![運用管理のために知っておきたいGoogleタグマネージャー360の基本](https://ayudante.jp/wp-content/uploads/2024/04/icon_gtm.png)
Googleタグマネージャー(GTM)は、JavaScriptなどのコードが書けない非エンジニアでもタグの設定や一元管理ができて無料で使える便利なツールです。
そのGTMに、有償版である「GTM360」があることはご存知でしょうか。
本コラムではGTM360の概要、どのように役立つのかを解説します。GA360だけでなくGTM360も活用できるとデータ基盤の運用管理がしやすくなりますので、ぜひ一読ください。
GTM360とは?有償版っていくらかかるの?
Googleアナリティクスの有償版GA360と同様に、実はGTMにもGoogleタグマネージャー360という有償プランがあります。
GTM360はGA360とセットの契約となりますので、GA360を契約すると必ずGTM360が利用できるようになります。GTM360の単体契約はありませんので、「GAは無償版でGTMだけ有償版を使う」といった選択肢はありません。
有償、と言っておきながらGTM360は利用料金が発生しません。GA360を契約すると、GA分の利用料金でGTM360の機能も利用できるようになります。
機能としては通常のGTMと大きく変わりませんが、関係者が多い大企業・大規模サイトなどには嬉しい機能やメリットがあります。
- 作成できるワークスペースの上限が無償版3個→無制限に(複数作業を同時並行で進めやすく!)
- GTMの公開フローで便利な「承認」フローが利用可能(公開までのフローや権限がより柔軟に!)
- GTMコンテナから別のGTMコンテナのタグが配信できるゾーン機能(GTMの運用・管理が柔軟に!)
- Googleやリセラーからの技術サポートやSLAが受けられる(企業として安心・安全にGTMを利用可能!)
公式サイトで詳細な比較表が確認できますが、簡単にまとめると以下のような違いがあります。
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360限定の便利機能の概要
1. ワークスペースの作成数が無制限
ワークスペースとは、GTMの中で内容が異なる複数の作業を同時並行するのに便利な機能です。
たとえば「ウェブ担当者がGA4の計測タグを追加する」「広告担当者がGoogle広告タグを追加する」「広告代理店がmeta広告タグを追加する」という作業を同時に行わないといけない!というケースはよくあると思います。
そういったときにそれぞれの作業を同時並行で行えるように、作業場所をわけて使えるのがワークスペース機能です。
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サイト規模が小さかったり担当者が少ない場合は無償版の3つでも間に合いますが、複数の広告代理店が入っていたりタグの追加や変更が頻繁に行われるような場合、3つでも足りなくなるケースが起こりえます。
ワークスペースを使っておらずDefault Workspace上で設定を全部済ませてしまっているケースも未だにありますが、使い方を理解するとワークスペースを活用する方が圧倒的に安全かつ楽に運用できますのでぜひ活用してほしいです。
2. 「承認」機能でより柔軟に権限管理が可能
GTM360ではGTM公開までの流れに「承認」というステップを追加することができます。細かく言うと、以下の2つが変更されます。
- 「承認」機能が追加される
- 権限が【公開>編集>読み取り】から【公開>承認>編集>読み取り】の4段階に
たとえば「設定は外注先にやってほしいが、タグの公開は自社だけで行いたい」といった形で管理したいケースがよくあります。
この場合、通常のGTMでは【外注先に編集権限を付与して設定してもらい、メールやチャットで完了連絡をもらう→内容が問題ないか確認して公開する】というフローで運用しているかと思います。この「メールやチャットで完了連絡をもらう」のフローをそのままGTM内で完結できるのが承認機能です。
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「連絡だったら別にメールで十分」という考え方ももちろんありますが、大きな企業では誰が何の設定をしていたのかを属人的にしない形で保存しておくと助かることが結構あります。
承認機能を使うことで「設定内容や目的・承認依頼日時がいつか・設定者が誰で公開してOKという承認をしたのが誰か」といったログがすべてGTMの中に残るので、担当者が変更になって何のタグか分からなくなってしまった・・・といったトラブルが起こりづらくなるメリットがあります。
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この承認機能が使えるのはGTM360コンテナの「編集権限・承認権限・公開権限」のいずれかを持つユーザーです。
通常のGTMコンテナの権限は【公開>編集>読み取り】の3種類ですが、GTM360コンテナでは【公開>承認>編集>読み取り】という4種類の権限が用意されています。
読み取り | コンテナが表示され、設定されているタグ、トリガー、変数を閲覧できますが変更することはできません。コンテナが表示され、設定されているタグ、トリガー、変数を閲覧できますが変更することはできません。 |
編集 | ワークスペースを作成したり編集したりできますが、バージョンを作成したり公開したりすることはできません。 |
承認 | バージョンとワークスペースを作成したり編集したりできますが、公開することはできません。 |
公開 | バージョンとワークスペースの作成、編集、公開を自由に行えます。 |
