GA4には「エンゲージメントのあったセッション」「ユーザーエンゲージメント」など、エンゲージメントという概念の理解が必要な指標が多く見られます。
また、UAでよく使われていた「直帰率」という指標も、GA4では同じ名前ですが「エンゲージメントのなかったセッションの割合」という定義に変更されています。
このコラムではエンゲージメントという概念について、基本的な考え方を解説します。
※GA4のレポート画面上は「エンゲージのあったセッション」という日本語訳になっていますが、本記事はわかりやすさを重視して「エンゲージメント」に表記統一しています。
GA4で登場した「エンゲージメント」
公式ヘルプにはエンゲージメントの意味として「サイトやアプリに対するユーザーの操作です。」と記載されています。
「エンゲージメントがあった」を「ユーザーがサイトに興味を持ってくれた」と置き換えるとわかりやすいかも知れません。
- エンゲージメントのあったセッション=ユーザーがサイトに興味を持ってくれたセッション
- エンゲージメント時間=ユーザーがサイトに興味を持ってくれていた時間
- エンゲージメント率=サイトの全セッションのうち、ユーザーがサイトに興味を持ってくれた割合
ユーザーはサイトに興味を持てなければ一瞬で去ってしまいますが、興味を持ってくれれば複数ページを見たり、コンテンツをじっくり読み込んだりとより深くサイトを使ってくれます。
このユーザー行動の違いを数値に反映し、「ユーザーにとって興味が持てるサイトになっているかどうか」を評価できるのがエンゲージメントという概念です。
エンゲージメントとは何か
GA4のエンゲージメントでは、「エンゲージがあったセッション」と「エンゲージメント時間(ユーザーエンゲージメント)」の2つを理解するのが重要になります。
■エンゲージがあったセッション
ユーザーがサイトに興味を持ってくれたとき、「このセッションはエンゲージメントがあった」とGA4が判断します。
具体的には、以下のいずれかの条件に該当するセッションだった場合、エンゲージがあったセッションとしてカウントされます。
- ユーザーが10秒以上セッションを継続した場合
- コンバージョンイベントが発生した場合
- 2ページ以上閲覧した場合
1つめの条件の秒数のみ変更可能ですが、それ以外の条件は変更できません。(変更方法は最後に記載します)
「2ページ以上閲覧はエンゲージメントの条件にしない」のようなカスタマイズはできませんので、あくまで上記3点のいずれか1つが達成されれば、エンゲージメントがあったとされます。
単純に該当するセッションが何件あったかが「エンゲージのあったセッション数」という指標、全セッションに対しての割合にしたのがエンゲージメント率(エンゲージがあったセッション数÷全セッション数)です。
■エンゲージメント時間
もうひとつの「エンゲージメント時間(ユーザーエンゲージメント)」は、ユーザーがサイトやアプリを実際に使っていた時間の合計を表します。
GA4ではユーザーがサイト内でさまざまなイベントを発生させると、その時間(前のイベントからの経過時間)をカウントしています。
そして次のいずれかのタイミングで、GA4へ送信します。
- ユーザーがアプリの画面をバックグラウンドに移動したとき
- フォーカス状態のウェブページからユーザーが離れたとき
- ユーザーがアプリの画面またはウェブページから離れたとき(例: タブ、ウィンドウ、アプリを閉じる、別の画面またはページに移動する)
- サイトまたはアプリで問題が発生する
UAでは滞在時間を使ってサイトが見られていた時間を計っていましたが、エンゲージメント時間=サイトやアプリをユーザーが”実際に”見ていた時間をあらわします。
たとえばユーザーが、サイトを見ている途中で別サイトを他タブで見ていたとします。ページ自体はタブに残ったままですが、ユーザーは実際にサイトを見ていません。
この間の「滞在時間」はカウントされ続けますが、「エンゲージメント時間」はカウントをストップします。
UAの滞在時間とGA4のエンゲージメント時間を比較すると概ねGA4の方が短くなりますが、エンゲージメント時間の方がより実態に近いユーザーの閲覧時間を表している指標と言えます。
■注意点
エンゲージメント時間が送信されるタイミングを見るとわかるように、ユーザーがサイト内を移動したりサイト外に移動するときに計測されるので、「エンゲージメントがあったセッション」としてカウントされる条件とはまったく関係ありません。
たとえば【サイトを開き、ページを一番下までスクロール(scrollイベント)し、サイトを閉じる】という動きを5秒で行った場合、エンゲージメントのあったセッションとしてはカウントされませんが、エンゲージメント時間は5秒として計測されます。
同じエンゲージメントという単語がついているので連動しているようにも思えますが、計測される条件が異なるというのを覚えておくと良いかもしれません。
エンゲージメントがなぜ必要なの?
