いよいよユニバーサルアナリティクスの完全停止まで後わずかとなりました。
GA4での基本的な集計・数値モニタリングが整ってきたら、次はBigQueryの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
本コラムでは、BigQueryエクスポートの機能を使ってBigQueryにデータを保存することで、日々のデータ活用やビジネスにGA4をどう活用できるかの例を示します。
BigQUeryエクスポートってそもそも何ができるの?という方は先に「GA4のBigQueryエクスポートの基本(非エンジニア向け)」をご覧ください。
(ここからはGA4の機能についてある程度理解いただいている方向けですので、まだわからない内容があればぜひ弊社の他のコラムもあわせてご活用ください。)
BigQueryにデータを保存するメリット
データ保持期間に縛られずに詳細な分析ができる
探索レポートに適用される「データの保持期間」は、無料版のGA4で最長14ヶ月・有料版で最長50ヶ月です。
標準レポートやAPIで取得するデータにはこの保持期間は適用されませんのでデータがまったく見られなくなるわけではありませんが、細かい集計・分析をしていくには標準レポートだけでは難しいケースが往々にして発生します。
BigQueryエクスポートでBigQuery上に保存されたデータは、BigQuery側で指定したデータの保存期間に従います。
BigQuery側では「データを削除しない」という選択もできますので、実質無期限にGA4のデータを保存して詳細な集計・分析をできるようにしておけます。
データ集計の柔軟性が上がる
GA4のデータを見てください、と言われてほとんどの人がGA4のレポート画面を開くと思います。
GA4のレポート機能は今後改良の余地が多く、細かい集計や複雑な比較をしようとするほど、機能的な限界に当たることが多くあります。
たとえば探索で見られるレポートの1つに「経路データ探索」という手法があります。
ユーザーがどのようなページ遷移をしたかが分かりやすく表現されるレポートですが、決まった指標やディメンションしか選べない制限がネックです。そのため、カスタムディメンションで独自の画面IDを取得しているのでその変遷を見たいとか、新規ユーザーとリピートユーザーの遷移を並べて比較したい、などレポート画面では難しい集計のケースがあります。
こうしたときに、集計方法としてGA4のレポート画面以外の選択肢を取れるのが、GA4のデータがBigQuery上に保存されているメリットのひとつです。BigQueryでの集計は自分で「どういう集計をするか」を書く必要があります。つまり、自分で自由に集計方法を決められる強みがあるとも言えます。
※ただしGA4のデータには推奨されない組み合わせなどがあるので、何でも自由に集計してOKというわけではありません。GA4のデータの仕様や正しい集計方法を理解しておく必要があります。
データを後から加工できる
GA4のデータを、計測した後に加工したいケースは意外と出てきます。たとえばページのURLをカテゴリごとに纏めたい、といった場合にGA4のレポート画面だと後から加工できないため、横ならびにデータを見るのが難しくなります。
もちろん先に準備してカスタムディメンションで取得しておくなどが理想ではありますが、BigQueryであればデータを集計する際に加工しておくことも可能です。
※内容によってはSQLクエリが複雑になるため、なるべく必要な形で計測しておくようにしましょう。
LookerStudioで柔軟なダッシュボードの作成が可能
LookerStudioはGA4と直接連携できるコネクタが用意されており、BigQueryを挟まなくてもデータを集計することが可能です。
ただし、このコネクタを利用する際の懸念点として、以下があげられます。
- APIのクエリ制限やサンプリングの影響を受けるため、複雑なデータや大量のデータを処理しようとするとデータが見られなくなったり精度が下がる可能性があります。
- セグメントが利用できないため、「新規とリピーターの比較」「検索流入と広告流入の違い」などデータを比較する設定ができません。
こうした課題は、BigQueryを間に挟むことで解消されます。
GA4からBigQueryに保存したデータはあくまで「BigQueryに保存されているデータ」として扱われるため、GA4側のAPI制限やサンプリングの影響は受けません。また、BigQuery側で予め「新規とリピーターで集計しておく」など処理をしておくことで、セグメントの適用されたデータをLookerStudio上で見ることができます。
YouTube:【LookerStudio】BigQueryでGA4レポートの割り当てエラーを回避しよう
BigQueryでデータ活用はどう変わる?
