Quick DMP担当の加藤です。
今回は前回コラムの続編としてダッシュボード特集後半戦となります。
前半はダッシュボードツールの必要性や活用例を見てきました。
「Tableau or Data Studio? 今デジタルマーケティングでダッシュボード使うとしたらどれがいい?」
【前半】では
・なぜ今デジタルマーケターにとってダッシュボードが必要とされているのか?
・ダッシュボードで何が出来るのか?
・どういったダッシュボードを見れば良いか
といった内容についてご説明しました。
今回の後半では以下の通りよりツールよりの話になり、マーケターの方々はもちろんの事、IT部門でダッシュボードツール選定や導入に悩まれている方にはベストな情報となります。
「Tableau or Data Studio? 今デジタルマーケティングでダッシュボード使うとしたらどれがいい?」
【後半】
について、解説していきます。
1.データドリブンマーケティングでよく使われるダッシュボードツールをまとめて比較
ではさっそく昨今のマーケティング部門やそれらをとりまく部門(営業、経営企画等)でよく活用されていたり、これから活用が進むであろうダッシュボードツールをピックアップし、各ツールの特徴を示しながら比較をしてまいりましょう。
今回ピックアップしたダッシュボードツールは以下となります。
ダッシュボードツールとしては他に国産BIベンダーや外資系ベンダー等もありますが、今回は上記3製品のみです。
今回カバーされていないツールに関しては、別途コラムを企画中です。
ではここからは各ツールを紹介しながらそれぞれの特徴を示していきます。
Tableau
Tableau一択状況は変わらず
まずは言わずと知れたTableauです。
デジタルマーケティング界隈では特に知名度が高く、また熱狂的なファンが多い業界ナンバー1のデータビジュアライゼーションおよびダッシュボードツールと言えます。
Tableau社の直近のビジネス状況は以下の通りです。
- 5年連続Gartner BIツール調査レポートでLeader評価
- 競合ベンダー間では最も求人数が多い
- 2013年からの4年間で顧客数約3.2倍増加
さてTableauには他の企業と同様にミッション (Coprporate Mission) があります。英語だと以下の通りです。
“Tableau helps people see and understand data”
日本語だと「Tableau はお客様がデータを見て理解できるように支援します」です。
いかがでしょうか?非常にシンプルですよね?Tableauの全てを語っているかのようです。
どちらにせよTableauのデータビジュアライゼーションやダッシュボードへのコミットメントを非常によく表しているミッションと言えます。
Tableauがどのようなツールかまだご存知ない方は、こちらの紹介動画をご覧ください。
Tableauの特徴
ではTableauの特徴を箇条書きすると以下の通りです。
- UIが人間工学に基づき見やすい、操作しやすい、結果を理解しやすい
- 大量データをストレスなくハンドル可能
- Viz作成に必要となるデータ加工関数が豊富
- ダッシュボード分析で俯瞰し更にアドホック分析がシームレスに可能
- ビジネス部門がスモールスタート可能で、スタート後はIT部門がサポート可能なプラットフォーム要件、各種ポリシー要件を満たしている
- 柔軟なサーバープラットフォーム(クラウド、オンプレミス)
- 無償・有償含め、日本語で利用可能なオンライン、オフラインコンテンツ、クラスルームトレーニングが豊富
- グローバル、日本共にオンラインコミュニティー、ユーザーグループ活動が活発
- クールなコミュニティー、クールなユーザー!
一般的にはTableauの特徴の一つに、対応するデータソースの数も頻繁に挙げられますが、マーケティング部門で扱うデータソースは通常限られていますので今回は上記に入れておりません。
(IT部門はこの限りではありません)対応データソースの詳細はこちら。
因みに本コラム執筆時2017年8月17日現在、対応データソース数は74でした。
なおデジタルマーケティング領域のデータソース対応は比較的少なく、現時点ではGoogle AdWordsやSearch Consoleデータ、更にはAdobe Analyticsデータにもコネクター対応はしていませんので注意が必要です。
※AdWordsなどTableauが未対応のデータソースに対応し、Tableauからのデータソース接続が1本で済んでしまう弊社Quick DMPサービスに関する詳細はこちら。
Tableauの評価
私としてはTableauの総合点数は高いと考えています。
長年にわたりBI/ダッシュボードツールベンダーでコンサルタントを経験してきた私としては、現在一番使いやすく、人に勧めやすく、かつエコシステムがしっかりしているダッシュボードツールベンダーはTableauだと考えています。
Google Data Studio
完全無料化されたGoogle Data Studio
2番目は天下のGoogleがリリースした完全クラウドベースのダッシュボードツール、Google Data Studio (GDS)。
2015年5月に米国向けにベータ版がリリースされ、2016年9月より日本でも利用可能になりました。
2017年2月までは無償版は作成・保存可能レポート数が5つでしたが、それ以降無制限に変更されました。
また現在もまだベータ版とは言え、完全無料化されました。
GDSがまだどのようなツールかまだご存知ない方は、こちらの紹介動画をご覧ください。