UAをはじめとするアクセス解析ツールで、デフォルトで用意されている指標は、基本的に「サイトに来ただけ」で計測される数値です。
しかし実際にサイトに来たユーザーの中には、ページをじっくり見てサービスに興味を持ってくれた人もいれば、自分の興味と合わないと判断して一瞬でサイトを閉じてしまう人もいます。
もちろんサイトにとって望ましいのは前者です。
UAでは「直帰率」や「滞在時間」といった指標で、ユーザーとサイトの親和性を見ていました。
しかしこれらの指標には欠点もあります。
たとえばウェブメディアなどコンテンツ配信がメインのサイトでは、目当てのコンテンツを1ページだけ見て満足して離脱、というのが自然なユーザー行動です。
その結果ユーザーは目的を達成して満足しているのに直帰率は高く出てしまい、コンテンツを正しく評価できているとは言えません。
そのため、どうしてもユーザーがコンテンツをちゃんと読んでくれたのかを判断するためには、スクロール率などを別途計測する必要がありました。
こうしたカスタマイズをしなくても、サイトに来てくれたユーザーにちゃんと興味を持ってもらえたかを評価できるようになったのが、GA4のエンゲージメントと言えます。
エンゲージメントはどう使えるの?
GA4で登場したエンゲージメントは、ツール側が決めた定義にはなりますが「サイトに興味を持ってくれたか」を判断するのに手軽に使える指標です。
■分析・サイト評価に利用する
エンゲージメント率が低い場合、ユーザーの多くが一瞬で「このサイトは自分に合っていない」と判断して離脱したということです。
サイトに合っていないユーザーを大量に連れてきてしまっているか、ユーザーに必要な情報が伝わらないサイトになってしまっていないか、チェックする必要があります。
■広告配信に利用する(オーディエンス作成)
サイトをじっくり見ていたのにコンバージョンしていないユーザーは、サイトに興味を持ったものの最後の一押しが足りていないユーザーと考えられます。
後押しになるようなキャンペーンの広告を打つなど、接触機会を増やすことでコンバージョンにつながるかもしれません。
逆に、サイトに何度も来てくれているがエンゲージメントがないセッションばかり、という場合も「サイトには連れてこれるのに興味を持ってもらえていない」という機会損失になっています。
この人たちが何を求めてサイトに来ているのかを深堀分析し、コンテンツを届けるようにコミュニケーションしていくことも検討できます。
最近、オーディエンス作成ツールに新しい指標「エンゲージメントの少ないセッション」が追加されました。これを使うことで、たとえば「7日間以内に3回以上エンゲージメントの少ないセッションを発生させたユーザー」のような設定が可能です。
さいごに
エンゲージメントがあったとカウントされる条件の1つである「10秒以上継続した場合」の秒数は、以下から秒数を変更できます。
管理画面から「プロパティ」内の「データストリーム」から該当のストリームを選択
→「タグ設定を行う」
→「設定」の中の「すべて表示」をクリックして「セッションのタイムアウトを調整する」
→「エンゲージメントセッションの時間調整」の数値を変更
エンゲージメントは「アクティブユーザー数」や「直帰率」の算出に使われており、GA4の指標を正しく理解するには実は重要な概念です。
意味を理解し、サイトの評価や施策の精度を上げていくために活用してみましょう。