Google WebmastersのYouTubeチャネルで配信されたSEO都市伝説の誤解を解くシリーズ「SEO Mythbusting」のシーズン2、エピソード3を翻訳してお届けします。
(エピソード2はこちら)
今回のテーマはページ速度、ゲストはPerficientでデジタル部ゼネラルマネージャーであり人気講師であるEric Enge氏です。多くの会社のコンサルティングを行ってきたEnge氏が経験をもとに良くあるページ速度の誤解について話しています。
以下、エピソードの内容をご紹介します。
概要
以下、シーズン2エピソード2の内容をまとめます。一部省略や言い換えをしておりますが、主な意味が失われないようにまとめるようにしております。
①ページ速度のよくある誤解
- Splitt氏:
- ページ速度とランキングについてはどんな誤解がありますか?
- Enge氏:
- 多くの人が、スピードが大きなランキング要素であると考えています。クライアントが作成したドキュメントの中でもSEOについての章で一番最初にページ速度について書いてあり、一番重要なランキング要素だと書いてありました。
- Splitt氏:
- Oh no…
- Enge氏:
- ページ速度はユーザー体験やコンバージョンに影響するためもちろん対策してほしいけど、対策したからと言って検索結果の順位が上がるということはない、と説明する必要がでてきました。
②ページ速度の重要性
- Enge氏:
- はじめに、ページ速度がなぜ重要なのか、という話をしませんか?
- Splitt氏:
- 良いですね。ウェブマスターの最終目的は、ユーザーのために良いWebサイトを作ることですよね。地下鉄や車など接続があまり良くないどこかの場所にいて、何かを早く確認しようと思ったら、コンテンツが表示されるまでめちゃくちゃ時間がかかったことはありませんか?すごく辛い体験ですよね。
- Enge氏:
- 辛いです。Webサイトによっては接続が完璧な場所でも起こりえる現象です。非常にイライラする体験です。
- Splitt氏:
- ウェブマスターはユーザーをイライラさせたくないですよね。Googleも検索エンジンとして、ユーザーがコンテンツを見てイライラすることを避けたいです。そのため、Googleは速度が速いWebサイトを速度が遅いWebサイトよりユーザーに役立つと評価してもおかしくはありませんよね。
- Enge氏:
- おかしくないですね。
③ページ速度とコンテンツの関連性
- Enge氏:
- 速度はおそらくランキング要素として使用されているでしょうが、速度が速いだけで関連性が低いコンテンツが上位表示されるという現象が起こるほど強いランキング要素ではないだろう、と考えていました。
- Splitt氏:
- もちろんです。表示が一番速いWebサイトでも、コンテンツが良くなければ意味がありません。
- Enge氏:
- 不要なコンテンツが速く表示されてもユーザーは喜ばないですよね。ただページ速度を何かしらのレベルで考慮するのはおかしくないと思います。Google社が出したと思われる、面白いデータが2点あります。1つはページの表示が3秒より長くかかると53%ほどのセッションが離脱されるというデータと、もう1つは少し古いですが、一般的なページの平均表示速度が15.3秒ほど、というデータです。この組み合わせは恐ろしいでしょう!(コガン:Googleが2018年に行ったモバイル速度調査のデータのようです)
- Splitt氏:
- 恐ろしいです。影響する要素も色々あって、例えば、サーバーの速度が遅い、またはサーバーレスポンスが速いのにJavaScriptが処理されないとコンテンツが表示されないなどです。JavaScriptはダウンロードされてパースされて実行される必要があって、かなりリソースがかかるものです。そのような速度の問題を私たちも良く見ていますし、ウェブマスターもわかっていると思います。実験結果も事例証拠もありますし、みんな1人のユーザーとして遅いWebサイトにイライラした経験もあるでしょう。例えば飛行機の中でMB単位で課金されることを想像してみてください。€10で20MBを買うとしたら、先程話した15秒でどれぐらいのデータ量が受信されるか想像できますよね。
④ページサイズについて
- Enge氏:
- そうですね、先日Think with Googleで業種別のWebページサイズのデータを紹介する記事を見ましたが、全業種でMB単位になっていますね。推奨は確か500KB以内だったはずなのに。
- Splitt氏:
- そうです、サイズは軽ければ軽い方が良いです。少し考えてみてください。私たちが子供の頃、テレビゲームは容量が1.5MBのフロッピーディスク2~3枚に収まっていたのに、なぜ今のWebはこんなことになっていますか?
