弊社代表の安川が母校である東京大学生産技術研究所主催の第7回ESIシンポジウム 交通の電動化への選択とエネルギーの融合を考える」にてオンライン講演を行いました。
『電気自動車』をメインに欧米の事例や国内外の情報を共有し、日本の電気自動車普及への課題と解決法を提言。6月の「スマートエネルギーネットワーク研究会」での講演に続き、今回は、300名ほどが参加したシンポジウムで「充電器設置の法律・施策』について講演しました。
その内容の一部をご紹介します。
1. 電気自動車は高い?&日本で購入できるEV車種
世界初の量産電気自動車として、三菱自動車『i-MiEV』の販売が開始されてから約10年。その後、日産自動車『リーフ』、テスラの『ロードスター、モデルS』などが販売されてきました。
当時のi-MiEV/リーフの販売価格は300万円~、テスラに至っては1000万円を超える価格で一般的な感覚からすると「電気自動車=値段が高い」という印象づけられました。
現在でもまだ300万円以下の実用的な電気自動車販売はありません。
新車購入金額は米国・欧州では平均350万円~400万円と、日本よりも遥かに高いこともあり、費用感に対する抵抗が少なく電気自動車購入が増えています。
一方の日本では、低価格高品質で豊富な車種ラインナップがあり、電気自動車の価格が下がらない限り普及には時間がかかると予想しています。
しかし、昨今発売される電気自動車は、バッテリー容量が増え、航続距離が伸びるなど、少しずつ電池のコストダウンが進んでいます。
また、米国の自動車安全基準をクリアーした中国EVメーカー「Kandi Technologies」が8月中にアメリカで200万円~300万円台の電気自動車を発売することが決定しています。
6月から8月にかけて日本で購入できる電気自動車の車種が10種類→12種類と増加。ホンダ「Honda e」も発売され、日産「アリア」は来年登場します。
世界の自動車産業は電動化を加速。転換期を迎えています。
2. 「充電インフラの重要性」
フォルクスワーゲンをはじめとする欧米の自動車会社が参加して、欧州で急速充電器ネットワークを提供しているIONITY(アイオニティ)は236か所の急速充電器を設置しています。
一方、アメリカの電気自動車会社テスラはスーパーチャージャー(急速充電器)を設置しています。
地域別の設置か所数は非公開ですが、北アメリカ・欧州・アジア地域で合計12,000基のスーパーチャージャーを設置しており、充電施設に莫大な資金を投入してきました。
車を売ると同時に充電インフラを整えるのも自動車メーカーの役割になってきています。
日本の急速充電器網を見ると1か所に1基設置が多く2,3基設置は点々とある程度で、週末の高速道路SAPAでは充電待ち渋滞の光景を目の当たりにします。
最近、海老名SAが3基体制となりました。様々な場所に設置するよりかは主要な場所に複数基(4基以上)設置することで充電待ち渋滞も解消され、EVユーザーの利便性向上につながると実感しています。
2. 「充電器設置の法律の壁」
電気自動車の普及には「価格が高い、急速充電インフラ不足」以外にも様々な課題があります。
集合住宅に充電器設置するには管理組合の許可が必要で「充電器設置でマンションの付加価値が上がる」と考える人もいれば、「電気自動車は危険で集合自宅で充電するなどもっての外」と考える人など様々なため一筋縄にはいきません。
一部アメリカやカナダの事例では管理組合の権限を弱め、充電器の設置希望があれば設置を拒否できない法整備が進んでいます。
日本の高速道路SAPAに複数基設置が進まないのは所有が独占されている構造上の問題となっており、TESLA独自の急速充電網「スーパーチャージャー」が高速道路を降りてからしか充電できない場所にある理由はここにあります。
法律を変えなければ解決できない課題も一部あり、行政の協力なしでは難しい問題となっています。
すべての課題をバランスよく解決していくことが電気自動車普及の鍵になります。
講演: 第7回 ESIシンポジウム 交通の電動化への選択とエネルギーの融合を考える
日時: 令和2年8月4日(火)
主催: 東京大学生産技術研究所エネルギーシステムインテグレーション 社会連携研究部
共催: 東京大学先端電力エネルギー・環境技術教育研究センター(APET)
東京大学エネルギー・資源フロンティアセンター(FRCER)
東京大学 生産技術研究所 持続型エネルギー・材料統合研究センター
場所: ZOOMによるWeb開催
講演テーマ: 「利用者の目線からの電動車の導入の道筋と課題の解決」
講演者:アユダンテ株式会社 代表取締役 安川 洋
今回の講演では5名のパネリストが登壇しました。経済産業省自動車課・日産自動車・トヨタ自動車・東京電力・アユダンテ、各講演を聞くことで自動車電動化の全体像から詳細まで知識を得られる内容となっていました。政策資源の限りがある中で、今後10年の日本の舵取りに注目です。(石井)