
2025年4月15日~4月18日にアメリカ サンディエゴで行われたTableau Conferenceに参加してきました。
現地会場で強く印象に残ったのは、TableauがAI時代への本格的な転換を遂げようとしていることでした。
中でも、初日のKeynote「Data and Analytics for the Agentic Era」で説明のあった『Tableau Next』は、単なるツールの進化にとどまらず、“AIと人が共に意思決定を行う時代”の幕開けを感じさせる内容でした。
本コラムでは、このKeynoteを振り返りながら、Tableau Nextの中核をなす「Agentic Analytics」の世界と注目すべき新機能についてお伝えしていきます。
Tableauの最新の情報について知りたい方、BIツールとAIの今後について注目している方はぜひご一読ください。
Tableauの目指す未来「Agentic Analytics(エージェンティックアナリティクス)時代」

CEOのRyan氏は
「私たちは今、変革期にあり、組織や会社も変化しなくてはならない、Agentic Analytics時代に突入している。Agentic Analytics時代では私たちの役割はより戦略的になり、ダッシュボードを作る人ではなく、意思決定を設計する人へ変わっていく。そして、Agentic Analytics時代では、人がAIを使うのではなく、人とAIは共創しパートナーになる。」
と語ります。
AIに対しての強い注目を感じますが、KeynoteではAgentic Analyticsを手助けする新サービス「Tableau Next」の紹介へと移っていきます。
新しいプラットフォーム「Tableau Next」

私たち人間とAIが共創してデータ活用する時代の幕開けに、Tableauがリリースした「Tableau Next」。
CEO Ryan氏は「Tableau Nextはエージェンティック・アナリティクス(Agentic Analytics)を体現する核となる製品」と表現しています。
2025年2月に発表された新しいサービスで、一部機能はリリース済みであり、2025年5月現在、順次機能が追加される予定です。

Tableau Nextとは?4つの柱で支える“次世代分析体験”

Tableau Nextは、Salasforceのプラットフォーム上で構成されている、新しい分析環境です。
これまでTableauが積み上げてきた“分析力の高さ”に加え、人間のように考え、提案し、行動してくれるAI=Agentforce(エージェントフォース)を統合。
Tableau Nextの役割はデータ分析する流れを一貫して行うことができ、さらにAIと共に作り上げることができると紹介し、CEO Ryan氏はTableau Nextを、単なる「ツール」ではなく「AIと人間が一緒に働く分析チーム」をつくることができると強調しています。
4つのコアで構成されるTableau Next
Ryan氏はTableau Nextは以下の4つのコアで構成されていると説明します。
1. Open Data Layer(オープンデータレイヤー)

社内外に散らばる多様なデータ(例:Google BigQuery、AWS Redshiftなど)を「どこにあっても」「そのまま使える」状態で活用できるのがOpen Data Layer。
様々なコネクタが用意されていて、スピードとセキュリティを確保しながらストレージコストを削減できます。
2. Semantic Layer(セマンティックレイヤー)

Tableau Nextの中でSemantic LayerはTableau Semanticsと呼ばれます。
Semantic Layerの役割を簡単にお伝えすると、全員が同じ意味でデータを見ることを実現するための共通語を設定する場所です。
企業や組織内で使う指標や用語(例:「売上」「利益率」「解約率」)などの言葉の共通ルールと意味をSemantic Layerでモデルとして定義します。
Tableau Semantics を活用することで「今週の売上はいくら?」という問いに対して組織の全員が同じ認識で売上を追い、一貫性と信頼性のあるデータを見ることができます。
3. Visualization Layer(ビジュアライゼーションレイヤー)

Tableau NextでもTableauの得意とする美しいUIが使えます。
アナリストは、指標、ビジュアライゼーション、ダッシュボードなどを含む共有マーケットプレイスを通じて、構成可能なアセットを再利用、共有、管理できます。
と記載があり、Tableau Semanticで定義した指標をもとにマーケットプレイスにてダッシュボードを作成。オープンなAPI基盤でアセットの作成・共有・再利用が容易にできます。
4. Action Layer(アクションレイヤー)

