2013年10月1日から2日にかけて開かれたGoogleアナリティクスサミット2013に参加してきましたので、公開可能な範囲に限って報告します。
サミットの参加者は47か国に渡るそうで、私自身もランチの際に南アフリカ(飛行機で33時間!)や南米はコロンビアのGACPと話したりして、国際色豊かなイベントでした。
サミットにはGoogleアナリティクス認定パートナー(GACP)、そしてGoogleアナリティクスプレミアムをご契約いただいているお客様も参加し、サミットの内容も新機能のローンチ(リリース)発表や技術的解説、デモなどに加え、BabsonやWhartonといった世界のトップビジネススクールの教授のセッションが1日目に2つも(!!)聞けるなど、非常に贅沢な内容になっていたことが印象的でした。
※安川注、Googleアナリティクス プレミアムは、Googleアナリティクスのエンタープライズ向け有料サービスです。プレミアムにつきましてはリンクをクリックしてサイトをご覧いただき、ご不明な点がございましたらお気軽にお問合せください。
今回も非常に多くのローンチがありましたが、ローンチ時期はばらつきがあるのと、機能によってはプレミアム専用の機能もあったりと複雑なので、報告の前にまとめておきたいと思います。
各機能の利用可能時期
ABC分析、チャネルグループなど | リリース開始、10月中旬には全アカウントに展開完了予定 |
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オーディエンス | リリース開始、10月中旬には全アカウントに展開完了予定 |
セッションデータエクスポート (BigQuery、プレミアムのみ) |
すべてのプレミアムユーザー様 |
GTM自動イベントトラッキング | 全GTMアカウントにリリース済み |
マネジメントAPI | ホワイトリスト開始 |
GTMがGoogleアナリティクスプレミアムの SLA対象に含まれるように |
2013年10-12月、プレミアムユーザー様のみ |
DoubleClick Campaign Managerと Googleアナリティクスの統合 |
クローズドパイロット、プレミアムユーザー様のみ |
Google Play参照フロー | 全アカウントにリリース済み |
ユニバーサル アナリティクスへの 移行サポート(※) |
時期未定 |
※安川注、現在ga.jsをインクルードしているバージョンの、次のバージョンのシステムがユニバーサルアナリティクスです。トラッキングコードだけでなく、アプリ・オフライン計測などがサポートされ、利用できる機能も追加されます。新規にトラッキングコードを取得すると、ユニバーサルアナリティクスが自動的に選択されます。
参加報告
最初のPaul Murret(VP Engineeringで、あのUrchinを作った方です)のセッションは、インターネットのここ3年間の変化を数値で紹介し、今回のテーマであるAccess. Empower. Act.についての解説と、三名の事例紹介でした。
数値を紹介しておくと、2010年から2013年までの間に、世界のインターネットユーザーは15億人から27億人に、YouTubeで1日に視聴される動画は10億回から40億回に、ツイッターのツイート数は1日に250万ツイートから4億ツイートに、eコマースは11.2兆円から22.4兆円に、モバイルメディアの視聴量は5倍に増加したそうです。
Google アナリティクスはデータを見たり、分析するだけでなく、ユーザーもしくは意思決定者が、Google アナリティクスを使って具体的なビジネスに変革をもたらすことができるように進化していくとのことでした。
事例で面白かったのはTwiddyというバケーションレンタルのサイトでした。バケーションレンタルは日本にはあまりない習慣・ビジネスで、週末や休暇を、リゾート地の貸し切りの家やコテージ、ビラなどで過ごすもの。Twiddyは35年間、米国のアウターバンクスという保養地でバケーションレンタルの仲介をビジネスにしてきたそうです。バケーションレンタルは一見するとホテル検索みたいな感じですが、4人以上の家族・親戚等が一棟の物件に宿泊するため部屋数が多かったり、一つの物件は一棟しかないので、予約が入ったら終了となるなど、独特の特性を持っています。
TwiddyではGoogle アナリティクスリアルタイムAPIを使って、その物件に今現在何人がアクセスしているかを表示。顧客は他のユーザーがアクセスしていることがわかると、早く予約しなければ、、という気分になり、売り上げが向上したとのことです。
次にGoogle アナリティクスのDirectorのBabak Pahlavanが登壇し、各ローンチの発表を行いました。
