訳者より
今回はGoogleが自社製品・サービスに関する記事や調査結果を掲載しているThink With Googleというサイトに掲載された記事「ZMOT: Why It Matters Now More Than Ever」をご紹介したいと思います。Googleが2011年に提唱したZero Moment of Truth(ZMOT)という概念が、インターネット環境の変化やスマートフォン利用の増加によってますます重要性を高めているという内容です。そのまま訳すと「真実の瞬間」ですが、ここでは内容を重視して「意思決定のゼロ地点」(ZMOT)としました。
ZMOTとは?商品・サービスを購入しようとするときに、事前に検索で調べるその瞬間のことをさしています。いわゆるカスタマージャーニーのゼロ地点といってもよいかもしれません。この最初の検索に最もふさわしい答えを用意しユーザーを惹きつけることが重要だと述べてそのポイントを解説しています。
2011年の時点では、アメリカ人の70%が購入前にクチコミを参照し、79%が買い物にスマートフォンを使い、83%の母親がテレビCMで気になった商品をインターネットで検索すると答えていました。それから3年が経過した今、筆者であるJim Lecinski氏はそうした状況はさらに進んでZMOTの重要性が増しているとしています。意志決定のゼロ地点をつかみ、ユーザーのニーズを満たすにはどうすべきなのか。4つのポイントから解説しています。
概要
2011年に意思決定のゼロ地点(Zero Moment of Truth , ZMOT)という概念をご紹介した。これは消費者が情報をオンラインで検索しブランドについて決定を下すその過程に変革が起きていることを表すものだ。それから3年が経過し、インターネット検索とZMOTが重要性を増すとともに幅広く浸透して消費者の行動が進化しているのだとすれば、各ブランドが消費者と関わるその方法も進化させなければならないだろう。しかし常にインターネットに接続していて、まずモバイルありきとなっている現在、ブランドはどうやってZMOTをつかみとればよいのだろう?
ここに、比較優位を勝ち取るための4つの方法をシェアしたいと思う。
3年前、わたしたちはマーケティングのルールを変えた。「わたしたち」というのは消費者全体をさす。わたしたちの購買行動(購買への道をたどる旅)によってマーケッターやブランドは新しい意思決定の瞬間を定義することができた。ZMOTとは、消費者が情報をオンラインで検索し、ブランドについて意志決定をするその過程の変革を表す言葉だ。
必要が生じたり購買の意図を持ったりあるいは疑問をもってオンライン情報に答えを求めるまさにそのゼロ地点で、そうした意思決定をする人が増えてきている。疑問は多岐にわたる。たとえば「わたしの赤ちゃんが夜じゅうぐっすり眠れるような快適なおむつを作っているメーカーは?」や「私の笑顔をさらに輝かせてくれる歯磨き粉はどれ?」、「うちの木製テーブルについたクレヨンの跡を消せるものは?」といったものまで。こうした疑問に正しいタイミングで答えることができるブランドは二重の意味で勝ちを収める。つまり消費者の生活をよりよいものにするとともに、答えを持たなかったブランドに対する比較優位を保つことができる。
ZMOTは2011年に登場した概念だ。時が経ち、ルールはまた変わりつつある。
以前にもまして意思決定の瞬間は増えている
検索とZMOTは、重要性という点でもその幅広さにおいても成長し続けている。たった1か月の間にGoogleは1,000億回の検索に回答を提供している(内部資料による)。つまり、あなたがこれを読んでいる数分の間にも、Googleでは7,500万回もの検索が行われている計算になる。この膨大な数の検索のひとつひとつは、もっとも関連性の高い消費者にリーチする新たなチャンスにほかならない。
ZMOTは世界共通の行動になりつつある
調査に着手した当初、われわれはアメリカの消費者を見ていた。しかし今やZMOTは国境を越えてネットにつながっている世界の隅々まで、そして高額商品のみならず広く行きわたっている。最近の調査Winning the Zero Moment of Truth in Asia では、アジア女性の78%は消費財をどこから購入するかの意思決定プロセスの中でインターネット検索を不可欠の要素と考えていることがわかっている。
多くの意思決定の瞬間はモバイルから
