SMX Advanced 2023まとめ:AIチャット&SEOの最新情報
2023年07月31日
ライター:HPadmin

今年のSMX Advancedは、米国時間2023年6月13日-14日に開催されました。

今回は生成AI関連のセッションがかなり多かったようです。

去年は、そもそも生成AIをSEOに活用できるかのような議論がポイントでしたが、今年は生成AIはSEOに活用できることがわかり、SEOの日常業務への活用法のセッションが多かったと感じました。

今回のセッションはアユダンテのコガンがリアルタイムで参加していましたので、一部の内容はコガンのツイッターでご確認いただけます。

本コラムでは、セッションの中から非常に興味深いと感じたAIチャットとコンテンツ戦略に関する内容を紹介します。

  1. AIチャットについてのセッション
    1. よくある誤解:ChatGPTはAIではない?
    2. 知っておきたい:AIチャットの本質
    3. AIチャットの活用ポイント
    4. AIチャットの活用シーン
    5. ツールの紹介
  2. コンテンツ戦略についてのセッション
    1. エンティティSEO
    2. ピラーマーケティング戦略
  3. 感想

AIチャットについてのセッション

以下のセッションを紹介します。

Generative AI and the future of SEO: A panel discussion, by Dave Davies, Britney Muller, Danny Goodwin

Ask the SEO expert: Live Q&A with Bruce Clay, by Bruce Clay, Dillon Vibbart

Using AI chatbots to 10X your keyword research, by Aleyda Solis

Coffee Talk: How generative AI will change SEO as a profession, by Dave Davies, Britney Muller, Danny Goodwin

Enhancing content writing with AI: Opportunities and challenges , by Connor Carreras

AI and ChatGPT in link building: Not a magic bullet, but a useful tool, by Cory Collins

よくある誤解:ChatGPTはAIではない?

「Generative AI and the future of SEO(生成AIとSEOの将来)」というディスカッションで、Britney Muller氏は「多くの人はAIに対して人間のようなイメージを持っているかもしれませんが、ChatGPTはそのようなAIではありません。」と強調しました。

AIは大きく以下の2種類に分けられます。

・汎用型AI(Artificial General Intelligence、AGI):人間のように様々な問題に柔軟に対処できるAI

・特化型AI(Narrow AI、狭義のAI):特定のタスクに特化したAI

汎用型AIはまだ実現できておらず、話題のAIチャット(ChatGPT、Bing chat、Writesonicなど)は汎用型AIではないようです。

AIチャットの基礎となる大規模言語モデル(LLMs)は、情報工学、人工知能、人間の言語といった分野に関連していますが、それはすべてのAI研究に関連しているわけではありません。

知っておきたい:AIチャットの本質

自然言語処理(Natural Language Processing、NLP)の基本について、以前こちらのスレッドで紹介しました。

今回のSMX Advancedでは、AIチャットが連想して次のテキストを予測する仕組みについては何度も注意が促されました。

AIチャットの本質は、インターネットのデータを学習し、ユーザーのクエリに対して最も可能性が高い結果を出力することです。よく指摘される問題の一つは、LLMsはインターネットのデータで訓練されているため、誤った情報も学習してしまう可能性があることです。

例えば、ブラックハットSEO業者がAIチャットに正確でない情報を提供した場合、AIチャットがそれを学習してしまう恐れがあるようです。

もちろん、OpenAIのような研究組織は人間のフィードバックを利用してファインチューニングを行っていますが、現状ではAIチャットの課題や潜在的な課題がまだ多いようです。

それにしても、なぜSEOがAIチャットに注目すべきなのでしょうか?とDanny Goodwin氏。

理由①

検索に取って代わることはまだ不可能ですが、ユーザーがどのように検索するかは変わっていく可能性があり、SEOにとっては転換期かもしれないと推測されています。

SEOの父と呼ばれるBruce Clay氏も、現在のAIチャットはSEO黎明期のようだとコメントしました。今後は、ユーザーの質問を意識して対策することが重要だと予測しています。

理由②

一方、検索クエリはより会話的で個人的になっていきます(例:〇〇車シートは〇〇車に取りつけることができるか)。

そのため、GoogleやBingなどはプロンプトのデータをどのように扱うか、そして将来的にどれだけの情報をSEOやSEM業者に提供できるかをフォローすべきです。

理由③

チャットAIを使える人は、SEO業界で仕事での競争力を高めることができるようです。

AIチャットの活用ポイント

AIチャットの活用シーンを紹介する前に、活用のポイントや注意点について解説します。

ポイント① 

AIや自動化の適切な使用は、ガイドラインに違反しないとGoogleが明言したため、これからAIチャットが益々活躍していくかもしれません。

しかし、人が書くような実体験に基づいた高品質なコンテンツは、AIチャットで対策するべきではありません。

ポイント

AIチャットには得意な分野と不得意な分野があります。それぞれを理解していきましょう。

得意な分野:

コンテンツのまとめ、商品の紹介、Q&A、感情分析、定型文など

不得意な分野:

