
2025年6月6日に、「Googleアナリティクス4 データ活用最新情報セミナー 〜サーバーサイドGTMとGemini in BigQuery〜」と題しまして、セミナーを開催いたしました。本セミナーでは、Googleアナリティクス4(GA4)を最大限に活用し、ビジネス成長を加速させるための最新情報と実践的なノウハウをご紹介いたしました。

サーバーサイドGTMによるデータ収集の最適化
ウェブサイトやアプリからのデータ収集において、サーバーサイドGoogleタグマネージャー(GTM)の活用は、データ品質の向上とプライバシー規制への対応において非常に重要です。本セミナーでは、従来のクライアントサイドGTMと比較しながら、サーバーサイドGTMを導入するメリットや具体的な設定方法、よくある課題とその解決策について詳しく解説いたしました。これにより、より正確で信頼性の高いデータ収集基盤を構築し、データに基づいた意思決定を支援することを目指しました。
BigQueryにおけるGemini活用によるデータ分析の深化
GA4で収集された膨大なデータは、BigQueryにエクスポートすることで、さらに高度な分析が可能になります。今回のセミナーでは、特に注目を集めているGemini in BigQueryの活用方法に焦点を当てました。GeminiをBigQueryと組み合わせることで、将来のトレンドを予測したり、あるいは自然言語でデータに質問(プロンプト)を投げかけることで、専門知識がなくても迅速に分析に必要なクエリを生成したり、インサイトを得ることが可能になります。ビジネスにおけるデータ分析をいかに効率化し、新たな価値を創出できるかについてご紹介いたしました。
本セミナーの冒頭では、GMPコンサルティング事業部 チーフソリューションコンサルタントの藤田より、プライバシー規制の強化と最新テクノロジーの活用が進む「デジタルマーケティングの新時代」において、いかにデータ計測の精度を維持し、効果的にデータを活用していくか、その最前線をお伝えしていく旨を説明いたしました。
「デジタルマーケティングの新時代」という言葉が示す通り、昨今のプライバシー規制強化がもたらすデータ計測およびデジタルマーケティングへの影響は、マーケティング担当者の皆様の業務にじわじわと影響を及ぼし始めており、適切な知識と対応が不可欠であることは周知の通りです。
一方で、生成AIをはじめとする様々なAIの活用は、既存業務の効率改善にとどまらず、新しいマーケティング施策や分析手法を提供し始めています。
本セミナーでは、これらの変化に対応し、AIを効果的に活用していくための具体的な対策や手順を、実例を交えながら詳細に解説いたしました。これにより、ご参加いただいた皆様が、今後のデジタルマーケティング戦略を具体的にイメージし、実践に移せるよう支援することを目指しました。
- デジタルマーケティングの新時代:プライバシー規制対応と最新テクノロジーの活用
- Geminiならこの分析が5分でできちゃいました~自然言語でデータ分析ができるGemini in BigQueryの始め方
- 最後に
デジタルマーケティングの新時代:プライバシー規制対応と最新テクノロジーの活用
デジタルマーケティングを取り巻く環境変化と対策の必要性
現在のデジタルマーケティング環境は、かつてないほどの大きな変化に直面しています。特に以下の2点が、企業のデータ計測および広告効果に影響を及ぼしています。
- 世界的なプライバシー規制の強化
GDPR(一般データ保護規則)や日本の改正個人情報保護法をはじめとする世界的なプライバシー規制の強化は、ユーザーデータの取得・利用法に大きな影響を与えています。企業は、ユーザーの同意に基づいたデータ取得や、データの利用目的を明確にするなど、より厳格な対応が求められています。これにより、従来の方法によるデータ収集は困難になり、データ戦略の見直しが喫緊の課題となっています。 - テクノロジーの変化によるトラッキング制限の厳格化
AppleのITP(Intelligent Tracking Prevention)の強化や、アドブロッカーの普及など、テクノロジーの進化もまた、ユーザーレベルのトラッキングに対する制限を厳しくしています。これにより、サードパーティCookieの利用が制限され、ユーザー行動の正確な追跡が難しくなっています。
これらの環境変化が複合的に作用することで、従来の計測手法ではデータ精度が低下し、結果として広告成果の悪化(CPA増加、ROAS低下)を招くケースが増加しています。さらに、適切な対応を怠った場合には、法的リスクの増大やブランド毀損のリスクといった深刻な事態に発展する可能性も否定できません。
