前回同様、このコラムも8月の勉強会でお話した「マーケティングを目指すアナタに贈る、広告概要とそのポイント」を、一部抜粋しています。
前回は、
マーケターを目指すアナタに贈る、広告概要とそのポイント〜「広告とは? 編」
と題して、広告の大枠と、携わる者の心得についてまとめましたが、今回は、範囲を狭めて、インターネット広告について、マーケターを目指す方に知っておいていただきたいことをまとめました。
目次
■インターネット広告とは
前回のコラムで、広告についてお話しをさせていただきましたが、改めて、広告とは何ぞやということを再掲します。
広辞苑によると、
“広く世間に告げ知らせること。特に、顧客を誘致するために、商品や興行物などについて、多くの人に知られるようにすること。また、その文書・放送など”
とのこと。
広辞苑では、文章・放送など、となっていますが、インターネットが普及している現代においては、文書・放送に加えてインターネット、あるいはWEBサイトなどという言葉が入るのではないでしょうか。2019年、インターネット広告費は、テレビ広告費を上回り、事実上、一番使われている広告媒体だといっても過言ではありません。
出典元:電通「2019年 日本の広告費」
掲載した、この電通が発表したグラフでもわかるように、2015年との比較では、2019年に費用は約倍額にまで増加しています。これは、急速にインターネット広告が発展していることを意味しています。
また、インターネット広告と一口に言ってもその範囲も急速に広がりを見せています。昔はパソコンで見ることのできるWEBサイトと検索結果画面、一部、フューチャーフォン(ガラケーと呼ばれる携帯電話)くらいでしたが、今では、タブレットやスマートフォンという新たなデバイスが普及し、そのデバイスで動く多種多様なアプリケーションや、他にも、例えばTAXIなどで目にすることができる端末で流れている広告もインターネット広告に含まれます。
そのように、様々なデバイスで、商品やサービスを適切な人に届けているのが、インターネット広告です。
■インターネット広告の特徴
大きな特徴としては
- インターネット上にある検索画面や、あらゆるWEBサイトやアプリにバナー(画像・動画とテキスト)を掲載できる
- 直接サイト運営者と取引するか、何かしらの広告配信媒体を利用すれば、難しい知識や手続きなく、多くのWEBサイトに広告配信できる
- インターネットの特性を利用し、バナー等広告の表示回数やクリック数、タグを仕込むことで、ユーザー行動の計測ができる
- 検索キーワードや人の属性などをターゲットして配信することができる
が挙げられるのではないでしょうか。
中でも特筆すべきは、3.と4.だと考えます。
もちろん、テレビや新聞なども、視聴率や発行部数で大まかな配信量を計測することはできますが、インターネット広告は、性別、年齢、配信した場所、表示した広告、また、設定しているターゲット等も、各々個別に計測することができます。
同時に、広告の配信量だけでなく、その広告によって起こされたアクション(広告のクリックや設定したコンバージョンポイント到達)数をも、計測することができます。
計測ができることにより、私たちは広告の対象者を更に分析し、改善に向けて、改めて検討したり、サービスや商品について、どのように伝えるべきかを考えるきっかけにしたりしています。
逆に、計測ができなかったら、考えるべきことが半減してしまい、マーケターとしての醍醐味も味わえないかもしれません。そして、お客様も、計測もできないインターネット広告にお金を出すかどうか、とすると、このような発展が遂げられたかどうかもわかりませんね。
ターゲットについても、インターネット広告以外でも、例えば地域、例えば時間帯、例えば媒体のユーザー層といった大枠でターゲットを決め、広告を見せることをしてきました。
ただ、インターネット広告のターゲット設定は、より細密に決めることができます。
検索されるキーワード、時間帯、興味関心のカテゴリー、配信される場所、等々、様々な方向性でターゲットを設定することができます。それにより、一般消費者が対象か、企業のビジネスユーザーが対象か、女性なのか、若者なのか、等、サービスや商品の対象者に対して、広告を見せることができるのです。
インターネット広告は、計測とターゲット設定によって、より細かく、より深く、考え抜くことが必要な広告といえ、そのお陰で、インターネット広告は普及し、同時に、お客様のビジネスの成長の一翼を担うことができる広告として成長したのだと、私は考えます。
■インターネット広告の種類
大きく分けると、
- インプレッション保証型
- 運用型広告
- その他の広告
の3つに分類されるのではないでしょうか。
この3つを簡単に説明したいと思います。
■インプレッション保証型広告とは
その昔、まだ運用型広告が台頭していなかった時代は、ほとんどのバナー(画像)を用いた広告は、このインプレッション保証型広告でした。いわゆる「純広告」と呼ばれるもので、もちろん今でも存在しています。
代表的なプロダクトは「Yahooブランドパネル」だと考えますが、特定のメディア面で掲載される、インプレッション数を保証するタイプの広告です。
直接サイト運営者に依頼するケースもあり、メディア掲載面と契約しているREP(代理店)経由で掲載するものもあります。