最新の出来事、深い調査や分析が必要な情報など

※プラグインやツールを使用することで、ある程度不得意な分野でも対策可能です。

例: ChatGPTの最新情報が検索できない問題を解決したBingチャット

ポイント③ 

プロンプト、いわゆるAIチャットへの指示のことですが、良質の回答を得るために以下のコツを覚えておきましょう。

  • 質問の意図やアウトプットのフォーマットを明確にする
  • 関係のない内容を含めない
  • ニッチな専門用語を使用しない

Aleyda Solis氏がおすすめのプロンプトの構成を以下に共有します。

5W1H

What: タスクの主な内容

Where: どこで実行される

How: フォーマット、トーン、文字数など具体的な要求

Who: ターゲットのユーザー

When: いつ頃実行される

Why: タスクの目的

Aleyda Solis氏が作った5W1Hプロンプト生成のテンプレートはこちらよりコピーできます。

チーム用のプロンプトをこのシートで管理することもできます。

実は、プロンプトエンジニアリングという学問分野も存在します。

詳しく知りたい方は、人工知能研究者であるAndrew Ng氏の無料コースをご覧ください。

AIチャットの活用シーン

・コンテンツのアイデア出し

・全文ではなく、段落ごとの下書きを作成してもらう

・コンテンツのサマリー

・コンテンツのレビュー

・キーワードや「他の人はこちらも質問」のグルーピング

  • 最初はキーワードツールからキーワードや「他の人はこちらも質問」のデータをダウンロードしてインプットする必要がある

・コンテンツを裏付けるための事例やデータをAIに探してもらう

・キーワード検索意図の分析、感情分析

・上位の検索結果に基づいたtitleとmeta descriptionの最適化

・上位の検索結果に基づいた商品紹介の最適化

・自社商品と他社商品のメリット・デメリットの比較

・FAQの作成

・画像とaltタグの作成

・動画

  • トレンドを取り入れる動画のアイデア
  • 動画のハッシュタグの最適化

ツールの紹介

前述したようにAIチャットはまだ完璧ではありません。しかし、アドオンやプラグイン、またはAIチャットのAPIを使用するツールで、一部の問題を改善することができます。さらに、日常業務にも活用しやすくなります。

ChatGPTに組み込むプラグイン

・AIPRM https://www.aiprm.com/ 

・Browsing https://openai.com/blog/chatgpt-plugins

日常ソフトに組み込むアドオン

・GPT for WORK https://gptforwork.com/

ツール

・Writesonic https://writesonic.com/chat

・Consensus https://consensus.app/    (現時点は日本語非対応のようです)

例えば、最近悩んでいるキーワードの整理を以下の手順で、GPT for WORKで試してみました。

まずは、Google sheetsにアドオンを取得する

拡張機能のタブからGPT機能を有効にする (openAIのAPIを設定する必要がある)

色々な関数があるようだが、今回は次から紹介する例を学習できる関数=gpt_fillを使ってみた

A2:A5のキーワードをB2:B5のように手動で整理した。A2:A5は中黒やスラッシュ、()などが混在しているので、全て句点にした。

次にGPTにこのルールを学習させてA6:A10のキーワードを自動的に整理してもらった。

その結果がB6:B10

かなりできましたが1つ気になったのがA6のクリア ケース(ボックス)です。私が期待したのはB5のようなクリアケース、クリアボックスでしたが同じような結果は返ってきませんでした。

それ以外はほぼ手動の作業が理解し実行してくれました。

もしA列に大量のキーワードがある場合は、このようなルールでB列に自動で整理させることができるため、作業の効率化が期待できます。

公式のyoutubeチャンネルを見ながら他の関数も試してみたいです。

コンテンツ戦略についてのセッション

この部分には、以下のセッションの内容が含まれています。

Entity SEO and AI: How to dominate SERPs in the next two years, by Timothy Warren

Domain authority is dead: How pillar-based marketing makes legacy SEO metrics irrelevant, by Ryan Brock

エンティティSEO

昨今よく耳にする「entity(エンティティ)」という概念をどのように対策すると良いでしょうか。Timothy Warren氏がエンティティSEOとAIについて解説しました。

エンティティとは

名前、種類、属性などによって独自の特徴を持ち、個別に特定できるオブジェクトやものを指します。エンティティには人、場所、物、アイデアや概念のようなものが含まれます。

わかりやすい例は、wikipediaとwikidataが挙げられました。wikipediaのような記事を書けば、エンティティとしてGoogleが認識しやすいのではないかとTimothyさんが推測していました。

また、Googleはwikidataのエンティティを参照しているようです。エンティティを理解するためには、wikidataを読んでおいたほうがよいでしょう。

(赤枠はデータベースにおいてエンティティの番号です)

エンティティ対策のポイントを以下に要約します。

  • 単なるキーワードではなく、検索意図を意識すべき
  • エンティティに基づいたサイト構造、Googleが認識しやすくするためのNLPや構造化データを考えよう
  • 自社サイトのコンテンツと獲得したいエンティティの関連性、エンティティAとエンティティBの関連性に注目

