GDN・YDN対応 リスティングのイメージ広告を効果的に活用する方法【実作編】
2013年08月29日
ライター:寳 洋平

テキスト広告では広告文の重要性を認識し、ABテストを繰り返し実施する企業のマーケティング担当者でも、イメージ広告になった途端、「センスの問題だから」と、デザイナーや外注企業にまかせきりになったり、具体的な指示を出せなかったりすることがよく起きるようだ。

しかし、依頼される側のデザイナーや外注企業にしても、何を狙うべきかが正確に把握できていなければ、なかなか効果の出る広告は制作できない。また、リスティングのイメージ広告だからこそ行える工夫や、注意点もある。
そこで今回は、手間なくパフォーマンスを上げるイメージ広告作成のポイントを5項目で紹介する。

  1. 美しさよりもコンテクスト
  2. 5つのパーツを引き算しながら活用
  3. 必ず2種類以上作る
  4. プロトタイプ(たたき台)を使って伝える
  5. 後で集計・分析できるファイル名をつける

1)美しさよりもコンテクスト

イメージ広告を作るというと、ついインパクトや見た目の美しさに意識が向かいがちだ。
それらに目がいきすぎるために必要不可欠な要素が抜け落ちた結果、ターゲットとしていないユーザーまで呼び込む広告となってしまった経験はないだろうか? 筆者にはある。

リスティングのイメージ広告作成において、インパクトや美しさより重要視すべきことがある。それはコンテクストだ。
ターゲットの顧客が誰で、どんな状況にいるかをふまえたメッセージにすることが重要なのだ。

コンテクストは「顧客のステージ」と言い換えるとわかりやすい。
例えば、以下の3つの異なるステージにいる顧客を、自社の製品やサービスに当てはめてみてほしい。

  1. ターゲットに合致しているが、製品やサービスを知らない
  2. 製品やサービスを知っているが、未検討または検討が浅い
  3. 1度は購入しているが、まだ2度目の購入を行なっていない

顧客のイメージ

a、b、cそれぞれ異なるステージにいる顧客に対して、届けるべきメッセージは同じだろうか?
ほとんどの場合、違うはずだ。誰だって、話しかけたこともない相手にいきなり結婚を申込んだりはしないだろう。

イメージ広告を作成する際にまず考えるべきなのは、ターゲットとなる顧客が誰で、どんな状況にいるか、コンテクストを読むことである。
そして、どのターゲットに対して広告を作成するかを決め、その顧客に対して働きかけるにふさわしい表現を考えていくことが大切だ。

なお、GDN、YDNにはそれぞれ、「コンテンツ」を指定して広告を表示させる手法と、「ユーザー」を指定して広告を表示させる手法がある。
本稿では詳しく述べないが、実際に広告を出稿する際は、それぞれの手法の違いを理解した上で取り組んでいこう。

2)5つのパーツを引き算しながら活用

「イメージ広告は5つのパーツで考える」。
以前、書籍『新版:SEM:リスティング広告』の執筆に参加させていただいた際、筆者は法則77に書いている。5つのパーツとは、ロゴ、メインコピー、ビジュアル、説明文、ボタンだ。

  1. ロゴ…企業ロゴ、製品・サービスのロゴ
  2. メインコピー…ユーザーの注意を引くためのコピー
  3. ビジュアル…ユーザーの注意を引くための画像
  4. 説明文…製品・サービスを訴求するテキスト
  5. ボタン…行動を促す文言の入ったボタン

イメージ広告のレイアウト例

これらのパーツをレイアウトすることでシンプルに作成できるほか、いずれかのパーツを変えるだけでもテスト用の複数のイメージ広告を作ることができる。試してみてほしい。

なお、現場での取り組みを重ねるなかで補足しておきたいことがある。必ずしも全てのパーツを使う必要はない、ということだ。むしろ引き算したほうが強いメッセージになり、パフォーマンスが上がるケースが多く出てきている。
具体的にいうと、製品のビジュアルを中心に見せることで、説明文の量をへらす選択肢はあり得るし、あるいは、コピーを中心に据えて勝負する手もある。同じ訴求でも、ビジュアル中心に見せるイメージ広告と、テキスト中心に見せるイメージ広告ができ、テストすることも可能だ。

また、イメージ広告のフォーマットサイズによって、表現の仕方を変えることも考慮に入れたい。
スクエアタイプと縦長と横長で、無理に同じパーツを配置する必要はない。縦長なら縦長向きの、横長なら横長向きの製品をビジュアルにもってくることで、高い成果を上げられるケースもある。