多様な多くの人を対象としたり、特定のメディアに訪れる人のみを対象者にしたりしたい場合に利用する広告です。
現在ではこのインプレッション保証型広告も、多くの場合、ある程度のターゲット設定が可能となっていることから、時間やエリア、対象者を絞り込んで、一気にサービスや商品を認知してもらいたい時に有効な広告だと考えます。
■運用型広告とは
私が常日頃から仕事としている種類の広告ですが、2019年、インターネット広告費の約80%が運用型広告でまかなわれていることが報じられています。
出典元:電通報「2019年のインターネット広告費は2兆円超え。媒体費の詳細分析と新項目の解説」
運用型にも様々な種類があります。現在、良く活用されている広告は、
- 検索連動型(リスティング)広告
- ディスプレイ広告
- 動画広告
- SNS広告
- アプリ広告
これらの方式が挙げられます。
検索結果画面に掲載される検索連動型(リスティング)広告や、ターゲットを設定し掲載するディスプレイ広告が代表的なものとなりますが、昨今、動画配信サービスなどで配信される動画広告や、特定のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に掲載されるもの、ゲームや天気予報、ニュースサービスといったスマートフォンのアプリに掲載される画像や動画広告なども、とても活気づいている広告といえます。
設定した目標に対し、ユーザー行動に基づき良し悪しを評価しながら、効率的にお客様のビジネス拡大に寄与できるよう広告掲載を行うことから「運用型」と呼ばれている広告であり、
運用するためには、良し悪しを評価するための計測データが必要になるため、その準備は、入念に計画を練った上で進める必要があります。
■その他のインターネット広告
インプレッション保証型や運用型以外にも、インターネット上には様々な形で広告することができる仕組みが存在します。
- アフィリエイト
- タイアップ型記事広告
アフィリエイトは、成果報酬型と呼ばれる広告で、自分のウェブサイトに、アフィリエイト・サービス・プロバイダー(ASP)が提供する企業の広告を掲載し、成果が会った時に報酬を受け取る手法です。
タイアップ型記事広告は、メディア内に、広告したいサービスや商品を取材記事のような形式でコンテンツ化された広告になります。こちらも、インプレッション数や成果などが報酬の対象となるケースが多い広告です。
両方に共通することは、一見して広告とは思えない作りをしているケースが多いことが挙げられます。
ここまでで3つの方式を説明しましたが、前項の「運用型広告とは」のところで広告を出稿するための準備に触れました。どの広告を掲載する場合でも必要な準備があるのですが、運用型広告に絞ってお話しを進めます。
■運用型広告に必要な準備
前述した通り、運用型広告は様々にターゲット設定ができる広告であるため、多種多様な角度から取材・調査をすすめて、適切に設定することが求められます。任された広告を効率良く配信することを念頭に、前回のコラムで申し伝えたように、自分の頭で考えて、考えて、考え抜く、マーケターとしての仕事が始まるのです。
では、どのような準備が必要か、思いつくものを挙げていきます。
- 広告配信の仕組みを理解する
- 広告配信媒体の仕様を理解する
- お客様の競合とその状況を理解する
- お客様のサービス・商品とその対象者を理解する
ここまでが、マーケターとして、マーケティングを考えて、自分自身が調査・取材を行う準備です。
そして、
- お客さまから予算を伺う
- お客様と一緒に目標の選定を行う
- お客様と一緒に広告の方針を決める
ここまでが、お客様と一緒に考え、ディスカッションしながら決めていく準備になります。この項目は、前述の調査・取材を行わないと、自分自身の意見が持てず、お客様との協議ができないものとなっています。同時に、広告配信の仕組みや仕様も熟知していないと、方針が決められません。
ここで、一番重要だといっても過言ではないのは、目標の設定となります。
運用型広告は、ターゲットを細密に設定することができる広告ですが、何のために細密な設定ができるかというと、それは、お客様の目標に到達するため、目的に合った広告を配信する、に他なりません。
そのため、目標が無かったり、曖昧だったりすると、正しく運用ができない状況に陥り、フンワリとお金を無駄遣いしてしまう可能性もでてきます。もちろん、お客様も広告を出す意味が見いだせず、すぐに止めてしまうでしょう。
それでは、マーケティング活動も行えず、マーケターとして仕事を任せてもらうことはできませんね。
また、目標は決して理想ではありません。できること、できないこと、正しいこと、間違っていること、お客様との会話の中でしっかりと導きだすことも、運用型広告に携わる私たちの仕事であることを覚えておいていただければと思います。
そして、
- 目標が決まったら、計測の設計を行う
- 計測に必要なタグ関連を抽出・設定する
- タグが機能しているか確認を行う
※分析ツールを活用する場合、それらのタグもお忘れなく
ここまでが、広告を計測するための準備になります。
前述した通り、運用型広告にとって計測は最も重要な役割を担っています。もちろん、お客様のWEBサイトにタグを設置する必要があり、それは、100%全てが適用できるものではありませんが、可能な限り、様々な計測ができるように設計を行い、正しく計測が行えるように設定することが重要です。
