このコラムでは「GA4になってレポートをどのように見たら良いかわからない」という方向けに、標準レポートを使った集客評価の基本を解説します。
GA4はレポートの柔軟性が高い一方で、何を明らかにし、その結果からどのようなアクションをするのかという目的設定がより重要になります。
分析目的を意識しながらレポートを見ていきましょう。
まずは施策の目的を整理しよう
レポートを開く前に、自社が現在どのような集客手法を導入し、その目的が何かを正しく理解しておくことが、チャネルごとのパフォーマンスを正しく行うために重要なポイントです。
デジタルマーケティングではユーザーの状況にあわせて、集客手法を使い分けるケースがよくあります。
たとえばYouTube広告やSNS広告は認知獲得を目的に出稿することがありますが、その効果をコンバージョン関連の指標で行ってしまうのは適切ではありません。施策目的と評価指標は一貫性を持たせる必要があります。
GA4の標準レポートを使った分析の場合、「新規ユーザーをサイトに誘導するための施策」「サイトに再訪問してもらうための施策」「コンバージョンしてもらうための施策」というくくりで施策を整理しておくと、見るべきレポートが整理しやすいのでおすすめです。
集客評価に使えるGA4の標準レポート
集客評価に使える標準レポートは「ライフサイクル>集客」に含まれるレポート群です。
GA4では「ユーザー獲得」「トラフィック獲得」という2軸でチャネルが評価できるようになっています。
「ユーザー獲得」は、新規ユーザーを獲得したチャネル、「トラフィック獲得」は、セッションごとのチャネルが表示されるレポートです。
たとえば以下のようなユーザーを想定すると、計測される数値は以下のように異なります。
各レポートの画面構成は同じで、ディメンションとして最初にデフォルトチャネルグループが表示されています。プルダウンで「参照元/メディア」「キャンペーン」など粒度を変更できますので、評価したい粒度を選びます。
指標は、チャネルの集客力を【量】で評価するユーザー数、【質】で評価するエンゲージメントやイベント・コンバージョン関連の2種類が並んでいます。
レポートを確認してみよう
まずは集客サマリーを確認し、自サイトの状況を把握します。
あなたのサイトに足りていないのは、新規ユーザーの獲得でしょうか?それともリピーターでしょうか?
サイトにもっと新規ユーザーを呼ぶ必要があるなら、まずは「ユーザー獲得」レポートを確認しましょう。新規ユーザー数が多いチャネルの露出を増やしたり、逆に新規ユーザー数が少ないチャネルの配信ターゲットを見直すなど、サービスやサイト自体の認知を獲得する必要があります。
とはいえ限られた予算の中で、ただ量を集めるだけでは売上につながりません。コンバージョンまでちゃんと繋がるチャネルを見極めるためには質の評価をかけ合わせて見る必要があるでしょう。
このレポートのうち、有料施策であるDisplayとPaid Searchを比較してみると、集客の量はDisplayの方が多い一方、コンバージョン・収益につながっているユーザーを呼べているのはPaid Searchの方だとわかります。
質の高いユーザーを獲得できているチャネルの集客量を上げるのか、集客量の多いチャネルから来ているユーザーの質を上げるためにクリエイティブやLPの改善をするのか、自サイトに必要な改善施策について検討するヒントになります。
マイクロコンバージョンを設定しておこう
ユーザーの質を表す指標として、GA4では「エンゲージメント」という概念が追加されました。
エンゲージメント関連の指標を確認することで、ユーザーがサイトを使ってくれているか、興味を持ってくれているかを評価することができます。エンゲージメントが低いチャネルは、施策の訴求内容やキーワードと、誘導先のコンテンツの内容に整合性が取れているか確認してみましょう。
アナリティクスヘルプ:
[GA4] エンゲージメント率と直帰率
また、自社のサイト・ビジネスに合わせたマイクロコンバージョン(中間コンバージョン)をイベントとして計測しておくことをおすすめします。
たとえばGA4上のコンバージョンが問い合わせ完了であればフォームページの閲覧、ECサイトで商品購入完了がコンバージョンであれば商品のカート追加や購入フローの開始といった内容をイベントとして計測しておきましょう。
レポートの右側に表示される「イベント数」「コンバージョン数」は、レポート表示時にはすべてのイベント・コンバージョンの合計値が並んでいるため、計測したマイクロコンバージョンやコンバージョンに絞り込みます。
上記のレポートで「エンゲージメント率」を見ると、Organic Searchの方がユーザーの質が高いように見えます。
一方「イベント数 begin_checkout(購入フローの開始)」「コンバージョン purchase(購入完了)」を見ると、Directの方が高く、より売上につながっているのはDirectであることがわかります。
Organic Searchから初めてサイトを訪れたユーザーはサイトをじっくり見てくれているものの、実際の購入までにもうひと押しが必要なようです。Organic Searchでもコンバージョンした人としていない人の違いをセグメントごとに確認していくことで、どのような違いがあるか明らかにしていくと良いでしょう。
集客レポートの注意点
■カスタムチャネルグループはGA4に未実装
チャネル分析の際、ユニバーサルアナリティクスではカスタムチャネルグループを作成し、自サイトに合ったグルーピングをしていた方も多いかもしれません。
しかしGA4では、現在カスタムチャネルグループの機能はリリースされていません。
分析がなるべく容易になるように、utmパラメータの命名規則もこの機会に一度見直せると良いでしょう。
■より詳細な評価にはアトリビューションを使ってみよう
標準レポートではコンバージョンに対する「ファーストタッチ」「ラストタッチ」の評価が可能ですが、その間にあるチャネルの評価ができません。
間のチャネルも評価した場合には、「広告」メニューの「アトリビューション」レポート機能を使います。
アナリティクスヘルプ:
[GA4] アトリビューションとアトリビューション モデリングについて
アトリビューションレポートの中のモデル比較レポートで「ラストクリック」と「線形」を比較すると、コンバージョンに直接つながっているチャネルと間接的に貢献しているチャネルが把握できます。
線形よりラストクリックにコンバージョンが多くついているチャネルは、コンバージョンに近いタイミングで有効なチャネルです。逆に線形の方がラストクリックより高いチャネル(上記例だとOrganic Search)はコンバージョン直前よりも比較検討フェーズで利用されやすいチャネルと言えます。
アトリビューションレポートはやや上級者向けですが、多様化するマーケティング施策の評価を行う上では有用なレポートです。どのモデルで評価するのが自社に適しているか、いろいろ試してみましょう。
アナリティクスヘルプ:
アトリビューション モデルの概要
さいごに
GA4の標準レポートは、サイト全体の状況を把握し、どのデータを深掘りして見ていくかを考える入口として有用です。
深掘りするポイントが見えてきたら、比較フィルタや探索レポートなどを使って、より詳細にデータを見ていきましょう。