Introduction to Google Data Studio (5:00)
GDSの特徴
GDSの特徴は以下の通りです。
- 完全無料で魅力のある動的かつインタラクティブなダッシュボードをパワーポイント資料を作成するかのように簡単に作成し共有可能
- GUIは日本語化され、オンラインマニュアル等のコンテンツはほぼ日本語化済み
- Google系サービスを主体としたさまざまなデータソースに簡単に接続できる
- Google Search Consoleデータも直近3ヶ月までならデータソースとして接続可能
- Google ドライブと同じように他のユーザーと共有して共同作業できる
- ダッシュボードの作成と共有には向いているが、アドホック分析には不向き
GDSの評価
弊社のお客様でもGDSを評価されているのですが、使用状況によってはアプリが落ちたり、関数(計算式)利用時の計算精度が悪かったり、関数そのものがTableauなどと比較すると数が少なかったりなど、ネガティブなレポートも上がってきているのも事実です。
それは現状はベータ版という事で理解すれば、Googleサービスを多用している企業にとってはGDSほど簡単にGoogleサービスからのデータをダッシュボードで簡単に可視化し、共有する事が出来る無料ツールは現在皆無とも言えます。
今後ベータ版の中でどんどん進化し、プロダクション版として再ローンチされる頃にはパフォーマンスや環境も安定されるでしょうし、諸々のユーザーが抱える不安や課題は解消されると思われます。
GDSの進化の状況が確認出来るリリースノートはこちら。
非常にアップデート頻度は高いです。
しかし2017/6/16のアップデートを見ると、やっとこの時点で所謂バブルチャートの作成が出来るようになりましたので、まだこれからと言えるかと思います。
GDSのAmazon Redshift DB対応に関して
さて今一番GDSに必要とされている機能は何かと言いますと、Amazon Redshiftがデータソースに対応していないという点です。
各所で確認可能なクラウドDBシェア調査結果などからもわかるように、現状のクラウドDBのシェアとしてはGoogle BigQueryよりAmazon Redshiftのシェアの方が断然高いです。
海外のGoogle advertisercommunityページでは、Google社員がRedshiftへの対応予定をコメントしていたりしますが、予定がどんどん遅れてしまっているようです。
なおAmazonは後にご紹介するAmazon QuickSightというダッシュボードツールを展開している事もあり、この領域でGoogleとAmazonは敵対する関係となっています。
弊社で展開するQuick DMPサービスは、Amazon Redshift上に収集・蓄積するデータベースをデータソースにしています。
Quick DMPのRedshift DBをGDS上で活用するケースを考慮すると、GDSには早急にRedshiftに対応をしてもらいたいところです。
GDSがRedshiftに対応すれば、Quick DMP DBを利用したGDSダッシュボードを構築することが可能になります。
すなわちQuick DMPユーザーは、ダッシュボード要件次第で無償のGDSでライトなダッシュボードを構築する事が可能になりますし、アドホック分析もダッシュボード分析も行いたい「よくばりな」ユーザーは、Tableauでダッシュボード構築する事ができ、ユーザーの選択肢は増える事になります。
Amazon QuickSight
知名度は低いが意外と使いやすいAmazon QuickSight
さて3番目のツールはAmazonから提供されている完全クラウドベースのQuickSightというサービスです。
私も少し使ってみましたが、インターフェイスが少しTableauに似ている感じもあり、どことなく懐かしく使い勝手が良い印象を受けました。
Amazon QuickSightの特徴
QuickSightの特徴を箇条書きすると以下の通りです。
- AutoGraph機能でデータに最適なビジュアライゼーションを少ないステップで自動作成
- SPICE (Super-fast, Parallel, In-memory, Calculation Engine) テクノロジでストレスなくビッグデータをダッシュボード化可能(カラムナー型DB+インメモリ)
- データセットはSPICEデータセットと、DB直問い合わせとなるデータセットの2種類を持つことが出来る
- 利用可能な関数は現時点で27と少なく、DBへの直問い合わせが行われるデータセットでのみ利用可能。SPICEデータセットはデータ取り込むタイミングでDB側に計算フィールドを追加する必要がある。
- Amazon AWS内のデータソースへのアクセスは非常に良いが、他のデータソースへのアクセスは限定的
- デジタルマーケティング関連データソースへのコネクターは皆無で、デジタルマーケティング系データを活用するならば、
- RedshiftなどAWS系データソース経由での活用となってしまう
- Amazon AWSの既存パートナーが豊富で既にエコシステムが確立されており、データマネジメントを含めたインフラ構築は比較的安心して構築可能
- シングルユーザーでの利用(ダッシュボード共有無し)であれば無料
- AD認証などが必要となる企業ユースではEnterpriseライセンスが必要(月額18ドル)
QuickSightがどのようなツールかまだご存知ない方は、こちらの紹介動画をご覧ください。
Creating Your First Visual with Amazon Quicksight (1:15)