ここまでに述べた3種類の準備は、運用型広告の核となるものです。本来はもっとしっかり説明したいのですが、1項目ごとにコラムが作れるほど膨大な量になりそうなので、このコラムでは、この程度にさせていただきます。
そしてここからは、広告の設定についての準備になります。
- キーワード選定・設定
- ターゲット選定・設定(エリア・性別など)
- オーディエンス作成・設定(興味関心・サイトリターゲティング・人など)
- 広告クリエイティブ(画像・バナー・テキスト)作成・設定
- (検索連動型の場合)広告表示オプションの作成・設定
ここまでの準備が完了したら、やっと広告配信がスタートします。
広告設定についても、この項目を一つ一つひも解けば、細々とした多くの事柄があり、それらを考え抜いて設定する必要があるので、上記は5つの項目にまとまっていますが、実はやることイッパイです。
このコラムでは、実際に考え、実行することを、順を追って説明しましたが、ここに挙げた準備はとても重要なことなので、チェックリストにまとめてみました。
※このリストはここからダウンロードできますので、宜しければお使いくださいませ。
表にすると、少し簡素な気がしますが、ここに挙げた項目は、あくまでも基礎的な部分に過ぎません。実際に手を動かす際は、更に枝葉は伸び、行列を追加する必要があるでしょう。それも、しっかり自分で考え、細分化したリストにして、活用いただけると幸いです。
そして、戦略立案する人、即ちマーケターと、細々とした設定をする人で、人員を分ける会社もありますが、まず初めは、設定をすることもやるべきだと思います。自分が考えてたてた戦略をどのように設定するかを考えることも、とても重要な視点だと、私は考えます。
同時に、日々、仕様の変わる広告媒体についても、リアルタイムでキャッチアップできるため、運用をより深く考えることができるようになります。これ、一挙両得です。
■インターネット広告に携わるものの心得
前回のコラム(マーケターを目指すアナタに贈る、広告概要とそのポイント~「広告とは? 編」)では、「広告する側の心得」として、大枠の広告に向き合う人の姿勢について考えたことをまとめました。それに加えて、インターネット広告に携わる時の心得はどんなものがあるかを考えました。
- 計測に対して、神経質なまでに考え抜く
- 正しく伝わる広告を作る
の大きく2つの方向性を付け加えて、私は仕事をしています。
計測については、前項でも伝えていますが、計測から導きだされた様々な分析結果により、私たちマーケターは新たな検討を重ねる機会を得る事ができるのです。これぞインターネット広告の醍醐味ではないでしょうか。
しっかりと計測すれば、分析結果が根拠となり、お客様のビジネスを更に拡大できる可能性が見え、同時に、様々な分析を行い、その結果をじっくりと考えることで、マーケターとしての幅や奥行きが生まれると、私は実感しています。
しっかりと考え抜けば、たとえ施策が成功しなかったとしても、成功しなかった結果を得ることができます。そのような正しい試行錯誤を行うためにも、計測は重要だと考えています。
正しく伝わる広告を作ることは、当たり前のこと、なのです。でも、この当たり前を、正しく遂行するという気持ちは重要です。
スマートフォンの普及から、私達はインターネットと触れる時間は各段に増えました。
例えば通勤中に、例えば昼休みに、例えばゲームをしながら、例えばメールチェック中に、例えば情報収集中に、仕事のオン・オフ関係なく、様々なシーンでインターネットと触れています。
そんな中、私的な感想ですが、「非常に汚い広告」を目にすることも増えています。目にしたことを覚えていますので、認知には貢献しているのかもしれませんが、日常の中でゾッとする体験はいただけないものです。
もしかすると、その広告は成果をあげていて、お客様には喜ばれているのかもしれませんが、一方で、お客様の顔に傷をつけ、「広告」そのものの品位を下げる広告であることも事実だと思うのです。そのような事に加担することの無いよう、正しく伝わることに拘る気持ちが大切だと考えます。
2回にわたり「マーケターを目指すあなたに贈る広告概要とそのポイント」と題してコラムを執筆しました。ちょっと長くなりすぎましたが、それでもこのコラムはポイントに過ぎません。そして、このポイントは私なりのポイントでしかなく、マーケター一人ひとりに自分なりのポイントを抱き、マーケティングや広告という仕事に従事しているのです。
これからマーケティングを仕事としたいアナタ、広告に向き合っていきたいアナタ、道は決してなだらかではないけれど、考えることが基本的に好きな人は、とても面白く充実したビジネスライフが送れるのではないかと思います。
そして、ここに書かれていることは参考程度に、自分自身で、マーケターになるべく道を見つけていただければ幸いです。
また、アユダンテの広告チームでは、運用自体をお任せいただくコンサルティングの他、人材育成を踏まえた広告運用のインハウス支援も行っております。自社で広告運用は行いたいけど、人手や情報や方針について、様々な不安を抱えているようでしたら、一度、私たちにご相談ください。伴走型の運用支援を得意としている私たちならではのアドバイスができるかもしれません。