Part 2:AI・イノベーション・価値創造 – POSSIBLE 2025からのさらなる学び[セッション3・4+総括]
2025年05月16日
ライター:黒島 正貴

🔙 前回を見逃した方はこちら → [Part 1: 概要 & セッション1・2]

セッションハイライト3:AIエージェントの時代 – 文化・コマース・ブランドの未来(Visa × Institute for the Future)

Visaのチーフブランドオフィサー、フランク・クーパーIII氏と、Institute for the Futureの未来学者ディラン・ヘンドリックス氏が登壇し、AIがコマース、信頼、顧客体験をどのように再定義しつつあるかを語りました。

主なポイント:

  • AIが自律的エージェントに:近い将来、AIはユーザーのニーズを先回りして察知し、自動で行動するようになります。たとえば修理の手配やサブスク更新、日用品の購入などを代行。
  • B2CからB2AIへ:マーケティングの構造が「Business to Consumer」から「Business to AI」へと移行。人間ではなく「彼らのAI代理人」に向けたメッセージ設計が求められます。
  • 信頼こそ差別化要因:AIが意思決定する時代において、信頼されるブランドとは、アルゴリズムに組み込まれる価値観を持つブランドです。
  • 共感とデザインの重要性:感情知性と人間中心のデザインは、AIが介在してもブランドの共鳴力を決定づけます。
  • マーケターの役割は終わらない:AIがマーケターを代替するのではなく、AIを理解し協働できるマーケターが、そうでない人に取って代わる時代に。

「未来はAIに取って代わられることではない。AIが私たちを“代表”することだ。」
— ディラン・ヘンドリックス

このセッションは、従来の接点を超えて「AIフィルターを通じたブランド体験設計」の必要性を強く提起していました。

セッションハイライト4:インパクトを生むイノベーション – メディア×テクノロジー×体験で消費者価値を創造する(Adobe・Yahoo・GM・電通)

(写真:Dentsuアメリカ地域CCO/COO ジェフ・グリーンスプーン氏)

この刺激的なパネルでは、Adobe、Yahoo、GM(ゼネラルモーターズ)、電通のリーダーたちが登壇。イノベーションは単なるビジネス成果にとどまらず、真に持続可能な「消費者価値」を生むべきであるという視点から議論が展開されました。

主なポイント:

  • AIによるパーソナライゼーション精度の向上:ブランドは“適切な個人”だけでなく、“適切なセグメント”を正確に捉え、適切なタイミングと場所で最適なメッセージを届けられるように。
  • クリエイティブのボトルネックを解消:AdobeのGen StudioやFirefly AIなどのツールにより、複数のパーソナライズされたセグメントに向けて迅速に多様なクリエイティブを展開可能に。
  • 体験価値が最優先:Yahooは膨大なユーザーデータとAIを活用したニュースフィードを通じて、記事の要約機能など効率的な情報提供を強化。
  • 信頼とデータ透明性が重要:ターゲティングから生成コンテンツに至るまで、「デジタル情報の栄養表示ラベル」にたとえられるような明確で倫理的なデータ活用が重視されています。
  • ブランドの明確性がロイヤルティを生む:GMは、Cadillac LYRIQのようなEVやOnStarのような接続型プラットフォームによって長期的関係性を築いています。特に購買サイクルが長い業界では、深い消費者理解が鍵となります。
  • AIは人間の創造力の“パートナー”:全スピーカーが、AIは創造性を広げるツールであり、置き換えるものではないと強調。求められるのは能力ではなく、“意図的な設計”と“倫理的活用”です。

「イノベーションは、ビジネスだけでなく消費者にも価値をもたらしてこそ、初めて“イノベーション”と呼べる。」 — パネル総括

総括

POSSIBLE 2025への参加は、非常に刺激的で視野が広がる体験でした。AIはもはや一時的なトレンドではなく、創造性・業務・戦略すべての中心にあるテーマとして議論されていました。

各セッションを通じて明らかになったのは、AIの統合が急速に進んでいるだけでなく、「顧客接点の再定義」や「価値提供の再設計」が求められているという点でした。また、データ活用についての議論も非常に印象的で、収集から構造化・活用に至るまで、ビジネスインパクトを最大化するための“土台作り”が重視されていました。これは私たちがコンサルティングパートナーとして提供している価値とも深く共鳴する内容でした。

また、業種別や課題別のブレイクアウトセッションも数多く開催されており、これらの詳細は別のブログ記事で改めて紹介したいと思います。

さらに、ブランドアクティベーションやブース体験、夜のネットワーキングイベントなど、イベント全体が熱気に包まれていました。マイアミの青空と海を背景に、さまざまな出会いやアイデアの交換が生まれた素晴らしい場でした。

ー会場には150以上のブースが出展。 例:Microsoft Advertisingによる屋外ブース展示ー

ー来年はビーチエリアまで会場が拡大予定。 別の屋外ブース例ー

ーマイアミの夜空の下での交流会パーティー ー

ー朝には無料アクティビティも実施(例:ビーチヨガ)ー

ービジネスミーティング用のスペース例ー

ーマイアミの青い海と空を背景に撮影した筆者ー

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黒島 正貴
北米ビジネスディベロップメント(グローバル)責任者
コンサルタントとして15年以上の経験を持ち、HIS、楽天、キッコーマンなどの企業において、社内外に向けたソリューション提案やデジタルトランスフォーメーションの推進に携わってきました。2024年には日本からカナダへ拠点を移し、現在はビジネスディベロップメントとして、北米市場における事業開発やパートナーシップ構築に取り組んでいます。グローバルな視点を活かし、Ayudanteの価値を世界に広げることを目指しています
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