GA4のデータを集計して見るだけなら、ここまで挙げたような点は多少我慢してGA4のレポート画面だけを使う選択肢もあります。データは単に集計するだけでなく、施策につなげていくことが重要です。
ここからはデータ活用に文脈を広げて、「BigQueryを使うと何ができるか」を解説します。
GA4以外の切り口も追加して、解像度を上げる
BigQueryにデータが保存され加工をBigQuery上で行うため、他のデータとの突合が可能になったり、単純な集計以外の方法でデータを分析することができます。
データの突合でよくあるのは「オフライン店舗の来店データをウェブ行動とかけ合わせたい」「顧客システムに入っている購入履歴とアプリ・ウェブの利用傾向をユーザーごとに突合したい」など、基幹システムと突合するケースです。
GA4だけでも、「データインポート」という機能で自社のデータをGA4上の行動データと紐づけることは可能です。
しかし決まった形式のファイルを定期的にアップロードする必要があったり、インポートするデータを用意する必要があったりと、運用上やや手間になるケースもあります。また、紐づけたデータを集計する際はGA4レポート画面の制約を受けます。
こういったデータ突合や集計の柔軟性から、BigQueryの利用を選択するケースがよくあります。
単純集計ではない処理で、分析の幅を広げる
単純な回数のカウントやクロス集計といった単純集計ではなく、さらに高度な分析にGA4のデータを活用していきましょう。
BigQueryは単なるデータを保存しておく箱ではなく、集計・分析のコストを下げてくれるような機能もあります。
たとえばBigQuery上で簡単に機械学習(Machine Learning)が利用できるBigQueryMLがあります。GA4のデータをBigQuery上に置いておけば、GA4のデータの活用幅がさらに広がるでしょう。
BigQuery上でGA4のデータを使った機械学習モデルを作成することで、「これからサイトに来る人」を予測して広告出稿につなげたり「サイト上でキーイベント(コンバージョン)を発生させるユーザーの特徴」を理解したり、目的に合わせてさまざまな使い方が考えられます。
集計結果を別ツールに渡して、さまざまな施策にデータを活かす
BigQueryで集計したデータは、Google広告・Firebase・LookerStudioなどのGoogle製品はもちろん、サードパーティ製のツールへ連携することも可能です。
活用方法(目的)やツールによりますが、APIやコネクタが提供されているツールへデータを渡して、分析から施策実行・評価までをシームレスに行えるメリットがあります。
もちろんGA4でもGoogle広告へオーディエンス(配信リスト)を連携したりと施策にそのまま繋げることは可能ですが、BigQueryを挟むことで連携先・活用方法はさらに広がります。
一例ですが、
- GA4(ウェブとアプリの行動データ)と基幹システムの顧客の購買履歴データを突合
- BigQuery上で機械学習の処理を行い、「これから商品を買ってくれそうな人」のリストを作成
- 作成したリストに一致する人に広告やプッシュ通知を配信する施策を実行
- 施策からサイトやアプリに来た人と、それ以外の人の購買行動を比較して結果を確認する
という流れで、データ分析→施策実行→施策評価までをBigQueryを中心に実行することができます。
そんなに高度なことはしないよ、という方へ
「備えあれば憂いなし」
ここまで書いたようなデータ活用は、もちろんすべての企業で行われているわけではありません。業種や企業規模によっては、「そんなにデータ活用する予定はないよ」と思われるかもしれません。BigQueryエクスポートはあくまで「BigQueryにデータを保存しておく機能」であって、保存したデータを活用するもしないも自由です。
ただ、注意しておきたいのは「BigQueryエクスポートは設定したタイミングのデータから保存される」という点です。
ユニバーサルアナリティクス(旧GA)」では13ヶ月分遡ってデータが保存されていましたが、GA4ではこの「遡って保存する」という機能がありません。
つまりエクスポートの設定が早ければ早いほど、データは長期間たまり続けるという点です。
いざ取り組みを始めよう!となってから1年分のデータが貯まるまで待って…というタイムロスは大きな機会損失です。早い段階から設定だけでもしておくことをお勧めします。
利用を検討する際に知っておきたいこと
BigQueryはデータを保存するだけでも「ストレージ料金」というのが発生しますが、無料で使える枠もあり、あまり高額にはならないケースが多いです。多少お金はかかりますが、早くからデータを蓄積しておくことで将来的にデータ活用の幅が広がるのはメリットとも言えるのではないでしょうか。
デメリットとは少し違いますが、SQLをつかってクエリを書く、という作業が必要になりますので非エンジニアだけでは完結しないケースが会社によってはある点も注意が必要です。データベースやSQLの知識を持った方を巻き込んだ方が、取り組みはスムーズに進みます。
また、サイト規模やイベント数によっては有償版のGA4(GA360)の検討が必要になるかもしれません。BigQueryエクスポートの機能自体は無償版のGA4でも利用できますが、エクスポートできる1日あたりのイベント数に制限があります。具体的には、1日100万イベントを超えると、BigQueryへのデータエクスポートが停止します。
コラム:GA4からBigQueryへのデータエクスポートが停止されたんだけどどうすればいいの?
さいごに
GA4は使いづらい、という声がよくありますが、正しい知識をもって上手く使えば分析や施策の幅が広がるのもまた事実です。
もちろんこうした取り組みをすべて自社だけで進めるのは難しいと思います。弊社でもBigQueryの活用は多くご支援しておりますが、一朝一夕でできるものではありません。
ぜひ弊社のコラムや動画も役立てながら、自社のビジネスの成長にどう使えるかいろいろ想像してみていただければと思います。