広告配信の際、コンバージョンの数が少ないがために、中間指標としてマイクロコンバージョンを設定することがあります。しかしマイクロコンバージョンを上手く利用できなければ、かえって広告効果を悪化させてしまうリスクもあります。
今回はマイクロコンバージョンの設定にどのようなリスクがあるか紹介していきます。※機能の名称はGoogle 広告での表記に統一します。
- マイクロコンバージョンとは
- マイクロコンバージョン設定の効果
- マイクロコンバージョンを目標値として設定した広告運用のリスク
- メインアクションに設定するマイクロコンバージョンに必要と考えられる要件
- さいごに
マイクロコンバージョンとは
コンバージョンとは
まずは「コンバージョン」の定義を確認しましょう。Google 広告 では以下のように定義されています。
ユーザーが広告や無料商品リスティングを操作し(テキスト広告のクリックや動画広告の視聴など)、その後で広告主様にとって価値ある特定の行動(サイトでの商品購入や、スマートフォンでの問い合わせなど)に至ることを、コンバージョンと呼びます。
引用元:https://support.google.com/google-ads/answer/6365?hl=ja
Google 広告のヘルプの記述を確認すると、広告主にとって価値ある特定の行動に至ることがコンバージョンとして説明されています。「商品の購入」「セミナーの参加申込」「アプリのインストール」などが一例として挙げられます。
マイクロコンバージョンとは
次に「マイクロコンバージョン」について説明します。公式での定義はありませんが、一般的にはコンバージョンに至るまでの中間指標を指します。例えば、ECサイトで「購入」をコンバージョンとした場合、「カート追加」がマイクロコンバージョンになります。
マイクロコンバージョンは「メインアクション」と「サブアクション」に分けられます。
メインアクションは[コンバージョン]列に数値が反映されるようになり、スマート自動入札にもデフォルトで活用されるようになります。
一方サブアクションは[コンバージョン]列には数値が反映されず、[すべてのコンバージョン]列に数値が反映されるようになります。また、スマート自動入札の最適化には活用されません。
「サブアクション」はレポートに数値が反映されるだけですが、「メインアクション」では広告効果を悪化させてしまうリスクがあります。
本記事では、メインアクションに設定したケースをテーマに取り扱っていきます。
マイクロコンバージョン設定の効果
マイクロコンバージョンを設定することで以下のような効果があります。
コンバージョンに至るまでの中間地点を計測
本来計測したい「商品の購入」「セミナーの参加申込」などのコンバージョンで母数が少なければ、広告の効果が判断しづらくなってしまいます。そこでコンバージョンに至るまでの中間地点をマイクロコンバージョンとして設定すれば、コンバージョン数が少なくとも、実績が評価しやすくなります。
スマート自動入札の最適化指標
「コンバージョン数の最大化」「コンバージョン値の最大化」のようなスマート自動入札は、Google AI を使用してオークションごとにコンバージョン数やコンバージョン値を重視した入札が行われます。キャンペーンの目標に設定されていればマイクロコンバージョンのデータも含め、入札価格の調整が行われます。
自動ターゲティングの最適化指標
近年では「P-MAX」やGDN、デマンド ジェネレーションなどの「最適化されたオーディエンス」のようにコンバージョン実績をもとに、ターゲティングが拡張される機能があります。キャンペーンの目標に設定されていればマイクロコンバージョンのデータも含めて、関連性の高いオーディエンスに広告が配信されることとなります。
マイクロコンバージョンを目標値として設定した広告運用のリスク
マイクロコンバージョンは、スマート自動入札と自動ターゲティングの最適化に活用される指標です。そのためマイクロコンバージョンの設定が配信結果に大きな影響を及ぼすのですが、必ずしも良い影響だけではありません。
よくある事象なのですが、マイクロコンバージョンをキャンペーン最適化の指標とすると、本来取得したいコンバージョンではなく、マイクロコンバージョンばかり増えてしまうケースがあります。
これは最適化の指標を手前に置くことで、本来のコンバージョンに至りやすいユーザーではなく、マイクロコンバージョンに至りやすいユーザーが増えてしまうことにより、広告主にとっての「ユーザーの質」が低下してしまうことが原因です。
媒体としては最適化対象がマイクロコンバージョンになっているのであれば、最終コンバージョンに至りやすいかどうかに関わらず、指定したマイクロコンバージョンが最大化するように入札価格調整やターゲティング拡張が行われます。
最終コンバージョンを最適化指標とした場合に見られる挙動
最終コンバージョン+マイクロコンバージョンを最適化指標とした場合に見られる挙動
コンバージョンの手前にあるイベント発生が多いだけの地点を評価対象として設定していく場合、極端なことを言うとサイト流入(≒ クリック)がマイクロコンバージョンとして設定されることになります。サイト流入をどれだけ増やしてもコンバージョン数が増えない事象は運用型広告に携わる方であればイメージできるのではないでしょうか。それと同様に、マイクロコンバージョンも単純に数値が増えれば好転するというわけではないのです。
特に本来のコンバージョンと乖離が発生しやすいのは、「入力フォームへの遷移」や「電話ボタンのタップ」のように、簡単で誰でも実行できるようなポイントをマイクロコンバージョン(メイン)として設定するケースです。
「入力フォーム遷移」まで至っていても、ハードルが高くなりすぎて最終コンバージョンは増えず、入力フォームに遷移するだけのユーザーが結果的に増えてしまうのです。特にディスプレイやSNSなどは、なんとなくで回遊するような動きもよく見られるため、最終コンバージョンに至るユーザーが増えづらいケースが多いように感じます。
メインアクションに設定するマイクロコンバージョンに必要と考えられる要件
そもそもな話をしてしまうと、可能な限り最終コンバージョンを最適化の指標とすることが良いと考えています。最終コンバージョンで一定の母数があるのであれば、より高い質のリードを取得していくことができるでしょう。
もし最終コンバージョンの数が少なく、マイクロコンバージョンの設定が必要であれば、新しく「ホワイトペーパーのダウンロード」や「セミナー申し込み」など、リードを獲得するポイントを作成してみてはいかがでしょうか。
マイクロコンバージョンであっても、一定のハードルを超えるイベントが好ましいです。そうでなければ、最終コンバージョンと相関関係になりづらく、結果的に悪影響になってしまうことが多いためです。
さいごに
今回はマイクロコンバージョンについてまとめましたが、そもそも媒体での最適化に任せず、入札戦略は「拡張クリック単価」で、「最適化されたオーディエンス」などのターゲティングを拡張する機能は利用しないという方針も考えられます。マイクロコンバージョンで誤った最適化をするよりは、広告運用者側のコントロールで改善するケースもあります。
スマート自動入札や最適化されたオーディエンスなどは有効な方法ではありますが、必ずしもそれらを使った配信を行うことがベストプラクティスではありません。目的や目標に応じて、配信設計から見直すのも一つの方法ではないでしょうか。