このような状況下で、企業はデータ計測の精度を維持し、効果的なデジタルマーケティング戦略を構築するために、抜本的な対策を講じる必要があります。

本コラムでは、サーバーサイドGoogleタグマネージャー(sGTM)の具体的な機能や実装方法については詳述いたしませんが、デジタルマーケティングにおける主要な課題に対し、sGTMがどのような効果的な解決策となり得るかについて抜粋してご説明いたします。
- 計測データ精度の向上
近年、アドブロッカーの普及や特定のブラウザ、OSによるトラッキング制限が強化される傾向にあります。これにより、従来のクライアントサイド計測では、ユーザー行動データの欠損が発生し、マーケティング施策の効果測定に支障をきたすケースが増加しています。sGTMを導入することで、これらの影響を軽減し、より精度の高いデータ計測を実現することが期待できます。ただし、これは影響を最小限に抑えるものであり、あらゆる状況下で完全に計測を行えるものではない点にご留意ください。
- データ管理・セキュリティの強化
従来の計測方法では、ウェブブラウザから直接複数のデータ提供先へデータが送信されていました。これに対しsGTMを活用することで、ファーストパーティ(1st Party)ドメインのサーバーを経由し、一元管理された環境からデータ送信が可能となります。これにより、データフローの透明性が向上し、企業はより統制された形でデータを管理できます。さらに、サーバーサイドでデータを送信する際に、秘匿性の高い重要情報を付与して送ることで、機密性の高いデータも安全に活用できるため、セキュリティの強化にも貢献します。 - ウェブサイト表示速度の改善
Googleアナリティクスの行動ログ、広告のリマーケティング・コンバージョンタグ、CX改善ツールのタグなど、現在のウェブサイトには多種多様なタグが実装されています。これらのタグの種類や数が増加するにつれて、ブラウザの処理負荷が増大し、ページの表示速度低下の一因となることがあります。sGTMの活用方法次第では、ブラウザ側の処理負担を軽減し、タグの読み込みを最適化することで、ウェブサイトの表示速度改善に寄与する可能性があります。これは、ユーザー体験の向上だけでなく、SEOの観点からも重要な要素となります。
繰り返しになりますが、プライバシー規制の強化の流れは今後も止まることはないと考えられます。このため、計測データ精度の向上は、デジタルマーケティングにおける常なる意識が必要な課題です。
年々、収集されるデータ量は増加の一途をたどっています。しかし、行動分析や広告効果の評価を行う上で、「このイベントが、一体どのユーザーの行動なのか」という視点は極めて重要です。現在の課題は、このイベント、すなわちユーザーの「足跡」であるシグナルが、特定の個人と紐付けにくいという点にあります。これは、プライバシーを重視した規制やテクノロジーの進化が、個々のユーザー識別の難易度を高めているという、ある意味で相反する状況から生じています。
このような環境下において、GoogleアナリティクスやGoogle広告といった集計エンジンが、モデリングを活用した集計を採用している点は特に注目すべきです。モデリングとは、欠損したデータを統計的に補完することで、全体像をより正確に把握しようとするアプローチです。このモデリングの精度を高めるためには、可能な限り多くの、そして長期的に精度の高い情報を測定し続けることが不可欠となります。
データ計測の課題は単なる技術的な問題に留まらず、マーケティング戦略全体に影響を及ぼす重要な要素です。今後も変化する環境に柔軟に対応し、持続的なデータ活用を実現するためには、常に最新の知見を取り入れ、対策を講じていくことが求められます。

Geminiならこの分析が5分でできちゃいました~自然言語でデータ分析ができるGemini in BigQueryの始め方
本セクションでは、シニアソリューションコンサルタントの中村晃が登壇し、Google CloudのデータウェアハウスであるBigQueryと、生成AI「Gemini」が統合された「Gemini in BigQuery」が、データ分析のあり方をいかに革新し、ビジネスインサイトの獲得を加速させるかについて、具体的な機能と活用方法を交えながら解説いたしました。
セッション冒頭で参加者の皆様に「生成AIをどれくらい使っていますか?」というアンケートを実施いたしました。週に1回以上利用しているユーザーが85%を超える結果となり、生成AIがもはや国民的サービスとして広く浸透していることが強く伺えました。一度も使ったことがないという回答が0%だったことも、この傾向を裏付けています。