イメージ広告は5つのパーツを基本としながら、適宜引き算して作っていくのが最も適したやり方だろう。

3)必ず2種類以上作る

リスティング広告の大きな特徴の一つは、運用しながら改善していけることにあると考えられる。テキスト広告はすぐに試せるためにチェック&アクションのスピードも早いが、イメージ広告はなかなか変えられないという企業の声も多く聞く。
しかし、テキスト広告のABテストが重要であるのと同様、イメージ広告もテストしていくことが大切だ。

2)で紹介したように、5つのパーツのうちのビジュアルのみを替えることでもできるし、画像寄り、テキスト寄りなどにすることも可能だ。
ただ、注意したいのは、細かい修正ではほとんど数字の違いが出ないケースが多いことだ。せっかく異なるパターンを作るのなら、大胆に切り口を変えてみるのがいいだろう。

今までと異なる切り口のアイデアなど浮かばない、という方もいるかもしれないが、役立つヒントは身近なところにもたくさんある。
リマーケティング隆盛の現在、競合のイメージ広告はサイトに訪問してからGDN内のサイトを閲覧すればすぐに見つかることが多い。競合のイメージ広告は、そこから学んだり差別化をはかったりする貴重な情報源になる。普段から収集しておくと役立つはずだ。もちろん、直接競合しないサイトでも、レイアウトや訴求の仕方で学ぶ点はある。

筆者の経験では、インターネット以外でも、雑誌やフリーペーパー、電車の中吊り広告、ユーザーのアンケート・口コミ、実店舗のスタッフへのヒアリングなどから切り口のヒントを得ていることが多い。
普段意識していない方も、広告を作成する際には、少し意識してみるといいだろう。

4)プロトタイプ(たたき台)を使って伝える

これまで1)-3)を通じて、イメージ広告を作る上での考え方を紹介した。
ただ、冒頭にも述べたように、作成はデザイナーや外注企業に依頼しているケースも多いだろう。

依頼する際の伝え方として、1)-3)の考え方に基づき、ターゲットや訴求ポイント、こうしたいという指示に加え、プロトタイプまで自分で作ってしまうことを推奨する。
理由はマーケティング担当者としての狙いをできるかぎり正しく伝えるためである。狙いが伝わっていないイメージ広告になると、配信してからのチェック&アクションも曖昧になってしまう。

実際、筆者が携わる現場では、イメージ広告のプロトタイプを我々から提出して、お客さまが社内のデザイナーや外注企業に依頼するケースが増えている。そうすることで、サイトのトーン&マナーなどを維持しつつ、狙いどおりのイメージ広告ができるからだ。
プロトタイプの重要性はイメージを共有することにある。手書きでもかまわないが、ロゴやビジュアルなどありものを切り貼りして作れば、言葉だけで説明するよりずっと伝わるはずだ。

5)後で集計・分析できるファイル名をつける

過去、お客さまとのやりとりの現場で何度かつまずいたことがあるため共有しておきたいのが、イメージ広告のファイル名のつけ方である。
1種類しかイメージ広告を使わないのであれば、ファイル名などは特に問題にならない。しかし、イメージ広告を複数作成し、成果を見ながら改善していく場合、各画像のファイル名をどうつけるかは意外に重要になってくる。

なぜか。
イメージ広告にかぎらず、リスティング広告は管理画面からレポートをダウンロードしてExcelで集計、分析を行っていく。その際、イメージ広告のファイル名がバラバラだと、どのイメージ広告に成果が出ているのかがわかりにくくなってしまうからである。

バリエーションなどによっても異なるが、最低限ファイル名に「訴求内容」「バージョン」「フォーマットサイズ」の3つを盛り込むようにしたい。そうすれば、後で集計、分析をスムーズに行えるだろう。
あらかじめ、イメージ広告の数が増えると想定していることを、デザイナーや外注企業に伝えておくとよい。成果のチェック&アクションをスムーズに行えるようにする意味で、地味ながらも必ずおさえておきたいポイントだ。

例:
  • XXXX01_300×250.jpg
  • XXXX02_300×250.jpg
  • XXXX01_336×280.jpg
  • XXXX02_336×280.jpg

以上、5つの項目から解説した。
次回は【計測編】として、イメージ広告の効果を測定する方法について解説を行いたい。

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