Babakさんによれば、今回のリリースにおいて意識している領域は、エンタープライズとモバイルの二つとのこと。以下、各機能ごとに紹介していきたいと思います。
- GTMの自動イベントトラッキング
- GTMがGoogle アナリティクスプレミアムSLAの対象に
- 従来プロパティのユニバーサルアナリティクスへのアップグレード
- マネジメントAPI
- ABCレポート
- ユニファイドセグメント
- オーディエンスデータ
- オーディエンスデータを使ってセグメント
- BigQueryへのGoogle アナリティクス生データのエクスポート
- DoubleClick Campaign Managerとの統合パイロット
- DoubleClickのビュースルーデータをGoogle アナリティクスのマルチチャネルに統合
- Google PlayとGoogle アナリティクスの統合
1. GTMの自動イベントトラッキング
Googleタグマネージャは、アクセス解析やリスティングのコンバージョンタグなどの、毎日増え続けるタグの追加・更新を、マーケティング担当者が管理画面を用いて簡単に行えるようにするためのシステムです。
今回追加された機能はイベントリスナーと呼ばれる機能で、クリックリスナー、タイマーリスナー、フォーム送信リスナー、リンククリックリスナーの4種類があります。これにより、ページ内で別のページに遷移するボタンやリンクがクリックされた時やフォームがクリックされた時などに、リスナーにコールバックが飛びますので、GTM内でそのイベントが発生したタイミングでタグを実行することができます。
ユースケース(ユーザーシナリオ)としては、キャンペーンページなどでボタンのクリックを計測したいような場合、ボタンのエレメントIDやエレメントクラスを正規表現でマッチさせて、タグでイベントトラッキングのAPIを呼び出すようにGTMで設定しておくだけで、ボタンクリックは自動的にイベントとして記録されるようになります。
2. GTMがGoogle アナリティクスプレミアムSLAの対象に
GTMはプレミアムとしてのサービスレベル保証(SLA)やサポート契約の対象に含まれていませんでした。
今回の発表で、GTMのSLAが用意され、ご契約が可能となります。
3. 従来プロパティのユニバーサルアナリティクスへのアップグレード
ga.jsを呼び出している従来プロパティが、ユニバーサルアナリティクス(analytics.js)でサポートされるカスタムディメンションやユーザーID機能を活用するためには、プロパティをユニバーサルアナリティクスにアップグレードする必要があります。
アップグレードの提供により、新規にユニバーサルアナリティクスのプロパティを作らず、既存のプロパティをユニバーサルアナリティクスに変更することができ、新しいAPIや機能を利用できるようになります。
4. マネジメントAPI
こちらはエンタープライズ向けの管理用APIとなり、Googleアナリティクスのプロパティやビューを作成・編集・削除できるAPIとなります。
依然として、Googleアカウントを自動的に作成するのはサポートされないほか、ビューのフィルタは現時点では未サポートとのことなので、フィルタが非常に重要なお客様は注意が必要です。
5. ABCレポート
ABCとはAcquisition(集客)、Behavior(行動)、Conversion(コンバージョン)の略で、Googleアナリティクスの各指標をこのABCに分類すると見やすいということで、標準レポートの形式がすべて変更になりました。
ABCレポートはこちらに弊社村山の詳細記事がありますので、そちらをご覧ください。
6. ユニファイドセグメント
以前はアドバンスセグメントと呼ばれていた機能が、単に「セグメント」と呼ばれるようになったのですが、こちらは7月にすでに発表されていた機能が年末には100%のユーザーに導入されるというリリースでした。
ユニファイドセグメントの詳細についてはこちらに弊社村山の詳細記事がありますので、そちらをご覧ください。
7. オーディエンスデータ
ga.jsや現バージョンのanalytics.jsは、ファーストパーティcookieのみを用いてGoogleアナリティクスのサーバーと通信しますので、例えば私がGoogle アナリティクスを導入しているサイトAとサイトBにアクセスしたところで、それが同一人物かどうかは判断はできませんし、他のオーディエンスデータ(年齢性別などの属性)が分かっているサイトのデータと関連付けて、私の年齢や性別を判断することはできません。
