スマホにおけるアプリと検索の未来、そして「今」できること~SMX WEST 2015 レポート
2015年03月13日

アプリを開発することはリソースを投資しなければなりません。
ですが、正しく開発することで、今後のスマホにおけるユーザー体験を著しく向上させる可能性も存在します。
SMXWESTで参加したセッションにてスマホのモバイルアプリ(ウェアラブル端末含め)に求められている役目や立ち位置が見えはじめました。

The Cutting Edge of Structured Data Implementation: Deep App Actions & Sitewide Dynamic Triggering
Mobile App Indexing, Deep Linking & Development

上記のセッションにて感じたことを、個人の感想を通してではありますが共有させていただきます。

Googleが考えるアプリの位置づけ

GoogleのウェブマスタートレンドアナリストであるMariya Moeva氏が、Googleが考えるアプリの重要性について実例を交えて話ます。
チケットを購入し、フライトのためのチェックインをアプリ内で行うことが可能で、支払いをアプリではなくWebで行ったとしても、移動のスケジュールをスマホに同期させることができます。移動中においても、記事を読んだり言語を勉強したりと、アプリに時間を費やしています。アプリは全ての人にとって便利と言えます。
Google playの中には約100万ものアプリが存在し、ダウンロード数は100億に及び、特定の研究によるとモバイルを操作する時間の80%をアプリに費やしていることから、非常に重要と考えているようです。

ビジネスへの活用と実情

アプリはビジネスにおいても活用することができます。現在の位置情報、アプリをダウンロードしたユーザーの連絡先など、たくさんの情報をアプリで取得し、ユーザーのために活用することが可能です。例えば、あるショップに興味があり、ショップに関するアプリをダウンロードしているユーザーへ、興味がありそうなセール情報やニュースをプッシュ通知で知らせることができます。
しかし、Mariya Moeva氏は現状のアプリには開発を含め、大幅な努力が必要と述べます。というのも、ユーザーがスマホにダウンロードしているアプリは平均26個ですが、そのうち端末にダウンロードした5%のアプリが、端末で稼働しているアプリの92%を占めており、特定のアプリのみ使用されているようです。
Webサイトで行うことができないことがスマホアプリでは行うことができる可能性があるのに、ビジネスとして活用しきれてはいません。

変化するスマホ検索の役割

Googleはモバイルフレンドリーなサイトをスマホの検索結果にブーストしてランクさせるとアナウンスしている他、スマホのパーソナライズされた検索結果にユーザーの端末にインストールしているアプリもランクさせるとアナウンスしています。

Google ウェブマスター向け公式ブログ: 検索結果をもっとモバイル フレンドリーに
【速報!!】SMXWEST2015でGoogle社員が語るモバイルフレンドリーの内容

検索結果にユーザーがインストールしているアプリ内のコンテンツ内容が含まれるのであれば、検索結果に表示させることが可能です。といっても、すべてのアプリが対象というわけではなく、Googleが指定した仕様(ディープリンク)にて開発されたアプリに限られます。そういった点を含めて、Mariya Moeva氏は現在のアプリに対し大幅な改善が必要と述べていると言えます。

スマホなどのモバイル検索結果からユーザーが端末にインストールしているアプリ内の内容を紐付けるディープリンクの設定方法に関しては、下記のページを参照下さい。

Google 検索用 App Indexing – Google Developers

セッション名「Structured Data: Beyond Rich Snippets」でスピーカーをつとめたJustin Briggs氏の発言が非常に印象的でした。

PC、スマホでの検索は、彼らが検索した文章(検索キーワード)にキーワードやコンテンツを紐付けて、情報を表示させる検索プロセスだった。しかし、スマホ検索においては、急速に検索するユーザーとの対話へ変化している。スマホでの検索だけでなく、ウェアラブルに関しても同じ。現在において、検索はインターフェイスの層であり、データベースとアプリケーションの間に位置しているのではないか。

(日本と違い英語圏では疑問文による検索が存在するため、音声検索にも違いがあると言えます)

今までのモバイル端末による検索

今までのモバイル端末による検索

これからのモバイル端末が担う検索

これからのモバイル端末が担う検索

ユーザーにとって検索行為がインターフェイスとなり、表示された検索結果がランディングページと位置づけることができるとも考えることができます。これからは、検索行為というユーザー体験を優れたものにしようと考えていると言えるのではないでしょうか。

検索からモバイルアプリへの誘導例

セッションをまたがってではありますが、各スピーカーがスマホから検索し、モバイルアプリへ誘導する例を紹介していたのが特徴的でした。どれも、実現不可能ではなく、それほど遠くない将来に実現されそうな機能ばかりと言えます。

・ハフィントンポストの例

ハフィントンポストのアプリをダウンロードした端末で、ハフィントンポストやハフィントンポスト内での内容が検索された際に、ウェブサイト内のページではなくアプリ内へ誘導させることができます。誘導させる際に、ウェブサイトかアプリを選択することができ、一度アプリに対し「常時」を選択させてしまえば、今後、検索をインターフェイスの起点とさせ、アプリを立ち上げさせることができます。