人が欲しい時に欲しいデータを一気通貫で得ることによって、“見て終わる”だけでなく、判断しすぐに行動につながる分析をAction Layerで実現できます。
具体的には、Tableau Pulse※1で異常値を検知しSlackに通知。
Tableau Agent※2で理由を深掘りし、またSlackにて関係者に対してレポートを共有することが可能です。
ツールの切り替えを最小限にし、スピーディーに原因を探り次のアクションへ移りやすくなります。
※1Tableau Pulse: ビジネスユーザーがリアルタイムで重要な指標をモニタリングし、迅速な意思決定を行うことができるプラットフォーム。AIを活用したインサイトをいつでもどこでも取得できる。
※2Tableau Agent: AIがユーザーの代わりに考え、分析を補助してくれるアシスタント。
- データ計算・グラフ構成を考えてくれるData Pro
- グラフや分析を提案してくれるConcierge
- 異常がある場合アラートをあげてくれるInspector
Tableau Nextのそれぞれの役割についてはRyan氏のブログもご参考ください。
Agentic Analytics: A New Paradigm for Business Intelligence
アナリストとCMOによるTableau Nextデモ
架空ブランド「DataFam Kicks」のマーケティング分析と称して、新商品「Diego」というスニーカーを売るためのキャンペーン戦力を組み立てるというシナリオでKeynote会場にてリアルタイムデモが開催されました。
このデモを通じて、Tableau Nextの魅力が体感的に示されていきます。

アナリストは、Tableau Nextのオープンデータレイヤーを通じて、以下のような複雑なデータを簡単に扱います。
・Databricksにある広告費データ(構造化)
・Boxに保存されたSNSレビュー(非構造化)
このデータはコピーせずそのまま使え、手間のかかる前処理が一気に簡素化されます。

さらにアナリストは、AIエージェント「Data Pro」に「CPA(獲得単価)をチャネル別に出して」と問いかけます。
するとAIは、計算式を自動で構成し、文脈つきで可視化を提示。
マーケットプレイスでVizのテンプレートを選択すると、Semantic LayerをもとにAIが「(CPA以外の)残りのスペースを埋めますか?」「この指標はどうでしょう」という提案をしてくれます。

出来上がったダッシュボードはワンクリックでSlackに埋め込み、外部パートナーにもアクセス権つきで安全に共有。
さらに、売上進捗をSlackのチームメンバーに通知し、CMOのRekha氏は好調なキャンペーンにそのまま「予算追加」を承認しました。
このデモでは、データ→判断→実行というマーケティング分析が1つの流れでつながり、かつスピーディーに行うことができていました。

現状では通知を受け取り、Tableauを起動して改めて内容を確認し、またSlackに戻って各所に共有していましたが、Slackで完結できるのは便利ですね。
普段からSlackでコミュニケーションをとっている私はよりイメージしやすかったです。
AIと人の共創時代に、私たちはどう関わっていくのか
今回初めてTableau Conferenceに参加しましたが、Tableauが目指すAgentic Analytics(エージェンティックアナリティクス)時代を現地で感じられたのは本当に良かったと感じています。
今後はAIとどのように向き合い活用していくかが、すべてのデータ活用者にとってキーポイントになっていくと思いました。
Tableau以外のBIツールのAI導入も気になるところです。
Keynoteの大部分を占めていたTableau Nextは、これまで以上にスムーズなマーケティング分析を可能にし、BIへの向き合い方そのものが変わるきっかけになりました。
アユダンテのQuickDMPではお客様のデータを収集する、SQL集計をおこなう、ダッシュボードを作成するなど、データ活用のご支援を行っていますが今後AIが担う可能性もあるでしょう。
しかし、今回のKeynoteでCEO Ryan氏が繰り返し述べていたように、「仕事が無くなるわけではなく、形が変わっていく」という話はアナリストだけでなく、私たちのようなデータ活用支援を行う立場にも当てはまると感じました。実際に、AIだけではまだカバーできない領域が多く存在します。
たとえば、
- データ量が膨大すぎる場合、前処理や集計が依然として必要になる
- データは整っていても、人間がその意味を理解できなければ使いこなせない
- 組織全体で共通言語(セマンティクス)を設定するための連携が求められる
- データ整備・設計・収集(DMP)は今後も重要
- AIはすべての“含み”や“文脈”を自動で考慮できるとは限らない
- たとえば、「広告予算を増やした結果、売上が伸びた」という因果関係はAIでも捉えられるかもしれないが、「もしかすると〇〇が影響したのでは?」といった仮説的な“気づき”や人間的配慮は、まだ人の役割
このように、人間の役割がゼロになることはないと私は考えています。
今後のデータ活用においては、AIと人が互いに補完し合いながら共創していく時代が始まっているのだと思います。
引き続きTableauの最新情報をキャッチアップしつつ、AI時代にどのようにお客様に寄り添っていけるかを考え続けていきたいと感じています。