ユーザーのプライバシーに対する不信感への信頼獲得について
2024年07月1日
ライター:中村 晃

皆様も感じているかと思いますが、なぜ、今プライバシーに対して世の中はこれほどまで敏感に反応しているのでしょうか。決して少なくないユーザーがオンラインサービスを利用する上で、企業に行動を追跡されていると感じているようです。そして、企業が行動データをどのように扱うかについて、自分にはほとんどコントロールする術がないという意見もあります。

このような背景の元、世の中は規制の強化や計測の仕組み自体の変化が迫られている状況です。EEA(欧州経済領域)を中心としたGDPRを発端に世界各国でデータ収集と利用についてのルールが策定されてきています。これと並行してAppleのITPやGoogle ChromeのPrivacy Sandboxが開発され、3rd Party Cookieの利用、追跡防止が施されつつあります。

本コラムでは、このようなユーザープライバシーに対する不信感に対してどのようなアプローチで信頼獲得を進めていくかを説明したいと思います。

  1. 信頼獲得に必要な4つのポイント
    1. セキュリティ
    2. コントロール
    3. 透明性
    4. 実用性
  2. データを正しく計測する
  3. 最後に

信頼獲得に必要な4つのポイント

ユーザーのプライバシーへの不信感は、一時の流行ではなく、放っておいても時間が解決してくれる訳ではありません。何も手を打たないと、世の中の様々な規制に準じた機能の制限により、部分的で不確かなマーケティング施策しか実施ができなくなってきます。ユーザーとの信頼関係を築く障壁となり、ブランド価値の毀損に繋がる可能性があるのではないでしょうか。ユーザーのプライバシーへの不信感を理解し、適切に対応を進めていく必要があります。

ユーザーのデータを扱う企業/組織として、信頼獲得に効果がある4つの重要なポイントをまとめました。

  • セキュリティ
  • コントロール
  • 透明性
  • 実用性

セキュリティ

一番大事なポイントです。データに対して安全措置を講じ個人情報を保護します。ユーザーは何かしらの期待をすることで、個人情報、行動ログを共有します。企業を信頼して情報を提供しているため、この情報を適切に取り扱う必要があります。またデータを取得する際に、いかなるデータもユーザーの同意なく収集または共有しないことが重要になります。

コントロール

ユーザー自身にどのような目的でどのような情報(データ)を収集するかを容易に制御(コントロール)できる手段を提供する事です。提供した情報を途中で中止したい時に自身で制御できることも重要となります。ユーザー側はコントロール手段が提供されていると、安心して情報を提供できます。

透明性

ユーザーが提供するデータが、どのような目的でどのデータを利用するのか、明確にかつ分かりやすく説明してあることが重要です。いくらセキュアにデータが取り扱われ、コントロール配下にあったとしても、そのデータがどこでどのように使われているかが不明であれば、ユーザーは安心して情報を提供できません。過不足なく明確で誰にでもいつでも確認出来る必要があります。

実用性

上記の3点すべてが満たされており、そのうえで、ユーザーにとって関連性高く、有効活用されていることが必要になります。データの提供はユーザーにメリットがある必要があります。自身の情報を提供することは何かしらのリスクを伴うという考えもあります。それ相応以上のメリットが無いと提供する必要がないのです。Webサービスを利用し、コンテンツを消費したり、購入することがメリットになり得ますが、ユーザーの視点で考えれば、ユーザー情報を提供せずに同等程度のサービスを享受できるのであれば、他のサービスを選択することもできます。

データを正しく計測する

ユーザーのプライバシーへの不信感を取り除くポイントを実現するためには、正しくデータを計測し管理、統合する必要があります。ユーザーが許諾し取得したデータを適切に活用しないという選択は、期待を満たせないことに繋がります。顧客にとって意味があり、記憶に残る体験を提供することが必要になってきます。データを正しく計測するためには、プライバシーに配慮したデータ計測基盤の活用が必要になります。いくつか例を挙げます。

  • プライバシーポリシーページやCookie同意バナー(CMP)の適切な設置
  • 正確なコンバージョン計測を行うための許諾された1st Partyデータを計測と活用
  • Googleタグ/Googleタグマネージャを利用した計測とGoogleアナリティクス 4による集計
  • ユーザーの同意情報に従ったデータ計測を実現するCMPと統合したGoogle同意モード(Googleタグマネージャーの利用)の活用

最後に

AppleのITP(Intelligent Tracking Prevention)やATT(App Tracking Transparency)、Cookie同意バナーの設置などブラウザの3rd Partyクッキー制限、データ取得、利用の許諾の確認などが着々と遂行されています。Webサービスの計測制限を行う動きと、ユーザー自身がデータ活用の拒否をする動きが同時に動いています。この流れは止まらず、今までのデータ計測基盤を利用した計測方法では、ユーザーを識別できず、適切なコミュニケーションが難しくなってきます。ユーザーとの信頼関係を醸成し、1st Party クッキーを利用したデータ集計基盤の構築が急務となってきています。

データを正しく計測すること自体が目的とならずに、ユーザーにとってメリットがあり利用し続けたいサービスであり続けるため、どのような体験を提供することができるかという視点からデータ計測を設計すると必要な情報は明確になり、ユーザーにもなぜこの情報が必要かをしっかり説明できると思います。

取得できる情報はそれがどのようなものであってもデータレイクにかき集める時代は過去になったかもしれません。特定の情報をカウントして並べると「多い」という情報を得られます。とても有益な情報ですが、これだけでは足りなくなってきていると感じます。

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この記事を書いた人
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中村 晃
シニアソリューションコンサルタント
SIer、ISP事業者のダイレクトマーケティング担当を経て、その後はデジタルマーケティング領域を渡りあるく。ソーシャルゲームや、動画配信サービスのPdMやデータアナリストのマネージメントを行いながら、Googleアナリティクスの導入、活用支援に取り組む。
Google マーケティングプラットフォームの導入、現状分析からKPI設計、マーケティング、施策の効果検証を強みとする。
ロードバイク、山登り、サウナ、コーヒーが好きなアウトドアマンです。
@jp_nakamura_jp
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