の3種類の権限でも可能です。
また、役割と別で2種類のデータ制限があり、「費用指標」「収益指標」を表示しない設定ができます。「費用指標」はGoogle広告の費用やクリック単価などの広告関連、「収益指標」はeコマースの収益などサイト・アプリを通して発生した収益額関連のデータを表示させないようにする設定です。特に社外のユーザー(広告代理店など)に権限付与する必要があるがこれらのデータは開示できない、という場合に活用できます。
GMPの権限の種類
GA4を管理するために利用できるサービスとして、「Googleマーケティングプラットフォーム(GMP)」があります。
無償版のGA4を利用する場合は使わないケースがほとんどですが、360を利用している場合はGMPも必ず利用することになります。
GMPはサイト自体がGA4の画面と異なります。
レポート画面などはなく、権限管理やソリューション管理(GA4・GTM・Google広告などを「組織」に紐づけて管理する)のための機能が揃ったサービスです。
GA4の権限は主にプロパティなどの機能を利用できるかの観点から分かれていますが、GMPの権限は「組織」単位で用意されているので、自社の持つ全てのGA4・GTMに関してどのような役割で関わるかの観点から分かれています。
こちらも簡単にまとめましたが、詳細は公式ヘルプをご確認ください。
GMP公式ヘルプ:ユーザーの役割と権限
組織管理者は主にユーザーの管理を行う立場の方向けの権限です。また、「組織」に対してアカウントを紐づけたり、プロパティの360化を行うため、ツール全体の管理をする方はこの権限が必要になります。
上位権限になりますのであまり気軽に付与できるものではありませんが、組織管理者を登録する作業は組織管理者しかできません。ユーザーの退職で誰もアクセスできなくなるというケースを回避するため、2名以上は組織管理者として登録しておきましょう。
ユーザー管理者はユーザーの権限管理ができます。他のユーザーに対してユーザー管理者か請求管理者の権限を付与できますが、組織管理者を登録したり外すことはできません。
請求管理者はプロパティの360化や請求関連の情報を確認できる権限です。有償版を利用している場合に必要になる権限です。権限管理はできず請求情報が見られますので、経理部門やコスト管理についてはこの権限だけでもよいでしょう。
GMPの権限は上位・下位のような概念がありませんので、それぞれを組み合わせて使います。たとえば権限管理も請求関連の確認もする必要がある場合は、ユーザー管理者と請求管理者の両方の権限を付与します。
権限管理のレベル
GA4の5種類の権限と、GMPの3種類の権限について説明しました。
もう一つ理解しておきたいのが「継承」という考え方です。
公式ヘルプ:継承権限
GMP・GA4はそれぞれ以下のようなレベルで権限設定があり、「直接」と「継承」の2タイプがあります。
「直接」は文字通りそのレベルに直接付与された権限です。たとえばプロパティの権限設定画面から権限を追加した場合、そのプロパティに対して直接権限を持つことになります。
「継承」は上位のレベルで設定された権限に応じて自動的に付与される権限です。
たとえばGMPの権限「ユーザー管理者」がそのGoogleアカウントに付与されている場合、組織に紐づくすべてのアカウント・そのアカウントに紐づくすべてのプロパティで自動的にユーザー管理ができるようになります。
GA4の中でも、アカウントで設定した権限はその下のプロパティに継承されます。たとえばアカウントに管理者の権限がついていれば、紐づくすべてのプロパティで自動的に管理者として設定が変更できるようになります。
プロパティやアカウントにひとつずつ権限を付ける手間がかからないという点ではメリットかもしれませんが、意図しないプロパティにも権限がついてしまうような事故も起こりかねませんので、継承の概念はしっかり理解しておく必要があります。
継承された権限より上位の権限を付けたい場合は、直接権限をさらに付与することでそのレベルの権限だけ設定することができます。
たとえばアカウント単位でマーケティング担当者の権限を持っている場合、紐づくプロパティには自動的にマーケティング担当者が継承されますが、特定のプロパティだけ上位の管理者権限を直接付与することで、そのプロパティだけは管理者権限で利用することができます。
この設定はあくまで「上位の権限をつけたい場合」のみになります。下位の権限を付けたい場合は直接権限では上書きできませんので継承される元の権限を変更する必要があります。
GMP内の権限に応じてGA4へ何の権限が継承されるかは、以下の公式ヘルプに権限ごとに細かく記載されています。権限ごとのプルダウンを開いた中の「リンク設定したアナリティクス関連サービスに継承される権限」の箇所を参照ください。
公式ヘルプ:ユーザーの役割と権限
継承の状況は、アカウントやプロパティのアクセス権限付与画面からも確認できます。たとえば以下の画面はGMPの組織管理者がついている場合の、プロパティの権限設定画面です。
GMPの組織管理者が継承されて、GA4でユーザー管理ができる管理者の権限がアカウントへ継承されています。アカウントの権限は紐づくプロパティに継承されますので、このプロパティには何も設定しなくても自動的に管理者権限がつくことになります。
GA4管理画面で「プロパティのアクセス管理」から権限のあるユーザー一覧を確認したときに、想定していないユーザーが入っていれば継承の影響が考えられます。上記のような確認方法も知っておくといざという時に安心でしょう。
また、FirebaseやGoogle広告をGA4プロパティにリンクすると、Firebase・Google広告側の権限に対応する権限が自動的にアナリティクスで付与されます。広告代理店や開発会社に権限が自動的に付与されてしまう場合がありますので、ツール連携をしている場合はこの点もご注意ください。
ツール側で持っている権限とGA4に付与される権限の対応については、以下に記載があります。
公式ヘルプ:データ制限がアナリティクスの他の機能に与える影響
さいごに&知っておくと便利な機能
基本的な権限の知識についてここまで書きました。
GA4の権限管理だけなら単純ですが、継承の概念が入ってくるとややこしくなります。
GA4を使い始める前や定期的なタイミングで、「どの部署の・どの役割の人に・何の権限を・どのレベルで付与するか」をきちんと整理しておくのが理想ではありますが、組織が大きいと中々難しいと思います。
そういった課題に対して便利なGMPの「ユーザーグループ」機能があります。以下の別コラムで細かく解説しますので、ここまで読んで興味を持っていただいた方はぜひ参考にしてください。