スマートフォンで時と場所を選ばずネットに接続できるようになったことで、ZMOTは何かを中断してわざわざ行うようなものではなくなった(スマートフォンがあればラップトップを立ち上げてから検索を開始するというような手間はかからない)。そうではなく、消費者の日常生活に絶え間なく繋がっている必要不可欠な一部になっている。検索は常に行うことができる―どこにいても、どんなデバイスからでも、いつでも。事実、消費財について検索している人のほぼ3分の1は今やスマートフォンからアクセスしているとGoogle検索のデータは示している。
消費者の行動に変革が起きているのであれば、ブランドが消費者と関わる方法も変わるべきだ。常にインターネットに接続していて、まずモバイルありきとなっているこの時代に、どうやって意思決定のゼロ地点をつかまえ続ければよいのか。以下に4つのヒント、考えるべき問題を提示しよう。
1. 重要な意思決定の瞬間を解明し理解するために検索を使う
多くのブランドマネージャーがその存在を知るずっと前に、消費者は「ギリシャヨーグルト」や「BBクリーム」や「オンブルヘア(グラデーションヘアカラー)」を検索していた。いろいろある「シミ」のうち、どの種類の「シミ」がいちばん検索されているのかと考えたとき、答えは思いつくだろうか?答えは、ほとんどが「赤ワインのシミ」だ。消費者集団の頭の中に今あるものが何なのかわかるだろうか? (答え:ココナッツオイル ※Googleトレンドの結果) 大事なことは、消費者にとって重要な意思決定の瞬間がどんなものなのかを認識し、あなたがもつあらゆるマーケティング施策の組み合わせの中から消費者に響くものを明らかにするために検索を使うということだ。
2. 重要な意思決定の瞬間に立ち会う
映画監督のウディ・アレンはこの言葉をしばしば使ったと言われている。「成功の80%はその場に姿を現すことにかかっている」 これはデジタルの世界にこそ当てはまる言葉だ。消費者がまさに必要としているその瞬間に現れることができなければ、役に立つブランドパートナーにはなれないし、消費者の生活をよくすることもできない。そしてこうした瞬間はスマートフォン上で起きることが次第に多くなってきている。どのくらいのユーザーがモバイルであなたのブランドや業種を検索しているだろう? そうした検索のうちどれくらいの割合であなたは現れているだろう? そのうちどれくらいの割合でユーザーはあなたのブランドを選んでいるだろう? そしてその理由は? もっとも重要な問題は、どのくらいの割合であなたではなく競合が現れただろうかということだ。
3. 興味を引き、適切で、関連のあることを記載する
さまざまな消費者の意思決定の瞬間に対して答えを持っていなければならないということをここまで説明してきたが、しかしあなたは「ふさわしい」答えを持っているだろうか? あなたの広告はあらゆるデバイスのスクリーン上でベストなユーザーエクスペリエンスを提供できているだろうか? たとえば、「ヘアスタイル」という言葉を金曜日の夜に調べるのと土曜日の朝に調べるのとでは意味合いが違うということもある(夜のお出かけ用に簡単なヘアメイクをしたいか、サロンの予約の前にどんな髪型にしたいかという意図の違い)。製品へのリンクだけでは消費者を引き付けるには不十分かもしれない。広告はできる限り情報が豊富でしかも楽しめる体験をもたらすものであるべきだ。リンク先はたとえばこんなものがいい。サイトのリッチコンテンツ、Facebookでエンゲージさせるいろいろなポイント、YouTube動画など。
4. 効果を測定する
首尾よく意志決定のゼロ地点をつかまえたとしよう。では次にどうすればよいか?ZMOTは気づき、検討、購入の意図、お試しののち繰り返し購入する意思決定といったビジネス上のKPIの中でどの程度有利に働くものなのだろうか? 例としてGoogleとIpsos MediaCTの新しい調査結果を示そう。それによると、検索連動広告はブランド認知を高めるということが言える。あるカテゴリーやキーワードを提示してあるブランドが真っ先に頭に浮かんだかどうか(トップオブマインド)をテストすると、検索連動広告が出ない場合には被験者の8.2%が浮かんだと答えたのに対し、検索連動広告が出た場合には14.8%が浮かんだと答えている。その差は6.6ポイント、80%も上昇した(テストの詳しい内容については以下を参照。
New Research Shows Search Ads Drive Brand Awareness
意思決定のゼロ地点に取り組むブランドは、重要な意思決定の瞬間を解明し理解するために検索を使い、姿を見せ、モバイルに最適化されたふさわしい答えを提供し効果を測定することによって比較優位を保つ。より大切なのは、消費者が最も必要としたときに役に立つということだ。結局のところ、それ以上に大切なことがあるだろうか?