しかし、DoubleClickのサードパーティcookieを同時に使用するdc.jsを利用すれば、GDNやDoubleClickのサービスにより、オーディエンスデータを推測することができます。この機能では、サイトの訪問者の年齢、性別、興味を表示でき、レポート画面でもディメンションとして使えるようになりました。年齢は18-24、25-34、35-44、45-54、55-64、65+に分けられ、性別は女性、男性、不明の三パターンに、興味はインタレストカテゴリと呼ばれるカテゴリに分類され、リーチ拡大に適した「アフィニティカテゴリ」と、より詳細なユーザーセグメントをターゲットするための「他のカテゴリ」に分かれます。インタレストカテゴリの詳細についてはAdWordsのヘルプが詳しいので、そちらを参照ください。
オーディエンスデータはデモグラフィックデータとも呼ばれています。
8. オーディエンスデータを使ってセグメント
サイト訪問者の属性情報であるオーディエンスデータは、Googleアナリティクス上で見るだけでなく、これを使ってセグメントしたり(従来、言語と地域のセグメントはできました)、リマーケティング with Google アナリティクスを使ってリマーケティングに活用することもできるようになりました。
特定の年齢・性別や興味を持っているユーザーの集客・行動やコンバージョンの分析をすることができるようになっただけでなく、例えばある年齢層の女性で、直帰率が低めのユーザーをターゲットしてリマーケティングリストを作成できるので、リマーケティングのシナリオをより緻密に設計することが可能になります。
また、リマーケティング with Google アナリティクスの機能として、新たにGoogleにお任せでリマーケティングリストを作成することもできるようになったようです。
9. BigQueryへのGoogle アナリティクス生データのエクスポート
セッションデータエクスポートとも呼ばれるこの機能は、Googleアナリティクスプレミアムをご契約いただいているお客様専用の機能で、Google アナリティクスの生のセッションおよびヒットのほとんど全てのデータを、そのままBigQueryというGoogleのウェブサービスにエクスポートするものです。
BigQueryそのものも有料のサービスとなり、1兆行以上のデータをほぼSQLライクな言語でリアルタイムにスキャンできます。エクスポートしたデータはBigQuery上でいったん処理してからダウンロードしたり、お客様がオンプレミスで所有するCRMデータをBigQueryにアップしてBigQuery上で組み合わせて処理したりすることも可能です。
BigQueryにエクスポートされる生データはサンプリングの対象とはなりません。
10. DoubleClick Campaign Managerとの統合パイロット
この機能もプレミアム専用機能となり、Googleアナリティクスのディスプレイ広告のセクションで、DoubleClick広告のインプレッションやビュースルー、コストデータが見られるようになるものです。
11. DoubleClickのビュースルーデータをGoogle アナリティクスのマルチチャネルに統合
この機能もプレミアム専用機能となり、Googleアナリティクスのマルチチャネルで、DoubleClickの広告を見た(=ビュースルー)ということが一つのセッションのように見えるものです。すでにGDNで利用可能になっているビュースルーの、DoubleClick版と言えるでしょう。
12. Google PlayとGoogle アナリティクスの統合
Googleアナリティクスにはネイティブのスマートフォンアプリを分析するためのSDKがあります(Webベースのスマホアプリについては、通常のJSベースのコードを使用します)。
このうちAndroidについては、アプリを起動する以前のユーザーの動きを知るための機能が、Googleアナリティクスに追加されました。
具体的には、参照元としてutm_が付与されているキャンペーンやGoogle検索からGoogle Playストアへの流入、Playストアでのアプリの閲覧、アプリのインストール、およびアプリを起動した数を見ることができるだけでなく、それらをGoogle Play参照フローとしてビジュアルに見たり、特定の参照元に限定したりすることもできます。
これはアクセス解析ツールとしてはGoogle アナリティクスだけで可能な機能なので、Google アナリティクスのメリットが一つ増えたということができそうです。
13番目と14番目の発表は、それぞれアナリティクスアカデミーというeラーニングと、Google アナリティクス内でのヘルプに使い方動画が追加されたというものでした。どちらも現時点では英語版のみの提供となります。
以上、今年も盛りだくさんのGoogleアナリティクスサミット報告でした。