ハフィントンポストの例

スマホ画面からハフィントンポストのアプリを選択することも可能ですので意味がないようにも思えますが、スマホを操作するのに手を十分に使用できない時など、端末内から特定のアプリを探す必要がなくなるため、検索体験の向上と言えそうです。

・曲の再生

検索結果に表示されたディープリンクのアプリから再生させることが可能になります。

例えば、特定のアーティストによる曲名をYoutubeアプリやYoutubeサイト内で検索するのではなく、Googleで検索し、表示されたYoutubeアプリ、もしくは他のアプリのディープリンクから曲を再生させることができます。

・Googleマップからタクシーを呼ぶことも…

Googleマップで何か場所の情報を検索し移動が必要となった際に、Google Apps内のUber(タクシーを呼ぶアプリ)を要求することも実現可能と言えます。ディープリンクは、Googleマップなどの検索ではないアプリからUberなどのアプリ内にあるコンテンツの一部に直接接続することができます。ディープリンクは、ウェブサイト内のウェブページと同じ役割を担うことができます。

実際にスタートしているアプリインストールの訴求

Googleが重要な位置づけと考えているアプリですが、ユーザーの使用している端末にインストールさせるための広告も続々とスタートしています。広告以外の訴求方法を含め一部を下記にご紹介します。

・検索結果へのアプリインストール広告

スマホの検索結果に、アプリをインストールさせる検索連動型のアプリインストール広告を表示させることができます、PCで検索した際は、検索連動型広告を出稿している各ウェブサイトへ遷移しますが、スマホやタブレットでの検索結果では、端末にアプリのインストールを訴求する広告を出稿することができます。

・ディスプレイネットワーク広告へのアプリインストール広告

スマホで閲覧しているWebサイトやユーザーが利用しているアプリ内、そしてYoutubeに用意されているGDN(Googleディスプレイネットワーク)枠内に、ウェブサイトへの訴求だけでなく、アプリのインストールを訴求する広告を表示させることができます。例えば、レシピ関連のサイトを閲覧しているユーザーに向けて、関連するアプリをインストールさせる訴求を行うといったことが可能です。

・Google Play内へのアプリインストール広告

Android端末にてアプリをダウンロードする際に使用されるGoogle Play内への広告も一部パイロットテスト中ではありますが開始されています。Google Play内でキーワード検索した際に、自身のアプリを訴求することができます。ユーザーが特定のアプリを探している際にも訴求できるので、訴求方法によっては効果的です。

・広告以外での訴求

その他、広告以外の手段として、ウェブビューで作成されたスマホサイトに対して、ヘッダーエリア等にアプリインストールを訴求する専門のエリアを設けるウェブサイトもよく見かけるようになっています。

広告以外での訴求

ウェブサイトを利用するユーザーにとってロイヤリティーを高めるようなアプリインストールの訴求であれば効果的と言えます。

Google Nowによる通知

スマホ検索からユーザーが利用しているアプリへの誘導とは異なりますが、Google Nowでの情報通知もスマホ端末でのユーザー体験を向上させる機能の1つです。
Google Nowではユーザーの位置や状態をはじめとするパーソナライズドな情報から、ユーザーにとって有用なレストランやホテル、イベントといった各種情報を表示させることができます。
それはユーザーが使用するモバイル端末のメールボックスに保存された情報も利用します。トランザクションや申込み確認、時間確認のために受信したメールが、Googleが読み取れることができる構造化データでマークアップされたメールの場合、構造化データからメール内容を理解し、Google Nowに表示させます。

実際に今回のSMXWESTに参加するために申込みしたデルタ航空の申込み確認メールをGmailのメールボックス内に含まれてから、Google Nowのパネル内には下記のように表示されるようになりました。

Google Nowによる通知

今回の移動における詳細な移動はGoogleカレンダーに登録しておりません。予約状況確認のために受信したメールは端末と同期していないメールアカウントに受信したメールでしたが、個人のGmail宛に転送したことで使用端末に表示されるようになっています。

今後、Google Nowへの表示に期待できる航空券、ホテル、レストランなどの予約完了以外の要素としてはイベント情報等があげられます。ウェブサイト内のイベントに関するコンテンツを構造化データにてマークアップすることで、ユーザーが場所等の関連した情報に紐付けられた際に、イベント情報をGoogle Nowに表示することができる機会を得ることができます。顧客とのエンゲージメントを高める施策の1つとして有効と言えそうです。

今、できること

Googleのスマホやウェアラブルなモバイル端末に対する理想があるとはいえ、アプリインストールを訴求する方法も、検索結果にディープリンクが実装されたアプリが表示されることも、実際にはまだ、広く活用されるまでには至っていないのが実情のように思えます。Googleが思い描く理想を実現させるために、新しい技術による広告出稿や検索体験を豊かにするディープリンクという仕様がスタートしたばかりです。モバイルフレンドリーは重要ですが、ユーザビリティに優れたウェブサイトやアプリを開発するには、費用や時間をはじめとするリソースを多く消費するのも事実です。
では、Googleが思い描く理想に対して、「今、できること」は何でしょうか。Webサイトだけでなく、スマホを利用するユーザーにとっての「モバイルフレンドリーは何か?」を改めて考える必要があります。