GA4の有償版(GA360)限定の機能として、レポート コレクションを表示する範囲を設定できる機能がリリースされました。
これまでプロパティに権限があるユーザーには、すべてのレポートが表示されていました。
そのため「自分の担当サイトのレポートだけを表示しておきたい」「代理店にはこのレポートは見せないようにしたい」といった場合には、サブプロパティやLookerStudioなどの手段を取る必要がありました。
しかし今回の機能追加で、360プロパティではGA4のレポート画面上で「見せたい人に、見せたいレポートだけを見せる」という運用が可能になります。
このコラムでは機能の詳細と、これまでの運用とどう変わるかを解説します。
公式ヘルプ:[GA4] Google アナリティクス 360 のレポート コレクションにユーザーを割り当てる
※この投稿に記載の内容はすべて2024年5月時点での情報です。
一部プロパティでは機能が反映されていない場合があります。
■ライブラリ機能って?レポートコレクションって?
今回の機能は、ライブラリ機能から設定します。
ライブラリ機能は、標準機能にフィルタなどの設定を追加した「カスタムレポート」を保存しておける機能です。ライブラリ機能の理解がまだの方は、以下のコラムを参照ください。
GA4のレポートをカスタマイズできる「ライブラリ機能」 | アユダンテ株式会社
レポートコレクションとは、ライブラリ機能で作成したレポート群です。左側に表示されるレポートメニューの「ユーザー」や「ライフサイクル」のように、複数のレポートがまとまったものです。
こちらも詳細は上記のコラムを参照ください。
このライブラリ機能を使うことで、たとえば「特定のディレクトリのページのみ」「特定のホスト名のみ」「モバイルからのアクセスのみ」といったフィルタをかけた状態のレポートを作成できます。
今回の機能追加では、作成したレポートごとに「誰に表示するか」を設定できるようになりました。
レポートを誰に表示しするかを指定することで、「自分の担当サイトのレポートだけを表示する」「担当者の役割によって違うレポートを表示する」といった運用が可能になります。
■必要な権限と操作手順
まず、「管理者」の権限が自分のアカウントについているか確認しましょう。
ライブラリ機能でレポートコレクションを作成する作業だけなら「編集者」以上の権限で可能ですが、レポートコレクションにユーザーを割り当てるには「管理者」の権限が必要になります。
ライブラリ機能に入ると、上部のコレクションに「すべての顧客に公開済み」など公開範囲が表示されているのがわかります。
デフォルトでは全ユーザー(「すべての顧客」)にコレクションが表示されるようになっています。
ユーザーは以下の2つの単位で割り当てることができます。
- ユーザー(Googleアカウント)
- Googleマーケティングプラットフォーム(GMP)上のユーザーグループ
GMPでユーザーグループを先に作っておくと、部署ごと・企業ごとなど一括で指定できるので管理しやすくなります。
追加したいユーザー・グループにすべてチェックを入れたら、右上の「プレビュー」を押します。
変更後のユーザーの一覧の画面になるので、問題なければ「公開」を押します。
ライブラリの画面が表示され、公開範囲が変わったのがわかります。
すべてのユーザーに公開するように戻したい場合は再度設定画面に進んで、「すべてのユーザーに公開」を選択すれば戻せます。
■サブプロパティの代替として使えるか?
標準レポートが手軽に見られるようにはなりますが、サブプロパティの代替にはならないでしょう。
サブプロパティは各レポートの集計処理の母数となるデータ自体が、条件にあわせてフィルタリングされます。
一方でライブラリ機能は標準レポート用に集計処理がされたデータの中から、条件に一致するデータを抜き出して表示するようなイメージです。
この違いの大きな影響が出るのは、探索レポートを使う場合です。
ほとんどの場合で、標準レポートからさらに深堀りするために探索レポートを利用する必要が出てきます。
探索レポートではこのコレクション単位での閲覧範囲の制限から外れるため、結局指定された範囲外のデータにも触れることになります。
データガバナンスの観点から厳密にデータを見る範囲を制限したい場合、引き続きサブプロパティを利用する必要があります。
ライブラリ機能は「標準レポートを使いやすくカスタマイズする」的な役割のため、探索レポートのような柔軟性はありません。
探索レポートの強みは柔軟な集計・表現ですので、こうした機能を使ってデータを深堀りしていきたい場合は、引き続きサブプロパティを利用することになります。
■LookerStudioの代替として使えるか?
特定のデータのみに絞ったレポートの集計結果を共有する目的で、LookerStudioを使っていた場合、今回の機能で代替できる可能性があります。
LookerStudioでは一部の指標が使えないなどの制限もありますが、そうした影響を受けなくなるのはメリットと言えます。
ただし、以下のような場合は引き続きLookerStudioを利用することになるでしょう。
- 標準レポートで利用できない表現がしたい場合。
特にデータの結合やビジュアライズの点ではLookerStudioが優れています。 - 複数データを並べて比較したい場合。
たとえば広告とGA4のデータを並べて見る場合、LookerStudioなら1枚で完結します。 - GA4プロパティにユーザーの権限を付けたくない場合。
データガバナンスや手続き上の制限がある場合などは、URLだけで共有できるLookerStudioにメリットがあります。
機能としては代替できる点がありますが、ツールごとに得意・不得意があるので、運用に合わせて検討してください。
■さいごに
レポートの閲覧権限がかなり柔軟に設定できるようになった一方、プロパティの管理者が運用ルールをきちんと決めておく必要があります。
この機能を使うことで「人によって見ているレポートメニューが違う」という状態になりますので、注意しながら利用を検討してください。