推定コンバージョンや予測指標と聞くと、AIの利用や機械学習といった高度な分析をイメージするのではないでしょうか。
実際、Googleアナリティクスを始め、Googleやその他のマーケティングツールでは統計、AI、機械学習を用いた予測が行われ、実際にそのデータを利用できる環境が増えてきています。
まだ、それらを活用するケースは多くはないものの、以下のグラフのように一部ではマーケティングに利用されるケースも出てきています。
自社サイトの分析や広告出稿のために、統計や予測データを活用したいと考えている方もいらっしゃると思います。
新しいGAであるGoogle アナリティクス4プロパティ(以下、GA4)でも統計的な機械学習機能や予測指標を利用することができるようになっています。
今回は、その中から「推定コンバージョン」「予測指標」について解説します。
1. GA4の「推定コンバージョン」
1-1 推定コンバージョンとは
推定コンバージョンとは、直接計測できないオンラインのコンバージョンを推定する機能です。
ユーザーのプライバシー保護や、技術的な成約、デバイスの切り替えなどで直接確認できないコンバージョンを推定する機能です。
直接計測したコンバージョンと、そうではないコンバージョンの傾向をモデル化(モデリング)することで、直接計測できないコンバージョンに対してモデルを当てはめる仕組みです。
例えば、ユーザープライバシーの観点で、Chromeブラウザではコンバージョンが計測できるが、Safariブラウザでは計測できないコンバージョンがあるとします。
この場合、Chromeブラウザごと、Safariブラウザごとにユーザーの行動にどのような傾向が見られるかを把握します。
そして Chromeブラウザで計測されたデータに基づいて、計測できないSafariブラウザのコンバージョン見込みを推定します。
推定コンバージョンは、このように計測できないコンバージョンをモデルにより推定することで、より実態に近い数値のレポーティングや広告の最適化、自動入札の精度向上を目的としているのです。
Googleヘルプ「 [GA4] 推定コンバージョンについて(日本語)」
Googleヘルプ「 [GA4] About modeled conversions(英語)」
Googleヘルプ「 オンライン コンバージョンの推定について」
1-2 推定コンバージョンが表示される場所
GA4では2021年7月末頃からモデル化されたデータである推定コンバージョンを含むようになりました。(それ以前のレポートに影響はありません。)
モデル化されたデータは、クロスチャネルの結果が表示されるレポートに適用されます。
イベント、コンバージョン、アトリビューション、探索レポート(イベントスコープのディメンションを選択可能)です。
・イベントレポート
・コンバージョンレポート
・アトリビューションレポート(モデル比較)
・アトリビューションレポート(コンバージョン経路)
・探索レポート
1-3 推定コンバージョンの利用方法
現時点では自動で適用され、適用可否を選択することはできません。
また、適用されているか否かの確認もできない仕様となっています。
各レポートにおいてクロスチャネルのコンバージョンに対して総数は変わらないが、ユーザー行動の内訳を推定して表示されます。
十分なトラフィックがないと対象になりませんが、どのように集計されているかは公開されていません。
<推定コンバージョンのイメージ例>
・コンバージョンの総数は変わらない
・クロスチャネルの内訳が変更されている
1-4 どのような場合にモデル化されるのか
Googleがユーザーを直接確認できないコンバージョンのケースとしては以下があります。
・サードパーティcookieが許可されていない場合
→Safari ブラウザではサードパーティー Cookie はすでにブロックされています。
Chrome も Firefox も設定でブロックすることが可能です。
ブロックされている状態で利用したユーザーは、ブロックされていないユーザーのモデルが適用される可能性があります。
・ファーストパーティの Cookie の有効期間に制限を設けているブラウザの場合
→Safari ブラウザではファーストパーティ Cookie は24時間で削除されます。
その有効期間以降に生じたコンバージョンはモデルが適用される可能性があります。
・同意モードを利用していて同意を許可しないユーザーの場合
→同意モード実装サイトで「同意しないユーザー」のデータは計測されません。
同意したユーザーのコンバージョンに基づきモデル化される可能性があります。
・広告インタラクションとコンバージョンが複数のデバイスで発生する場合
