APP+WEBのeコマース計測をGTMで実装してみる [第一弾:従来の計測仕様と互換性はあるのか?]
2020年06月26日
ライター:藤田 佳浩

ついにAPP+WEBにeコマース計測が追加されました。
従来の拡張eコマースを踏襲しているような計測仕様になっています。
残念ながら、レポート画面にはまだeコマース機能がないため計測した結果がどうなるかは、第二弾でお伝えします。

第一弾はインプリメンテーションについてお伝えします。

昨今はGTMの利用が当たり前になっているためGTM+datalayerを使ったインプリメンテーションを行います。
さらに興味深いのは、従来の拡張eコマースのdataLayerと互換性があるという点です。
従来のdataLayerをそのままAPP+WEBで使えれば、実装コストを減らすことができます。
ということで、従来のeコマースのdataLayerを使ってインプリメンテーションしていきます。

APP+WEB eコマースのインプリメンテーションについて

APP+WEBのdataLayerやGTMの設定は以下ヘルプに記載されています。
ヘルプに沿って設定していけば問題はなさそうです。

今回は従来 eコマースのdataLayerを使ってAPP+WEB eコマース計測を行うため、このヘルプを参考にしつつ設定していきます。

従来eコマースとAPP+WEB eコマースのdataLayerの違い

まず、dataLayerの書式について違いがあるか、あるとすればどんな違いかを見ていきます。

従来eコマースはecommerceプロパティ配下にdetailやadd、checkoutといった商品アクションが定義されています。そして、その配下に商品情報が定義されます。

▼従来eコマースのdataLayer

APP+WEBはecommerceプロパティ直下に商品情報が定義されているだけとなっており非常にシンプルになっています。

▼APP+WEB eコマースのdataLayer

従来eコマースは商品アクションフィールドに設定する値を参照して自動的に最適なデータに変換して送信していました。
APP+WEBの商品アクションはイベントに置き換えられ手動で設定するようになっています。
そのため、商品アクションフィールドがなくなったと考えられます。

このようにdataLayerの書式が違うためGTMの設定も注意しながら行っていきます。

従来eコマースのdataLayerを使ってAPP+WEB用のGTM設定する

従来eコマースはチェックボックスにチェックを入れるだけと非常にシンプルかつ簡単なものでした。

APP+WEBは商品アクションごとにイベントを設定し、商品情報などを計測するためのパラメータとその値を参照する変数を作成する必要があります。
イベント名とパラメータ名は定義された文字を設定しなくてはなりません
定義されている文字はヘルプを参照してください。

itemsパラメータには商品名や商品金額など商品情報を設定します。
従来eコマースのdataLayerは商品アクションごとにフォーマットが変わるため、以下の種類数だけ変数を用意する必要があります。

商品アクション 商品情報のdataLayer参照値
商品一覧 ecommerce.impressions
商品クリック ecommerce.click.products
商品詳細 ecommerce.detail.products
カート追加 ecommerce.add.products
カート削除 ecommerce.remove.products
チェックアウト ecommerce.checkout.products
購入完了 ecommerce.purchase.products
▼商品詳細

購入完了では、トランザクションidや収益、クーポンなども自動的には設定されません。
それぞれパラメータと変数を設定する必要があります。

項目 パラメータ dataLayer参照値
トランザクションID transaction_id ecommerce.purchase.actionField.id
収益 values ecommerce.purchase.actionField.revenue
税額 tax ecommerce.purchase.actionField.tax
送料 shipping ecommerce.purchase.actionField.shipping
クーポン coupon ecommerce.purchase.actionField.coupon

このように商品アクションに応じて、イベントを設定していきます。

送信データ(ペイロード)を見てみる

GTMの設定ができたところで実際にデータを送信してペイロードを確認します。
確認はGoogle Chrome Extensionsの Google Analytics Debuggerを利用します。

例として購入完了画面のペイロードを見てみます。

イベントは設定したイベント名「purchase」が「en」に確認できます。
次にパラメータですがトランザクションIDや送料などは「ep.transaction_id」「ep.shipping」などに設定されていることが確認できます。
ところが、itemsが見当たりません。
これはitemsに含まれる商品ごとに pr1, pr2..と分割されたパラメータに置き換えられ設定されています。
その設定値を見てみると、商品名やカテゴリ、ブランドなどは「~」で区切られ一つのデータとしてまとめて設定されています。
値にnm, pr, id, caなど接頭辞が付いていて、それぞれの値が商品名なのかカテゴリなのかが区別できるようにもなっています。

APP+WEB eコマースのdataLayerも同様の結果になります。
これで従来 eコマースのdataLayerでもAPP+WEB用にペイロードされ送信できていることが確認できました。

互換性はあったのか?