- Enge氏:
- すごく面白い考えですね。ウェブマスターがWebサイトの速度を向上できるよう手伝っていきましょう。
- Splitt氏:
- そうです、このことがページ速度がランキング要素になる1つの理由でもあります(コガン:Web全体をより軽く、スピーディーにすることも1つの目的である、という意味だと思います。)ただ、おっしゃる通り、コンテンツは今も主役です。
⑤ページ速度の最適化
- Splitt氏:
- Engeさんの経験上、ウェブマスターはページ速度をランキング要素としてみた際にその最適化をどのように行っていますか?
- Enge氏:
- みんなが認識していて良くできている最適化要素が一部あります。例えば、多くの人は画像が課題となりえることを把握しています。ブラウザに画像サイズの調整をさせるのではなく、事前にサイズ設定を行うなどの施策によって最適化のレベル1まではできていますが、他にも苦労する項目はあると思います。例えば、画面のファーストビューにあるコンテンツ表示が終わるまで、それより下部のコンテンツを読み込まないなどですね。実装は少し難しいですが…
- Splitt氏:
- 現在、ブラウザが画像のネイティブlazy-loadに対応していますよ!
- Enge氏:
- そうですね。もう1つは、先程話していただいたように、ホスティングやCDNの設定が正しくできていないと速度に大きく影響する可能性があります。それ以前にCDNを活用していないウェブマスターがいます。活用していても、設定が正しくできていないこともあります。
- Splitt氏:
- 例えば、キャッシュの設定の課題はよく見ますね。
- Enge氏:
- その通りです。もしくは単純にサーバーのメモリ容量を増やす必要があったり、共有サーバー接続の場合、専用サーバーが必要だったりなど。
- Splitt氏:
- そうですね、他にも何か誤解されがちなことはありますか?
- Enge氏:
- 表層の課題にフォーカスしすぎて、他にもっと深層の課題があることを認識していないことがあります。
⑥Lighthouseレポート、データとスコア
- Enge氏:
- もう1つ良くある誤解があります。Lighthouseのレポートを見て例えば「この要素の課題を解決させれば速度が6秒改善される見込み」と表示されているのに、解決してもページの表示速度が6秒速くならなかったということがありますが、一部の要素がスレッドになっていることを理解していない人がいると思います。1つの課題だけを解決するのではなく、他にも改善しなければいけない課題が複数ある場合があります。ここでつまずく人を良く見ます。
- Splitt氏:
- Lighthouseは他にも誤解があって、表示されるデータがユーザーのデータを表すと勘違いする人がいますが、Lighthouseはテスト者自身のマシン、自身のブラウザで自身のインターネット接続でテストしています。モバイルデバイスで不安定な接続のユーザーの体験とは異なる可能性があります。Lighthouseはラボデータであることを意識する必要があります。パフォーマンス改善について診断できるLighthouseのようなツールはスコアが改善されたからといって実際に完璧になったとは限らないのです。そのスコア自体に注目しすぎる人がいると感じていませんか?そのような話を良く聞きます。例えば、「Lighthouseのスコアがランキングに使われる」など、そんなことはありません。
- Enge氏:
- その通りです、スコアに依存しすぎる人がいます。そしてまだ課題があるのにスコアが良いから問題ないと勘違いされることもあります。
⑦ユーザーのデバイスと接続
- Enge氏:
- もう1つつまづくところは、自身のデバイスでは問題ないが一般のユーザーはみんなそんな良いデバイスを持っていない、という問題。デバイスが様々であることを意識しなければなりません。
- Splitt氏:
- Googleアナリティクスでは自身のサイトのユーザーがどのようなデバイスを使っているかを確認することができます。それで、よく使われるデバイスをテストデバイスとして購入してそれで検証するのがベストです。
- Enge氏:
- 良い考えだと思います。私が最近やった講演でCNN.comの処理データを共有しましたが、速度が速いスマートフォンでは3秒だったところ、$100以下の携帯では15秒もかかっていました。ユーザーは様々なデバイスを使っていることを忘れてはいけません。大半のユーザーに対して良い体験を提供できるようにした方が良いでしょう。
