みなさんは動画広告をどのように評価していますか?
最近はコンバージョンを目的とする動画広告を配信するケースも増えてきているかと思いますが、動画広告と聞くと「認知」を目的とした配信をイメージされる方も多いのではないでしょうか。
商品・サービスを知ってもらわないと、ユーザーのアクション(購入、申し込み…など)にはつながらないので、認知を進めていくことは非常に重要であると感じます。
しかし、認知を目的に配信する際には「何を評価指標とするのか」が非常に悩ましいポイントです。
ブランドリフトやサーチリフトを評価指標とするケースも多いかと思いますが、短期間で多額の出稿を行う必要があったり、予算を確保できても回答が少なく評価できない場合があったりと、気軽に実施できるものではないように感じています。
認知目的の配信を行ったことはあるが費用対効果が分からず、継続可否を判断できない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回テーマに取り上げるのは、最近注目されている動画広告の評価方法である「View Through Brand Search(VTBS)」です。
この設定は動画視聴後の「検索への貢献度」を見るための方法ですが、サーチリフトのように下限予算は必要ありません。
少額のご予算であっても対応できるため、認知目的施策の評価が曖昧になっている場合は一度実施を検討してみてください。
VTBS とは
動画広告の評価を行うために「指名検索広告経由のサイト流入」を中間コンバージョンとして設定する方法がView Through Brand Search(以下VTBS)と言われています。
VTBSはGoogle 広告の特徴を活かし、動画広告を視聴したユーザーがどれだけ検索行動を行ったか推定する参考値として算出することができます。
Google 広告の特徴として、広告をクリックしたユーザーのコンバージョン(クリックスルーコンバージョン)のみではなく、動画広告を視聴したが広告をクリックしなかったユーザーのコンバージョン(エンゲージビュースルーコンバージョン)を計測することが可能です。
その機能を活用し、「指名検索広告経由のサイト流入」をGoogle 広告のコンバージョン地点として設定すれば、動画広告を視聴したユーザーがどれだけ指名検索を行ってサイトに流入したかが分かるようになります。
動画広告を視聴したユーザーがどれだけ指名検索を行ってサイトに流入したかが分かるようになれば、指名検索広告のクリック率から逆算し、どれだけ指名検索が行われたのかが参考値を算出でき、認知向けの動画広告を評価しやすくなるのです。
計算式
動画視聴後の指名検索のクリック数 ÷ 指名検索のクリック率 ≒ 動画視聴後に検索した数
VTBS の設定方法
VTBSについて説明を行ってきましたが、この設定を行うためには1つの広告 アカウントでは実施できず、2つの広告アカウントが必要となります。
設定方法
①2つのアカウントを準備(必須)
- 「検索広告」を配信するGoogle 広告 アカウントA
- 「動画広告」を配信するGoogle 広告 アカウントB
②Google 広告 アカウントB に「指名検索の広告流入をCVとして設定」(必須)
Google タグ マネージャーを利用して、「utm_campaign」を指定するなど、指名検索の広告がクリックされたことを示す場合にCVタグを発火させる必要があります。
(例)Google タグ マネージャーによる設定
URL:https://ayudante.jp/?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=brand
設定:「utm_campaign=brand」をページビューとして指定
③同じコンバージョンポイントで計測期間を分けたコンバージョンを複数設定する(推奨)
「1日」「3日」「7日」「30日」のように計測期間が異なるコンバージョンを複数設定すれば、ユーザーが検索を行うまでどの程度時間をかけるのか参考にできます。
(※この設定は必ずしも必要ではありません)
2つのアカウントが必要となる理由
VTBSを行うためには「検索広告」「動画広告」を分けた2つのGoogle 広告 アカウントが必要となります。
実は動画広告を視聴したあとに指名検索を行ったことを計測するだけであれば、1つの広告 アカウントでもアトリビューション モデルを「データドリブン」にすれば計測は可能です。しかし、「指名検索の広告流入をCVとして設定」する場合、必ず指名検索にもコンバージョンが割り当てられることとなり、動画広告を視聴したあとに指名検索を行った回数を整数で計測できなくなります。
そのため、今回計測したい指標の1つである「動画広告視聴後の検索数」が計測できなくなってしまうのです。
VTBSのメリット・デメリット
VTBSのメリットとデメリットを解説します。
メリット
- 動画広告の影響により検索がどの程度増えたか参考にできる
検索広告経由のみの数値ではありますが、動画広告を視聴したあとにどれだけ検索を行ったか実数で分かるため、動画広告を評価するために有効な数値が出せます。 - 動画広告視聴後の検索を最適化の指標に利用できる
副次的な効果として「動画広告視聴後の検索」をキャンペーンの目標として設定すれば、検索行動を起こしやすいユーザーに広告が表示されやすくなります。(※今回の設定に限らず、検索広告経由の流入をコンバージョンとして設定すれば、同様の効果を出すことは可能です) - 少額からでも実施が可能
ブランドリフトやサーチリフトのように特定の金額が必要な方法ではありません。検索広告をすでに配信しているのであれば、動画広告分の広告予算があれば実施可能です。
デメリット
- 複数のGoogle 広告アカウントが必要となる
アカウントが2つ必要となるため、単純に管理工数が増加します。
またアカウントを分けることで、1つのアカウントに蓄積されるはずであったデータが少なからず分散してしまうこととなります。 - 追加のタグ設定が必要
コンバージョンタグを新しく設定しなければなりません。
主なデメリットは工数の増加です。一部の動画広告を分けるだけであれば影響は少ないように思いますが、アカウントを分ける以上は配信結果にも影響がないとは言い切れません。
VTBSの注意点
- 検索広告のインプレッションシェア
指名検索のインプレッションシェアが低ければ数値の信憑性が低くなります。そのため、インプレッションシェアは高い水準であることが好ましいです。 - 純増効果
顧客リスト、リマーケティングのように、獲得に近いファネルで配信を行った場合、動画広告を視聴したから検索を行ったわけではなく、もともと検索をするユーザーが動画を視聴しただけであった可能性があります。
また、この設定では純増効果のみを検知できるわけではないため、ターゲティングによって数値が変動しうる点はご注意ください。
VTBSを利用した感想
動画広告での評価指標を設定できる点は有効であると言えます。最適化のポイントも、本来のコンバージョン(購入、申込、問い合わせ…など)と比較すると、数値が上がってきやすいため効果も図りやすく、コンバージョンを目的とする入札戦略も機能しやすいように感じました。
また推定コンバージョンの影響によりデバイスをまたいだコンバージョンも計測されます。そのため、テレビでの広告配信であっても検索行動につながっていることが管理画面上で確認できました。
さいごに
認知目的の場合、評価方法が曖昧なまま配信を開始するケースもあると思います。
この方法は検索広告の結果をもとに参考値を算出する方法で、すべての検索結果が分かるわけではありませんが、曖昧になっている評価材料の1つとして検討する余地はあるのではないでしょうか。
もし評価しきれていない動画広告を配信しているようであれば、この設定を検討してみてください。