私がこの題目のセミナーを実施するに至った背景には、「Googleアナリティクスの計測状況や分析経験がなくても、生成AIのサポートを利用しながらマーケティングに関連する分析が可能か」というご相談を多くいただく現状があります。
BigQueryは、構造化データ・非構造化データを問わず、データの持ち方、目的、意味が明確に定義されていれば、集計分析が可能な汎用的なプラットフォームです。この汎用性の高さから、Google Cloudの中でも比較的早い段階で、Gemini in BigQueryというソリューションが提供されたと考えられます。一方で、Googleアナリティクスはデータ分析という視点では高いニーズがあるものの、データの持ち方がWebサービスのアクセスデータやマーケティングデータに特化しているため、Geminiとの統合にはもう少し時間がかかっていると推測されます。今後の動向が注目されるところです。
セミナーでは、Gemini in BigQueryがデータ分析をいかに劇的に効率化するかを、以下の3つの主要機能に焦点を当ててご説明いたしました。
1. 対話型SQL生成 (Code Assist)
この機能は、自然言語(日本語)を用いてSQLクエリを生成・補完をします。BigQueryのクエリエディタ内で「#」を入力し、分析の目的を自然言語で記述(これをプロンプトと呼びます)するだけで、Geminiが目的に応じた幾つかのSQLクエリを提案してくれます。これにより、SQLの専門知識がないユーザーでも、すぐにクエリを実行して結果を確認できるため、データ分析のハードルを大幅に下げることが可能です。
2. BigQueryデータキャンバス
BigQueryデータキャンバスは、データ分析のワークフロー全体を視覚的に管理できる直感的なGUIツールです。自然言語プロンプトとこのワークフローを組み合わせることで、データの検索から変換、クエリの実行、さらには結果の可視化までを一貫して行うことができます。これにより、「BigQueryはクエリを実行する場所」という従来の概念を覆し、より統合された分析体験を提供します。Googleアナリティクスの探索ツールで行っていた多くのレポート業務をデータキャンバスに移管できるだけでなく、Googleアナリティクスでは実現が困難であった高度な集計もBigQueryであれば実現を目指せます。
3. データインサイト
データインサイト機能は、BigQueryのテーブル内容を探索し、その意味を素早く理解するための強力な支援ツールです。Geminiがテーブルの内容を自動的に解析し、データから得られるインサイトや、分析に役立つサンプルクエリを提案してくれます。この機能により、データに触れたばかりのユーザーでも、迷うことなく分析作業にスムーズに着手することが可能となります。

近年、ビジネスの意思決定においてデータ分析の重要性が高まる一方で、専門知識と時間が必要となる分析作業は、多くの企業にとって大きな課題となっています。しかし、Gemini in BigQueryは、この課題を根本から解決し、データ分析の民主化とビジネスの加速を実現します。
「Geminiならこの分析が5分でできちゃいました」という言葉は、Gemini in BigQuery がもたらす分析スピードを端的に表しています。この劇的な分析プロセスの高速化は、企業に以下のようなメリットをもたらすのではないでしょうか。
- 市場変化への迅速な対応:刻々と変化する市場環境において、タイムリーにビジネスインサイトを獲得し、迅速な戦略変更や意思決定を行うことが可能になります。
- 競争優位性の確立:競合他社に先駆けて重要なビジネスチャンスを特定し、新しい戦略を実行することで、市場における競争優位性を確立できます。
- データドリブンな文化の醸成:誰もがデータにアクセスし、分析できる環境が整うことで、組織全体でデータに基づいた意思決定を行うデータドリブンな文化が醸成されます。
最後に
近年のマーケティングを取り巻く環境は、従来の延長線上にはない大きな変革期を迎えています。特に、プライバシー強化への対応と生成AIの活用という2つのキーワードは、GoogleアナリティクスやWebサービス行動分析の領域に留まらず、すべてのマーケティング担当者にとって避けては通れない重要なテーマとなっています。
これらのトレンドは、過去の常識を覆し、新たなマーケティングのあり方を提示しています。現在、多くの企業が試行錯誤を重ねている最中であり、実際にこれらの技術を導入し、活用していく過程で、予期せぬ課題や新たな発見が生まれることでしょう。そのプロセスこそが、貴重な経験となり、今後のマーケティング戦略の糧となります。