- Splitt氏:
- その通りです、更に処理スピードが遅い携帯と接続が遅い環境と掛け合わせると最悪な状況が生み出されることもあります。例えばWeb Page Testを使ったり、異なる地域や異なる接続でテストするとその感覚を掴めると思います。できることはたくさんあると思いますのでユーザー体験を把握するためにもぜひテストしてみることをおすすめします。また、データが十分貯まっていて自社サイトがChrome User Experience Report(CrUX)対象に含められていれば、そのフィールドデータも確認すると良いと思います。
- Enge氏:
- 実際にユーザーのデータを確認できると良いですね。このアドバイスはページ速度以外でもとても有効だと思います。例えばモバイル体験ですね。PC用にデザインしてからそれをどうにかモバイルフォーマットに圧縮しようとする人がいますが、モバイル用にデザインしてその後PCに拡大した方が楽だったりします。
※コガン:CrUXのフィールドデータが十分貯まっていれば、Page Speed Insightsでもそのデータが確認できます。
⑧ページ速度、AMPとPWA
- Splitt氏:
- 「AMPはランキング要素だ!」という論争を覚えていますか?違いますけど。AMPに関する話もページ速度が関係してきます。ページ速度は一番重要ではないかもしれませんが、重要なランキング要素ではあります。検索結果に表示されるAMPのバッジがユーザーに対してリンク先が速いという期待値を上げることができますが、AMPはランキング要素ではありません。ページ速度は実際にユーザーとコンバージョンに影響します。AMPページより速くて良質な通常のHTMLのページが上位に表示されていたことを見たことがあります。例えば、CDNを取得して、CDNの設定をして、キャッシュを正しく実装して、Webサイトとアプリがデフォルトでスピーディーになるアーキテクチャを意識して、AMPでなくてもそのようなことができればそれで良いのです。このような対策のやり方がわからないときに役立つツールがAMPなのです。
- Enge氏:
- それで言うとPWAも良いですね。スマートフォンのキャッシュにコンテンツをプリロードができて、そうするとユーザーがページを表示したときにコンテンツが既にそこにあります。こちらも1つのやり方です。
⑨ランキング要素としてのページ速度
- Enge氏:
- ページ速度は今後これ以上重要なランキング要素になることはないと思って問題ないですか?もちろんアルゴリズムは常に更新されていますが、先程話したように関連性が大事で、コンテンツが主役で今後も主役であることに変わりなく、適切なページを返さなければならないと思います。
- Splitt氏:
- その通りです、まずは関連性が高いコンテンツを見せたいです。
- Enge氏:
- もし関連性が適切なページが5つあったとしたらそこにはページ速度が順位に影響してくる可能性があるということですね。
- Splitt氏:
- コンテンツの観点から同じようなレベルのページが2つあれば、おそらく速度が速いページを検索結果で優先します。そこではスコアやLighthouseの指標でランキングしているわけではなく、このページは遅い、このページは大丈夫、このページは速い、のようにプログラム上ページをグループ化しています。Search Consoleのレポートでもそのようなグルーピングが確認できます。非常に遅いページまたは中間ぐらいのページがあれば、どうすればそのページをスピードアップできるか考えると良いです。ただLighthouseのスコアが90%か95%かではあまり変わりません。
感想・まとめ
ページ速度はSEOのランキング要素であり、ユーザー体験にも大きく影響しています。遅いスピードが離脱に繋がったり、ページ速度を上げるだけでコンバージョン率が上がったり、KPIに影響しやすい指標であることがデータでも示されていますので、モバイルの流入が多く、古い端末や不安定な接続でのアクセスが多いウェブサイトではページ速度の改善に取り組むことはとても有益だと思います。
エピソード4はページの重複と正規化についてのようで、多くの方が気になるテーマだと思います。こちらも和訳しますので是非チェックしてください。