今度はAPP+WEB用のdataLayerに同じ商品情報を設定したものと比較してみましょう。
商品詳細画面の送信データをわかりやすく分解して比較しました。

▼dataLayer
▼送信データ:商品情報
パラメータ pr1 の設定値
従来
eコマース
nmITEM NAME 001~idID001~pr1000~brGoogle~caApparel/Mens/Shirts/Tshirts~vaBlack
APP+WEB
eコマース
nmITEM NAME 001~idID001~pr1000~brGoogle~caApparel~k0item_category_2~v0Mens~k1item_category_3~v1Shirts~k2item_category_4~v2Tshirts~vaBlack~lnPRODUCT LIST
▼送信データ:商品情報の設定値を分解
従来 eコマース APP+WEB eコマース
商品名 nmITEM NAME 001 nmITEM NAME 001
商品SKU idID001 idID001
商品金額 pr1000 pr1000
ブランド brGoogle brGoogle
カテゴリ1 caApparel/Mens/Shirts/Tshirts caApparel
カテゴリ2 k0item_category_2
v0Mens
カテゴリ3 k1item_category_3
v1Shirts
カテゴリ4 k2item_category_4
v2Tshirts
バリエーション vaBlack vaBlack
商品リスト lnPRODUCT LIST

比較してみる以下の違いがあることがわかりました。

階層を持つ商品カテゴリ
従来 eコマースだと「/」で区切られて一つのカテゴリ1に設定されています。
APP+WEBだとカテゴリ階層ごとに設定されています。
従来はGoogleサーバー側で「/」ごとにカテゴリ階層1~5に分解し集計していました。
APP+WEB用のdataLayerとペイロードを見る限りAPP+WEBにそのような機能はないと考えられます。
商品リスト
従来 eコマースには商品リストが見当たりません。
これは従来eコマースのdataLayerにあるactionFieldの値が参照されていないため、送信データに含まれないという結果になっています。

従来 eコマースのdataLayerを使ってAPP+WEB用のeコマース計測は可能だが、一部のデータは互換性がないという結論になります。

互換性を持つためには

互換性を持つためには、補完するプログラムを開発する必要があります。
GTMで行う場合は、商品情報の値を参照するタイミングで補完処理を行いitems パラメータに設定します。

以下は補完処理後のイメージになりますが、item_categoryやitem_list_nameなどAPP+WEB用のプロパティを従来 eコマースのdataLayerと混在しても動作します。

ただし、改修など発生すると補完処理も改修対象となる可能性があり運用コストがかかってしまいます。
また、APP+WEBのeコマースのみ対応する機能などがリリースされるかもしれません。
そのため、補完処理は一時的なものとし、いずれはAPP+WEBのdataLayerに移行することをおすすめします。

第二弾は今回のインプリメンテーションで計測した結果、どのようにレポーティングされるのかをまとめたいと思います。

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この記事を書いた人
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藤田 佳浩
チーフソリューションコンサルタント
ネット黎明期より、フロントエンドエンジニアとして大手ショッピングモールの運営、大手ソーシャルメディア会社のプラットフォーム開発など約15年経験を積む。その後テクニカルコンサルタントに転身、培ってきたフロントエンドの知見を活かし、Google アナリティクスをはじめとしたグローバル企業開発のカスタマイズ性の高いツールの要件定義~テクニカルサポートまで一気通貫した業務に従事。Googleアナリティクスのサポート実績は10年以上。豊富な経験を活かし、近年では書籍出版や宣伝会議などの講座講師を担当。
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