QuickSightの評価
QuickSightの一番の売りは何かというと、導入時にIT部門の支援や協力が比較的容易に得られる事でしょう。
理由は明白で、ITインフラとしてのAmazon AWSの普及が既に進んでおり、IT部門がサービス内容やテクノロジに関してキャッチアップ済みだからです。
また実際に導入する場合には、エンタープライズ要件はAWSとして非常に高いレベルでサポートされるので、こちらも問題ありません。
では機能面にフォーカスしていくとどうか。
機能面では、QuickSightは既にGA(プロダクション)版として提供されていますので、現状ベータ版であるGDSと比較すると、表面上多少先行している感じもします。
しかしながらマーケティング領域での活用を想定すると、Googleアナリティクス、AsWordsなどのGoogle関連サービスからのデータを活用する機会が多くなってしまう事は周知の事実です。
QuickSightではそうしたデジタルマーケティング関連データへの直接アクセスは提供されず、Amazon Redshiftなど対応データソースを一度経由する形でのデータ活用となってしまいます。
ここはQuickSightの惜しいところではありますが、GDSでもRedshift対応が成されていないように、データソース戦略ではGoogleとAmazon両社で今一歩踏み込めていないようです。
IT調査会社による評価
さてここまで各ツールの特徴を示してきましたが、欧米を中心としたIT業界のツールやサービスを長年リサーチし、評価レポートを発行し続けている調査会社にガートナー社があります。
今回対象とした3つのツールのうちTableauは、年に一度発行される “Gartner Magic Quadrant for Business Intelligence and Analytics Platforms” レポートで毎回取り上げられ、アナリストの高い評価を得ています。
あるTableau Publicユーザーが、2017年2月に発行されたガートナーレポートを含め10年分のレポートを非常に分かりやすいTableauダッシュボードにし、Tableau Publicで公開しています。興味がある方は以下を参照ください。
Tableau Publicワークブックへのリンクはこちら
GDSとQuickSightの評価ですが、両ツールとも2016年から参入してきているものの、GDSは未だベータ版、QuickSightは2016年11月にやっとGA版になったという事もあり、2017年のガートナーレポート対象にするのは時期尚早だったという判断かと思います。
しかしながら、2017年版レポートの ”Table 3. Other Relevant Vendors” の一覧には2社とも出ています。2018年のガートナーレポートには、評価対象として恐らく出てくるものと思われます。
なおガートナーレポートについては、英語のみにはなりますが各ベンダーサイトを通してレポートを無料で参照する事が可能となっています。
レポートを参照されたい場合、各ツールベンダーが提供しているページから参照をお願いいたします。(通常メールアドレスなどのユーザー登録が必要となっています)
Tableau社のガートナーレポート参照ページはこちら。
更にガートナーのpeerinsightsというページでは、社内アナリストだけではなく、社外の一般ユーザーにもレビューをしてもらい、結果を公開する仕組みを取り入れています。
こちらもレビュー数、スコア共にTableau1強で、Google (GDS) は辛うじて1ユーザーからのみレビューが付いていますが、QuickSightはまだレビューがありません。
2018年の各社の評価がどうなるか、ちょっと先ですが期待して待ちたいと思います。
2.TableauとGoogle Data Studioどっちがどのような時いいの?
さてここまでTableauとGDS、あとQuickSightを見てきました。QuickSightはQuick DMPサービスとの併用観点においては使いやすい印象を持ってはいますが、現状ではQuickSightとQuick DMPを併用運用した場合のコストメリットが他2ツールより悪いため、今回は比較をわかりやすくするために最終比較から外すことにしました。
ではまずGDSですが、どのようなユーザーがどのようなケースで使うと良いのでしょうか?ベストケースとしては以下が考えられます。
“Googleのデジタルマーケティングサービスをガッツリ利用していて、Overview的なダッシュボード分析だけで良く、コストをかけたくない場合はGDS一択”
ではTableauの場合はどうでしょうか。
“Tableauの導入や活用を自身がリードする、もしくはリードしてくれるデータに強いメンバーがいて、ダッシュボード分析からアドホック分析までを一つのツールで完結したい場合はTableau一択”
Quick DMPとの併用も視野に入れ、上記を更にわかりやすくYes/No形式のフローにまとめました。Yes/Noの何れかを選択していくと、どのダッシュボードツールが読者(の組織)にベストなのか、簡単にわかってしまうフローです。皆様、どうぞお試しください!
PDFファイルのダウンロードはこちら
前回と今回でいったんダッシュボード特集は終わりですが、今後もダッシュボードやDMP、データビジュアライゼーションの括りでマーケターにとって有益な情報をお伝えしていく予定です。今後もご期待いただければ幸いです。
[担当よりお知らせ]
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