→同一のユーザーが複数のデバイスで行動しコンバージョンが発生するケースです。
例えば、PCで比較を行い、後日スマホでコンバージョンを行う場合に該当します。
この場合はコンバージョンしなかったデバイスでの行動がモデル化される可能性があります。
・「地域とデバイスに関する詳細なデータの収集」を有効にしている場合(デフォルトでは有効設定)
→地域ごとのコンバージョンに基づきモデル化される可能性があります。
GA4からGoogle広告にインポートされたコンバージョンはモデル化された数値が含まれます。
また、YouTube におけるエンゲージ ビューコンバージョン(EVC)も対象となります。
1-5 クロスチャネル型データドリブンアトリビューションとの違い
似たような機能に「クロスチャネル型データドリブンアトリビューション」というアトリビューションモデルがあります。
推定コンバージョンはサードパーティcookieを利用できる場合は利用し、同意モード利用時の同意のないユーザーはモデル化されるなど、ユーザーの情報が無いか少ない場合に自動的に推定されます。
また、推定コンバージョンの適用可否を選べません。
一方、クロスチャネル型データドリブンアトリビューションは、これまでサイトに蓄積された実データのみを利用して統計的にアトリビューションのモデルを作ります。
また、このモデルを利用するか別のモデルを利用するかを選ぶことが可能です。
詳しくは、以下のコラムで解説しているので参照ください。
1-6 推定コンバージョンのプライバシーへの影響
推定コンバージョンは、個々のユーザーデータに依存しません。
その代わり、モデルは過去のコンバージョン率、デバイスタイプ、ブラウザ、場所などの集計データでのコンバージョンの可能性を予測するようにプログラムされています。
2. GA4の「予測指標」
2-1 予測指標とは
予測指標とは、ユーザーのこれまでのコンバージョンや離脱などの行動から、「今後のユーザー行動」を予測した指標のことです。
推定コンバージョンとの違いは、2つあります。
1つ目は、推定コンバージョンはコンバージョンに対してクロスチャネルの内訳を統計的に予測したものですが、予測指標はコンバージョン以外にも離脱などユーザーの行動から統計的に将来の確率を予測することができる点です。
2つ目は、サードパーティcookie 等のユーザー情報の利用の有無です。
推定コンバージョンはサードパーティcookie を利用できる場合は利用するなど、ユーザー情報がない、または少なくても補完できる情報から統計処理を行いました。
一方で予測指標では、実データのみを利用し予測します。
2-2 3つの予測指標
予測指標は現時点では「購入の可能性」「離脱の可能性」「予測収益」となります。
「購入の可能性」「予測収益」の2つの指標は purchase イベントまたは in_app_purchase イベントを機械学習によって予測しています。
2-3 予測指標の利用条件
予測指標を利用するためには、以下の条件を満たしている必要があります。
2-4 予測指標が利用できる場所
予測指標は探索レポートとオーディエンスで利用可能です。(詳細は次項を参照)
推定コンバージョンのように自動反映ではなく、自身で指標として「購入の可能性」「離脱の可能性」「予測収益」を選択して利用します。
探索レポートでは主に集計・分析を行う際に利用します。
流入経路ごと、またはキャンペーンごとに、どれくらいの購入の可能性や収益予測が可能なのかを集計し、流入経路やキャンペーンを評価するのに役立ちます。
また、離脱の可能性の高いキャンペーンやランディングページを把握し改善に役立てることも可能です。
オーディエンスでは主に広告出稿を行う際に利用します。
購入の可能性や収益予測が一定以上の場合に広告を出稿するなど、見込みの高いユーザーへのアプローチが可能になります。
2-5 予測指標の利用方法
▼探索レポートの場合
・探索レポートから「ユーザーのライフタイム」を選択
・指標から「予測指標」を選択
・値に適用する
▼オーディエンスの場合
・管理 > オーディエンス から「オーディエンス」を選択
・オーディエンスから「カスタムオーディエンス」を選択
・指標から「予測可能」を選択
まとめ
GA4で取り扱うデータは、すでに標準レポートの指標にも機械学習が利用され始めています。
今回ご紹介した「推定コンバージョン」と「予測指標」をしっかり理解し、目的に応じて利用することで、より効率が高い、またはタイミングの早いアクションに踏みこむことが可能です。
今後はますますこの流れは加速していくと考えられますので、今のうちにしっかりと理解を深めて行きましょう。