このうち承認はGTM360のみで利用できる権限で、編集権限との違いはバージョンが作成できるかどうかです。編集権限・承認権限の両方で承認機能が使えますので、目的に合った方の権限を付与すれば構いません。
特に大きな企業ではガバナンスの効いた運用が求められますので、こういった機能をうまく活用することで管理コストを下げていけると良いと思います。
3. ゾーン機能で運用・管理が柔軟
GTM360を利用しはじめるきっかけとして最も多いのがこのゾーン機能かもしれません。
ゾーン機能は、1つのGTMコンテナから連携した別のコンテナのタグを配信できるようにする機能です。
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コンテナを複数管理していると、「こちらのコンテナを使いたいけどサイトに新しくGTMスニペットタグを実装するのが難しい…」といったケースが起こりえます。
そういった場合にカスタムHTMLを使って無理やりコンテナ1からコンテナ2を埋めるような設定をしている場合がありますが、いろんな問題が起こりえますので推奨できません。
それをきちんと整理された形で実現できるのが、360限定のゾーン機能です。
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コンテナを分ける要因としてよくあるのが以下のようなケースです。
- 自社のビジネスや代理店間の競合にあたるものなど、「見せたくない設定」があり権限を切り分けて管理したい
- GTMコンテナの設定上限が逼迫しているので、タグの内容によってコンテナを分割したい
- 複数のサイトで共通して利用するGTMコンテナと、このサイトだけで使う設定のあるコンテナを整理して管理したい
ゾーン機能を利用することで、複数あるコンテナの運用をかなり柔軟に行うことができます。
よくある質問
360化はコンテナごとにできるの?
GTMは【アカウント>コンテナ】という階層構造になっていますが、360化はアカウント単位で設定できます。そのため、360化したアカウントに紐づくすべてのコンテナで360機能が利用できるようになります。
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「このコンテナは360化したくない!」という思いがある場合は少しやっかいですが、無料で使えますし360化するデメリットはありませんので、特に問題ないかと思います。
すでにGA360は契約済みだけど、GTM360ってどう使うの?
GA360を契約済みの場合、Googleマーケティングプラットフォームの「組織」が存在するはずです。GTM360はGA360の契約とセットになっていますので、GA360契約のある組織に紐づくGTMのみで利用できます。まずは組織にGTMが紐づいているか確認しましょう。
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代理店や担当者が独自に作ったいわゆる「野良GTM」が存在する場合などは、まずどのような体制で管理していくかの整理から必要になるケースがあります。
Googleマーケティングプラットフォームのサイト上で組織にGTMを紐づけ、360化することでGTM360が利用できます。
組織なしで使っている既存のコンテナを組織へ移動して360化できる?
前述の通り360化がアカウント単位なので、少し手間になるケースがあります。
アカウントに紐づくすべてのコンテナを360化したい、という場合は割とスムーズです。
以下画像で言うとアカウントCをそのまま組織「ayudante」に紐づけるだけです。
![](https://ayudante.jp/wp-content/uploads/2025/02/image-9-1024x255.png)
一方で組織に紐づけるコンテナと紐づけないコンテナが同一アカウント配下に混在している場合、設定は可能ですが少し面倒になります。
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上記の例でいうとGTMコンテナ1とGTMコンテナ2を別のアカウントに分けたうえで、コンテナ2が紐づくアカウントのみを組織に紐づけて360化する、というステップが必要になります。
機能で言えば単に「アカウントを移動する・組織に紐づける」というだけですが、検討しなければいけないビジネス要件が多くあります。
どのコンテナを誰が使うのか、どのような権限管理にするのが理想か、それを実現するためにどのようなアカウント構造にする必要があるか・・・。最初の設計がかなり重要になってきます。
GTM360機能で運用の柔軟性がかなりアップ!でも注意点も…
ここまで紹介した通り、GTM360では企業の組織体制や権限管理が複雑になりがちなケースでもかなり柔軟に運用体制を作れる機能がそろっています。しかし、柔軟というのは「きちんと設計する必要がある」という面も持っています。
これらの機能をどう使うかの設計を自社だけで行うのはかなり大変ですので、経験豊富なリセラーの支援が受けられるかが重要になってきます(そういった意味で「有償版限定」というのは理にかなっている気がします)。
GA4の管理運用については議論に上がるケースが多くなってきたように思います。アユダンテでも「いろんなGTMが乱立しており、管理体制を整えたいがどのように整理を進めればいいのか…」というご相談を受けるケースが昔より増えてきました。
実際にGTM360の機能を使って運用フローを整理された事例についても公開しています。本コラムで「どのように運用管理を整理できるのか、具体的なイメージがほしい!」と思っていただけた方はぜひこちらもご覧ください。
GTM有料版「ゾーン」機能による広告タグ管理基盤構築支援 〜複数部署のGTMタグ運用の統一~
![](https://ayudante.jp/wp-content/uploads/2025/02/image-12.png)