事例①

Timothy Warren氏は、「トラベルナース」というエンティティを対策した事例を共有しました。

  • まずは、トラベルナースのwikipediaページ(英語版)の構成を確認した
  • 自社サイトのコンテンツと比較した
  • 「Housing(住居)」というサブエンティティにまだ触れていないことがわかった
  • 既に取り上げられている「Pay(給与)」と「Housing(住居)」を繋げる

結果:

4ヶ月後、自然検索流入が500%増加した

※ほかの基本的なSEO施策ももちろん行いましたが、エンティティSEOの効果が一番大きかったのではないかとTimothyさんが補足しました。

事例②

トラベルナースというエンティティを対策するため、60日間でトラベルナースのサブエンティティや「people also ask」を網羅した新しいページを300件公開した 

結果:

DR(ドメインレーティング)が低くても、Googleに「トラベルナース」というテーマで権威性のあるサイトと認識され、検索結果の7位に表示された

エンティティを対策するためのAIの活用

エンティティSEOの基本的な方針は以下の3つです。

①専門性を高める 

②ページの公開スピードを向上させる 

③関連トピックの網羅性を高める 

ドメインの弱いサイトにとって①は難しいかもしれませんが、AIを使えば②③に対策できそうです。 

Timothy Warren氏が以下のツールを推奨しました。

  • Google Cloud Natural Language API (エンティティをどのように認識しているのを確認できる)
  • h1seo.io
  • TextRazor
  • schema.zone

最後に、エンティティSEOを行う際の注意点があります。 

  • エンティティSEOはローカル検索とかにはそれほど効果がない場合もある
  • コンテンツは依然として重要。ただ、構造化データやエンティティは以前より重要になってきた
  • AIを使用せずにコンテンツを作成することは問題ないが、専門性の高いコンテンツにフォーカスするとよい

ピラーマーケティング戦略

昨年2022 SMX Nextのサマリーのツイートでは、Ryan Brock氏のセッションが最も多く閲覧されました。

今回はRyan氏が引き続きピラーマーケティング戦略の基礎についてより詳細に説明しました。

ピラーマーケティング戦略の基礎は、検索結果で表示される質問と関連キーワードです。

例えば、以下のようなものがあります。

  • 他の人はこちらも質問
  • 強調スニペット
  • 他の人はこちらも検索
  • 関連キーワード

そして、一つの質問や関連キーワードをクリックすると、別の質問や関連キーワードが表示されます。たくさんのデータの中には、重複した質問や関連キーワードもあるようで、それらは異なるカスタマージャーニーの間の繋がりになります。

図にしますと、

  • 黒い丸は対策したい人気なキーワード「boat shoes」
  • 赤い丸はboat shoesを検索する際によく次に検索する質問や関連キーワードの+安い、+おすすめ、+通気性の良いなど
  • 白い丸はカスタマージャーニーが異なってもよく表示される質問や検索キーワード

ユーザーの検索行動のネットワークが分かれば、以下の指標については気にする必要がないとRyan Brock氏が主張しています。

  • 外部リンク
  • キーワードの検索意図
  • カスタマージャーニーの段階
  • キーワード検索数
  • キーワード競争度
  • カニバリ
  • キーワード密度

事例

外部リンクが少ないRyan Brock氏の会社Demand Jumpが「SaaSコンテンツ」というテーマでSEMrushに勝った(1位を獲得したキーワード数)事例を共有しました。

こちらの成果は、ピラーマーケティングのルールに沿ってわずか27記事を6週間かけて達成したようです。

もちろん、外部リンクに特に投資もしていません。

感想

今回のSMX Advanceはリアルタイムで参加することができなかったため、不明点に対して調査する時間がかかりました。リアルタイムで参加していれば、Q&Aセッションで直接質問できるのでよりスムーズに理解できると思います。やはりリアルタイムでの参加がおすすめです。

今回のセッションを通して、AIチャットはSEOのために生まれた技術ではないので、SEOに活かすためには他のツールと組み合わせる必要があることに気づきました。

例えばSEOの世界ではGoogle Adsのキーワードプランナーというツールがありますが、実際によく使われるのはキーワードプランナーのAPIを使ったサードパーティのツールでして、AIも似たような感じになるのかなと思いました。

ChatGPTの精度は業務に活かせるレベルではないと実感している方も多いと思いますが、重要なのはAIチャットの仕組みと問題点を理解し、AIチャットを組み込んだ新たなツールやサービス(SGEなど)を試すことだと感じました。

コンテンツマーケティングのセッションにおいてはエンティティSEOとピラーマーケティングという2つの戦略が紹介されましたが、これらは普段のやり方とは異なるアプローチであると認識し、まずはA/Bテストを実施し、自社に適した戦略を検証することが大事だと考えています。

また、SEOxPPCのセッションも以前より増えたようですので、両方の対策が必要なマーケティング担当者はSMXのオンデマンド再生をご視聴ください。

オンデマンド再生のURLはこちら:https://searchengineland.com/smx/advanced/agenda

今回のSMX Advanceは非常に有益な情報が多く、新たな気づきや学びを得ることができました。次回のイベントも楽しみにしております。